「……これは?」
資料に目を通す。
わかっているのは、イミテーションメーカーと言う名前と、鉄血製品のデッドコピーを量産する能力を持つ事。
「この近辺に逃走した鉄血ハイエンドモデルの情報だ」
「逃したのか?」
「S-14が壊滅して、お前さんのいるS-13が最前線になった。無茶を言うな」
これ以上の詳しいデータは無い。
更に姿形のデータも無い。
「名前と能力、実質ノーヒントの人探しかよ」
「ここまで面倒見てやったんだ。それくらい安いだろ?」
後払いだし。
期日はそう長くは見ない。
「まぁ……サイガの件もあるし」
「自分より先に女か。見所がある」
「ちょっとジョージ?」
「判ってるってアニー」
「イチャつくのやめろっての」
さて、取り敢えず戻ったら忙しくなるな。
「ま、迎えが来るのも少し後だろう。向こうも少しゴタゴタしてるらしい」
「……S-13で、何か?」
もしかして、襲撃?
確かにあの時、IOPのハイエンドを救出した。
それを追われていたとしたら……。
「そう構えるな坊や。心配しなくても、向こうの指揮官は良くやるさ」
「けど……」
「坊やが来るまでやってきたんだ。少しは信用してやれって」
確かにそうだ。
ちょっと、俺は介入し過ぎたのもしれない。
「……そうだな」
「UMP40!坊やを案内してやってくれ!」
「はいはーい!あたいにお任せ!」
応接室にグリーンの髪の人形が入ってきた。
「あたいは、UMP40。よろしくね、えーっと」
「パトリックだ」
「よろしく、パトリック。こっちだよ」
UMP40が手を取って引っ張る。
「あっ」
「えっ……わぁぁぁぁぁぁ!!?!!!???!!」
40が叫んだ。
そりゃそうだ。
手に取ったと思ってた左手がまさか左腕だけ取れるなんて思ってないだろうに。
「あー……すまん。先に義肢の修理頼んで良いか?」
――――――――――
「任せな。明日にはしっかり治してやる」
モナークと名乗った整備班の女性に、手足を預ける。
車椅子に乗せられ、久しぶりにダルマである。
「……パトリックは、本当に手足が無いんだね」
「まぁな。モノ心付いた頃からそうだったから今更何とも思わない」
40に車椅子を押されて基地を移動する。
割り当てられた部屋でさっさと寝たかった。
「あ、そうだサイガは?」
「外装は元通りだよ。先に部屋で待ってる」
「ちょっと待て。相部屋か!?」
「その辺りは勘弁して欲しいかな〜。うちもそんなに裕福な訳じゃないし」
「まぁ、そりゃな……」
借金指揮官。
あの男はそう称されている。
「はい。ここだよ……後は」
「ワタシが面倒見るわ」
「……おう。サイガ」
「ええ、パトリック。もう五体満足よ。ワタシがお世話してあげる」
格好も何もかも綺麗になったサイガが、立っていた。