水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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出発前。

「パトリック」
「ん、ああ、モナーク。メンテナンスありがとう。調子は上々だ」
「実は、言ってないことがあってな」
「言ってないこと?」
「最適化中に手足に空きスペースがあるのが発覚した」
「えっ、それ強度的に大丈夫なのかよ」
「その点に関しては問題ないさ。流石正規軍様々と言ったところね」
「お、おう。で、そのスペースに何をしたんだ?」
「ちょっとした仕掛けをね。手足で四箇所、全部違うギミック詰めたから、使った感想聞かせてくれよ?」
「また凝った事を……」
「ちなみにそれぞれ、スラッシュディスク、クラッカー、鉄傘、ワイヤーを仕込んだ」
「傘……待って待って、情報が処理出来ない」





第60話『それはそれとして、お仕置きです』

現状を説明しよう。

 

今俺は手足を取られて転がされています。

 

……えっ、何で?

いや、ヘリから降りた瞬間DSR渾身のストレートが顔に突き刺さって気を失ったんだ。

そしたら手足抜かれて部屋に打ち込まれたんだよ。

 

以上、説明終わり。

 

今、オッサンとリリスの情報交換が行われてる最中だろう。

 

「……腹減った」

 

サイガがどうしたとか、あの後無事に逃げられたのかとか、ちょっと気になることは多い。

 

でもやっぱり空腹が勝る。

 

「誰か居るのか?」

『……居ますよ』

 

この声は、ジェリコか。

 

「ジェリコ、無事だったか」

『ええ、お陰様で。どこかの馬鹿が囮になってくれたお陰で』

「うぐ……まぁ、良かった」

 

ダン!!とドアを何かが思いっきり打つ音がした。

 

『何が良かった、ですって?』

 

ガチャ、とドアが開かれる。

……顔に暗い陰を落とした、ジェリコが、入ってきた。

 

「お、おう……」

「仲間を見捨てて生き延びて、何が良かったか言ってみなさい」

 

目の前に屈んだと思えば、俺の襟首を掴まれる。

 

「ジェリ、ぐぇ」

「パトリック。何で私がここまで怒っているのか、理由は分かってますね?」

「ケホッ、あ、あぁ……」

「貴方は、本当に……!」

「ジェリコ」

 

今まで聞いたことの無い、ゾッとするくらい感情の篭っていない声。

 

「……指揮官」

「リリ、ス」

「パトリックと話があります。ジェリコは外に」

「は、い……」

 

渋々と、ジェリコは部屋の外に出ていった。

……ドアが、閉じる。

 

「久しぶり、りっくん。二週間ぶりくらいかな」

「お、あぁ……」

 

リリスは柔和に微笑んでいる。

しかし、瞳に……光は無い。

 

「怪我は……いっぱいしたみたいだね。Saiga-12って子、よく連れて来てくれたね。あの子のお陰で、S-14区画の事を調べられそうだよ」

「そ、そうか」

「ねぇ、りっくん。私とした約束、覚えてる?」

 

すっ、と首にリリスの手が添えられる。

 

「えっと……」

「まさか、忘れた……なんて、言わないよね?」

 

添えられた手が、ゆっくりと、

 

「そんな訳な……がひゅ」

 

首を締める。

 

「あ、く、」

 

力が、強い。

そんな細い身体のどこに、ここまでの力があったのか。

 

「どうしたの?ほら、言ってみてよ?ねぇ?ねぇって、りっくん?」

「ぇほ、げ、げふっ、じゃあ、手を、はな、がぇ」

「あぁ、ごめんね?はい……どうぞ」

 

まるで笑顔の仮面が貼り付けられた様に、表情は変わらない。

 

「……『必ず、リリスの元に帰ってくる』」

「正解。良く出来ました」

「ホッ……」

「で、も」

 

再び、今度は両手が首に添えられた。

 

「りっくんは、約束を破ったかもしれなかったね」

「り、りす。待って、これは」

「うん、分かってるよ。E.L.I.Dなんて戦術人形じゃ対処出来ないもんね。りっくんは優しいから、殿したんだよね」

「別に、優しくなんか」

「でもね」

 

がぶり。

 

「痛っ……!」

 

リリスの頭が顔の隣を通過する。

首筋を、噛まれた。

 

恐る恐るリリスを見る。

 

 

「あんまり心配させると……何するか、分かんないよ?」

 

 

仮面は、貼り付けられたままだった。

 

 

 

 

 

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