「久しぶりだな、パトリック」
「久しぶり、スコーチと一○○式」
「お久しぶりです!パトリックさん」
2人が、S-13基地にやってきた。
師を名乗る、確かに剣の手ほどきを受けたからそのとおりだ。
「相変わらず眉間にシワの寄る顔をしている」
「気難しいって顔に書いてあるみたいですね」
「ははは、ほっといてくれ」
何気に辛辣な事言う一〇〇式だった。
「何があったかは知らんが、剣を振れば気が紛れるだろう」
「今日は何を教えてくれるんだ?」
実は俺自身、スコーチの師事を楽しみにしていたのは事実。
強くなる実感、手札が増える事への安心感。
「パトリックは、あまり徒手格闘を行わないな?」
「え?ああ、そりゃ殴るより斬るほうが殺しやすい」
変異体相手に殴りつけた所でいくら頑丈な義手と言えど何かしらガタが出る。
そう言えば一度丸腰で鉄血と渡り合った時があったな。
「素手での殺し方を覚えておくのも一興。ではパトリック。お前に徒手格闘の技を教えよう」
スコーチが拳を突き出し、構える。
「構えろ。まずは身体に叩き込む」
「喰らわずに見て覚えてやるよ」
「行くぞ」
「オ……ぶへぇ!?」
こちらが動く前にスコーチの肘が俺の腹に刺さった。
「破ァ!!」
「ゴッ……!?」
そこをよろけた所に、掌を突き出され吹っ飛ばされた。
地面を転がる。
今、何をされた!?
早すぎない!?
「これぞ、出鼻を挫く布石の技。『拝み連拳』だ」
「ゲホッ……いって……くそ、『頂戴した』、だっけ?」
「うむ。もう一つの『型』も、一手馳走しよう」
「有り難く……何度も喰らうかっての!!」
見た所先の先を取る技。
初手さえ見切ればどうってことは無い。
「セイッ、破ァ!!」
「うわらばッ!?」
掌まで受けようとした後、背中で体当たりされて再度吹っ飛んだ。
これまさか鉄山靠って奴じゃねぇか!
「これぞ、『拝み連拳・破魔の型』。油断したな、パトリック」
「くっそ、途中で変えやがって!」
「先に言ったぞ。もう一つの型をな」
「………………」
「さて、パトリック。私は今日から1週間滞在する予定だ。これから毎日、稽古をしようじゃないか」
「ほ、本当か!?」
それは嬉しい話だ。
「ふはは、顔が変わりおったな。お前は本当に分かりやすい」
「な、なんだよ」
「いや何。眉間の皺が取れたからな。お前は悩むより行動した方が良い方向に転ぶだろうさ」
「……そうかよ」
「さて、時間は有限だ。まだ教えたい技は残っておるぞ」
「望むところだ!」
次は何を教えてもらえるんだろうか。
そんな様子を、飛行ドローンやら窓やら執務室から無数の視線が飛んできている事に全く気付いていなかった。
(……指揮官殿の血筋、か)
スコーチが何故かため息を吐いた。
「???」
「気にするな。まだまだやるぞ」
今回で、パトリックは拝み連拳、破魔の型、一文字、葦名十文字を覚えさせようと思います。
隻狼感凄いですね。