水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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水底に沈む、いつかの思い出。


第82話『きっかけ』

 

………………。

 

「……!!……!!」

 

誰かが叫んでいる。

何事かと視線を向ける。

 

「やっと気が付いた……」

 

鮮やかな金の髪を一房に束ね、馬の尾の様に垂らす少女が目の前に立っていた。

 

「……アリサ?」

「もう、リックってばずっと呼んでるのに」

「それ程不味いのか?その飯」

「お前のカレーと交換してやらうか?」

「勘弁してくれ相棒。レートが釣り合わない」

 

その少女の隣に、青の髪の男が座る。

ここは、

 

「なんて言うか、人形部隊も大概ね」

「人間が居るのがおかしいんだっての」

 

正規軍の、食堂か。

 

「で?リック。何でそんな死んだ魚の目みたいな顔して飯食ってるんだよ」

「……別に。いつもと変わんねぇよ」

 

この男の名はマイク。

アリサと同様……俺の幼馴染で、同じ孤児院で育った家族だ。

 

「あ、分かった。アンを苛めて隊長に怒られたんだ」

「ちげーよ」

「パトリックお前……またか」

「ちげーっての!何で俺が毎回AK-12に怒られる前提なんだよ」

「だって、リックってばいっつも義手のコントロール奪われて遊ばれてるじゃん」

「文字通り遊ばれてんだよ……」

 

騒がしい食事になってしまったが、俺はこれはこれで気分が安らいでいる。

 

「まぁ良い、ちょっと耳貸せよ相棒」

「俺の耳は生身だから外れねーよ」

「違うって。情報だ」

「何もこんなとこで野郎の内緒話かよ」

「良いからいいから」

 

言われた通りにマイクに耳を貸す。

 

「……近々、お前のとこに新しい人形が来るらしいぜ」

「ンなこと珍しくもないだろ。人形部隊の損耗率、お前も知ってるだろうが」

「違うって」

 

マイクが大仰に肩をすくめる。

内緒話はここまでらしい。

ここからは聞かれても問題無い様だ。

 

「パトリック、鉄血工廠って知ってるか」

「なんだそれ」

「民間の兵器開発会社よ」

「あー……でもあそこ、生産した人形みんな暴走して潰れたんじゃなかったか?」

 

何か事件があって外は大事になってるとか。

今は正規軍の契約した民間軍事会社が駆除に当たってるらしい。

 

「そこの残党が生き残りを賭けて新作を出したって話」

「……信頼できんの?それ」

「その為のテストが行われるってよ」

 

なるほど。

そのテストをウチの人形部隊にやらせる訳か。

使い捨てらしいやり方だ。

 

「流石偵察部隊。情報が早いな」

「今のご時世、情報握ってないと死ぬからな。お前も気を付けろよ」

「優秀なスカウトが居るから困ってない」

「お前、俺らが居なくなったらどうするつもりだよ」

 

笑いながら肩を叩きあう。

 

「いって!お前馬力違うんだから加減しろ!」

「ハハハ!悪い」

「ったく」

「でも良かったわ、リック。元気にしてるね」

「アリサ、お前それ先週も言ってたぞ」

「仕方ないじゃない。一週間会ってなかったら生存が疑わしくなっちゃうもの」

 

それもそうか。

人形部隊の損耗率はかなり高い。

一週間顔合わせてなかったら疑われもする。

 

「俺はそう簡単に死なねーよ」

「ま、そうだろうな」

「おう。お前らこそ気を付けろよ」

 

これは、いつの記憶だったか。




しばらく回想です。
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