水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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メンタルの不調でちょっとごたごたしてましたが、何とか更新する気力が戻ってきたので再開します。

ホント申し訳ありません。


第72話『むかし』

「パトリック、起きてる?」

 

声を掛けられて目が覚める。

……ザリ次郎が水槽をひっかく音が聞こえない。

 

「……パトリック?」

 

俺の顔を覗き込むブロンド髪の美女。

こいつは……。

 

「AN-94……ごほっ、勝手に入るなって、言った、げほっ……」

 

俺の口が勝手にしゃべった。

 

「じっとしてて……もう。少し頑丈だけど、貴方は人間なんだから……無茶しないの」

「うるせぇ」

 

悪態を吐かれながらも、AN-94は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。

……ドアがノックされた。

 

「邪魔するぜー。よう相棒生きてるか?」

「おはようリック。ってもう夕方か」

 

馴れ馴れしい青い髪の青年と、金髪の活発そうな女性。

息が詰まる。

胸が痛い。

 

思い出したくない。

 

「あーあー、喋るなってリック。全く、馬鹿は風邪ひかないとは思ってたんだがな」

「うわ、凄い熱……大丈夫?」

 

ひんやりとした手が額にあてられる。

 

「勝手、に」

「口は、元気だな……」

 

青髪の男が苦笑する。

 

「ありがとアン。見てくれてたんでしょ」

「……別に」

 

金髪の女性に声を掛けられたAN-94は、ぶっきらぼうにそっぽを向いた。

 

そして、いま俺が寝ている場所が……いつもの自室でないことを思い出した。

これは……夢だ。

 

この二人が生きているという事は。

夢、なんだ。

だって、二人とも、もう死んでいるから。

 

「相棒、あんま無茶すんなよ。お前の葬儀なんてやりたくないぞ」

「うっせ……」

「マイク、そういわないの。リック達が頑張ってくれてるから、私達の被害は少ないのよ」

「分かってる、アリサ。でもそれとこれは別だろ?」

「そうだけど、さ。リック!早く元気になりなよ!また今度皆でパーッとやりましょ。アンもどう?」

「私は、良い」

「そっか、残念。またね」

 

嵐のように二人は去った。

AN-94と俺だけが、部屋に残された。

 

「………………」

「………………」

 

静寂。

お互い、あまり口数は多くない。

 

「AK-12に、暫く安静にさせるって、言ってくる」

「おう…」

「……無理、しないで」

「無理じゃねぇ。俺に出来る事だ」

「それでも、私は……」

「っるせーぞ……」

 

こうしてみると、AN-94は俺の事を本当に心配してくれていた。

こんなやつに、俺はずっと悪態ついてたんだ……。

 

「………………」

 

謝りたい。

 

素直に、そう思ってしまった。

帰るべきだろうか……正規軍に。

半年以上もMIAだったのに。

 

せめて、連絡が取れればいいんだが……。

リリスに頼んで、通信設備でも借りられないだろうか……。

 

 

 




このSSのメインヒロインは誰だろうか。

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