真実を得るか、このままリリスの元で過ごすか。
………………S-13地区が見えてきた。
長旅と尋問のダメージで重くなった瞼をこすり、俺は足を進める。
結局、俺は二人のマイクロチップを引き渡す事に決めた。
真実を知る為に。
その為に、リリスの元から去ることを。
「あ、リック!おかえり!早かったわね!」
「パトリック?おかえりなさい。怪我してない?」
声を掛けられたと思ったら、FALと57だ。
なんだか久しぶりに会った気がする。
「おう」
「おうじゃないわよ!連絡くらいしなさい!」
「そうよ!心配したんだから!」
「悪い悪い。ちょっとそれどころじゃなくてな。リリスは?」
「指揮官は今日出張よ。戻るのは明日」
「そうか……」
リリスは不在。
チャンスは今日か。
「あれ~もしかして残念がってる?」
57がにやにやしながらそんな事を言う。
「ばっ……ちげーよ!」
「えぇ~?ホントに?」
「57、行くわよ。歩哨の交代時間よ」
「はいはい。FALは良いの?リックと喋らなくて」
「別に……帰ってきたんだから時間くらいあるでしょ」
FALが俺に指差して一言。
「この任務終わったら、付き合いなさいよ」
それに、俺は何も言えなかった。
――――――――――
……雨が降ってきた。
人目につかないから丁度いい。
変装用に雨合羽を羽織り、エンピ片手に雨の中を進む。
雨音だけが俺の耳を撃つ。
……しばらく歩くと、二人を埋めた丘の上に着いた。
花が添えられていたが、流石にもう雨でぐちゃぐちゃになっていた。
「……ごめん、二人とも。やっぱ俺、じっと出来ねぇわ」
これからやるのは、俺の自己満足。
死者に対して生者が出来る事なんて、限られている。
手にしていたエンピを地面に突き刺した。
雨でぬかるんでいる為、手応えは軽い。
そもそも義手のパワーさえあれば岩すら砕けるのだからあまり関係は無いのだが。
無心で掘る。
箱に詰めて埋めたので、発見までそう時間は掛からなかった。
「……見つけた」
泥で汚れた小箱。
この中に、二人の指輪とマイクロチップが入れられている。
「……………何を、しているの?」
「えっ……」
雨音にかき消されそうな、か細い声が聞こえる。
思わず顔を上げた。
誰かが、傘をささずに呆然と立っていた。
この、小柄なシルエット。
「リリ、ス………?」
間違いなく、リリス・エールシュタイアーその人だ。
しかし、明日まで帰ってこなかったんじゃ……………?
「明日まで帰ってこないんじゃなかったのか?」
俺は努めて、平静を保って声を掛けた。
「……少し、早く片付いちゃって」
「そ、そうなのか」
「それで、りっくんこそ何してるの?こんな雨の中」
「……ちょっと、場所を変えようかなって」
「わざわざお墓も建てたのに?相談してくれても良かったのに」
「すまんすまん……じゃあどこに……」
「ねぇ、グローザはどうしたの?」
「それは………………」
口を噤んでしまった。
あれはフェイクだった。
素直に話すべきか?
悩んでしまった俺を他所に、リリスはつづけた。
「大丈夫だよ。ちゃんと分かってるから」
「え……」
「この目標は偽物だった」
「…………………」
確かに、その通りなんだけど。
何故知っている?
「ねぇ」
リリスは続ける。
その声に感情は籠っていない。
「裏切るの?」
「……は?」
「りっくんは、私を裏切るの?私と一緒に居てくれるんじゃないの?」
「お、おいおい待て。落ち着け」
「どうして、何がダメだったの?」
「リリス、落ち着けって。裏切るとかそう言うのじゃない」
リリスの肩を持って、俺に目を合わせる。
「話を……」
「……そのチップ、あの人形に渡す気?」
「あの、人形って」
「AK-12」
「っ」
何で、何でそこまで知っている。
「うふふ……私はね、りっくんの事は何でも知ってるよ?」
「なんでもって」
「ちゃんと現地まで行って確認してくれたんだよね?そしたら変な人形に捕まったんだよね?」
「待て、何でそんなことまで……!」
「それで、どうするの?」
じっと、リリスは俺を見る。
俺は……。
「俺は、真実が知りたい」
「そう……」
「だから、悪い……俺、」
「現時点を持って制限を解除、総員対象を無力化せよ」
「え、がぎゃ、っ!?」
右足の感覚が消える。
続いて聞こえるのは、何かが砕ける音。
そして、俺は背中から地面に倒れた。
後ろから、何かに撃たれた……?
上半身を起こす。
俺の右足は、砕け散っていた。
「え、な、何で、え……ぎい、ぃっ?!?!?」
上体を起こす為に体を支えていた左腕が吹っ飛ぶ。
狙撃されている……?!
……この悪天候の中で?
どうやって……。
上空に、何か小さな物体が見えた。
「楓、月……?」
じゃあ、これはTAC-50の仕業……?
「パトリック・エールシュタイアー。貴方を鉄血の内通者として拘束します」
「なん、で……」
「以前、鉄血のハイエンドモデル『アルケミスト』と密会していた記録もあります」
「……っ!」
「独房、連れて行って」
「はい」
目の前に来たのは、ジェリコだ。
「ジェリコ……」
「貴方が、悪いんですからね」
暗転。
俺の意識は、そこで途切れた。
真実へ、迎えましたかね……(震え