ソードアートオンライン~グランドメモリアル~ 作:Wandarel
作者のwandarelです。
投稿が遅くなった理由は仕事の量がえげつないことになり、執筆する時間がほとんど確保出来なかったからです。
待っていた皆さん、本当に申し訳ございません!
こんな感じでかなり仕事のペースが不定期なので、突然パッと投稿するときもあれば、何ヵ月経っても投稿してないときがあると思いますがよろしくお願いします。
もちろん、感想や評価もガンガンお願いします!
では、皆様、今日も明日もワンダフルな1日を!
~第一層フィールド~
例によって攻略し隊のメンツはレベリングと連携訓練を行っていた。
ぼっち
「すまん、愚弟。そっちに敵行ったわ。」
脚竜
「いやいやいやいや!そんな軽く済ませんな!
俺が防御脆いの知ってんだろ!!」
脚竜はそう叫びながら逃げ始める。
肝心のオクトはというと。
オクト
「あ、ポーション切れてる……。
買いにいってきますね。」
と三十分前に行ってきてそれ以降帰ってきてないのである。
脚竜
「第一に兄貴はバカなんじゃねぇのか!!
今の俺達はタンク無いとやばいんだって!」
ぼっち
「知らん。あいつが逃げたんならそれでいいんじゃねぇの?
あとで血祭りにあげるだけだから。」
脚竜
「某有名バトル漫画のブロッコリーみたいな声出してんじゃねぇ!」
ツッコミながらも脚竜は必死になって敵を迎撃した。
脚竜
「はぁ………はぁ………、精神的に疲れた……。」
ぼっち
「お疲れー。」
脚竜
「呑気でいいなオメーはよ!」
まさかオクトがいないだけでここまでしんどいとは思わなかった。
改めてオクトという盾の存在にありがたみを………。
オクト
「誰が盾だコノヤロー。」ゴッ
突然現れたオクトに後頭部をぶん殴られダメージはほとんどないが衝撃が頭に響く。
脚竜
「イテテ……なんだよ帰ってきてたのかよ。」
オクト
「んじゃもう少し買い物してk……」
脚竜
「待って待って悪かった!言い方が悪かったから!」
貴重なタンク役をここで手放すわけにはいかない!
もしかしたら俺達は既にオクトに依存してるのではと俺は思い始めた。
オクト
「あ、そうだ脚竜。はいこれ。」
オクトがアイテムトレードでインベントリに移してきた。
脚竜
「……ん?なにこれ?」
見てみると本(?)のようなアイテムだった。
でもこれどこかで見たような………。
オクト
「あぁ、それアルゴさんの攻略本だよ。
無料配布されてたからもらってきた。」
この言葉にある男がピクッと反応した。
ぼっち
「おい待て。それ無料配布されてんのか?」
オクト
「え?まぁそうですけど。」
ぼっち
「……………クソが。」
珍しく兄貴が頭を抱えている。
よっぽどの事がないとこんなことにはならないはずなんだけど………。
オクト
「まぁ、俺はアルゴさんから無料配布されること聞いてたから貰いませんでしたけど。」
ぼっち
「……は?いや、なんでそういうことは早めに報告しないの?」
その質問を兄貴がした瞬間、待っていましたと言わんばかりにオクトがニッコリ笑って
オクト
「聞かれませんでしたから。」
と言い放った。
ぼっち
「クァァァァッ!!」
兄貴がオクトごときに負けた瞬間である。
貴重だから写真撮っときたいなぁ………。
そんなことを考えていたが、俺はあることを思い出した。
脚竜
「そーいえばオクトに兄貴よ、俺達もうそろそろこのゲームに囚われてから1ヶ月くらい経つからさ、1ヶ月生存記念パーティーしようぜ。」
オクト
「脚竜、そんなブラックジョークはやめてくれ。」
ぼっち
「回りくどいな、何が言いたい愚弟?」
脚竜
「もうそろそろさ、俺達もこのゲームに囚われて1ヶ月。
それでもなんの進展も無いんだぜ?」
ぼっち
「だからどうした?」
脚竜
「いやなんというかな……本当に俺達はこのゲームをクリア出来るのかなって思ってな。」
オクトはとても驚いた。
普段から明るく、文句は言うが泣き言を言わない脚竜がそんな事を言ったからである。
もちろん、オクトもその事を考えていたからこそ、心底驚いていた。
対称的にぼっちはひどく冷静に見えた。
ぼっち
「………言いたいことはそれだけか愚弟?」
脚竜
「……あと、生き残れるかどうかもかな?」
こんなに弱気な脚竜を見るのは初めてだった。
普段はどんな無茶でも脚竜の溢れんばかりのポジティブシンキングで無理矢理突破するような、それこそ太陽と言っても過言ではないほど明るい人格をしている脚竜をここまで追い込んでいるこの状況を再確認することになった。
ぼっち
「……んなこと考えてるのかお前は。
だからお前はアホなんだっつの。」
ぼっちから出た言葉も衝撃的だった。
ぼっち
「第一な、その考え方はやめろ。
俺達は生き残れるかどうかとかクリア出来るのかどうかとかじゃねぇよ。
俺達プレイヤーは生き残るし、クリアする。
それ以上もそれ以下もない。
確かに何人かは死ぬかもしれんし、もうかなりの人数が死んでるかもしれんがな、初っぱなからネガティブになってんじゃねぇよ愚弟。
全員無事脱出が理想だが、世の中……いや、このゲームは甘くはねぇ。
例え犠牲が出ようと俺達プレイヤーはクリアしなくちゃいけないんだよ。
待っている家族の為にもな。」
いつも通り言葉は暴力的だったが、ぼっちの眼には絶対に生きて帰る意思と覚悟があった。
脚竜
「……そっか、ごめん兄貴。」
ぼっち
「分かればいいんだよバカが。」
そんな感動的なシーンは見れたが、脚竜の言ってることも間違っていない。
攻略本が配布されたのなら近いうちに第一層の攻略に向かうと思う。
ぼっち
「さてと、お前ら行くぞ。
『攻略会議』にな。」
脚竜&オクト
「おー!!」
俺達はまたゲームクリアに向かって歩く。
少しでもいい、一歩ずつゆっくりと歩いていく。
兄貴の言うとおり、最後に勝つのは俺達ゲームプレイヤーなんだからな!
そんな事を思いながら攻略し隊は攻略会議へと歩みを進めた。
………はずだった。
ぼっち
「……なぁお前ら。」
脚竜&オクト
「??」
しばらく歩いてたら兄貴が振り向いてこう聞いてきた。
ぼっち
「………攻略会議ってどこでやってんの?」
脚竜&オクト
「……………………。」(゜Д゜)
脚竜&オクト
「ハァァァァァァァァァァ!?」
オクト
「いやアンタまさか場所知らないのに行くつもりだったの!?」
ぼっち
「おいさりげなく敬語が無くなってんぞ殺すぞ?」
脚竜
「バカだろ!お前絶対にバカだろ!俺でもしないわそんなしょうもないリサーチミスなんて!」
ぼっち
「お前、弟の分際でなに俺にバカなんて言ってんだ殺すぞ?」
脚竜&オクト
「うるせぇ!」
ぼっち
「よーしわかったじゃあ攻略会議に行く前にこの俺様が直々に特殊訓練を実施しよう。
お前ら死ぬ準備は出来てるな?」
脚竜&オクト
「先程の無礼、大変申し訳ございませんでした!」
ぼっち
「わかればよろしい。
んじゃ行くぞ。」
脚竜
「情報無いのにどうやって行くんだよ。」
ぼっち
「安心しろ、俺の野性の勘はよく当たるからな。」
オクト
「ほんとかなぁ………。」
………やっぱりこの先不安です。
~トールバーナ~
現在一層の中間地点と言っても過言ではないこの場所で攻略会議が行われようとしていた。
このゲームに囚われて早くも1ヶ月。
しかし、未だにボスの攻略に向かえておらず、現状一切の進展がない。
故にこうして様々な実力のあるプレイヤーが集まり、この一層のボスの攻略を模索し、そしてクリアへの一歩を踏み出す。
Yun
(………っていった感じかな。)
今、彼女が待ちに待っていた攻略会議はそこそこ順調そうだった。
予定時刻より5分は過ぎているがそれでもそこそこの賑わいがある。
時間にもそこそこルーズなようだ。
Yun
(人数は大体四十人位か………)
見ただけでも大体はわかるが、やはりこの一層においてはかなり高レベルの人間が多い。
そして武器もまぁ一層ではかなり強い方の武器も多く持っている。
とはいえ、ベータテスターがこの中にいるのは紛れもない事実だ。
しばらく前にアルゴから聞いた話では、『テスター狩り』などということをしているプレイヤーもいるらしく、例えVRの世界でも現実世界でも、差別や下らないことでの争いは避けれないのだろうかとつくづく思う。
Yun
(まぁ、大抵はベータテスターが自分の利益だけで動いて狩場を真っ先に取りにいって他の何も知らない初心者プレイヤーを見捨てたっていう勝手な見解からそう言われてるんだろうなぁ………。)
Yun
(たぶん、この会議の最中にそういうことを言うやつもいるだろうなぁ。)
そんな事を考えたいたらいつの間にか現れた青髪の青年が広場の中央にいた。
たぶん、攻略会議が始まるのだろう。
ここからはアルゴに頼まれた仕事を始めることにしよう。
Yun
「さてと………この会議、どうなるかな………。」
???
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!
みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっち来ようか!」
かなり堂々としている喋りの主は長身の各所に金属防具を煌めかせた
ある程度の事は友人のアルゴから聞いてはいたが、助走なしで広場中央にある噴水の縁に飛び乗るほどの高ステータスの持ち主であることはわかった。
さらに髪の色も変えているということは、かなりの実力があるとYunは密かに思った。
ディアベル
「今日はオレの呼び掛けに応じてくれてありがとう!
知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!
オレは『ディアベル』、職業は気持ち的に『ナイト』やってます!」
すると、噴水近くの一団かどっと沸き、口笛などに混じって
『ほんとは〔勇者〕って言いてーんだろ!』
という言葉が聞こえた。
これだけでも、このディアベルという人間がどれ程の信用を得ているのかがよくわかる。
Yun
(ふむ、学校でいう学級委員タイプね。
常に率先して誰かを引っ張り、人のために動けるやつ。)
そう考えながら、Yunはメモ代わりに使っている紙に記録をし始めた。
ディアベル
「さて、こうして最前線で活動してる、いわばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど………」
ディアベルがここまで言ったところで少しバタバタと慌てて走ってくる音が聞こえ、集まりの端っこにどことなく見覚えのある三人の男がぜぇぜぇと息切れしていた。
オクト
「すみません!お………ぐぇっ?!」
見覚えのある男その1のオクトが何かを言おうと大声で叫ぼうとして、となりの見覚えのある友人に騙された男が首を絞め、言葉を無理矢理止めさせた。
そして、その男は申し訳なさそうに
ぼっち
「すみません、こいつバカなんで、あはは……。」
と苦笑いした。
気になるので少しだけフラりとその三人、『攻略し隊』の三人にYunは気づかれないくらいの距離まで近づいていった。
オクト
「ちょっと何するんですかぼっちさん!」
ぼっち
「うるせぇ、大声で叫んで恥ずかしく思わないのか!!」
オクト
「でも遅れたならその事の報告を…………」
脚竜
「オクト、ここは学校じゃねぇんだからべつにいいだろ。」
オクト
「でも………。」
ぼっち
「でももくそもあるか、今回に限ってはお前が反論する事は許さん。」
オクト
「遅れたのぼっちさんのせいなのに。」ボソッ
ぼっち
「ほほう、いい度胸だなオクト、俺は今あそこにいる『鼠』相手にイライラしててなぁ、機嫌悪いんだわ。
死にたくなければ黙ってろ。」
オクト
「……ひどいよ……こんなの、あんまりだよ………。」
ぼっち&脚竜
「「うるせぇ黙れ。」」
オクト
「」(´・ω・`)ショボン
毎度毎度思うが、オクトがあまりにも不憫なことが多い気がする。
ディアベル
「……よし、それじゃ話を続けようか!」
攻略し隊の奇襲(笑)で途切れてしまったディアベルの話がようやく始まるようだ。
ディアベル
「今日、オレたちのパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。
つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。
第一層の………ボス部屋に!」
その言葉を引き金に、プレイヤーがざわめく。
さすがにアルゴから情報をある程度はもらってたけど、第一層迷宮区は二十階建てで、もうすでにそんなところまでマッピングされているとはビックリした。
ディアベル
「一ヶ月、ここまで一ヶ月もかかったけど……それでもオレたちは、示さなきゃならない。
ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。
それが今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」
再びの喝采、まぁ、言っていることは本当に誰かを導く姿は、かの指導者リンカーンほどではないにしよ、あの状況をここまで改善できるほどに非の打ち所がない発言だった。
無論、攻略し隊の連中も(一人過剰なリアクションをしてるやつがいるが)拍手を送っていた。
???
「ちょお待ってんか、ナイトはん。」
そんな声が低く流れ、歓声がピタリと止んだ。
そして、まるでサボテンのような頭をした男はディアベルの美声とは正反対の濁声で唸った。
???
「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな。」
ディアベル
「こいつっていうのは何かな?
まぁ何にせよ、意見は大歓迎さ。
でも発言するなら一応名乗ってもらいたいな。」
フン、とサボテン頭が鼻を鳴らし、一歩、二歩と進み出て、噴水の前まで達したところでこちらに振り向いた。
キバオウ
「わいは『キバオウ』ってもんや。」
キバオウという男がそう言った時、近くにいた攻略し隊の連中がなにやらヒソヒソと話していた。
脚竜
(なぁ兄貴、あの髪型ってどう見てもモンハンのスパイクハンマーだよね?)ヒソヒソ
ぼっち
(いや、違うな。あれはドラクエのとげぼうず…いや、ばくだんベビーだな。)ヒソヒソ
オクト
(ちょっと!聞こえますよ!)ヒソヒソ
脚竜
(うーん、ドラクエならモーニングスターじゃないあれ?)ヒソヒソ
ぼっち
(愚弟にしてはいいセンスだな。)ヒソヒソ
オクト
(だから聞こえるからやめましょうよ!あとでなに言われても俺は知りませんよ!)ヒソヒソ
ぼっち&脚竜
(あぁ、そんときは全部お前のせいにするから安心しろ。)ヒソヒソ
オクト
(オイコラ。)ヒソヒソ
そのやりとりに思わず笑いそうになったが、今の私にはちょっとした仕事があるため、そこら辺で攻略し隊とは距離を置いた。
その後、キバオウは鋭く光る両目で広場の全プレイヤーを睥睨し、さらにドスの利いた声で言った。
キバオウ
「こん中に、五人か十人、ワビィ入れなあかん奴らがおるはずや。」
ディアベル
「詫び?誰にだい?」
ディアベルはそう聞き直したが、キバオウはそちらを見ることもなく、憎々しげに吐き捨てた。
キバオウ
「はっ、決まっとるやろ。今まで死んでいった二千人に、や。
奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが!!」
ここに来てまた攻略し隊の連中がヒソヒソし始めたので再び私は近づいてみた。
脚竜
(なーんか感じ悪いなあのスパイクハンマー。)ヒソヒソ
ぼっち
(まぁ、あのとげぼうずの言いたいことは分からんでもないな。)ヒソヒソ
オクト
(……でも、もう少し言い方があるんじゃないんでしょうか………。
あんなきっぱり拒絶した言い方しなくてもいいのにモーニn……キバオウさんも。)ヒソヒソ
正直、私もオクトの言ったことには賛同したいし、そうだとも思う。(あと地味に名前間違えそうになってたなアイツ。)
しかし、『テスターが悪』だという認識が少しでも存在する以上、それ以前の問題である。
現状の私たちではどうしようも無いことは事実。
その証拠にその手の事に正論を叩きつけるタイプのぼっちさんが(脚竜談)ほとんど何も言っていない。
あの人も状況を判断した上で黙っているのだろう。
ディアベル
「キバオウさん。君の言う『奴ら』とはつまり……元ベータテスターの人たちのこと、かな?」
さすがのディアベルも厳しい表情で確認した。
キバオウ
「決まっとるやろ」
キバオウは背後の騎士を一瞥してから続けた。
キバオウ
「ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にダッシュではじまりの街から消えよった。
右も左も判らん九千何百人のビギナーを見捨てて、な。
奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。
………こん中にもちょっとはおるはずやで、ベータ上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。
そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし預かれんと、わいはそう言うとるんや!」
ここまで言われるとさすがの攻略し隊ですらも黙りこんだ。
無論、ベータテスターではない私もそれは同じ事だった。
しかし、キバオウの考えは半分正解で半分が不正解である。
彼はいかにもベータテスターが全く死んでないと勘違いしてるようだが、これについては私も統計を取ってる。
(まあ、これもアルゴに頼まれた事だし、誰にこの情報を売ったのかもしらないけど。)
そして、私の計算が間違いでなければ、現在までの死者二千人のうち、新規参加プレイヤーは約千七百人、そして、それを割合に直すと、新規プレイヤー死亡率がだいたい十八パーセント。そして、元テスターの死亡率は四十パーセント近くになる。
理由は単純明快、ベータテストの時と同じだと考え、その差異がピンポイントに突き刺さる、すなわち慢心。
たぶん、同じMMOゲームだと思って、引くべきポイントを間違えたんだろう。
もしかしたら、私自身もそうなってたかもしれないし。
Yunがそこまで考えた時、手が上がるのが見えた。
ディアベル
「ん?君も発言かい?」
???
「あぁ、発言の許可を貰えるか?」
ディアベル
「いいよ、君の名前は?」
ぼっち
「俺の名前は『ぼっち』だ。まぁ見ての通り三流プレイヤーだな。」
ぼっちが発言することを聞いた途端、回りからヒソヒソと声が聞こえてきはじめた。
ぼっち
「そして、俺はキバオウさんの言っていることは正しいと思っている。
そりゃ、ベテランの人間がビギナーを見捨てていくなんて非道極まりないだろうからな。」
そう言った時、遠くにいたキリト(?)とかいうプレイヤーの顔が少しだけ曇ったのが見えた気がする。
ぼっち
「実際に苦労してるのはいつも俺達ビギナーだ。もちろん、死人が多いのもな。
そうだろ、キバオウさん?」
キバオウ
「せや!あいつらがビギナーを見捨てずにちゃんとしとったら死ぬはずのなかった人間もおるは…………」
ぼっちがまぁまぁまぁ、とキバオウの話を手で遮って言った言葉は衝撃的だった。
ぼっち
「しかし、それはそれ、これはこれだ。
俺が言いたいのはな、努力もしない奴らも悪いということだ。」
キバオウ
「な、なんやと!」
キバオウや他のプレイヤーもどよめいた。
しかし、ぼっちはそれでも己の話を続けた。
ぼっち
「確かにベータテスターの連中は一部の奴らはクソだ。アンタの言うとおり、非道極まりないね。
だがな、その事を踏まえたとしても俺はやはりベータテスターを嫌う連中が努力する気もなく、ベータテスターから装備、金を巻き上げて攻略の足を引っ張るただのバカな猿にしか………いや、いかん、それでは猿に失礼だな、猿以下にしか見えんな。
考えればわかる事だろう?強くなるためにはその分学び、努力する必要がある。
それを怠ったくせにやれテスター上がりが悪だのそんな事を抜かして迷惑かけるだけなら今すぐここで踵を返してさっさと一層の街で引きこもってろっていう話だよ。
わかったか、スパイクハンマーさん?」
その瞬間、隣にいた脚竜が吹き出した。
さらに隣のオクトも笑いをこらえるのに必死だった。
キバオウ
「そうそう、モンハンでも最初の内は切れ味が良くてビギナーにも使い勝手のええ武器………って、誰がスパイクハンマーや!ワイの名前はキバオウやっ!!」
なんとキバオウは清々しいほどに綺麗なノリツッコミを披露してくれた。
というかこの人もモンハン知ってるんだ。結構意外ね。
ぼっち
「あーすまん、間違えたわ、とげぼうずさん。」
ここで私も含めて会場の皆が少しずつ笑いが増えてきた。
まさかのドラクエ5における初期モンスターの一角だ。
知っている人も多いだろう。
キバオウ
「何がとげぼうずや!さっきも言うたがワイの名前はキバオウやっていいよるやろうが!」
ぼっち
「あ、ごめんなさい、モーニングスター。」
ここまで来るとさすがに私やアルゴも含めて会場が爆笑の嵐だった。
先ほどまであったさん付けも無くなり、もはや敬意というものが一切感じられなかった。
ぼっちはあえて自分が悪人として、人の名前をわざと間違うことで話をある程度反らしつつ、会場の流れを変えていった。
その辺りを含めると脚竜の言うとおり、あのぼっちという男が天才だということを改めて理解出来た。
キバオウ
「も、モーニングスター………、ほやから!さっきから!ワイの名前は!キバオウやって言うとるやろうが!!」
さすがにキバオウですらもキレた。
しかし………。
Yun
(スパイクハンマーに引き続き、モーニングスター………プフッ………。)
私も既に笑いを堪えるのに必死だった。
そんな笑いの空気を遮るように会場で一人の男の手が上がった。そして、遠巻きに見えたが、アルゴが抜け出しているのが見えた。
???
「発言、いいか?」
人垣の端からぬうっと進み出るシルエットがあった。
とても身長が高く、百九十くらいはあるだろう。
肌はチョコレート色であることから、たぶん日本人とはまた違う人種の人なのかもしれない。
ぼっちはいつの間にか元の位置に戻り、座っていた。
キバオウと同じく噴水の前まで進み出た筋骨隆々たる巨漢は、四十数人のプレイヤーに軽く頭を下げると、猛烈な身長差のあるスパイク………キバオウに向き直った。
エギル
「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ、その責任を取って謝罪、賠償しろ、ということだな?」
キバオウ
「そ、そうや。」
一瞬気圧されたように足を引きかけたキバオウだが、すぐに前傾姿勢に戻し、爛々と光る小さな眼てエギルと名乗る斧使いを睨み付け、叫んだ。
キバオウ
「さっきの男にも言うたかもやけどあいつらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ二千人や!しかもただの二千ちゃうで、ほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ!アホテスター連中が、ちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃ここにはこの十倍の人数が……ちゃう、今頃は二層やら三層まで突破できとったに違いないんや!!」
Yun
(まあ、残念だけどその二千人のうちの三百人はあなたの言うアホテスターなんだけどね、キバオウさん。)
私はそんな事を考えていたが、もちろんこの事を知っているからである。
ま、吊し上げが怖くて名乗れないベータテスターがいると思うし、反論してもこの状況のプラスにはならないだろうしね。
エギル
「あんたはそう言うが、キバオウさん。金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ。」
エギルが見事なバリトンで応じた。
彼のはち切れんばかりの筋肉を覆うレザーアーマーの腰につけた大型ポーチから、羊皮紙を綴じた簡易な本アイテムを取り出す。
もちろん、私は見たことのある代物だ。
エギル
「このガイドブック、あんただって貰っただろう。
ホルンカやメダイの道具屋で無料配布してるんだからな。」
そう、あれはアルゴが作ったガイドブック。
しばらく前に無料配布を開始してた………ん?
なんか、向こうからすごい殺気がするわね。
ぼっち
(あのクソネズミ……………。)ニブニブニブニブニブ
脚竜
(あ、兄貴落ち着いて………。)
オクト
(ぼっちさん怖い。)
キバオウ
「貰たで。それが何や。」
エギル
「このガイドは、俺が新しい街や村に着くと、必ず道具屋に置いてあった。あんたもそうだったろ。情報が早すぎる、とは思わなかったのかい?」
キバオウ
「せやから早かったら何やっちゅうんや!」
エギル
「こいつに載ってるモンスターやマップのデータを情報屋に提供したのは、元ベータテスター達以外にはあり得ないって事だ。」
Yun
(……まぁ、情報の回収は私が勤めたんだけどね。)
プレイヤー達がざわめき、キバオウがぐっと口を閉じた。
そして、その背後で
エギル
「いいか、情報はあったんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだと俺は考えている。
このSAOを他のタイトルと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った。
だが今は、その責任を追及してる場合じゃないだろ。
俺達自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されると、俺は思っているだがな。」
エギルの見事な演説っぷりに私も思わず拍手をしそうになった。
この人も私と同じ考えに至ったわけだ。
そして、ディアベルが夕日を受け、紫色に染まりつつある長髪を揺らして、もう一度頷いた。
ディアベル
「キバオウさん、君の言う事も理解は出来るよ。
俺だって右も左も解らないフィールドを何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ。
でも、そこのエギルさんの言うとおり、今は前を見るべき時だろ?元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略の為に必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら、何の意味もないじゃないか。」
さすがはナイトを自称するだけはある。
聴衆も深く頷いているのが何人かはいた。むろん、そのなかに攻略し隊も入っている。
(相変わらずオーバーリアクションの奴が一人いるけど。)
ディアベル
「みんなそれぞれ思うところはあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破する為に力を合わせて欲しい。
どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。
ボス戦では、チームワークが何より大事だからさ。」
キバオウ
「……ふん、ええわ、ここはあんさんに従うといたる。でもな、ボス戦が終わったら、キッチリ白黒つけさせてもらうで。」
そう言うとキバオウさんはスケイルメイルをじゃらじゃら鳴らしながら集団の前列に引っ込んだ。
エギルさんも同じく、元居た場所まで下がった。
結局のところ、会議らしい会議はなく、騎士ディアベルのこの上なく前向きなかけ声と、それに応じる参加者の盛大な雄叫びで締めくくられた。
そして、ディアベルの「解散」の声が響き、仮の攻略会議は終わった。
そして、私はその事を記入し終わり、帰ろうかと腰を上げたときに、聞き覚えのある声が何故か走ってきた。
オクト
「はぁ……はぁ……よかった、Yunさんも居たんだ。」
Yun
「うん、まあね。んで、どうしたのよそんなに急いで?」
オクト
「じ、実は、少しだけパラメーターが余ってるんだけど何か良い割り振りないかなって?」
どうやら私に余りのパラメーターの割り振りを聞きに来たみたいだ。
………正直面倒だから、
Yun
「AGIでも上げといたらいいんじゃない?」
そう言った途端、オクトは素早くメニューをだし、パラメーターを割り振った。
オクト
「ありがと、Yunさん!」
ぼっち
「おーい盾ー!置いてくぞー!」
オクト
「はいはい、今行きますよー!」
そう言ってオクトは走っていった。
いつも思うけど、アイツは本当に行動力がすごいわ。
Yun
「………さーてと、私も帰ろっかな。」
この会議で動いたのはやはりキバオウなどのベータテスターアンチ、そしてベータテスター。
あの会場にいたベータテスターは私とアルゴで集めた情報が正しければ6人。
Yunが開いたノートの端には独自で調べたベータテスターの名前が載ってある。
そのうち三人は名前がわからないけど、残り三人は知っている。
一人はディアベル、そして残り二人は…………。
Yun
「まさかベータテスターだったなんてね。正直私ですらも驚いたし、上手く隠してたわ。」
そのページには、
ぼっちと脚竜の文字が書かれていた。
次回予告(?)
オクト
「とうとう俺達『攻略し隊』の出番だ。
これから本当にボスを攻略しに行くと思うとすごくドキドキする。
今までの経験を生かせば絶対に勝てるはずだ!!
え?チーム作らないといけないの?
あぁ、オワタ/(^o^)\
次回、ソードアートオンラインジェノサイドメモリアル第九話~攻略会議後編~。
本当に大丈夫かなこれ。」
ぼっち
「……なぁオクト、いつも思うんだがいいか?」
オクト
「なんですか?」
ぼっち
「……なんで誰もいない方向に向かって喋ってるんだ?
正直気味悪い。」
オクト
「メメタァ。」
~To Be Continued~