午前中の鍛錬が終わった。
クタクタだけど、汗だくで気持ち悪いのでシャワーを浴びる。
「疲れた……」
「お疲れ様です、兄さん」
最近ではもう慣れたけど、既に誰かが部屋にいるのってやっぱ慣れない。
「ベネリ……何か久しぶりだな」
「最近まで作戦に出ていましたので」
「そっか。元気?」
「ええ。特に変わりません」
差し出されたタオルを受け取る。
……なんか、これも慣れた。
「そうか」
「所で、兄さん。今日なんですけど」
「今日?」
「はい。誕生日だと聞きました」
「……サイガか?」
「はい。一人だけ知っているのもアンフェアだと……まぁ、ワタシは知ってましたが」
……そう言えば、ベネリは元々俺が使っていた代物だ。
覚えていても確かにおかしくは無い。
「それで?」
「それで、とは」
ベネリが首をかしげる。
「あー、いや。何でも」
「……ワタシは、素直にお祝いしたいですよ」
「………………」
「でも、兄さんはあまりこの日が好きじゃなかったみたいですね」
「その辺も、覚えてるのかよ」
「AK-12さんにからかわれてたのは知ってます」
「あー……」
誕生日プレゼントと称してデスソース入りチョコレート食わされた時は死ぬかと思った。
「……はい」
渡されたのは、油の入った小瓶。
「これは?」
「刀剣手入れ用の油です。ワタシからのプレゼントはこれという事で」
「え、あ、まぁ、その……」
「ちゃんと、手入れしてあげて下さいね」
「……分かってる。ベネリ……あ、ありがとう」
「どういたしまして。まぁ、ちゃんと整備してるって言うのはワタシが1番よく知っているので」
「うぐ……」
何だかんだちゃんと手入れしていた。
命を預ける武器を蔑ろになんて出来ない。
「その、たまには……また手入れして欲しいかなって」
「……お前はもう手足があるだろ」
「笑えませんよ」
真顔で怒られた。
うーんちょっと反芻したら確かにブラックジョーク。
「そろそろ行きます。兄さん、今日は多分いろんな子が来ますけど……ちゃんとお礼、言ってあげて下さいよ」
「来ないさ」
「わかってて言ってるなら最低です」
「………………」
「兄さんは、まだ2人のこと」
「黙れ」
思わず、強く言ってしまった。
慌てて、言葉を捻り出した。
「すまん」
「……すみません。失言でした」
「いや……もう、終わった事なんだ。なのに……」
「ゆっくり、向き合ってください。まだ時間はあります」
ベネリが、悲しそうに笑う。
俺は……。
「なぁ、俺は……戻るべきかな」
「それは兄さんが決める事です。ワタシは、もうグリフィンの人形ですから」
ドアが、静かに閉じた。