水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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現れるTAC-50。
そう言えば最近よく視線を感じるが……。


第49話『目』

「……で、TAC-50」

「はい」

 

TAC-50が俺の肩に包帯を巻いてくれている。

戦場だった場所から少し離れた廃墟の物陰。

そこに移動して少し休憩をしている。

 

「何でここに?」

 

ここには俺しか来ていないはず。

しかもリリスが人形への通達をしていなかった……。

 

こいつが、知っている訳が無い。

 

「えっと、ちょっと心配で……」

「そんな理由で武装して俺の後付いてきたってのか?誤魔化すならもうちょっとマシな言い訳しろよ」

「う、うぅ……」

 

度々楓月から見られていると感じていたが、まさか……。

 

「なぁ、TAC-50」

「は、はい……」

 

ビクリと彼女の肩が跳ねる。

なんか小動物の様だ。

 

「まさかずっと見てたとか言わないよな」

「………………」

 

沈黙。

ここでの沈黙は即ち肯定を意味すると、多分分かってないんだろうか。

 

「嘘だろ……」

 

じゃあ、まさかアルケミストとの会話も聞かれていたんじゃ。

 

「だ、大丈夫です……誰にも、誰にも言いません」

「……別に、聞かれて困ることじゃない」

 

奴に協力するつもりなんてサラサラ無いのだし。

何もやましいことはしていな……。

 

「パトリックさんがアルケミストの胸をしっかり揉んでいたのも」

「う、おおおおおおおおおおお!!?」

 

慌てて俺はTAC-50の口を押さえた。

 

「むぐ」

「ばっちり見てんじゃねぇか!!このやろう!!」

 

あんなシーン他の連中に見られたら何言われるか。

 

「だ、大丈夫ですよ……私と、パトリックさんとの秘密にしますから」

「……信用して良いんだな?」

 

彼女は微笑む。

イマイチ信用しきれない……。

 

「とりあえず……怪我の治療サンキューな。帰ろうぜ」

「はい」

 

廃屋から出る。

……少し空模様が怪しくなってきた。

 

「なぁ、TAC-50」

「なんですか?」

「鉄血のデッドコピーを生み出すハイエンドモデルについて、何か知らないか?」

 

アルケミストが言ってたあの存在。

せめて名前を聞ければやりようはあるのだが。

 

「すみません、私は何も……」

「そうか……帰ったらジェリコに聞くか」

 

資料室漁れば出てくるだろうか。

でも昔からああいう書類に囲まれるのだけは本当に嫌だったんだよな。

 

AK-12がいっつも呆れながら小言言ってきたっけ。

AN-94は手伝ってくれて……。

 

「パトリックさん」

 

TAC-50が、俺の思考を打ち切った。

 

「指揮官が心配してますよ。帰りましょう」

「そうだな」

 

手足のガタツキもない。

これなら軽くチェックするだけで良さそうだな。

 

「腹減ったな……TAC-50何か持ってないか?」

「メープルシロップならありますよ」

「何にかけるんだ?」

「なんでもですよ」

「……え?ほ、他には何か持ってないのか?」

「メープルクッキーです」

「ほ、ほーん……帰るまで我慢するわ」

「まぁまぁそう言わずに。お一つどうです?」

「じゃあお言葉に……ギャーッ!!何かけてるんだよ!!あっ、やめろメープルが2倍じゃねぇか!!ちょ、近づけ……アーッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




明けましておめでとう御ございます。
年末と年始にいろいろありましてメンタルクソザコ状態になっていました。

なんとか持ち直しましたので、また執筆を再開したいと思ってます。
今年もパトリックくんをよろしくお願いします。

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