TS 異世界最強主人公アンチ   作:バリ茶

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わがままな幽霊でごめんね!

 暖かな日差しがカーテンから差す、平和な昼下がり。とても悪い事なんて起こりそうもない、青空が気持ちいい陽気な天気。

 

 しかし、俺の心中は平和でも何でもなくて。

 

「とりあえず……座りたまえ」

 

「は、はい」

 

 勇者パーティの女騎士──ユノアちゃんに促されるがまま、俺は彼女のベッドの隣にある椅子に腰かけた。幽霊だからなのか、微妙にお尻が浮いてるけども。

 俺を見たときは吃驚してベッドから転げ落ちた彼女だったが、今は落ち着き払ってベッドに座っている。いかなる状況でもすぐさま冷静に戻れるのは、流石は騎士と言ったところか。

 

 俺が座ったことで、ベッドに腰掛けているユノアちゃんと正面から顔を合わせることになっている。

 まるで品定めをするかのように俺の全身を見ているのだが、そんな怪訝な表情をしているにもかかわらず、ついユノアちゃんが可愛いと思ってしまった。

 

 

 前から思っているけど、勇者パーティの女の子……みんな顔良すぎない? アルトお前、絶対顔で選んでる部分もあるだろ。

 

 こんなかわいい女の子たちに囲まれて冒険するなんて良いご身分ですね。俺は悪徳貴族のおっさんたちから盗んだ金で、毎晩一人さびしくパンをかじってたけどな!

 

 

 っと、いけない。八つ当たりしてる場合じゃないや。

 

「えと……ユノアちゃん、俺のことわかる?」

 

「ラル・ソルドットだろう。確かに直接話した事はなかったが、旅の道中で何度も出会ったし、顔と名前ぐらい覚えてるさ」

 

 きわめて冷静にそう告げるユノアちゃんは、意外にもすぐに表情を崩した。普通に友達と話すときのような顔で、先程までの鋭い目つきはどこへやら。

 まぁ敵意というよりは一種の警戒心のようなものだったし、突然現れた幽霊への態度だと考えれば妥当かも。

 

 

 それどころか、すぐにその警戒心すらも解いてくれた。無害だと信じてくれたのならありがたいが、もう少し疑ってくれてもいいと思う。一応俺、幽霊だし。

 

「それで。女盗賊の幽霊が、病人に何の用かな」

 

 腕を組んで俺の目をみるユノアちゃん。どうやらさっさと本題に入って欲しいらしい。

 ……実は普通にお見舞いに来ただけなんだけど。自分の体と一緒に透過させて、彼女の好物だと聞かされてたハンバーガーもどきも持ってきた。

 

 本当ならこっそり置いて帰ろうと思っていたのだが、見られてしまったのなら直接渡すしかない。

 

「とりあえずこれ、どうぞ」

 

「え? ……ぁっ、あぁ、うん。ありがとう、後で食べるよ」

 

 若干動揺しながら、俺からハンバーガーもどきが入っている紙袋を受け取ってくれた。わざわざエリンちゃんに買って来てもらったんだけど、余計なお世話だったかな……。

 

 チラリと彼女の横を見ると、そのテーブルの上には俺が持ってきたのと同じ店の紙袋が、既に置いてあった。うわぁ、アルトと被っちゃったのか。普通にフルーツとかにしとけばよかった。

 

 

 とりあえず見舞いの品は渡したが、雰囲気からして彼女は俺と雑談をする気はなさそうだ。多分嫌われているのだろうし、少し質問したらすぐに帰ろう。

 

 ……考えなしにアルトを邪魔してきた昔の自分が、少し恨めしい。女の子に嫌われちまったぞ、俺のバカ。

 

「え、えっと……ユノアちゃんは何の病気に?」

 

 ぎゃあ! そっ、育ちが悪い……。デリケートな内容なのに、つい直球で聞いちゃった。

 

「ストレートだな、君は。……まぁ、隠すようなものでもないが」

 

「えと、ごめんなさい。──って! あのッ、ちょっと何して!?」

 

 謝った俺が顔を上げると、そこにはシャツのボタンを外し始めている彼女の姿が。思わず両手で顔を覆ってしまう。

 何してるんですか男の子の前で!? 着替えるなら部屋出るのに!

 

 

 ──すると、目の前から若干呆れている様な声音が聞こえてきた。

 

「なに、って。体に刻まれている呪いの紋章だよ。見た方が早いだろう? ……女同士なのだし、そこまで取り乱すこともないだろう」

 

「へっ? ……あ、そ、そっ、そうですね! 女の子同士、女の子同士ですもんね……っ!」

 

 なぜか敬語で返事を返した。俺はそうとう焦っているようだ。

 

 彼女の言葉を聞いた俺は、ゆっくりと、とてもゆーっくりと顔を覆っている手をどかし始める。つい咄嗟のことで、現在の自分の性別を忘れていた。

 くぅ、前世の記憶が恨めしい……!(童貞)(今は女だから処女?)(永遠に終わらない疑問)

 

 

 

「……不気味だろう、この紋章」

 

「あっ」

 

 シャツを脱いだ彼女が、小さく呟く。

 

 ユノアちゃんの胸の間に存在する紋章を見た瞬間、間抜けな声が出ると同時に、先程までの場違いな思考は彼方へと消え去った。

 その紋章は目玉のような形をしていて、その見た目はさながら刺青のようにも見える。

 

 だがそこから放たれている邪気のようなものは、そんな生半可な存在ではないという威圧感を俺に覚えさせた。

 

「その紋章……魔物の?」

 

「あぁ。魔王の幹部がひとり、呪術のトリデウスに刻み込まれたものだ」

 

 自分を貶めた者の名を乾いた声で告げた彼女は、ボタンを戻してしっかりとシャツを着直した。

 あんな紋章を見た後では、やはり何を言ったらいいのか見当もつかなくなってしまう。

 

 おそらく、励ましの言葉は不要なのだろう。

 ユノアちゃんは誇り高い騎士だ。仲間でも何でもない人間からの同情など、迷惑なだけ。

 

 

 ゆえに、別のことを質問した。

 

「その呪いは、どうやったら治るんだ?」

 

「医療や魔法では治らないよ。………唯一方法があるとすれば、トリデウスの持つ呪いの短剣で、もう一度攻撃を受ければ、あるいは──」

 

 

「わかった!!」

 

 彼女の言葉を遮るように、俺は叫んだ。そしてすぐさま椅子から立ち上がり、浮遊を始める。

 急に動き出した俺を見て彼女は狼狽しているが、思い立ったならすぐ行動に移さなければ。

 

「そ、ソルドット?」

 

「今からその呪術のトリケラトプスとかいうヤツの情報、集めてくる!」

 

「いやっ、ちょっとま──」

 

 

「なるべくすぐ戻るから!」

 

 ユノアちゃんの言葉を待たず、俺は病室から飛び出した。

 

 彼女の呪いを解く方法がそれしかないなら、その幹部の居場所を調べるしかない。冒険者ギルドの掲示板や王国騎士団の資料室を回れば、ヤツの足取りが分かるかもしれない。

 

 一刻も早くトリケラトプスの居場所を探るべく、俺は空を飛び回った。

 

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 

 トリデウスでした……。うぅ、恥ずかしい。普通に考えれば恐竜と同じ名前の奴なんてほとんどいないよな。

 

 

 あれから約二時間かけて街中を駆け巡って、かなりの情報を得られた。奴がいるであろう潜伏先も、意外にも簡単に判明した。

 どうやらトリデウスは仲間を率いずに単独行動をしているらしく、俺が死んだあの遺跡の周辺で目撃情報があったらしい。

 

 恨めしいぞ、トリデウスめ。もしあの遺跡がヤツの拠点ならば、俺はトリデウスに殺されたことになる。幽霊らしく、この機会に憑りついて呪ってやろうか。

 

 とりあえず情報は集まったので、報告の為に病院へ戻ることにした。

 

 

 いつも通り扉を透過して部屋の中へ入ると、ユノアちゃんは俺が病院を出たときと、まったく同じ体勢だった。ベッドに座って、ほんの少し暗い表情になっている。

 居場所が分かったっていう朗報を聞けば、元気になってくれるはず!

 

「ユノアちゃん、おまたせ」

 

「……ソルドット」

 

 笑顔で帰還を告げながら彼女のベッド隣の椅子に座ると、ユノアちゃんが顔を上げた。

 

「魔王の幹部の潜伏先が分かったんだ。これからパーティの皆にも報告して、呪いの短剣を奪ってくるよ!」

 

「………」

 

 あ、あれ? 

 かなり良い情報の筈なのに、ユノアちゃんが未だに暗い表情のままだ。

 

 

 そんなユノアちゃんの様子をみて、つい言葉が止まってしまった。なんとなく、黙らないといけないような気がしてしまった。

 よく分からないけど、お口チャック……。

 

 

 数秒の沈黙。その場には彼女の静かな息遣いだけが木霊する。

 

 

 すると、ユノアちゃんが俺の手を握ってきた。

 その行動にも驚いたのだが、もう一つの事実にも気がついた。

 どうやら幽霊を視認できる人間は、本人に触れることもできるらしい。

 

 思えば、幽霊の筈なのに魔王に押し倒されたのも、そう考えれば納得がいく。

 

 

 ──なんて余計な事を考えてないと、平静を保てない。俺、女の子に触れられることに対しての免疫無さすぎだ。

 

 

「ゆっ、ユノアちゃん?」

 

「………聞いてくれ、ソルドット」

 

 小さい声で呟いた彼女は真っ直ぐ俺の目を見つめた。

 その凛としていて綺麗なはずの瞳の奥に、暗い何かを感じる。

 その雰囲気から次に出てくる言葉が、俺に対しての感謝ではないということが、容易に想像が出来た。

 

 それゆえに、少し身構えてしまう。

 

 

「私は───助かりたくない」

 

 

 

「……は?」

 

 

 彼女の放った言葉が理解できず、俺は思わず声を出してしまった。

 何を言っているんだ、彼女は。

 助かりたくない? ……な、なにっ、どういうことっ!?

 

「何を言って……!」

 

「ソルドット。私はこれまで、大切なものを守る為に戦ってきた」

 

 俺の言葉を遮って、低い声で語り出すユノアちゃん。

 ちょ、ちょっと待って。まさか大して付き合いも無いはずの俺に、秘密の独白? そうまでして、助かりたくないのか……?

 

 

「でもね、彼は私が守れるような存在ではなかったよ。それどころか、私は彼の大切な人ですらなかった。……最初から、私なんていないも同然の存在だったんだ」

 

「……」

 

 彼女の雰囲気にのまれてしまい、俺は何も言えない。今の俺は、ただ彼女の独白を聞くだけの存在に成り下がっていた。

 

「何もかも失った私は、そこから救ってくれた勇者が全てになっていたんだ。でも、戦えなくなったいま、私は何者でもなくなってしまった。彼の為に剣を握ることすらできない私なんて……」

 

「そ、それなら短剣を手に入れて、呪いを解けばいい! そうすれば、また戦えるように──」

 

 

「戦いたくないんだ。……分かってくれよ、ソルドット」

 

 段々と声が小さくなっていった彼女は、ついに俺の手を離した。行き場を失ったその腕は、だらりと力なくベッドに置かれる。

 勇者の為に戦う事が嫌になったのだろうか? だとしても、助かれば別の道がある。

 

 その選択肢を取りたくない。

 彼女はそう言いたいのか?

 

「たとえ呪いが解かれたとしても、もう彼の仲間として戦うことはしたくない」

 

「どっ、どうして」

 

 

「──キミだよ、ソルドット」

 

 

 俺? どういうことだ。まさか俺が仲間になったから、一緒に居たくないと?

 ……むむ、それなら致し方ない。俺がアルトから離れるしかないか。

 昔からの仲間の復帰を邪魔してしまうのなら、俺はパーティから離れても──

 

「キミの存在が、私のことを『不必要な存在』だと理解させてくれた。今の彼の状態を見ればわかるだろう。ファミィ、エリン……なによりソルドットがいれば、勇者は十分なんだ」

 

「そ、そんなことっ」

 

「あるよ。現に勇者は自らの足で立って剣を握っている。ソルドットだという事実を知らなくても、いま私の目の前にいるゴーストが仲間にいれば、勇者は戦える」

 

 

 

「たとえ自分が彼の大切な人でなくとも、勇者の為に戦う───なんて、無理だよ。戦うという生き方しか知らないが、私はそこまで彼に盲目ではなかったと気づいた。キミと彼を見て思い知ったよ。私は大切なものを守る為に戦ってたんじゃない」

 

 

「私は……()()()()()()()()()()()人の為に、戦っていたんだ。……最低な女だろう? でも勇者が私のことを想っているというのは、勘違いだった。最初から私のことが大切な人間なんていなかったし、これからも現れない。家族もいない、剣一本で生きてきた、無愛想な女だからな」

 

 

 

 吐き出す様に言い終えた彼女は、ついに顔を俯かせ、俺の目を見ることをやめた。ベッドのシーツを握る彼女の手が、僅かに震えている。胸中に渦巻く感情の吐露は、彼女の心を身体ごと不安定にさせたのだろう。

 

 自分を大切だと思っている人の為にしか戦えない。戦うこと以外の生き方を知らない。知りたくもない。

 だが、自分を想う人間がいないのなら、戦う──生きる理由などない。だから助かりたくない。

 このまま、呪いで死んでしまえばいい。

 

 

 目の前の女騎士は、そう言った。

 嫌なことがあったから瞬間的に死を望んでいるわけではなく、自分の生き方を理解したからこそ、そうするしかないと悟ってしまった。

 

 そんなユノアの意思を、正しいとか、間違っているだとか、そんな風に決めつけることはできない。

 希望的な観測で励ましても意味などないのだろうし、そんなのは無責任なだけの発言だ。

 つまるところ、どんな言葉であろうとも『説得』という形である以上、彼女の心には届かない。それほどまでに彼女の意志は固いのだと、理解してしまった。

 

 

 逡巡する。俺がこの場にいる意味を考える。どうすればいいのかを模索する。

 

 

 

「……なるほど」

 

 

 

 ──あぁ、いや、違うな。前提が間違ってる。

 

 どうすればいいのか、じゃない。

 俺がどうしたいのか、だ。

 

 

 あいにく、神の思し召しだとか、世界が定めた運命だとか、そういうのは信じていない。

 

 『神様』なんて奴らは、普通の環境で生まれ育った男の俺を、体の小さい女の子にしてスラム街に放り込むような馬鹿共だ。あんな奴らの指し示す運命なんて、きっとロクなもんじゃない。

 それにさよならした筈のファンタジーに、幽霊として縛り付けたこの世界にだって、俺は少しムカついている。

 

 

 だからきっと、俺が幽霊になってこの場にいることに、理由なんてない。使命なんて考えるだけ無駄だ。

 俺は自分のやりたいようにやる。

 人の命を救って死んだんだし、偶然手に入れた死後なんて多少は好き勝手してもいいだろう。

 

 決めた、俺は決めたぞー!

 

 

 

「わかった。じゃあ、このことは勇者たちには言わない」

 

 俺がそう言うと、ユノアがゆっくりと顔を上げた。わかってくれたのか、そんな意志が僅かに緩んでいる口元から伝わってくる。

 

 ごめんねっ、分かってない!

 

「だから、俺一人で呪いの短剣を奪ってくる」

 

 

「………え?」

 

 俺のドヤ顔を見たユノアは、気の抜けるような声を漏らした。その後、すぐに焦ったような表情に変化する。

 

「わっ、私の話、聞いていたのか……! 助かりたくないんだ、分かるだろう! 私の命を助けるなんて、私自身が望んでいないんだ!」

 

 私の意思を踏みにじる気か? 語気を荒らげて、そう告げるユノア。

 おうとも、その通り。

 

 

「キミの気持ちを踏みにじって、キミを助ける」

 

「よせ! さもないと、キミの正体を勇者にバラすぞ!」

 

 うぐっ、痛い所を突いてくる……! 流石は騎士!(関係無い)

 

 確かに勇者に正体を言われたら、死んだはずの俺に助けられたって知って、アルトがどうなっちゃうのか分かったもんじゃない。というか、それ以上に抱きしめたりしたのが恥ずかしすぎて、俺が成仏する可能性すらある……!

 

 で、でもっ、それでも俺はやる。

 

 俺は室内で浮遊し、窓に近づいた。ユノアに捕まらないよう、距離を取る必要があるから。

 あとは後ろに飛べば、建物をすり抜けて俺は空中に。人間であるユノアには届かない領域だ。

 いかにも逃げ出す寸前の俺を、ユノアが睨みつける。

 

 彼女が剣を持っていれば、既に斬られててもおかしくないほど、ユノアがキレてる。怖い……。

 でも、やりたいことを押し通すには、ビビってる場合じゃないぜ。

 余裕あり気に笑って見せる俺を見て、ユノアは叫ぶ。

 

「ふざけるなッ! 人の命を救って善人ヅラするつもりか!? そうやって盲目な善意を振りかざして……押し付けがましいんだよ!!」

 

 必死に叫ぶユノア。なんと罵られようと、止まるつもりはないぜ。

 

「ユノア! キミは俺の事を恨んでくれていい! ……あー、でも一つ訂正! 俺がこうするのは、善意じゃないよ!」

 

 善意でもなければ、倫理的な観点から判断したわけでもない。そんな生易しいものじゃ無い。

 

 もっと汚くて、もっと身勝手で、もっと純粋な感情だ。

 

 

「これは俺の、ただの『我が儘』だっ!!」

 

「───っ!?」

 

 そう、これは我が儘。俺が今、一番優先するべき感情だ。

 

 

 

 ……人は、死ぬと誰かが傷を負う。今まで関係ないと思っていたそれは、俺にも言えることだった。

 一匹狼を気取りながら一人の男の子を邪魔し続けただけの俺の死ですら、人の心を傷つけた。

 

 アルトは感情を塞ぎこんで、殻に閉じ籠った。

 エリンちゃんは人の死にトラウマを覚えて、墓の前で懺悔しながら泣き叫んだ。

 

 盗賊の俺で、これだ。

 勇者の仲間として生きてきたユノアが死んだら、どうなってしまうのだろうか。

 

 

 見たくない。もう二度と、あんな傷心した、光を映さない瞳を。

 勝手に死んだ俺を悼んでくれた、心優しいあの人たちの、傷つく様を見たくはない。

 

 

 絶対に。

 

 

 これは、そういう俺のわがままだ。残念ながら、ユノアの為ではない。なので呪いが解けたら、成仏させるなり魂を切り刻むなりしてくれていい。

 だけど、アルトたちに悲しんで欲しくないという俺自身の我が儘の為に、キミには生きてもらう。

 

 

「このっ──」

 

 ユノアが俺を捕まえようと手を伸ばした。

 その瞬間、俺は後ろに飛んで建物を透過。

 無事に病院の外へ離脱したのだった。

 

 すぐさま窓を開けて、ユノアが叫ぶ。

 

 

「まっ、待てぇー! ソルドットーッ!!」

 

「はっはっは! 止めたかったら追いかけてみろ~!」

 

 

 高らかに叫び、俺は彼女に背を向けて飛び始めた。

 

 つい叫んじゃったけど、病人だから本当は追いかけてきたら駄目だからな!

 

 

 

 

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