「し、失礼しまー……す……」
おっかなびっくりで執務室に入ると、FALがニヤニヤしていた。
「まるで朝帰りしたのを咎められるかどうか怯えてるみたいね」
「う、うるせぇ」
「おかえり、りっくん」
窓の方を向いていたリリスが、こちらに視線を戻す。
……無表情。
こわい、凄い怖い。
「……近辺の鉄血量産型は掃討し安全化を計りました。後日、調査及び周辺情報の更新を」
「わかりました。SPAS-12と共に補給と休息を済ませて来てください。お疲れ様でした」
ひどく事務的なやり取りが交わされ、これで終わりだとばかりにリリスが視線を切った。
「あ、あの、リリス?」
「………………」
「えっと、その、何だ。あー……」
「……ふふっ。指揮官?意地悪もほどほどにしておかないと、嫌われるわよ?」
耐えかねたのか、FALが吹き出して助け舟を出してくれた。
「そうね。ごめんね、りっくん。ちょっと意地悪しちゃった」
「あ、ああ……」
「私ね、お酒嫌いなんだ。飲むのも飲ませてくるのも。それでちょっとね」
「そ、そうだったのか……すまん、向こうの好意を無下にしたくないし」
「それにりっくん未成年でしょ」
「いや関係ないだろ。つか20……の筈だ」
孤児だから正確な年齢わかんねーし。
「ぷっ……57のブラ見ただけで鼻血吹いて倒れたくせに?」
「んなっ……!?なんで知ってんだ!」
「ふー………………ん。見たんだ」
「違っ、あれは事故で」
「えっち」
「ぐぁはっ!?!?!!」
胸に何か突き刺さった。
「ふんだ。そんなりっくん知りません」
「ほんと、マジ許してください……ごめんなさい……」
もう平謝りするしかなかった。
FALが腹抱えて笑っている。
「何でもするから」
「………………!ふー……ん」
「あっ。いや、その、何でもは言い過ぎた……」
「男に二言は?」
「ありません………………」
俺は、臆病者だ……!
「今晩部屋にお邪魔するので待っててね」
「ウェッ!?!!!?」
「返事は?」
「はい……………………………」
そして俺は弱かった。
先生……俺強くなりたい……。
『時には諦めも肝心じゃぞ、パトリック』
誰だ今の。
「私よ」
「お前だったのかよ」
昔ナンパした女に捕まってそのままズルズルとゴールインしたの孤児院の爺さんの話かと思ったわ。
あの人その話をする度に背後から婆さん出てくるからめちゃめちゃ怖いんだよな……。
「そういう事だから。休んで来て」
「了解……正直、クタクタだ」
「お疲れ様」
まぁ、何とかなった……のかな。
この基地でもしかして立場が一番弱いのかもしれない。