ソードアートオンライン~グランドメモリアル~   作:Wandarel

13 / 26
どうも皆さん、SAOのアプリでそこそこの爆死をしているwandarelです。
さて、今回でよーやく終わりますよ!
(ネタバレになるから何がとは言えないけど)
今回はそこそこいい感じにまとめれたはずです。
もちろん感想などもよろしくお願いします!
※なお、次の話はかなり短めになっておりますのでご注意を


第十一話~違和感~

 

ボス部屋に入り、H隊が思ったことはひとつ。

 

オクト

「………広っ。」

 

普段は鋭いツッコミを放つオクトが語彙力を無くすほどにとにかく広かった。端から端までどのくらいあるのかがわからなくなるくらいに広く、少し暗いその部屋を見ていると、ボス部屋の左右の壁の松明が燃え上がり、奥に向かって数を増やしていった。

そして内部の明度も光源がジェネレートされる度に上昇していき、部屋の最奥部に粗雑だが巨大な玉座が設けられ、そこに坐する何者かのシルエット。

ディアベルか高く掲げたままの長剣をさっと前に振り下ろした。

それを合図に総勢四十七名からなるボスモンスター攻略部隊は、盛大な鬨の声をあげ、一気に大部屋へと雪崩れ込んだ。

まず最前列で突進したのは、鉄板じみたヒーターシールドを掲げるハンマー使いと、彼に率いられるA隊だ。その左斜め後方を、斧戦士エギル率いるB隊が追う。右にはディアベルと彼の仲間五人によるC隊と、長身の両手剣使いがリーダーのD隊。さらにその後ろをキバオウ率いる遊撃用E隊と長柄武器(ポールアーム)装備のF隊、G隊が三パーティーで並走している。

そして、ぼっち率いるH隊はその後ろを走っていた。

すると、やはり脚竜が不満そうに呟いた。

 

脚竜

「なーんで俺達後ろにいるんだよ………。」

 

オクト

「たぶんぼっちさんに考えがあるからじゃないか?」

 

キリト

「あぁ、アイツなら何かしら悪巧みしてるだろうからな。」

 

アスナ

「………悪巧みねぇ。」

 

ぼっち

「うっせぇなぁ悪巧みして何が悪いんだよ!」

 

そんなことを言っている間に、A隊リーダーが、玉座との距離が二十メートルをきったその瞬間、それまで微動だにしなかった巨大なシルエットが猛然と跳んだ。

空中でぐるりと一回転し、地響きとともに着地し、オオカミを思わせるあぎとをいっぱいに開き、吼える。

「グルルラアアアッ!!」

『イルファング・ザ・コボルドロード』

ぼっちから聞いてた通り、大きく二メートルは軽く越える体躯。恐ろしいほどに輝く隻眼。右手に骨製の斧、左手に革を貼り合わせたバックラー、腰の後ろには差し渡し一メートル半はあると思われる湾刀(タルワール)を差している。

何故この事をぼっちが知ってるのかと聞くと、ぼっちは

 

ぼっち

「お前らの知らない人間だが、元ベータテスターの友人がいて、そいつから情報をもらった。」

 

攻略の前日にそう言われ、全員納得し今に至るが、今も戦いながらオクトだけは妙に引っ掛かっていた。

 

オクト

(……ホントにぼっちさんにテスターの友人がいたのだろうか?しかもキリトさんとアスナさんはともかく、オレと脚竜はぼっちさんからそれよりも前にその情報を教えられていたんだけど、どうあっても的確すぎるし、アリバイが完璧すぎる。逆に完璧すぎておかしいくらいだ。………もしかして、何か隠し事をしてるんじゃ……。)

 

そこまで考えていたときにリアルでの親友『脚竜』から叫ばれる。

 

脚竜

「オクトー!アスナさんと交代だってよ!」

 

オクト

「OK、すぐいく!」

 

今回の作戦を立てたのはぼっちさんだ。

オレでもわかるくらい単純に説明もしてくれた。

まず、アスナ、キリト、ぼっちの三人でボス及び周りの雑魚コボルド撃破のために突っ込む前衛、オクトが支援及び盾役の中衛、脚竜が遠距離からの支援射撃の後衛。

前衛のHP管理もオクトに任せ、前衛の誰か一人でもHPが半減したら脚竜と共に交代して、前衛一人と後衛、中衛の二人を入れ換える。前衛一人のHPが回復したら元に戻す。

かなりシンプルだが、ぼっちさんの算段通りかなりうまくいっている。

HPがギリギリになることもなく、しかも取り巻きのコボルドもアスナさんの凄まじく動きに全くの無駄がない奮戦で蹴散らしていたのもあり、かなり順調だった。

そう思っていると脚竜が並走しながら言った。

 

脚竜

「やっぱ兄貴すげぇな。ホントに俺達五人でもボス殴れたりするんだからな。」

 

オクト

「確かになぁ………あとはオレへの待遇が変わってくれればいいんだけど。」

 

脚竜

「兄貴の事だからそれはないな。」

 

オクト

「あ、やっぱり?」

 

オクトは苦笑いしながらも敵に突っ込み叫んだ。

 

オクト

「こっち向きやがれこのヘタレコボルド!」

 

脚竜

「おっしゃ!狙い撃つぜ!」

 

その頃、ぼっちはコボルド王とその衛兵対プレイヤー四十七人の戦いはぼっちにとってほとんどが想定内の動きで動いていたことに内心にやついていた。

 

ぼっち

(ここまで予想通りだと少し残念だが、いい意味で想定内だな。まずはアスナ。正直キリトから初心者だと聞いてオクトと同じパターンだと思って思わず絶句したくらいだったが、キリトのティーチングがよかったのかはたまたアスナ自身がダイヤの原石だったのかはわからんが、かなり強いプレイヤーだ。正直オレが想定外の要因があるとすれば彼女のセンスと伸びしろだろうな。次にキリト。………こいつも改めて再確認することになったがやはり元々が強い。この手のゲームを熟知してなければできん動きを平然とやってのけるんだからな。偉そうなこと言うとすれば少なくともキリトに限ってはオレを越えれるかもしれん。次にオクト。ここ数日でオレが言ってたこととやってたことをきっちりと覚え、鍛練している。それゆえにこいつもここまで来れたし、俺達もここまで来れた。ある意味こいつの存在はチームの要だな。最後に愚弟。まぁいつも通りバカだな。だがバカなりに多少の努力はしてるのは事実か。)

 

この考えをコンマ五秒で構築し、すぐに戦闘へと戻る。

繰り返しそれを行い、敵を討伐していく。正直に言えばぼっちには更なる野望があった。

最初にぼっちがディアベルの意見に反対した理由でもあるが、雑魚コボルドと言えどフロアボス部屋の雑魚だ。故に経験値もドロップアイテムもLAボーナスと比べれば見劣りするが、それでも高性能なものが多い。

しかしぼっちはその上でボスのLAを奪う気でいた。

この先で必ず勝ち上がるためにも必須なものが多く、ぼっちとしては自分だけでなくH隊の誰かが取れればそれでいいとも思っていた。ディアベルはそれを見越してそう言ってきたのかは知らないが、ぼっちは誰が見ても納得してしまうほど強欲で欲望に忠実な人間だった。

 

ぼっち

(悪いがLAはオレの率いるH隊のもんだ。)

 

前線で歓声が弾けた。

ぼっちはボスの方へ向くとボスの長大な四段HPゲージが最後の一本に突入していた。

ぼっちはそれを見て、H隊にボスへ向かうことを告げよう考えていたその時だった。

ぼっちは言い様のない違和感に襲われた。

 

ぼっち

(なんだこの違和感は………。だが、この感覚は昔味わったこともある……。あの時と同じだ。)

 

ぼっちはコボルド王が骨斧と革の盾を投げ捨て、右手を腰の後ろに持っていくのを見ていた。そして、湾刀が引き抜かれた。情報通りの攻撃パターンの変更である。

そして、ディアベルの指揮の下、C隊の六人がボスの周囲をぐるりと取り巻いた。

 

ぼっち

(…………………!!)

 

ぼっちは違和感の正体に気づいた。あれは湾刀ではない。モンスター専用カテゴリーの…………。

その瞬間、キリトが叫んでいたが、イルファングが発動したソードスキルのサウンドエフェクトにかき消された。

カタナ専用ソードスキル、重範囲攻撃《旋車》。

視界左端のC隊のHP平均値ゲージが一気にイエローに染まった。

そしてぼっちとしては恐れていた状態異常のひとつ、一時的行動不能状態(スタン)をC隊の全てのプレイヤーが受けていた。

ぼっちは賭けに出た。ありったけの目力を己の弟に向けたのだ。

一見なんの意味もなく無意味としか思えないことだが、ぼっちは弟の脚竜の事の大半の事は把握できている。故に、成功すれば犠牲はゼロになるはずだ。

今まさに、コボルド王はディアベルに向かって、ソードスキル《浮舟》を撃とうとしていた。

 

ぼっち

(気づけ、気づけ愚弟!)

 

脚竜とオクトは想像を絶する物を見ていた。攻略チームのリーダー率いるC隊がたった一撃で追い込まれている。そのリーダーであるディアベルが打ち倒されている。

脚竜は何かに気づき、後ろを振り返った。その目線の先には自分の兄、ぼっちがいる。何か言いたげだが、今ここで叫んだとしても多分距離的に聞こえないし、ぼっちが何を考えているのかはわからないはずだった。だが、脚竜はこの土壇場に限っての運と勘はかなり冴えていた。だからこそ出来た兄弟の芸当。

 

脚竜

「オクト!!」

 

脚竜は近くにいる親友オクトに大声をあげた。驚いたオクトがこっちを向く。そして、脚竜は叫んだ。

 

脚竜

「今すぐ走ってディアベルの前でガードを使え!」

 

オクト

「……え?」

 

脚竜

「早く行け!!」

 

オクトはそう言われ走り出した。

そして、オクトにもそれを言われた理由がわかった。今、見たことのないスキルの影響でボスの前で跪いている攻略チームのリーダー、ディアベルにまた見たことのないエフェクトのソードスキルに襲われる寸前だった。

オクトはさらに、加速した。

目の前の騎士を守るために。

 

オクト

「間に合え………間に合えェェェェェェ!!」

 

そして、ソードスキル《浮舟》が放たれた瞬間だった。

ガギィィィィィィン

大きな金属音が鳴り響いた。

 

ディアベル

「………君は。」

 

オクト

「………間に………合った!」

 

が、その《浮舟》自体はスキルコンボの開始技にすぎないため、コボルド王はさらならソードスキル《緋扇》の構えを行っていた。そして、緋扇をオクトに撃ち込んだ。激しい金属音が三連続で鳴った。

だが、今までの経験とオクトが使用した盾専用スキルの《ガード》の影響でダメージはかなり低かった。

だが、やはり最後の突きは衝撃がでかかった。

 

オクト

「うおぉぉあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

叫び声とともにオクトは攻略チームのかなり後方に吹き飛ばされた。

攻略チームが唖然としているなか、ぼっちが叫んだ。

 

ぼっち

「タンク部隊はいちはやくC隊のカバーをしろ!誰一人死なせるなよ!残りの部隊はC隊ロスの分を補うように戦え!刀の範囲攻撃は回りを囲むと発生する!チャンスが来るまでは絶対に回り込むなよ!それとしばらくはH隊が前線を引き受ける!」

 

回りは変わらず唖然としていたが、ぼっちはそれを見てさらに大声をあげた。

 

ぼっち

「死にたいなら話は別だが、生き残りたいならオレの言うことを聞け!安心しろ、オレが命令を出している限り誰も死なせねぇ!」

 

それを聞いたA隊はすぐにC隊の回復などに当たった。

 

ぼっち

「………キリト、カタナスキルのモーションとかを把握してるんだったな?」

 

キリト

「あぁ、そういうお前もだろ?」

 

ぼっち

「まぁな。愚弟、ありったけの弓スキル叩き込め!オクト、アスナ、キリト、お前らはオレについてこい!命令はオレが出す。指示に従っている限り死なせないから今回はお前らは黙ってオレについてこい!」

 

アスナ

「了解。」

 

キリト

「あぁ!頼むぞぼっち!」

 

脚竜

「お?来たねぇ兄貴のパーフェクトタクティクス!」

 

オクト

「わかりました、ここまで来たら従いますよ!」

 

キバオウ

「お、お前ら、何をする気や?」

 

ぼっち

「決まってんだろうが。LA取りに行くんだよ。」

 

ぼっちは強欲で貪欲、そして傲慢な人間だ。故に今回LAほしさにディアベルの意見をはねのけた。だが、そんなぼっちでも己の欲より優先するものもある。

 

ぼっち

(あんだけ頑張ってくれたのに俺だけが欲張ってたら申し訳ないしな。ようやく確信したよ。あんたは変わらないな、あの時と同じく。)

 

目先の利益ではなく遠い未来の利益を選んだディアベルに敬意を払っていた。ぼっちはそんな人間を救うことが己のもう一つの欲である。

 

ぼっち

「手順はセンチネルと同じだ。気を抜くなよ野郎共!」

 

掛け声から始まり、H隊はイルファングに各々突撃した。もちろん、先程の範囲攻撃を撃ち込まれないためにもある程度はまとまって行動していた。

アスナが美しく鋭さもある『リニアー』を、脚竜が弾丸雨中のごとく矢を降らせる『サジッタレイン』を、ぼっちが少し特殊な構えの『ホリゾンダル』を、オクトが多少のノックバック効果のある『フューリースマッシュ』を、キリトが『バーチカル』を撃ち込み、イルファングのスキルをいなしていった。

だが、どこまで行ってもそう順調には行かない。

イルファングの別モーションの攻撃に対応するためにポージングを変えたが故にキリトのスキル発生が無効化され、危険な状態に陥った。

 

ぼっち

「オクト!」

 

オクト

「はい!」

 

すかさずオクトがタンクの役割を果たすが、大きくノックバックした時の怯みで隙が生まれたのをイルファングは見逃さず、オクトへ攻撃した。

 

オクト

(このままじゃ!!)

 

オクトの緋扇の直撃は確実だった。このままではオクトが………。

 

???

「ぬ……おおおおッ!!」

 

太い雄叫びとともに両手斧ソードスキル《ワールウィンド》が撃ち込まれた。

イルファングの野太刀と両手斧が激突し、ボス部屋全体が震えるほどのインパクトが発生し、イルファングは後方に大きくノックバックし、攻撃者は一メートルほど下がっただけで留まる。

割って入り、オクトを救ったのはB隊リーダー、エギルだった。

 

オクト

「あ、ありがとうございます!」

 

オクトが礼を言うと、エギルは肩越しのオクトを見てニヤリと笑った。

 

エギル

「あんた達だけにいつまでもタンクをやられちゃ立場ないからな。」

 

脚竜

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!こっち向きやがれぇぇぇ!!」

 

脚竜が隙ありと、言わんばかりに《シャドウスティッチ》を放ち、連撃を繋げている。

そして、エギルの率いるB隊などが傷が浅かったプレイヤー達が回復を終えて前線へと復帰してきたのを確認したぼっちが叫んだ。

 

ぼっち

「さっきも言ったがボスを後ろまで囲むと全方位攻撃を撃ってくるぞ!技の軌道はオレに任せて正面のやつが受けてくれ!ソードスキルで相殺せずとも盾や武器でしっかり守れば大ダメージは食らわん!」

 

おうと野太く響いた声に苛立ちの混じるコボルド王の雄叫びが重なった。

ここでぼっちは再び脳内で戦略図を広げた。

 

ぼっち

(……武器が変わっているからと思って確認してみりゃやっぱり《センチネル》は増えてやがるな。一応C隊もディアベル含め無事ではあるが低級ポーションの時間継続回復じゃ戦線の復帰は難しい。だが、だからといってエギルや後ろのセンチネルを倒してるE隊とG隊に頼りきりになれば、時間の問題だが確実にセンチネルへの対処が出来なくなるだろう。ならば、キバオウ達ならセンチネルを対処できると仮定しておき、問題はエギルを含む攻略チームのタンク部隊のHPをいかに持たせるかが問題だ。ならば、オレが戦いながらも予備動作から読み取り、イルファングの技を見切る必要がある………か。)

 

この間、わずか二秒。ぼっちは全ての構図を作り上げ、最適な手段を選んだ。

 

ぼっち

「次、右水平斬り!」

 

ぼっちは戦いながらも大声で叫び続けた。

その指示に合わせてタンク部隊は盾や武器を使ったガードに徹した。

これにより多少はマシにはなったがダメージを受けているのは確かだ。

そんな彼らの間を舞うフェンサー《アスナ》とアーチャー《脚竜》、そしてソードマン《キリト》がいた。

彼らは決してボスの正面と後背には回らず、イルファングが少しでも硬直すると、その隙を逃さずに各々が渾身の一撃を叩き込む。もちろん、それを繰り返しているとだれかはボスのヘイトが上がってしまうが、壁の七人、特にオクトが威嚇(ハウル)などのヘイトスキルを適宜使用しターゲットを取り続ける。

ぼっちの考えた盤面は理想的かつ迅速に作られていっていた。

どれか一つの要素が破綻すればその瞬間に崩壊する危うい戦闘が五分近くも続いた。

やがてボスのHPが残り三割を下回り、最後のゲージが赤く染まった。

その瞬間、少し気が緩んだのか、脚竜が脚をもつれさせた。よろめき、立ち止まったのはイルファングの真後ろだった。

 

脚竜

「やっべ!!」

 

ぼっち

「さっさと動け愚弟!」

 

反射的にぼっちは叫んだが、間に合わなかった。ボスが《取り囲まれ状態》を感知し、ひときわ獰猛に吼えた。

全方位攻撃《旋車》が来る。

 

キリト

「う………おおああッ!!」

 

キリトは短く吼え、剣を右肩に担ぐように構え、左足で思い切り床を蹴り付ける。本来の敏捷力ではあり得ない加速度が背中を叩き、キリトの体は斜め上空へと砲弾のように飛び出す。片手剣突進技《ソニックリープ》を放った。

 

キリト

「届……けェェェェェェェッ!!」

 

叫びつつ、キリトは限界まで右腕を伸ばしながら剣を振った。

キリトの愛剣、『アニールブレード+6』の切っ先が《ツムジグルマ》発動寸前のイルファングの左腰を……………。

 

 

捉えれなかった。

 

キリト

「届……かなかった…………。」

 

キリトの決死の一撃は、届くことなく、空を切った。

あとはツムジグルマが決まってしまうのを…………。

 

???

「いいや、よくやったぜキリト。」

 

そんな声が聞こえた。

キリトはその声のした方を見ると、不敵で邪悪、だけど今はとても心強い笑みを浮かべるぼっちがいた。

 

ぼっち

「すまん愚弟緊急事態だ許せ。」

 

脚竜

「なっ!?オレを踏み台にしたッ!!?」

 

ぼっちは走り、脚竜を踏み台にした。そして、

 

ぼっち

「キリト、少し足場になってくれ。」

 

キリト

「一体なにを………」

 

キリトは最後まで聞くことなくぼっちの踏み台にされ空中から落ちた。

その後、ぼっちはある言葉を言い始めた。

それを聞いたオクトと脚竜が小さく「マジか」と呟いた。

 

ぼっち

「オレのこの手が漆黒に染まる!勝利を奪えと蠢き(うごめ)唸る!ダァァァァァァクネス!フィンガァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

ぼっちの一撃がイルファングの脇腹に入り、何連撃かわからないほどのエフェクトが出たが、全てがクリティカルだった。

そしてぼっちはイルファングを貫く形で背後へと行き着いた。しかし、イルファングは怯んでおらず、スキルを決めるために落下している最中だ。

ぼっちは空中でとあるポーズをしながら一言放った。

 

ぼっち

「爆発ッ!!」

 

その瞬間、イルファングの身体を中心に小規模だがかなり威力のある爆発が発生した。そして、イルファングの巨体は空中でぐらりと傾き、必殺の竜巻を生まぬまま床へと叩きつけられた。

 

ぼっち

(………まぁ、この技クールタイムが半日だからなぁ。)

 

「ぐるうっ!」

喚き、立ち上がろうと手足をばたつかせる。人型モンスター特有のバッドステータス《転倒(タンブル)》状態。

 

ぼっち

「キリトッ!!」

 

ぼっちは叫び、それに呼応するようにキリトが叫んだ。

 

キリト

「全員!全力攻撃(フルアタック)!!囲んでいい!!」

 

お………オオオオオオ!!とエギルら七人がこれまでガードに専念させられていた鬱憤を爆発させるかのごとく叫んだ。倒れたコボルド王をぐるりと囲み、ソードスキルを同時に発動させる。

先程のぼっちの《ダークネスフィンガー》でゲージ一本のうちの2割を削っていたのあり、ガリガリと削れていく。

コボルド王が立つまでにHPを削りきれれば勝利、その前に奴が転倒から脱すればその瞬間に《ツムジグルマ》が炸裂し、今度こそ全員を斬り倒す。しかし、コボルド王はもがくのをやめ、立ち上がるべく上体を起こした。

 

キリト

「………間に合わないか!」

 

キリトは押し殺した声でそう叫び、いつの間にか近くにいたH隊に向けて声を張り上げた。

 

キリト

「脚竜!ありったけのスキルと通常攻撃を頼む!」

 

脚竜

「OK!任せろ!」

 

キリト

「オクト!できる限りの大技をぶちこめ!」

 

オクト

「よっしゃあぁ!!やってやるぜぇぇぇ!!」

 

キリト

「ぼっち、アスナ。オレと一緒に頼む!」

 

アスナ

「了解!!」

 

ぼっち

「いいだろう!」

 

残りHPは三パーセント。イルファングは滑らかに垂直ジャンプのモーションに入る。

 

キリト

「行っ………けえッ!!」

 

キリトが絶叫し、三人は同時に地を蹴った。

まず、アスナがエギルたちの隙間を抜け、《リニアー》をボスの左脇腹に撃ち込んだ。

続いてぼっちが居合でもするかのような構えで《ホリゾンダル》を撃ち込んだ。

わずかに遅れ、青い光芒を纏ったキリトの剣がコボルド王の右肩から腹までを切り裂いた。

HPゲージ……残り1ドット。

 

キリト

「お……おおおおおッ!!」

 

全身全霊の気勢とともに剣を跳ね上げる。

先程の斬撃と合わせ、V字に軌跡を描く。

片手剣二連撃技《バーチカルアーク》。

コボルド王の巨躯が不意に力を失い、後方へとよろめいた。

狼に似た顔を天井へ向け、細く高く吼える。その体に、びしっと音を立てて無数のヒビが入る。

両手が緩み、野太刀が床に転がった。直後、アインクラッド第一層フロアボス、《イルファング・ザ・コボルドロード》はその体を幾千幾万のガラス片へと変えて盛大に四散させた。

第一層フロアボス攻略完了。死亡者ゼロ。

誰一人犠牲になることなく、長く、そしてこれからも続く戦いは一時的に終わった。




オクト
「アンタ!今すぐその言葉を取り消せ!」

アスナ
「……え?」

???
「さぁさ皆さんよーく聞いてね。これから話すことは結構重要だよー。」

???
「ずいぶんと滑稽な戦いをしてくれて……まるで道化だな。そうは思わないか?」

???
「………今、なんつった?」

次回 第十二話~竜の逆鱗~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。