水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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第87話『知らない再会』

 

「着いたわ」

 

舟をこいでいた意識が戻ってくる。

グリズリーが車を止めたので、俺も伸びをして降りる。

 

「ったく、良い身分ね……人に運転させて寝てるなんて」

「あー……すまない。その手の運転は壊滅的だったんだ」

 

昔、隊長に二度と運転するなと厳命された覚えがある。

 

「ま、良いけどね……こっちよ」

 

グリズリーが歩き出すので、俺も着いていく。

 

「……何か、長閑な街だな」

 

到着したのは、グリフィン管轄地区の中でも中心近く。

でも、妙に人が少ないし……老人ばかりだ。

 

「ここ、内地なんだけど見ての通り人が都市部に流れてるのよね」

「へぇ……ん?あの樹は?」

 

町の中心地に聳え立つ大樹。

ピンク色の花をふんだんに咲かせている。

 

「あれはサクラよ。本来は東の方にしか咲かないのだけど、何故かこの街……年中咲きっぱなしなのよね」

「そう言うのってずっと咲くもんなのか?」

「さぁ……」

 

……そして、1件の喫茶店の前までやってきた。

 

「ここよ」

「……ここは?」

「旦那の店」

「あんたの旦那かよ!」

「正確に言うと旦那の奥さんの店だけどね」

 

ただいまー、とグリズリーがドアを開いて中に入っていく。

ドアに付けられた古風な鈴がカラカラと鳴る。

 

「……何やってるの。早く入りなさいよ」

「お、おう……」

「何?今更ビビってる?」

「ち、違うわ!」

 

意を決してドアノブに手を掛けて、中に入る。

 

「ようリズィ。今日は急だな」

「久しぶり、ジョン。今日はあの子に頼まれちゃってね」

 

グリズリーがたまたま近くに立っていた白髪の男性に抱き着き、そのまま熱烈な接吻をかました。

彼が旦那なのだろう。

 

「……こいつか」

「ええ」

 

男性が俺を見る。

長くした白髪を後ろでざっぱに縛っている。

無精ひげも目立つが不思議と彼には似合っている気もする。

そして何より……。

 

「あんたが……その、ベルロック指揮官の父親?」

 

顔があのオッサンにそっくりだ。

年齢+20くらいしたらこうなりそう。

 

「おう。俺がジョン・ベルロックだ……んで、ハルカさん!」

 

男性、ジョンが奥に向かって声を張る。

 

「は~い」

 

カウンター裏から女性がやってきた。

 

「え、AK-12……!?」

「?」

 

女性の顔を見た瞬間、思わず声が出てしまった。

だって顔そっくりなんだもん。

……ただ、髪は黒いし瞳はエメラルドグリーン。

ぶっちゃけ雰囲気も全然似ていない。

 

似ていないが……何か、別の物が俺の中を駆け巡った。

 

「あ……」

 

何だ、この気持ちは。

苦しい。

 

「いらっしゃい。いえ……」

 

女性は、一度目を伏せてから……俺の傍まで来て、俺を正面から抱きしめた。

 

「おかえりなさい」

「あ、ああ……」

 

嗚咽。

不意に頬を温かい物が滑る。

 

……涙?

違う、俺はこの人を知らない。

 

でも、()()()()()

 

覚えてないけど、覚えている。

 

この人じゃない。

でも確かにこの人だ。

 

「辛かったでしょう?ここにいる間は……ゆっくりしましょう?」

「うっ……」

 

何かが決壊した気がした。

涙が止まらない。

 

「かあ、さん……」

 

絞り出す様に声が出る。

女性……ハルカ・ベルロックはずっと微笑んでいた。

 

 

 

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