鉄血の量産モデルが崩れ落ちる。
「テメエで28体目……いや多いなホント」
トムボーイを背中に戻し、周囲を警戒する。
クリア、敵影無し。
「パトリック、お疲れ様」
後ろで鉄血を仕留めていたスパスと合流する。
銃口から湯気が上がっている。
「そっちも終わったみたいだな」
「うん。……あ、もうお昼かぁ」
スパスがお腹を押さえた。
俺も空腹感を感じる。
「休憩しよう……流石に朝からずっと連戦は堪える」
「パトリックぅ〜、何か持ってない?」
「スパスこそ何か持ってないのか?」
「……カロリーバーとポテトチップス」
「いやなんでポテチ」
「美味しいよ」
「いや知ってるが」
「パトリックは?」
「……カロリーバーとポッキー」
「どうしてポッキー」
「美味いじゃん、ポッキー」
「わかるわ」
「だろ?」
戦場のど真ん中で呑気なものである。
カロリーバーを齧る。
相変わらず不味い。
「ねぇパトリック」
咀嚼しながらスパスが口を開いた。
「ん?」
「むぐむぐ……指揮官、怒らせた?」
「……どうしてそう思ったんだ?」
「んー、何となく」
「えぇ……」
「嘘よ。いくらなんでもこの量パトリックだけって無茶よ」
「せやろなぁ……」
なーんかそれだけじゃない気がするけど。
「何したの?」
「酒飲んだ」
「ああ……指揮官、お酒嫌いだから」
「何かあったのか?」
「……うーん、話して良いのかな。パトリックは指揮官の幼馴染だし大丈夫だよね」
何というか、割と深刻そうな問題だ。
「かなり、内容によるなそれ」
「……だよね。本人に聞くべきかな、これは」
「だな……帰ったら聞いてみるわ」
思えば、俺はリリスが三年間何してたのか全くと言っていいほど知らない。
孤児院でも積極的に交流していた訳でもなかったし。
「許してくれるかなぁ」
「大丈夫だと思うよ。指揮官、パトリックの事大好きだし。しっかり謝れば許してくれるよ」
「……イマイチ、好意寄せられてる意味がわからん」
「え?」
最近ちょっと思っていた事。
俺の事を好きだと言う奴が周りに増えてきて疑問に思うのだ。
俺は、そんな大層な事をした覚えなんてない。
「それ本気で言ってるの?」
スパスの声が、少しキツくなる。
「……俺の関わってきた人間なんて、哀れみ嘲笑、そんなやつばっかだった」
無意識に、義手に触れる。
物心付いた頃から手足が紛い物。
荒んでた孤児院の子どもたちからは格好の憂さ晴らしに利用される事もあった。
「そんな俺に好意的な奴なんて……数える程しかいなかった」
「でも、居たんでしょ?」
「今は、居ない」
「それって……あのお墓の?」
S-13基地の近くにひっそりと建てられた墓。
「ああ……大事な相棒と、俺が生まれて初めて好きになった人」
「そう、だったんだ……」
「まぁ、その二人が付き合ってたんだけど」
「失恋かぁ」
「……そうだなぁ」
改めて、事実が胸に刺さる。
半年が経過していても……未だに折り合いが付かない。
「辛かったら辛いって言っていいんだよ?」
「ンな訳……」
「よしよし」
「ちょっ、やめろって」
スパスが俺の頭を撫でる。
キャラじゃないってそう言うの。
「本当に、大丈夫?」
「だから大丈………………ごめん、やっぱ……辛れぇわ」
どうしようもなく泣きそうだ。
「言えたじゃん。辛いときは辛いって言っていいんだよ?パトリックは、一人じゃないんだから」
「………………あ、ありがとう」
「どういたしまして。ほら、涙拭いて、ご飯食べて任務に戻りましょう」
「な、泣いてねーし!!」
慌てて立ち上がり、カロリーバーを口に押し込んだ。
「ふふ、そうだね」
「スパス、悪いけどもうちょっと付き合えよ!」
「うん、頑張ろう。帰って、ちゃんと指揮官と話そうね」
「……ああ!」
心は、少しだけ軽くなった気がした。