水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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パトリックは選択する。
真実を得るか、このままリリスの元で過ごすか。


第77話『真実へ』

………………S-13地区が見えてきた。

 

長旅と尋問のダメージで重くなった瞼をこすり、俺は足を進める。

 

結局、俺は二人のマイクロチップを引き渡す事に決めた。

真実を知る為に。

その為に、リリスの元から去ることを。

 

「あ、リック!おかえり!早かったわね!」

「パトリック?おかえりなさい。怪我してない?」

 

声を掛けられたと思ったら、FALと57だ。

なんだか久しぶりに会った気がする。

 

「おう」

「おうじゃないわよ!連絡くらいしなさい!」

「そうよ!心配したんだから!」

「悪い悪い。ちょっとそれどころじゃなくてな。リリスは?」

「指揮官は今日出張よ。戻るのは明日」

「そうか……」

 

リリスは不在。

チャンスは今日か。

 

「あれ~もしかして残念がってる?」

 

57がにやにやしながらそんな事を言う。

 

「ばっ……ちげーよ!」

「えぇ~?ホントに?」

「57、行くわよ。歩哨の交代時間よ」

「はいはい。FALは良いの?リックと喋らなくて」

「別に……帰ってきたんだから時間くらいあるでしょ」

 

FALが俺に指差して一言。

 

「この任務終わったら、付き合いなさいよ」

 

それに、俺は何も言えなかった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

……雨が降ってきた。

人目につかないから丁度いい。

 

変装用に雨合羽を羽織り、エンピ片手に雨の中を進む。

 

雨音だけが俺の耳を撃つ。

 

……しばらく歩くと、二人を埋めた丘の上に着いた。

花が添えられていたが、流石にもう雨でぐちゃぐちゃになっていた。

 

「……ごめん、二人とも。やっぱ俺、じっと出来ねぇわ」

 

これからやるのは、俺の自己満足。

死者に対して生者が出来る事なんて、限られている。

 

手にしていたエンピを地面に突き刺した。

雨でぬかるんでいる為、手応えは軽い。

そもそも義手のパワーさえあれば岩すら砕けるのだからあまり関係は無いのだが。

 

無心で掘る。

箱に詰めて埋めたので、発見までそう時間は掛からなかった。

 

「……見つけた」

 

泥で汚れた小箱。

この中に、二人の指輪とマイクロチップが入れられている。

 

「……………何を、しているの?」

「えっ……」

 

雨音にかき消されそうな、か細い声が聞こえる。

思わず顔を上げた。

 

誰かが、傘をささずに呆然と立っていた。

この、小柄なシルエット。

 

「リリ、ス………?」

 

間違いなく、リリス・エールシュタイアーその人だ。

しかし、明日まで帰ってこなかったんじゃ……………?

 

「明日まで帰ってこないんじゃなかったのか?」

 

俺は努めて、平静を保って声を掛けた。

 

「……少し、早く片付いちゃって」

「そ、そうなのか」

「それで、りっくんこそ何してるの?こんな雨の中」

「……ちょっと、場所を変えようかなって」

「わざわざお墓も建てたのに?相談してくれても良かったのに」

「すまんすまん……じゃあどこに……」

「ねぇ、グローザはどうしたの?」

「それは………………」

 

口を噤んでしまった。

あれはフェイクだった。

素直に話すべきか?

 

悩んでしまった俺を他所に、リリスはつづけた。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと分かってるから」

「え……」

「この目標は偽物だった」

「…………………」

 

確かに、その通りなんだけど。

何故知っている?

 

「ねぇ」

 

リリスは続ける。

その声に感情は籠っていない。

 

「裏切るの?」

「……は?」

「りっくんは、私を裏切るの?私と一緒に居てくれるんじゃないの?」

「お、おいおい待て。落ち着け」

「どうして、何がダメだったの?」

「リリス、落ち着けって。裏切るとかそう言うのじゃない」

 

リリスの肩を持って、俺に目を合わせる。

 

「話を……」

「……そのチップ、あの人形に渡す気?」

「あの、人形って」

「AK-12」

「っ」

 

何で、何でそこまで知っている。

 

「うふふ……私はね、りっくんの事は何でも知ってるよ?」

「なんでもって」

「ちゃんと現地まで行って確認してくれたんだよね?そしたら変な人形に捕まったんだよね?」

「待て、何でそんなことまで……!」

「それで、どうするの?」

 

じっと、リリスは俺を見る。

俺は……。

 

「俺は、真実が知りたい」

「そう……」

「だから、悪い……俺、」

「現時点を持って制限を解除、総員対象を無力化せよ」

「え、がぎゃ、っ!?」

 

右足の感覚が消える。

続いて聞こえるのは、何かが砕ける音。

そして、俺は背中から地面に倒れた。

 

後ろから、何かに撃たれた……?

上半身を起こす。

俺の右足は、砕け散っていた。

 

「え、な、何で、え……ぎい、ぃっ?!?!?」

 

上体を起こす為に体を支えていた左腕が吹っ飛ぶ。

狙撃されている……?!

 

……この悪天候の中で?

どうやって……。

 

上空に、何か小さな物体が見えた。

 

「楓、月……?」

 

じゃあ、これはTAC-50の仕業……?

 

「パトリック・エールシュタイアー。貴方を鉄血の内通者として拘束します」

「なん、で……」

「以前、鉄血のハイエンドモデル『アルケミスト』と密会していた記録もあります」

「……っ!」

「独房、連れて行って」

「はい」

 

目の前に来たのは、ジェリコだ。

 

「ジェリコ……」

「貴方が、悪いんですからね」

 

暗転。

俺の意識は、そこで途切れた。

 

 

 




真実へ、迎えましたかね……(震え
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