……死んだ奴は戻ってこないのに、何でそんな事をするんだろうな。
雲ひとつ無い快晴だ。
「よう、相棒。良い天気だな」
俺は空を見上げながら呟いた。
「俺、さ……今グリフィンに居るんだわ。しかも、そこの指揮官がリリスだったんだ……覚えてるか?よくお菓子焼いてくれたちっこい人。年上だったんだな」
リリスが用意してくれた、シンプルだけどそこそこ質のいい墓標。
二人の名前が掘られている。
「E.L.I.Dじゃなくて、暴走した鉄血の人形達と戦っててさ。最近思うんだ……戦ってるのが、楽しいって」
どうしようもない高揚感。
最近、戦闘中……特に、ハイエンドモデルとの戦闘時に顕著になる。
「何でだろうな……俺さ、リリスの為に戦わなきゃって思ってるのに……戦ってる事自体が楽しくてさ……ちょっと、怖いんだ。正規軍に戻るまで面倒見てくれてるリリスの為に、恩返ししねーといけねーのに」
今まで、E.L.I.D狩ってる時には感じなかった。
今まで生きてきた中で、一番楽しかった。
「何でこんなこと言ってんだろうな……」
「……それが、今まで抱えてた事なんだ」
「リリス……」
背後から声が掛けられた。
他の誰でもない。
リリス·エールシュタイアーだ。
「久しぶり……二人共。私の事覚えてるかな」
リリスが二人の墓標に花を供える。
「りっくん」
「ん?」
「お仕事」
「……内容は?」
「近郊のはぐれ鉄血量産型の排除。S-12のスコーチさんから」
「スコーチから……?」
「うん。装備はジェットストリームだけって」
「………うせやろ?」
あのおっさん俺に何させたいんだっての。
「りっくんはさ、戦うこと……楽しい?」
言葉に詰まった。
「どうして、って顔してる。判るよ?りっくんのことなら何でも」
俺とリリスは並んでずっと墓石の方を向いている。
だからリリスがどんな顔をしているか分からない。
確認する勇気がない。
「俺は、」
「強く、なりたいんでしょう?良いよ……私が、君を強くしてあげる。強くするためにどんな敵とも戦わせてあげる」
「………………」
「でも1つだけ約束して」
俺の手が握られる。
俺の手は鋼鉄製だ……そんなに強く握ったら、お前の手が壊れちまう。
「絶対、絶対に……私に、帰ってきて」
「……わかったよ。這ってでも帰る」
手の感触が、少し優しくなる。
「ありがとう、りっくん。なら、安心かな……お仕事、どうする?」
「もちろん、受ける」
ジェットストリームの試し斬りにはちょうどいい。
「じゃあ、そう返事しておくね。帰ろう?」
…………………俺は、ずっと濁った瞳でアリサの墓標を睨み続けるリリスに、気付いていなかった。
次回、ジェットストリーム縛りの難易度ジェットストリームモード。