今回は俺しか出ないので送り迎えは無い。
カロリーバーを齧りながら奴らを待つ。
「………………まっず」
味が無い。
粘土食ってる気分だ。
正規軍だともうちょいマシな味してた気がする。
「通過予定時刻まであと10分……そろそろ見えてくるはずだ」
背中にいつもの剣は無い。
ピースキーパーもパニッシャーも持ってきていない。
頼みの綱は、腰のカタナ……ジェットストリームだけ。
(まだ習熟したとは言えない。使える技だってイアイだけ)
これで正面切って戦えるかと聞けば、否である。
トムボーイと同じ感覚で振ったところで威力は明らかに足りない。
この武器に求められるのは鋭さ。
的確に弱点へ刃を通す技量と速さだ。
俺には、まだ足りない。
「……来た!」
被っていた偽装シートを脱ぎ捨てる。
左手を腰のジェットストリームのトリガーに掛ける。
目の前に視えるのは五体の鉄血人形。
奥の一体はドラグーンだ。
随伴のプラウラーを先に潰すか、それとも最奥のドラグーンから倒すか。
小回りが効かないドラグーンを最後にして出来る限り最速でプラウラーを片付ける。
「シィィィ…………!!!」
呼吸を整える。
一歩一歩、跳ぶように駆ける。
一体が俺に気付く。
遅い!!
「………………!!」
バスン!!
ジェットストリームが銃の発砲音を鳴らすかの如く鳴く。
炸薬によって極限にまで加速された斬撃が、プラウラーの首をすっ飛ばした。
「切り捨てゴーメン!!」
昔コミックで読んだセリフをつぶやく。
一度言ってみたかったんだよね。
ん?なんか違う気がする。
プラウラーの一体がこちらに銃を向ける。
「ヤバっ……うぇ!?」
飛んできた5発の光弾。
軽くジェットストリームを振ったら
見様見真似だったけど出来てしまった。
流石に驚いたのかプラウラーが一瞬動きを止める。
好機!
「せぇりゃっ!」
両手でジェットストリームを握り、横一閃に振り抜いた。
カタナは叩き付けるものではなく、引いて切るもの。
100式に教えられた事を思い浮かべながら、引く。
プラウラーは上下に見事両段差れる。
「よし……グッ!?」
肩に掠った。
肉の焼ける嫌な匂いがする。
痛い。
けど、傷口が焼かれたお陰で出血していないのが幸い。
痛い、痛いだけ。
耐えられる。
再びジェットストリームを鞘に戻す。
「シィッ……!」
短く呼吸。
一直線にプラウラーへ跳ぶ。
しかし、ドラグーンが掃射を始めた。
慌てて軌道を変える。
が、その方向にもプラウラーはいる。
撃ち出された弾丸をカタナではたき落として距離を詰める。
「この……!」
上段から振り下ろす。
勢いが足らず肩に食い込んで止まる。
「ゲッ……!」
肩からオイルを吹き出して崩れ落ちるプラウラー。
しかし、
「やばっ、抜けない……!」
ジェットストリームをがっちり咥え込まれてビクともしない。
仕方ないのでプラウラーごと振り抜いた。
「うおらぁ!!」
振り抜いた反動で抜けた。
プラウラーの残骸がもう一体のプラウラーにぶつかる。
そのまま、地面を蹴った。
飛び上がり、ドラグーンの頭目掛けて振り下ろした。
「チェストォォォォォォォォ!!!」
――――――――――――
「つ、疲れた……!!」
計五体分の残骸を山にしたあと、その辺の草原の上に寝転んだ。
ジェットストリームを使用するとき、呼吸方法が変わる。
一瞬にすべてを賭ける、そんな息遣い。
そのため、連発すると酸欠を起こす。
「……これ、難しいなぁ」
「ほう、鍛錬か」
「ああ……………………!?」
慌てて飛び起き、ジェットストリームを声の主へ構える。
声の主は呑気に話を続けた。
「以前と使っている武器が違うな?壊したのか?」
白の長い髪をかき上げて、彼女はそう言った。
「お前は……アルケミスト……!」
眼帯の無い目は、ニヤリと歪んだ。
アルケミスト、再び。