水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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変人揃いと名高いS-12。
なんだってそんなとこがお隣さんなんだか。


第57話『S-12地区基地』

「「わぁ……」」

 

漏れた声は奇跡的にハモった。

 

目の前にあるのは立派なゲート。

そう、S-12地区のグリフィン前線基地へ、ようやく到着したのだ。

 

既にサイガも限界、俺の手足もガタガタだ。

装備も不安でピースキーパーも弾切れ。

 

「なんと言うか、やっと着いた……」

「……お風呂入りたい……」

 

俺の服の裾を指で摘んでいたサイガがそう漏らした。

まあ、ずっとシャワーだったし。

 

「取り敢えずアポ取れないかな……すみませーん」

 

衛門に立つ歩哨(人間!?)に声を掛けた。

 

「こんにちは……ちょっと待て。とまれ。何のようだ」

「えっと、指揮官にアポ取れませんか」

「指揮官に……!?動くな!貴様達を拘束する!」

「えっ」

 

何で……!?

……そう思い、サイガを振り返って。

 

「あ」

 

……サイガがピースキーパーを背負っている。

そして俺は腰にサムライソードを差して背中にバカみたいな剣を背負っている。

 

そら止められるわ。

 

「サイガ!銃捨てろ!」

「えっ、えぇ!?」

 

トムボーイとジェットストリームを外して地面に置いた。

サイガも困惑しながら同じ様に装備を外した。

 

歩哨も困惑している。

 

「な、何だ貴様ら……」

「あー、その、俺S-13の人間なんだけど、自隊に帰れなくて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、久しぶりだな坊や」

「坊やはヤメロっつってんだろ!?」

 

銀髪のムカつくあんにゃろうに思わず噛み付いた。

そいつは愉快そうにケラケラ笑っている。

 

「いやぁボロボロの状態でうちの前に居るもんだから何事かと思ったぜ」

「まぁ……色々あった」

「ま、これでお嬢ちゃんも安心するだろ。連絡はした」

「あー……その、すまん……助かったよ」

 

応接室で俺を待っていたのは、この基地の指揮官本人だったからちょっと驚いた。

久しぶりに再会した、ジョージ·ベルロック指揮官。

後から知った話だが、こいつも元正規軍だったらしい。

最も、こいつが辞めた後に入隊したから面識は無いけど。

 

「Saiga-12の修復は任せてくれ。よくここまで連れてきてくれた」

「……一応、恩人だからな」

「それと、お前の義肢のメンテナンスもやらせよう。うちの整備士の腕は確かだぜ」

「……で?そこまでして何を俺たちにさせる気だ?」

 

ジョージのオッサンの顔からニヤケ面が消えた。

 

「……勘がイイトコはそっくりだ」

「なんの話だ」

「気にするな。まぁ、何もタダで面倒見てやるって訳じゃない……とあるハイエンドの調査を任せたい」

 

そう言って、応接室のドアの方へ声を掛けた。

ドアが開き、長い黒髪と白い肌の女の子が入ってきて……。

 

「え、鉄血……!?」

 

立ち上がる。

……しまった、武器が無い!

 

「落ち着け落ち着け」

「……ジョージ、私が鉄血だったってたまに忘れてないかしら」

 

黒髪の女の子が呆れたように言う。

 

「アニーがチャーミング過ぎるからさ」

「あら、お世辞が上手いのね」

「お世辞と取るのかい?悲しいね」

「うふふ、嘘よ。貴方の言う事はちゃんと届いてるわ」

「本当かい?愛してるよアニー」

「ええ、私もよジョージ」

 

………………………口から砂糖吐くわ。

 

えっ、なんだこれ。

突然鉄血が出てきたとおもったらなんか目の前でイチャつき始めたぞ。

 

と言うか、

 

「おまっ、あのWA2000と誓約してるんじゃねーのかよ!!」

「ああ、リサのことか。勿論そうだ」

「えっ、じゃあ何してんのこれ!?浮気か!?」

「いや、公認」

「懐深っ!?」

「まぁ、そういう事だ」

「意味わかんねー……」

 

呆然と呟いた。

アニーと呼ばれた人形が、俺に資料を手渡してきた。

 

「……イミテーションメーカー?」

 

 

 


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