水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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パトリックの流派が決まる。


第66話『手にした力』

「パトリック」

「おう、どした?」

 

スコーチ達が出発する日。

見送りに来ていたら、声を掛けられた。

 

「今年でいくつだ?」

「……知らねぇ。けど大体20くらい」

「ならば良し」

「えっ、オイオイ……それ酒かよ」

 

スコーチが懐から出した妙にくびれた筒。

小さなグラスを2つ出したと思えば一つ放り投げてきた。

 

「まだ仕事あるんだけど」

「硬いことを言うな。久しぶりに、師事の真似事が出来て楽しかったぞ」

「今生の別れみたいに言うなよ。生きてりゃ会えるって言ったのアンタじゃん」

「そうだったな。では、祝杯を挙げよう」

 

……知っている酒とはまた違う匂い。

手の中にある小さな器に澄んだ液体が注がれる。

 

「貴公の勇気と、我が剣、そして我らの旅路に」

 

えっ、何それ。

知らないけど。

 

「太陽あれ!」

 

がっ、と盃を交わす。

 

「……うえっ、なんだこれ」

 

喉が焼ける……!

 

「ハッハッハッ!さらばだパトリック!また会おう!」

 

上機嫌で歩き去って行った。

……残った酒を飲む。

 

「……うげぇ」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「りっくん、仕事なんだけど……う」

 

久しぶりに仕事を与えられる。

執務室でリリスと対面した瞬間、顔をしかめられた。

 

「何これ……お酒?」

「え、あー……スコーチから、貰った」

「業務中にお酒飲んだの?」

「……向こうから振る舞われた」

「減給」

「ちょっ」

 

なんてこった。

 

わt

「私、お酒嫌いなの」

「だからってそれは横暴だろ!?」

「ふんだ。勤務時間中にお酒の飲む悪い子はお仕置きです」

「悪かったって……」

 

酔ってないし大丈夫だろ。

 

「なんて、冗談だよ。今日のお仕事。目を通しておいて」

 

ドサッ。

いや待て待てナンダこの書類の束。

 

「あのー、リリス、さん?多く無いですか」

「大丈夫だよ。りっくんなら死ぬ気で頑張れば行けるよ」

 

うわぁ怒ってる。

……リリス、怒ると永いんだよなぁ。

これ、多分やらないと口聞いてくれないな。

 

「……分かったよ」

「よろしくね」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

一時間後。

近隣の撃ち漏らしの掃討とパトロールカーが今回の主な任務だ。

一人二人の少数で片付けられるレベルの仕事である。

 

……まぁ、今日は幸いにも一人じゃないのだが。

 

「よろしく、パトリック」

 

乗ってきたバイクの後ろに座っていたのは、スパス。

俺の巻き添えの憐れな犠牲者……ではなく、相棒である。

 

「よろしく、スパス。お前となら安心だよ」

 

いろんな意味で。

 

「最近パトリックも強くなってるみたいだし、私も安心ですよ〜」

 

朗らかに笑いながらも、可動式シールドを油断無く構える。

ショットガンを得物とする戦術人形は戦闘レンジがどうしても相手に近くなる。

そのため、防御の為にシールドが装備として割り当てられている。

 

「ま、半年近く背中預けてるんだ。任せとけよ相棒」

「よろしくね〜」

 

同じポジションで戦う事が多い為、やっぱスパスは安心して話せる相手だと思う。

今日の俺は久しぶりに完全装備(フルパッケージ)だ。

今日の俺は一味違うぜ。

 

「……お、早速見つけたぞ。ブルートだ」

 

ブルートか……スパスとはちょっと相性悪いな。

 

「警戒を頼む。サクッと片付けてくるわ」

「了解、気を付けてね」

「応よ」

 

走り出す。

流石に向こうも気づいているだろう。

……3体、うち1体は手負い。

 

「おりゃああ!!」

 

義手からワイヤーが伸ばされる。

 

「「!!?」」

 

手負いの一体にグラップルワイヤーが引っかかる。

そいつを()()()()()

 

元々義手込みでの体重がそこらの人形より重い。

なので自分が起点となり引き寄せる。

 

「セイッ!!」

 

空いた手でトムボーイを抜き、縦に真っ二つ。

久しぶりに触るが以前と変わりなく動いてくれている。

 

……ブルートが一体、飛び掛かってくる。

顔に肘を食い込ませた。

そのまま、腹に掌底を入れる。

 

拝み連拳、綺麗に決まった。

 

ブルートが吹っ飛ぶ。

最後の一体に向けて刀に手を掛ける。

 

(行くぞ……!)

 

スコーチから教わった技、実践で使えるかどうか。

 

「……シィィ」

 

呼吸を整え、構える。

……ブルートが、ナイフを振りかぶる。

 

「ハァッ!!」

 

撃発。

刃が滑る。

勢い良くジェットストリームが振られる。

一閃。

そしてその勢いのまま、袈裟斬りが入った。

 

「崩し奥義、晴嵐十文字……なんてね」

 

晴嵐、というのはスコーチがつけてくれた俺の流派……戦闘スタイルの事だ。

崩して伝え、俺に最適化されたものなので既に我流の域なのだ。

 

取り合えず、第一波は乗り越えたかな。

 

「スパスの所へ戻ろう」

 

 




はい、遂にダークソウルも始めてしまった作者です。
フロムの春ですねぇ(白目)

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