何故かサイズぴったりのジャージを受け取って着替える。
服を脱いだ時に、いつもの腕じゃなかった事を思い出した。
「……あの女、俺の腕に変な事してねぇかな」
何だかんだ結局、追加された義手の機能ほぼ使わなかったな……何だよ足に爆竹って。
アレ撒こうとしたら足元にしか出ないし肝心の発火に別で火元必要なんだよ。
鉄傘もアレ、鉄血人形の光学兵器貫通するからほぼデッドウェイトだし。
スラッシュディスクも撃つ度にズボン切り裂いて射出されるから面倒だ。
あと3発しか入らないからすぐ弾切れするし。
まともに使えたのはワイヤーアームだけだったな……。
「よし」
――――――――――
「お待たせしました~」
母さんがジャージ姿で店の裏の空きスペースにやってきた。
なんで?
「いえ、それほど……」
「それでは、始めましょうか」
「えっ、な、何を……」
「修行。お好きでしょう?」
……瞬間、身構えてしまった。
一瞬だけ母さんから迸る殺気に思わず臨戦態勢を取ってしまう。
「流石、軍属で傭兵だった事はありますね。ジョージさんより反応が早い」
「……どういう、つもりですか」
「ジョージさんから聞いていませんでしたか?」
先ほどと何ら変わらない笑顔で語る。
「貴方をこちらに匿うと同時に、鍛えてやって欲しいと」
「……おっさん」
「なので、この一か月貴方を鍛えます」
「いや、でも……」
「1発」
「……え?」
母さんが指を1本立てる。
「1発でも私にクリーンヒットを当てられたら合格としましょう」
穏やかなな微笑でそんな事を言いやがった。
「いやいや……流石にそれは」
俺の事を侮りすぎだろう。
「俺の手足は戦闘用の……まぁ今は大分グレード低いですが、義手だ……ですよ。生身の相手とは違いま……」
次の瞬間、俺の視界が一回転。
「ぐへっ!?」
どしゃり、と頭から地面に落ちた。
「え、えぇ……?何が」
投げられた、と理解するのに暫く掛かった。
「ま、待って……俺の体重いくつあると」
「関係ありません。立ちなさいパトリック」
「くッ……」
またしても叩き付けられる気迫。
これ、只者じゃない……!
「な、何者なんですかアンタ、貴女……!!」
「いつもの喋り方で構いません」
「え、えぇッ!?」
「行きますよ」
ふっ、と母さんの姿が消える。
「えっ……おごぉっ?!?!?!」
と思ったら目の前に急に現れて顎に膝が入った。
あまりの衝撃に俺の体が浮いた。
「マジ……かよ……」
「あら、やりすぎましたか」
「なん、」
勢いのまま空中で後ろに宙返り。
着地の瞬間全力で踏み切って跳ぶ。
「てなぁッ!!」
このスピードなら反応できまい……!
「なぁっ……!?」
飛び込んで突き出した拳が空を切る。
この人、ただ体の位置を少しずらしただけ……最低限の動きで躱した!?
「ゲッ……」
腹に膝が刺さる。
身体の向きが空中で仰向けに浮かされる。
「ごひゅっ」
母さんの顔が見えた瞬間裏拳が顔に突き刺さった。
地面に叩き付けられて更に跳ねてギャグみたいに吹っ飛んでしまった。
「げほっ……つっよ……」
何だこの人。
生身の人間じゃないのかこの人。
「これで終わりですか?数々の戦場で磨かれた貴方の全て、見せてください」
涼しい顔でそんなこと言いやがった。
……マジで何者なんだこの人。
「くそったれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
もう全力で向かわないとこっちが痛い目に遭うわ!!