水没から始まる前線生活   作:塊ロック

80 / 102
第74話『人形闘技場』

 

「指揮官がまだ風邪でダウンしているので、私から今回の依頼について説明させて貰います」

 

応接室。

俺はソファにジェリコと向かい合って座っていた。

 

「お、おう。よろしく」

「……指揮官は未だ熱は下がっていないというのに、どうして貴方は一日で快復してるんですかね」

「知らんわそんなの」

「はぁ……今回の依頼は後方……丁度ここと本部の間にあるS-6地区です」

「内地?何でまた」

「暇を持て余した人間というのも、つまらないことをすると言う事です」

 

手渡された資料に目を通す。

違法賭博地下闘技場。

コミックの中の話かよ、とは思った。

 

「で、これどうすりゃ良いんだ?ぶっ壊せばいいのか?」

 

正直適当に入って片っ端からぶっ壊すなら何も考えなくて良いから楽だ。

 

「……いえ。施設の損害は可能な限り……と、言うよりゼロにしてください」

「は……?」

 

何で?

違法だのなんだのと書いてあるじゃん。

 

「……正直、私としても気に入りません。人形を戦わせての違法賭博なんて」

「……分かった。グリフィンの収入に噛んでるな?」

 

そこの地区の指揮官が得た利益をグリフィンに流している。

金を握らされて黙っているな?

 

「……こういう施設は、ベルロック指揮官が片っ端から潰していった筈だったのですが」

「で?俺に何させたい訳」

 

話をぼかし過ぎだ。

いい加減イライラしてきた。

 

「ここで、S-14地区の生き残りの人形が見つかりました」

「何……?」

 

88式たちの仲間がそこに?

 

「潜入して彼女を救出、身柄を確保してきてください」

「……俺に向いてると思うか?それ」

 

潜入。

一番俺に向いていない種類の仕事だ。

騒音しか出ない武器を持っているわけだし。

 

「ですが、自由に動かせる人員は貴方しか居ないのも事実です」

「……まぁ、確かに……ってならねぇよ!?適材適所ってあるだろ!」

「困りましたね……」

「せめて俺にやる気を出させるような事言ってくれ」

 

流石にやれない事をやれと言われても。

 

「……一応、これが対象の写真です」

「一応見るわ」

 

まぁ人形の写真見てもな……。

俺は、息を呑んだ。

 

美しい。

本当に美しい人形だった。

 

「彼女はOTs-14。今はその場所にいます」

「へ、へぇ……」

「………………随分気に入ったみたいですね」

「い、いや!?違うぞ!?」

「全く……一日時間をあげます。明日までに回答をください」

「……ジェリコ。日付変わるまであと4時間なんだけど」

「それでは」

「ちょいちょーい!!」

 

聞いちゃくれねぇ。

さて、どうすっかなこれ……。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告