もしプリコネRの主人公があの人の生まれ代わりだったら 作:メタカイザー
ルカとの関係はクロス先番組初期に何度かゲスト出演した美空ひばりさん演じるお奈津さんとの関係をもっとピックアップした感じで描きました
俺は皇帝、名前は分からない、過去の記憶もない
…完全な記憶喪失とはいえ、自分でも自分の存在に苦笑してしまうほどだ。
かすかに覚えているのは3人の少女達が斃された凄惨な光景と、巨大な異形…俺の中で誰かが目覚めたような感覚と…そして天使
気がつけば俺はこの国の皇帝で、お袋のように口うるさい騎士団長のジュン、俺の力に興味があるからかかってこいと戦いを挑んでくるクリス、俺が城を抜け出す際にお伴してくれるトモとコッコロの王宮騎士団。
そして暇を見つけてはお忍びで抜け出し、わざわざ遊びに来る領主の娘で婚約者のユースティアナ…ペコリーヌ、そして何者かの名で俺の命を狙っているものの、失敗ばかりでペコに可愛がられてしまうキャルがそばに居てくれた。
みんな俺に優しくて、彼女達と過ごす日々は楽しくて…
そして魔物退治や、この国に蔓延る不正や理不尽を手の届く限り俺の手で救うことに、彼女達はいつも手を貸してくれる。
…だけど、どうしても自分が何者かわからない異物感のようなものが精神を不快に刺激する。
俺は誰なんだ?自分の名前は?どうしてこの国一番の権力者に生まれた?
自分が生きていた痕跡を思い出せない歯がゆさは、こころを蝕んでいく。
だから俺は、城を抜け出して彼女の元を訪れるのである。
「陛下…じゃなかった!シンさん!またお城を抜け出したのかい?全く、暴れん坊なのは子供の頃から変わっちゃいないねぇ。」
ルカ…腕の立つ女剣士で、気風の良い姉御肌な街の人気者、そして俺にとっては年上の幼馴染なのだ。
…自分が何者かわからないなかで、なぜか彼女と過ごした記憶だけがはっきりと残っている。
ルカはギルドハウスのソファに座る俺の隣に腰掛けると、俺がこの国一番の権力者であることなど気にしない様子で俺に微笑みかける。
この屈託のない笑顔が、子供の頃から変わらない。
「おお、ルカ。またジュンの目を盗んで、上がらせてもらったぞ。」
「今日はお供の二人もいないみたいだけれど、どうしたんだい?」
「トモは今日は非番だ。コッコロは…道中ペコリーヌがレストランで暴飲暴食していたところに出くわして、そんな時にキャルがまた俺の命を狙ってきたんでな。ちょうど良いから3人で遊んでろと言って、巻いてきた。」
「あのキャルって娘、シンさんの命を狙ってるのにそんなことでいいのかい?」
「キャルはいい子だから大丈夫さ。」
正直、あの娘と戦う気にはなれない。
だから今までなあなあで済ませてきたのだが、彼女の主がいつまでもそんな状況を許しているはずもない。
そいつをどうにかし、彼女を救えないものだろうか。
「ところでシンさん、今日も何か聞きたいことがあるのかい?それとも、また蛆虫みたいな連中がウロチョロしてるのかい?」
ルカはいつも俺の力になってくれる。
平民達が過ごしている世の中の仕組みにまだまだ疎い俺に、いろいろな市井の人々の暮らしを教えてくれたり、悪徳で甘い汁をすする連中の成敗を助太刀してくれたり、頼りになる俺の姉さんのような人だ。
そしてなにより…
「いや…今日は、昔話がしたくてね。」
「…わかったよ。とことん付き合うさ。」
記憶のない俺の過去を少しだけ知ってくれている、唯一の大切な女性なのだ。
「…それからね、シンさんは昔からよくオーエド町のお城を抜け出しては、町のいろんなものに興味を持って周りのみんなに笑われたり、弱いものいじめしてる連中をまとめて懲らしめて騒ぎになったり、とんだ暴れん坊で助けに入る私も大変だったもんさ。」
「今とあまり変わらんのだな。」
「そうさ。知らないものにとことん興味を持つことも、間違っていることを絶対に許せないのも、皇帝になっても全然変わらない…だから私は安心して、この国の政治を信じられるんだ。」
「…ありがとう。他のみんなが俺のことを皇帝としか知らなくても、俺が俺のことを何者か分からなくても、少なくともルカの記憶の中には、確かに俺がいる。だから俺も自分を見失わないでいられるよ。」
「よ、よしとくれよ。一国の君主が簡単に平民にお礼なんて言うもんじゃないよ!」
すこし頬を桃色に染めて恥ずかしがるルカの姿は、可愛らしくて、すこしおかしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
だから、意地悪がしたくなる意味もあって、いつも頼んでしまうのだ。
「ルカ、いつものを頼む。」
「え、ええ!?勘弁しておくれよ…なんどもいうけど、ペコ…ユースティアナ様にだって怒られちまうしさ…」
「彼女とは血筋で決められただけだ。それに、こんなことで怒るほど彼女は器が小さくない。」
「うう、じゃあ…明日の魔物退治の仕事手伝っておくれよ…」
「明日も俺に城を抜けろというのか?」
「どうせ明日も抜けるつもりだったんだろう?なにせシンさんは、暴れん坊皇帝(カイザー・ランページ)だからね!」
ルカはそう言って俺を抱きしめた。
これは昔から続いている、俺とルカのスキンシップであるらしい。
「…大丈夫だよシンさん、お前さんを誰も覚えていなくても、お前さんが自分が何者か分からなくても、私の記憶の中には確かにお前さんがいる…だから安心しておくれ、ずっと、ずっとね…!」
本当の名前が分からなくても、記憶がなくても、俺の肌は確かにこのぬくもりを覚えている。
俺が確かに存在していた記憶と、ルカの頼もしい優しさが、俺の心を暖めてくれる。
…だから俺は、ルカと共に戦える、自分を探す為、この世界に暗躍するものを倒す為、そして…天下万民が安心して眠ることのできる世の中のために!
「シンさん!こいつが今回の獲物だよ!毒の攻撃に気をつけな!」
「ああ!行くぞルカ!成敗!!」
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