夜目は利く方だが大人しく装備に頼るべきだ。
――現地にて。
俺達は降下ポイントに到着した。
輸送ヘリが戻っていく。
「作戦開始……怪我しないように」
DSRの一言に苦笑を漏らす。
ジェリコの肘が脇腹に刺さる。
「おう"っ」
「特に貴方よ、パトリック」
「お、おう……」
何か当たり強くない?君ら。
結局ポジションは前衛になるので被弾するなって言うのが無茶な話だが。
「まずアタシとジェリコで偵察するわ。何かあったら連絡する」
「でも陣形はそのままでお願いね」
「分かってるってば。リック、あたしから離れないでね」
「いや、俺最前列なんだが」
「大丈夫ですわ。私が居ますよ」
G36cのスキルは確かフォースフィールドというもの。
一定時間全ての攻撃を遮断するシールドを張るとか。
「頼りにしてるわよ、G36c」
DSRが頷く。
「それで、行方不明のコはどんな人形なの?」
FALが気になっていた事を潰し始めた。
摺り合わせは大事だ。
「サブマシンガンタイプ、目印は黄色のメガホンよ」
「指揮タイプだからって分かりやすい指標だな……」
人形の名前はハッキリ言って覚えにくい。
見た目が個性的なやつ揃いだから認識に難くない。
「行きましょう」
――作戦開始。
「……アレは」
しばらく進んだ後。
夜は不気味に静まりかえっている。
鉄血の人形はダイナゲートすら見かけない。
だが、前方に光が見える。
明らかに人工の灯り。
「……止まって」
DSRの号令。
小隊が静止、姿勢を低く、近くにあった木々に身を寄せる。
「リック、何が見えたの」
「灯りだ。サーチライト系の」
「確認するわ」
DSRがこめかみに指を当てる。
ライフル人形だし、何かしらカメラに仕掛けでもあるのだろう。
「正規軍……?」
DSRの呟きに、俺達は肩の力が抜けた。
「何でこんな所に……」
「何にせよ、誤射を避けるためにひと声かけてから行きましょう」
「賛成。銃口向けられるのは気分が良くないもの……特に、アレはね」
人形達が喋っているのを尻目に……俺は、違和感が拭えなかった。
(おかしくないか?……ここはグリフィンが持ってる鉄血との最前線だぞ?それに、正規軍はE.L.I.D相手にするので手一杯で
考えられる理由は、
(……まさか、E.L.I.Dがこの辺りに居るってことか?)
「DSR、ちょっと……」
「!皆さん、そこに誰かが……!」
俺が声を掛けようとした瞬間、G36cがなにかを見つけた。
「どうしたの?」
「誰か、倒れています」
「警戒。私とパトリックで見ます……来て」
俺とDSRが恐る恐る近づく。
……二房にまとめた黒髪が地面に乱れている。
傍らには黄色のメガホンと、彼女の物と見られる銃。
「……この子ね。貴女、大丈夫?」
DSRが肩をそっと揺らす。
「DSR、こいつ……頭抜かれてやがる」
「……なんて事」
うつ伏せに倒れていたのを仰向けにしてやる。
……こめかみに小さな穴。
そこから少し液体が漏れ出している。
ヘッドショット。
これは、助からな………………
(待て、落ち着け。同僚が頭やられていた時、俺はどうした?)
潰された奴は流石に無理だが、このくらいの穴なら……。
「パトリック……?」
「動かせるかもしれない。予備のバッテリーは?」
「あるけど……」
「寄越してくれ。ちょっと応急処置する」
「大丈夫なの?それは」
「正規軍でやってた事だ。それで何人か同僚助けてる。信じてくれ」
「……わかったわ」
DSRから予備のバッテリーパックを受け取る。
(間に合ってくれよ……)
朧気な記憶と、無我夢中で処置していた為……気が付けば終わっていた。
「……頼む、起きてくれ」
しかし、相手は民生人形。
軍用ほど頑丈ではないのだ。
「う、うぅ……」
声を出して喜ぶのを抑える。
DSRが俺に抱きついて来た。
今は流石に甘んじておく。
「良かった!気が付いたんだな」
「こ、ここは……」
「私達はグリフィンS-13地区の部隊よ。貴女を保護しに来たわ」
「グリフィン……うっ」
人形が頭を抑える。
まだハッキリと覚醒仕切ってないのだろうか。
配線を無理矢理繋いだりした弊害が出てしまったか?
「歩けるかしら?まずは帰還しましょう……それからゆっくり、ね?」
「はい……」
DSRが人形に肩を貸して立ち上がる。
「皆、保護対象よ。帰還しましょう」
その瞬間、爆発音がした。
「何!?」
「DSR!さっきの正規軍の居た辺りよ!」
「向こうの照明が消えたわ!」
「……照らして!」
ジェリコが最低限に絞った灯りを出す。
……照らされたのは、先程の正規軍の人形達ではない。
肥大し規則性の消えた四肢、黒光りする肌。
覚束ない足取り……そして、巨大な単眼が、こちらを見ていた。
「な、に……コイツ……」
全員が、固まる。
……知っている。
俺は知っている。
このクソッタレな成れの果てを。
「走れ!!E.L.I.Dだ!!!」
トムボーイを最大出力で躊躇い無しに振り抜いた。
E.L.I.D、出現。