水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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イベントが2つ重なるってどんな気分だろうか。


第64話『悩む男』

午前中の鍛錬が終わった。

クタクタだけど、汗だくで気持ち悪いのでシャワーを浴びる。

 

「疲れた……」

「お疲れ様です、兄さん」

 

最近ではもう慣れたけど、既に誰かが部屋にいるのってやっぱ慣れない。

 

「ベネリ……何か久しぶりだな」

「最近まで作戦に出ていましたので」

「そっか。元気?」

「ええ。特に変わりません」

 

差し出されたタオルを受け取る。

……なんか、これも慣れた。

 

「そうか」

「所で、兄さん。今日なんですけど」

「今日?」

「はい。誕生日だと聞きました」

「……サイガか?」

「はい。一人だけ知っているのもアンフェアだと……まぁ、ワタシは知ってましたが」

 

……そう言えば、ベネリは元々俺が使っていた代物だ。

覚えていても確かにおかしくは無い。

 

「それで?」

「それで、とは」

 

ベネリが首をかしげる。

 

「あー、いや。何でも」

「……ワタシは、素直にお祝いしたいですよ」

「………………」

「でも、兄さんはあまりこの日が好きじゃなかったみたいですね」

「その辺も、覚えてるのかよ」

「AK-12さんにからかわれてたのは知ってます」

「あー……」

 

誕生日プレゼントと称してデスソース入りチョコレート食わされた時は死ぬかと思った。

 

「……はい」

 

渡されたのは、油の入った小瓶。

 

「これは?」

「刀剣手入れ用の油です。ワタシからのプレゼントはこれという事で」

「え、あ、まぁ、その……」

「ちゃんと、手入れしてあげて下さいね」

「……分かってる。ベネリ……あ、ありがとう」

「どういたしまして。まぁ、ちゃんと整備してるって言うのはワタシが1番よく知っているので」

「うぐ……」

 

何だかんだちゃんと手入れしていた。

命を預ける武器を蔑ろになんて出来ない。

 

「その、たまには……また手入れして欲しいかなって」

「……お前はもう手足があるだろ」

「笑えませんよ」

 

真顔で怒られた。

うーんちょっと反芻したら確かにブラックジョーク。

 

「そろそろ行きます。兄さん、今日は多分いろんな子が来ますけど……ちゃんとお礼、言ってあげて下さいよ」

「来ないさ」

「わかってて言ってるなら最低です」

「………………」

「兄さんは、まだ2人のこと」

「黙れ」

 

思わず、強く言ってしまった。

慌てて、言葉を捻り出した。

 

「すまん」

「……すみません。失言でした」

「いや……もう、終わった事なんだ。なのに……」

「ゆっくり、向き合ってください。まだ時間はあります」

 

ベネリが、悲しそうに笑う。

俺は……。

 

「なぁ、俺は……戻るべきかな」

「それは兄さんが決める事です。ワタシは、もうグリフィンの人形ですから」

 

ドアが、静かに閉じた。

 

 

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