水没から始まる前線生活   作:塊ロック

79 / 113
第73話『ゆめからさめて』

夜中。

目を開けても閉じても暗い。

 

身体を動かそうにも手足が付いてないので動けない。

 

「………………」

 

懐かしい夢を見た。

まだ3人で笑い合ってた頃。

俺がまだ正規軍に居た時の事。

 

「アン、か」

 

AN-94の愛称。

あんまり呼ばなかったなぁそれ。

何か気に入ってなさそうだったし。

 

そう言えばいつの間にか俺もリックって呼ばれてたな。

悪い気はしない。

……あいつはどうだったんだろうか。

 

「こんばんは……あれ、起きられていましたか」

 

そっとドアが開けられた。

廊下の照明も落ちていてよく見えないが……このシルエットはおそらく、

 

「ステアか」

「少し元気そうですね」

「昔から、頑丈なのが取り柄だったからな」

「そうですか」

 

水差しを持ってきてくれたようだ。

……手が無いから飲めないんだけど。

 

そう言えば喉がカラカラだ。

 

「ステア、手をくれ」

「わたくしが飲ませて差し上げても良いのですよ?」

「……ちょっと夜風に当たりたいから足もくれ」

「もう、パトリックさんはまだ熱下がってないんですよ?」

「……わかるのかよ」

 

こいつの目、サーマルスコープでも載せてるのかよ。

 

「見えますからね」

「ほんとに積んでるのかよ」

「……はい、どうぞ」

 

思いのほかあっさり渡してくれた。

 

「……さんきゅ」

「……え?」

「……えってなんだえって」

「いえ……お礼を言われるとは思っていなくて」

「お前の中で俺はどう思われてるかよくわかったわ」

 

自業自得?

うるせえ。

 

接続され、疑似痛覚に痛みが走る。

もう慣れたので顔を顰めるだけで済む。

 

「……痛かったですか?」

「気にしなくていい。いつもの事だ」

「人間の体ですのに、私たちと同じように手足を外したりして……」

「……俺の大事な手足だ」

 

物心ついた頃からこの手足だった。

今更手足について何の感慨もわかない。

 

「ところで……」

 

手足が戻り、とりあえず水を飲む。

 

「アンってどなたですか?」

「ぶっ」

 

思わず吹き出す。

こいついつから聞いてたんだよ。

 

「げほ、げxほっ!!ど、同僚だ……ただの」

「ただの?」

「……ああ、ただの同僚だ」

 

……本当に?

AN-94は俺にとってただの同僚だったのか?

 

「もしかして、初恋の相手って……ッ!?」

 

ステアが息を呑む。

……無意識に、睨んでいたのかもしれない。

 

「……すみません」

「……散歩してくる」

 

居た堪れなくなって外に出ようとする。

 

「あ、あ、パトリックさん!」

「なんだよ」

 

引き止めないで欲しかった……。

 

「その……何か着た方が」

「え……あ」

 

よく見ると俺パンツ以外何も身に着けていなかった。

 

「あー……うん。そうする」

 

締まらねぇ……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。