水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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第75話『背中に刺さる熱視線』

……綺麗な区画だ。

表立ってスラム化している訳でもなく、整備された道路に町並み。

少なくとも、何も後ろ暗さを感じない。

 

「ここ、か」

 

S-6地区。

ジェリコから説明を受けたグリフィンの管理区。

ここに、グローザと呼ばれる人形が囚われている。

 

「さて……」

 

荷物を担ぎ直す。

今回持ってきた武器は腰にあるFive-seveNだけ。

トムボーイもジェットストリームもピースキーパーもかなり目立つのだ。

 

「どこから探れば良いかな、ホント」

 

まずは宿から探すべきだろう。

ふと、振り返る。

 

「……?」

 

誰かに、見られている気がする。

俺の後ろには、街の関所で欠伸しながら警備しているグリフィンの人形しか居なかった。

彼女は俺の視線に気付くと咳払いし、手でさっさと行くように促した。

俺は苦笑して手を振った。

 

(見られてる?まさか……)

 

監視、いや、尾行か?

少なくともたった今たまたま見つけたから見てる、ってワケじゃ無さそうだ。

 

俺は適当な喫茶店に入る。

栗色の長い髪をした女性に注文を告げて席に着いた。

 

「お待たせ致しました」

 

程なくして、机にコーヒーとサンドイッチが置かれる。

 

「どうも」

「お客さん、この街の人じゃないですよね?」

「……そう見える?」

「ええ。貴方の髪の色はこの辺りではそうそう見ませんので」

 

前髪をいじる。

赤い髪の人間はこの辺にはあまり居ないらしい。

目立つ行動は取りづらくなるな。

 

「それに、ウチでコーヒー頼む人なんて全然いないですからね」

「何でまた……ウッ、げほっごほっ!!」

「美味しくないですから」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

暫く胸焼けを起こして、とりあえず店を出た。

開幕で酷い目に遭った。

何となくろくな事が起こりそうにない。

 

……立ち止まる。

視線を感じるが、相手が何処にいるか分からない。

 

「………………」

 

じっとしていてもどうにもならない。

兎に角腰を落ち着けられる場所に行かないと。

 

暫く歩き、噴水のある公園に辿り着いた。

ベンチに座り、背を預ける。

 

一時間ほど歩き回ってわかった事。

 

この街は、戦術人形の巡回が兎に角多い。

 

ここに着く前に5、6回ほど呼び止められた。

リリスのとこなんて一日に3回、一部隊が巡回する程度だったのに。

 

何となく、過剰に恐れている。

そう感じる。

これだけ巡回員が多いから、視線を感じるのだろうか。

 

「………………」

 

ただ、何というか……穏やかだ。

公園で子供が遊んでいる。

そんな光景が、今のご時世見られるとは。

 

「……平和だなぁ」

 

そうだ、宿を取らないと……。

……立ち上がろうとした瞬間、背後から何かが、

 

「グッ、ウッ!?」

 

ロープの様な物が首に巻き付いた。

力はそれなりに強い。

だが、力比べで俺に勝とう何て……!

 

「あ、が、え、な?」

 

腕が、動かない。

俺の意思で、全く動かない。

 

何故、そう思う前に俺の意識は落ちた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

……目が覚めた時、俺は囚えられた事に気付いた。

手が動かない。

縛られている。

背中にはスプリングの感触。

ベッドの上か。

そして、何かに身体が締め付けられている感覚。

なんだ、巻き付いてる。

 

 

そして、俺の視界は布か何かで塞がれている。

 

 

完全に囚われの身だ。

救出しに来たのに、これじゃミイラ取りがミイラだ。

もっともこのご時世、ミイラより先にE.L.I.D化の方が可能性はあるけど。

 

……いい加減、腹とか胸とか苦しくなってきた。

何とか動かないかと思い、腕をガチャガチャと動かした。

鎖か。

フルパワー出せば引き千切れるな。

幸い手足は繋がったままだし、何とか……。

 

もぞり。

俺に巻き付いていた何かが身動ぎした。

 

「………………あ、気がついた」

 

とても、聞き覚えのある声。

 

「え、お前、」

「うん、久しぶり」

 

しゅるり、と目隠しが外された。

 

そこに飛び込んできたのは……エメラルド色の瞳。

 

「AN、94……」

「会いたかったよ……パトリック」

 

アン、AN-94が……俺の体にぴったりとくっついている。

もしかして、俺の体絞めてたのってこいつ……?

 

「いや、待て待て、何でここに?いや、その前にまさか俺を拉致したのって」

「私だよ」

「そっかー……そっかじゃねぇよ何してくれんだ!!」

「?」

 

かわいらしく小首を傾げた。

あれ、こいつこんな表情も出来たのか……。

 

「俺は仕事で来てるんだ」

「仕事なんて関係ないよ」

「関係ないって」

「だって、私たちやっと会えたんだよ」

「ま、まぁそうだな……」

 

様子がおかしい。

いや、おかしいってレベルじゃない。

瞳のライトが鈍い。

整備不良か?

生真面目なこいつにそんな事……。

 

「MIAって聞いて、私ずっと探してた」

「……それは、すまん」

「パトリックはいつも自分勝手で、手のかかるバディ」

「………………」

「でも、大事な、大事な同じ部隊の仲間なの」

「……AN-94」

「もう、何処にも行かせない」

 

ぎゅ、と俺の体に抱き着いて胸元に顔をうずめる。

 

「あの、AN-94」

「大丈夫……私が、絶対守るから」

「AN-94?」

「………………」

 

………………あ、スリープしてる。

緊張の糸が切れでもしたのか。

俺が見つかるまで、ずっと無理していたのか。

 

「……え、俺これどうすりゃいいの?」

 

彼女が起きるまで放置されるのだった。

 

 

 

 

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