『ーーーー』
誰かが俺に声をかけている。
……うるさい。
甲高くてひどく耳障りだ。
このまま寝かせておいて欲しい。
『ーてーーおきー』
嫌だ。
寝かせろ。
「起きて下さいっ!!」
「うるせぇ!耳元で叫ぶんじゃねぇ!!」
「あ!良かった、意識が戻られたんですね!?」
しまった。
あまりにもうるさかったのでつい反応してしまった。
……そいつはちょっと変わった格好をしていた。
白いロングコートに黒のリボンを沢山つけている。
目を引いたのは陽に煌めく白銀の長い髪。
AK-12も白かったけど、こちらの方が艶がいいのかもしれない。
顔立ちもかなり整っている。
女嫌いを今すぐ返上して口説いても良いかもしれないと思いそうになるほど。
……そして、その傍らに置かれたバカみたいにデカいライフルが、俺を現実に引き戻した。
「戦術人形……」
「はい!
シュタイアー。
くそったれ、同じ名前か…。
辺りを見渡すと、川の流れもだいぶ穏やかになっている。
……特に怪我もせず流されたのは幸運だったのかもしれない。
立ち上がろうとして、バランスを崩して倒れた。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「イチイチ騒ぐな、鬱陶しい……気にすんな。いつもの事だよ」
右腕が無くなっていた。
恐らく、何処かで外れて流されたのだろうか。
参ったな……片腕が無いのは相当不便だぞ。
慌てて所持品を確認する。
……ヘッドセットは生きてる。
ドッグタグもある。
…リングと、チップはある。
ライオットガンもちゃんと付いてる。
太腿にあるハンドガン…パニッシャーもしっかり着いていた。
だが、トムボーイが無い。
「チッ……色々探さなきゃな」
「あ、あの……お手伝いしましょうか?」
「いや、いい。慣れてる」
バランスを取って立ち上がる。
さて、どうやって探そうかな。
「……やっぱり、片腕の人に無理させるなんて出来ません。私を、貴方の力にさせてくれませんか?」
IWS2000と名乗った人形がなおも食い下がる。
「余計なお世話だ。片腕だからって同情も憐れみも要らねぇ。失せろ」
「でも、」
「てめぇ」
いい加減に頭にきた。
左腕でパニッシャーを抜いて人形に向けた。
「同情されんのも憐れまれんのも大嫌いだね!わかったらさっさと……」
「IWS!」
「チッ、新手かよ……」
切羽詰まった様な声が新しく聞こえる。
そちらに視線をやれば、銀髪を一房に纏めまるで兎のようにリボンを結んだ女。
手にはハンドガン……あれは、パニッシャー?を持っていた。
その銃口は、こちらを捉えていた。
「Five-seveNさん!?」
「そこの片腕のアンタ……銃を下ろして」
「……ツイてねぇな、ホントに」
パニッシャーを下ろす。
俺の射撃の腕前は半人前以下……この距離なら向こうは当てられる。
ここは、従うしか……。
「あ、それ……」
IWSが何かを見つけた様に指さした。
「え?あー、腕よ。ちょっとした資材になりそうじゃない?」
……ウサ耳女が、俺の義手を持っていたのだ。
「そっ、それ!この人の腕です!」
「え、ちょっとシュタイアー?貴女銃向けられてたのよ?何でソイツ助けるのよ」
「この人は…上流から流されてきてさっき目が覚めたんです!それで混乱してて……」
「お、おい……」
IWSがこちらに指を立ててウィンクしてきた。
……世話になるのは癪だが、腕が戻ってくるならこの際プライドは抜きだ。
「……申し訳ない。出来ればそれを渡してもらえないだろうか」
「なんか、調子狂うわね……ま、良いわ」
ウサ耳女が俺に右腕を手渡してきた。
「……パーツ、抜いてないだろうな」
「しないわよ!!」
右肩の端子に接続する。
いくら防水とはいえ汚水に晒されている…何処かでメンテナンスしないとガタが出るな。
「あら、よく見たらなかなかイケメン……アタシはFive-seveNって言うの。貴方同じ銃を持ってたわよね?そのよしみで、仲良くしましょ?」
ウサ耳……Five-seveNが猫なで声でそんな事言ってきた。
その言葉を無視して、俺は切り出す。
「なあ、剣を見なかったか?」
トムボーイ…あれが無いと俺の戦闘力はガタ落ちしてしまう。
「剣、ですか?それはどんな……」
「片刃の……その銃くらいデカイやつ」
IWSが手に取ったライフルを指差して言う。
「ちょっと待ってね、仲間に聞いてみるわ」
Five-seveNがそう言って耳に手を当てる。
……まだ仲間居るのかよ。
「FAL?アタシ。剣を見なかった?……冗談なら最低ねそれ。え?あった?」
思わず身を乗り出してFive-seveNの近くで聞き耳を立てる。
IWSがあわあわしながらそれを見ている。
「はーい、それじゃあね……うわ近っ!びっくりした!」
「あったんだな?」
「え、ええ……」
「案内してくれ」
「な、なんで仕切ってるのよ、もう……良いけど」
「あ、あの!」
IWSが声を上げて静止した。
「お名前……伺っても?」
「名前……」
「ああ、確かに。いつまでも『貴方』じゃ呼びにくいもんね」
名乗る、のか……なんと言うか、反応が見て取れるから気が進まない。
しかし、物を見つけてもらっている手前、それもそれで筋が通らない。
結局、名乗る事にした。
「パトリック。パトリック・エールシュタイアーだ」
思ったとおり、二人はお互いに顔を見合わせる。
……そこのライフル人形と同じ名前だ、と言われるに決まってる。
「……アタシ達の指揮官と、同じファミリーネームね」
「なんだって?」
ちょっと待て、思ってたのと違う答えなんだけど。
世話焼きな人形を出して行きたい。
ただし、AR小隊、404小隊、スプリングフィールドは除外とする。
借金前線に出てきた子達は基本的にこちらに出さない方針です。
と、言う訳でグリフィン側と合流。
オリキャラの指揮官が一人出てきます。
それと同時にタグを追加予定。