現状に何ら改善は無く、止まった日々を過ごしてしまっている。
「リック」
そろそろ、あの水没から半年が経過した。
S-14に動きもなく、正規軍とも合流せず、なぁなぁでここS-13へ居付いてしまった。
カタナの素振りを止める。
こいつを振り回してから一ヶ月。
そろそろ真っ直ぐ振れるようになってきた。
「57、どした?」
「今日、先月保護したMGの子が来るのよ。貴方も出迎えに行ったら?」
確か、88式と名乗ってたっけ。
57から視線を外して、ジェットストリームを握り直した。
「別に良い。俺は一応部外者だし」
「そんな事言って……知ってるわよ?あの子のおっぱいガン見したの」
「し、してねーし!!」
「わかり易いわねホント」
「あぁ!?大体な、俺は女なんか嫌いなんだよ。一々構ってられるか」
上段に持ち上げ、振り下ろす。
義手にも慣れ、手に馴染むようになってきた。
「何よそれ。いくらなんでも酷いわ」
「だったら何だって言うんだ」
「来なさいよ!」
「わっ!?馬鹿、今こっち来るな!触んなって!あぶない!!」
ジェットストリームを構えた時に57が近寄ってくるもんだから集中力が維持できない。
いやだってこいついい匂いするもん……。
「「あっ」」
ジェットストリームの切っ先が、57の胸元の前を掠った。
「ひっ……」
「わー!!だから言ったのに!!俺だってまだこいつ使いこなしてないんだぞ!?大丈夫か!?怪我は!?痛いとことか無いか!?」
慌てて57の体を触って異常を確かめる。
彼女は顔真っ赤にして固まっている。
「おい!?どうした!?まさか怪我したとか!?」
「さっ」
「ん?」
「触んなっ!!」
思いっきり頬にビンタを貰った。
痛い。
「あ、貴方ね!女の子に剣を向けて!しかも無遠慮に触るなんて最低!」
「え?あ、ええ?ごめん……」
これ俺が悪いの?
「全く……」
「悪かったって……」
「じゃあ、今度こそ買い物付き合ってもらうからね。前は一人で行っちゃってさ」
「う……わ、分かったよ」
今回は、我慢だ……機嫌が治るなら万歳……。
と、そこで……はらり、と。
「え”っ」
「?」
57は気が付いていない。
……彼女のワイシャツが胸元一閃、切れている事に。
しかもその下のブラまで切れていて瑞々しい肌が露出している。
シンプルだが、黒のブラ。
グリフィンの支給品なのか、派手な装飾は無い。
俺がガン見しているのを訝しみ、57が視線を下げた。
……彼女の顔が真っ赤になる。
「なっ、なな、なぁっ……!」
あ、やば……鼻が。
顔が熱い。
これは、拙いぞ。
「リック!貴方ね……え?」
意識が遠のく。
……我ながら情けない。
「え、ちょっと、リック!?大丈夫!?どうして……えっ、鼻血?えぇ……?」
やめて見ないで……鼻血大量に吹き出して倒れたなんて死にたくなる……。
本日の出迎えは二人してキャンセルになった。
なんだこれ。
ムッツリ純情サイボーグ坊やパトリック。
スケベな癖に実際目にするとぶっ倒れるくらい初心。