水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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第78話『冷たい床』

目が醒めたら、冷たい地面の上に転がっていた。

比喩では無く、マジで。

 

手足もなく、一切動けない。

そして、極めつけは首輪をさせられ鎖で繋がれている。

 

(俺、死んだかな……)

 

もう助からない気がしてくる。

リリスの逆鱗に触れた。

ここまでどっち着かずな態度を取り続けたツケなのかもしれない。

 

(手足もないし武器もない。完全にお手上げだ……上げる手もないけど)

 

あれからどのくらい時間が経ったか。

腹の好き具合から考えてまだ一日も経過していない気もする。

雨は未だ強く降っている。

 

(どうしたもんかな……)

 

暗い独房の中、床に転がされている身で何が出来るか。

何も出来ない。

現実は非情だった。

 

「………………床、つめてー」

 

どうする事もできないと言うのは、本当にやるせなかった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

独房の前に誰かが来た。

ゆっくり、視線を上げた。

 

そこに居たのは、シュタイアーとベネリだった。

 

「……お久しぶりですね、パトリックさん」

「そうだっけか」

「ええ、そうですね。168時間ぶりです」

「………………」

 

反応に困ることを言われる。

 

「本当に、私達を裏切ったんですか」

 

暗い表情をしていた二人が口を開く。

 

「……それは」

「良いんです。元々押し付けがましい事をしていたのは承知の上だったので」

「私は、信じられません……兄さん、本当は何か事情があったんじゃないですか……?」

 

ベネリがもう人前でもそう呼んできた事に少し苦笑を漏らす。

 

「わかんねぇや」

「「……?」」

「何が正しくて何が間違ってたのか。俺にゃもうわかんねぇや……」

 

もう、分からない。

こんだけ痛い目に遭ってきて失った物が多すぎる気がした。

 

「一つ、お聞きしたいのですが」

 

シュタイアーが口を開く。

 

「パトリックさんは、何がしたかったんですか?」

「俺は………………八つ当たりしたかったのかも知れない」

 

痛めつけられて期待されて義務感で戦って。

知らず知らずの内に憂さ晴らしを求めていたのかも。

ようやくなんの気兼ねもなくブン殴れる相手が出来て、そこに飛びついてしまった。

 

「パトリックさん……」

「言いたいこと言えてちょっと気が晴れたわ。まぁこの状況どうしようもないんだけど」

「ごめんなさい、流石に拘束を解く事は出来ません」

「分かってるよ……で、何しに来たんだよ」

「パトリックさんを、指揮官の下に運びます」

 

……いよいよ、って所か。

絶対ろくな目に遭わないけど、何もする事が出来ない。

と言うか下手したら殺された方がマシかも知れない。

 

(流石に死にたくはないけど)

 

 




ダルマ状態で転がされる哀れな男。
なんか四肢が無いのがデフォになりつつある。
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