水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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S-13地区市街地近郊に現れた鉄血のはぐれ部隊を、ジェットストリームのみで殲滅せよ。


第47話『ジェットストリーム·リック』

 

今回は俺しか出ないので送り迎えは無い。

カロリーバーを齧りながら奴らを待つ。

 

「………………まっず」

 

味が無い。

粘土食ってる気分だ。

正規軍だともうちょいマシな味してた気がする。

 

「通過予定時刻まであと10分……そろそろ見えてくるはずだ」

 

背中にいつもの剣は無い。

ピースキーパーもパニッシャーも持ってきていない。

 

頼みの綱は、腰のカタナ……ジェットストリームだけ。

 

(まだ習熟したとは言えない。使える技だってイアイだけ)

 

これで正面切って戦えるかと聞けば、否である。

トムボーイと同じ感覚で振ったところで威力は明らかに足りない。

 

この武器に求められるのは鋭さ。

 

的確に弱点へ刃を通す技量と速さだ。

 

俺には、まだ足りない。

 

「……来た!」

 

被っていた偽装シートを脱ぎ捨てる。

左手を腰のジェットストリームのトリガーに掛ける。

 

目の前に視えるのは五体の鉄血人形。

奥の一体はドラグーンだ。

随伴のプラウラーを先に潰すか、それとも最奥のドラグーンから倒すか。

 

小回りが効かないドラグーンを最後にして出来る限り最速でプラウラーを片付ける。

 

「シィィィ…………!!!」

 

呼吸を整える。

一歩一歩、跳ぶように駆ける。

 

一体が俺に気付く。

遅い!!

 

「………………!!」

 

バスン!!

ジェットストリームが銃の発砲音を鳴らすかの如く鳴く。

 

炸薬によって極限にまで加速された斬撃が、プラウラーの首をすっ飛ばした。

 

「切り捨てゴーメン!!」

 

昔コミックで読んだセリフをつぶやく。

一度言ってみたかったんだよね。

 

ん?なんか違う気がする。

 

プラウラーの一体がこちらに銃を向ける。

 

「ヤバっ……うぇ!?」

 

飛んできた5発の光弾。

軽くジェットストリームを振ったら()()()しまった。

 

見様見真似だったけど出来てしまった。

 

流石に驚いたのかプラウラーが一瞬動きを止める。

 

好機!

 

「せぇりゃっ!」

 

両手でジェットストリームを握り、横一閃に振り抜いた。

 

カタナは叩き付けるものではなく、引いて切るもの。

 

100式に教えられた事を思い浮かべながら、引く。

プラウラーは上下に見事両段差れる。

 

「よし……グッ!?」

 

肩に掠った。

肉の焼ける嫌な匂いがする。

痛い。

 

けど、傷口が焼かれたお陰で出血していないのが幸い。

 

痛い、痛いだけ。

耐えられる。

 

再びジェットストリームを鞘に戻す。

 

「シィッ……!」

 

短く呼吸。

一直線にプラウラーへ跳ぶ。

 

しかし、ドラグーンが掃射を始めた。

慌てて軌道を変える。

 

が、その方向にもプラウラーはいる。

撃ち出された弾丸をカタナではたき落として距離を詰める。

 

「この……!」

 

上段から振り下ろす。

勢いが足らず肩に食い込んで止まる。

 

「ゲッ……!」

 

肩からオイルを吹き出して崩れ落ちるプラウラー。

しかし、

 

「やばっ、抜けない……!」

 

ジェットストリームをがっちり咥え込まれてビクともしない。

 

仕方ないのでプラウラーごと振り抜いた。

 

「うおらぁ!!」

 

振り抜いた反動で抜けた。

プラウラーの残骸がもう一体のプラウラーにぶつかる。

 

そのまま、地面を蹴った。

 

飛び上がり、ドラグーンの頭目掛けて振り下ろした。

 

「チェストォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた……!!」

 

計五体分の残骸を山にしたあと、その辺の草原の上に寝転んだ。

 

ジェットストリームを使用するとき、呼吸方法が変わる。

一瞬にすべてを賭ける、そんな息遣い。

 

そのため、連発すると酸欠を起こす。

 

「……これ、難しいなぁ」

「ほう、鍛錬か」

「ああ……………………!?」

 

慌てて飛び起き、ジェットストリームを声の主へ構える。

 

声の主は呑気に話を続けた。

 

「以前と使っている武器が違うな?壊したのか?」

 

白の長い髪をかき上げて、彼女はそう言った。

 

「お前は……アルケミスト……!」

 

眼帯の無い目は、ニヤリと歪んだ。

 

 

 




アルケミスト、再び。

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