ソードアートオンライン~グランドメモリアル~ 作:Wandarel
ようやく第一層終わりますよぉ。ここまで長かった。
そして、大事なことですが、ここから先はちょっとしたダイジェスト風になるので、少しだけ飛ばし飛ばしになります。(時折ボス戦とかなかったりとかり。)
感想や評価のほうもどんどんお願いします!
ボスの消滅と同時に後方に残っていたセンチネルも儚く四散した。
全員が全員、必死であったがゆえに今、この状況を飲み込めずにいた。
オクトは盾を前に構え、脚竜は弓を構えてクリアリングのように周囲を見渡し、ぼっちも剣を抜いたまま硬直していた。たとえベータとのちょっとした違いでなにかが来ても対処できるかのように。
同じ理由でキリトも斬り上げた姿勢のまま動くことができなかった。
その時。小さな白い手がそっとキリトの右腕に触れ、ゆっくり剣を下ろさせた。立っていたのはレイピア使いのアスナだった。栗色のロングヘアをどこからともなく流れてきた涼しい風に揺らしながら、じっとキリトを見ていた。
そして、アスナが小さく囁いた。
アスナ
「お疲れ様。」
その言葉に、キリト達H隊はようやく確信した。そして、
脚竜&オクト
「いよっしゃァァァァァ!!」
脚竜とオクトが盛大に歓声をあげ、顎と拳を付き出していた。
ぼっち
「おいおいお前らまるで城之内じゃねぇかよ。」
ぼっちも安堵したのか、苦笑いしながらも脚竜達の相手を始めた。
そして、それをきっかけにわっ!!と歓声が弾けた。
フォリア
「いやったぁぁぁ!女性プレイヤーなめんじゃねぇ!」
アルムス
「やったなチワワ公!」
脚竜
「おう!って誰がチワワかこのやろー!!」
イオリ
「お疲れ様ぁ!みんな!大勝利だぁー!!」
オクト
「お疲れ様です!イオリさん、ナイスガードでしたよ!」
イオリ
「うんうん!オクトもよくやったぁー!」
カシム
「ナイス!」
ぼっち
「……ふっ。」
両手を突き上げ叫ぶ者、仲間と抱き合うもの、滅茶苦茶な躍り披露する者。そして何故か有名なあの躍りを踊り始める脚竜。
それぞれが勝利の余韻に浸り、騒ぎ続けていた。その時だった。
???
「なんでだよ!」
突然の叫び声に広間の歓声が静まりかえった。
確か名前はリンドだったはずだ。
リンド
「なんでディアベルさんや俺達を囮にしたんだよ!」
キリト
「……囮?」
リンド
「そうだろ!!だって……だってアンタは、ボスの使う技を知ってたじゃないか!アンタが最初からあの情報を伝えてれば、俺達が死にかけることもなかったはずだ!」
この発言に後ろにいるディアベルは黙ったままだった。
そしてその発言が火種となり、残りのレイドメンバーがざわめく。
そしてその疑問に答えたのはキバオウではなかった。
キバオウ率いるE隊の一人、(確か名前がイカロスだった)が走りだし、キリトの近くまでやってくると、右手の人差し指を突き付け、叫ぶ。
ジョー
「オレ……オレ知ってる!こいつは元ベータテスターだ!!だからボスの攻撃パターンとか、旨いクエとか狩場とか全部知ってるんだ!知ってて隠してるんだ!」
ジョーのその発言を遮ったのはエギルやオクトと共に最後までタンクを務めたメイス使いイオリだった。
イオリ
「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だって書いてあったろ?彼がホントに元テスターなら、むしろ知識はあの攻略本とおなじじゃないのか?」
ジョー
「そ、それは……。」
押し黙ったイカロスの代わりにシミター使いのリンドが憎悪溢れる一言を口にした。
リンド
「あの攻略本がウソだったんだ。アルゴって情報屋がウソを売り付けたんだ。アイツだって元ベータテスターなんだから、タダで本当のことなんか教えるわけなかったんだ。」
この身勝手な発言に脚竜、オクト、エギルとアスナが同時に口を開いた。
エギル
「おい、お前………。」
アスナ
「あなたね………。」
脚竜
「おいおいおい……」
オクト
「いい加減にしろよおい……。」
そしてキリトが何かを言おうとした瞬間だった。
どこからか笑い声が、聞こえてくる。
まるで今までの努力を踏みにじるかのような不快な笑い方だった。
その場にいた全員がそちらの方に向いた。
???
「クックックックックッ……フフフフフ…フフハハハハハハハハ!!」
その正体はぼっちだった。
ぼっちは笑い続けながら話し始めた。
ぼっち
「いやはや、お前達ずいぶんと滑稽な戦いをしてくれて……ホントに面白い……そうは思わないかキリト?」
キリトは驚きぼっちの眼を見たが、まるで話に合わせろと言わんばかりに睨んできたため、話に合わせることにした。
キリト
「……まぁ、そうだな。」
ぼっち
「元ベータテスターだと?貴様ら、俺達をあの程度の雑魚と一緒にするんじゃねぇよ。」
リンド
「な、なんだと…?」
ぼっち
「まだわからんか?だから雑魚なんだよテメェらはよ。ベータテストに受かった連中はわずか千人。はたしてそのなかで本物のゲーマーは何人いたと思う?ほとんどはレベリングも知らん素人ばっかりだったぜ。まだテメェら雑魚の方がマシなぐらいにな。」
ぼっちの侮蔑極まる言葉に四十五人のプレイヤーが一斉に黙りこむ。
ぼっち
「……だが、俺達は違う。俺達はベータテスト中に、他の誰もが到達出来なかった層まで行ったよ。ボスのカタナスキルのことを知ってたのもカタナを使うmobを散々戦ってきたからだ。他にも色々知ってるぞ?アルゴなんかどうでもよくなるくらいにはな。」
「……なんだよ、それ……」
誰かが掠れた声で言った。
「そんなの……ベータテスターどころじゃねぇじゃんか……もうチートだ、チーターだそんなの!」
周囲からもそうだ、チーターだ、ベータのチーターだ、という声が幾つも沸き上がる。それらは混じり合い、《ビーター》という奇妙な単語になった。
キリト
「……《ビーター》、いい呼び方だなそれ。」
キリトはにやりと笑い、その場の全員をぐるりと見回しながら、はっきりした声で告げた。
キリト
「そうだ、俺達は《ビーター》だ。これからは、元テスターごときと一緒にしないでくれ。」
キリトが素早くメニューウィンドウを開き、装備を変えた。ボスドロップのユニーク品、《コート・オブ・ミッドナイト》である。
ぼっちがキリトについていく形で並んで歩いているときにぼっちは高らかに告げた。
ぼっち
「二層の転移門は俺達がアクティベートしといてやるよ。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから死にたいならついてこいよ。」
そう言ったあと、黒い二人は全く同じ歩調で歩きだした。
ぼっち達が立ち去った後のボスフロアは一定の憎悪に満ちていた。
ジョー
「ビーターさえいなければ俺達だって………。」
イオリ
「……もういいだろ、過ぎたことなんだからさ。」
リンド
「それで許されるはずがないだろ!そうだろ、ディアベル!」
ディアベル
「……………。」
ディアベルは終始うつむいて黙っていた。
だが、ここからさらに飛躍した話になる。
リンド
「そういえば、H隊の連中にもビーターがいるんじゃないのか?」
そう言われた脚竜はゾッとした。
オクト
「いや、俺達はニュービーだ!このゲームだって初めてだぞ!な、脚竜!」
脚竜
「……………………。」
オクト
「脚竜?」
急に自分の親友が黙り、うつむいた。
そして一言、ポツリと呟いた。
脚竜
「………俺も元テスターです。隠しててすみませんでした。」
脚竜の突然のカミングアウトにオクト達は驚きを隠せなかった。
アルムス
「じゃあ、あれも………あのときの言葉とかもウソだったのか?」
脚竜
「それは………。」
脚竜の言葉を遮るようにイカロスが叫んだ。
ジョー
「こいつ、確か片方のビーターの事を兄貴って呼んでた!だからこいつも、ビーターだ!」
脚竜
「それはちが………。」
ジョー
「言い訳なんていいんだよ!」
イカロスは脚竜に弁明の余地すら与えなかった。もはやビーターかどうかだけで罪に問われるらしい。
オクト
「アンタいい加減にしろよ!さっきからなんでそんなこと言えんだよ!」
ジョー
「そりゃそうだろ!こいつらビーターさえいなけりゃ皆もっと安全に戦えただろ!」
そしてジョーがさらに叫んだ。
ジョー
「もし現実でも兄弟なら騙してた弟も腐ってるけど、兄の方はもっと腐ってるだろうな!」
瞬間、オクトの脳裏に一つの記憶が蘇った。
かつて自分が泣き虫だった頃にさらに泣かされたときのこと。それの原因は不明。だけどそれをしたのは……。
脚竜
「………今、なんつった?」
オクトは覚えている、この言葉と表情を。
オクト
「アンタ、今すぐその言葉を取り消せ!」
ジョー
「いいや、取り消さないね!こいつらみたいな人間のクズがいるから攻略も進まないんだ!」
そう言いきった直後だった。脚竜がイカロスに向かって掴みかかった。イカロスが驚いた表情をしてると、脚竜が吼えた。
脚竜
「今なんつったゴラァ!!誰の兄貴がクズだとボケェ!!」
今までの元気で快活な少年のイメージだった男の子が今、この瞬間だけは逆鱗に触れた竜の如く怒っていた。
オクトは知っている。脚竜は家族や友人をバカにされるのをひどく嫌っている。だから怒る。
脚竜
「テメェらみてぇななにも知らねぇ、知る気もねぇクソがなにを抜かしてんだゴラァ!!オレは自分がいくらバカにされようが我慢出来るがよぉ、オレの家族や友達をなにも知らねぇでバカにすることだけは我慢ならねぇ!」
オクト
「やめろ脚竜!」
脚竜
「うるせぇどけ!こいつだけは絶対許さねぇ!」
オクトが制止に入るも、脚竜の怒りはそんなものでは押さえられないほどだった。
そこからは一方的にジョーにキレていた。
オクト
(まずい……このままじゃ。)
そして、オクトが恐れていた事が起きた。
脚竜が武器を取り出し、至近距離で大技を撃とうとしていたのだ。
ジョー
「お、おい。PKは犯罪だぞ、わかってるのか?!」
ジョーは動揺しながらもそう言うが
脚竜
「あぁ?ビーターらしく汚い手を使って今ここでテメェを殺してやるってだけだろうが!」
あの目はあの時と同じ殺気を一切隠していない眼だった。
このままではジョーが死に、脚竜は罪人になる。
どうにかして止めなくては。
その時、ふわっと脚竜は誰かの腕に包み込まれた。
いつの間にか脚竜の後ろにいたYunだった。
Yun
「ほいほい、落ち着け落ち着け。」
脚竜
「………Yun………さん?」
獰猛で怒り狂った竜となっていた脚竜を一瞬で鎮めたのがすごかったが、どこからともなく現れたのには全員が驚いた。
Yun
「気持ちはわかるけどやりすぎ。ここは殺し合いの場所じゃないでしょ?さすがのアンタでもわかるよね?」
Yunは脚竜の頭を撫でながらそう言った。
脚竜
「…………うん、すまねぇ。オレどうかしてたよ。」
脚竜も冷静な考えが出来てなかったのか、自分のやろうとしてたことがとても危険なことを知り、冷静になった。
Yun
「よろしい。……んで、ジョーだっけ?アンタも私怨で不満をぶつけんのはやめなさい。これ以上は無駄よ。」
ジョー
「う………」
Yun
「せっかく勝ったんだから今くらいそんなの忘れたっていいじゃない。ね?」
ジョーは言いくるめられ、再び押し黙った。
脚竜は落ち着いて、ゆっくりと歩き始めた。
オクト
「ちょ、どこに行くんだよ!」
脚竜
「兄貴達のところだ。オレはなにがあっても兄貴についていくよ。」
そう言いきった脚竜は数歩歩いた瞬間に振り返り、一発の矢を撃った。
その矢は、ジョーの顔面ギリギリを捉えていた。
脚竜
「オレはさっき兄貴をバカにしたことを絶対に許さないからな。次、兄貴をバカにしたら命はないと思っておけよ。」
そう言って脚竜は後を追うように走っていった。
ジョー
「……なんだよ、少し小バカにされただけで。」
ジョーのその言葉に今度はオクトが静かにキレた。
オクト
「……ジョーさん、それは違いますよ。あなたに大切な人はいますか?」
ジョー
「それがどうしたんだよ?」
オクト
「脚竜に……アイツにとって大切なのは自分の家族なんですよ!アンタは自分の大切な人をバカにされて平然といられるんですか?!」
ジョー
「それは………。」
オクト
「第一に脚竜とぼっちさんは………。」
オクトがここまで言った時にYunに制止をかけられた。
Yun
「オクト、一応ここはゲームなんだから個人情報を教えちゃダメでしょ?アンタの言いたいこともわかってるから落ち着きなさい。」
オクト
「…………はい。」
キバオウ
「……そういや嬢ちゃんはなにをしに来たんや?喧嘩の仲裁だけっちゅーわけやないやろ?」
Yun
「あ、そうだそうだ、忘れてたよ。私の仕事これからだからねぇー。よっこいしょと。」
Yunは攻略チームのできる限り中心に寄って、周りを見渡し、二度ほどうなずいたあとに少し妖艶な笑みを浮かべ、言った。
Yun
「さぁさ皆さんご注目ー。今から重大なこと言うから耳の穴かっぽじってよーく聞きなさい。」
そして、Yunは衝撃的なことを言い放った。
Yun
「ここに来ていまだベータテスターであることを隠してるやつがいるからそれの暴露に来ましたー。」
リンド
「………なんだって?!」
オクトやアスナも驚きを隠せなかった。
エギル
「……お嬢ちゃん、状況がわかってんのか?今ここでそんな事を言うのは………。」
Yun
「まぁまぁ最後まで聞いていきなさい。」
エギルが反論しようとしたが、Yunに抑え込まれた。
Yun
「まず、あの三人以外にあと二人はベータテスターいるわ。………まずはカシムさん。」
カシム
「……………。」
アルムス
「……カシム。」
カシム
「………バレたところでどうしようもないだろ。死ねと言うなら死ぬさ。」
そして、Yunは続けた。
Yun
「それじゃもう一人発表するわ。ここにいる最後のベータテスターはね…………ディアベル、アンタよ。」
このカミングアウトに一同は戸惑い、ざわつき始めた。
え?ディアベルさんが?ありえないだろ?などという話し声がしてきた。
キバオウ
「……どういうことや、なんでやディアベルはん!なんで言わんかったんや!」
その問いにもディアベルはうつむきなにも言わない……いや、言えないままだった。
代わりにYunが答えを言った。
Yun
「アンタ達ニュービーを引っ張っていくためよ。この人はさっきのビーター達のように目先の利益じゃなくて、遠い未来の利益を選んだのよ。言わなくてもわかると思うけど、遠い未来の利益っていうのは、『全員が生きて帰ること』そのためにこの人は自分の素性を隠して、アンタ達の為に動いた。率先して人の前へと出たのよ。さして今回、死にかけたのもぶっちゃけディアベルのせいね。たぶん、アンタ達を率いるリーダーとして、そのユニーク品をゲットしたかったのよ。ビーターに奪われるのを防ぎながらね。だけど、その焦りが今回の攻略で危険な状態にもなった。……とりあえず私が思うにはそんなことだと思うけど何かちがうことはあるかしらディアベル?」
Yunにそう聞かれたディアベルはゆっくりと立ち上がった。
ディアベル
「はは……全部見抜かれてたんだね。……カッコ悪いなぁオレって。」
ディアベルは立って前を向くと、かつてトールバーナーの噴水広場で激励をしていたときよりも大声で言った。
ディアベル
「オレは元ベータテスターだ!あの二人と同じように君たちが知らないことを知っている。けど、今回のカタナスキルについては全く知らなかったし、イルファングが使うとも思ってなかった!信じてほしいなんてもう言えない。けど、これだけは言わせてくれ。
オレは最後までビーターとか元テスターとか関係なく全員でこの世界を生き残りたい!リソースもできる限り均等に配布したい!プレイヤー同士が争うような状況にしたくない!オレのその強欲で無謀な考えが今この状況を生み出していることに謝罪したい。本当にすまない、皆!騙して本当にすまない!」
しばしの沈黙のあと、拍手がなった。拍手をしているのはYunだった。
続いてオクトが、アスナがと続き、最後にはここにいるディアベル以外のプレイヤーが拍手をしていた。
オクト
「……ディアベルさん、あなたはやっぱりすげぇよ。俺だったら最後まで嘘をついて逃げてた。けど、あなたはそれを覚悟して逃げずに、打ち明けた。それだけでも十分ですよ。」
リンド
「……ディアベル。どうして本当のことを言わなかったんだ?」
ディアベル
「それは……オレも怖かったんだ。ベータ狩りに襲われることが……それがきっかけで攻略チームが崩壊したら元も子もないからな。」
リンド
「………なら、俺達に少しでも相談しろよ。俺達だってアンタの味方なんだからな。」
ディアベル
「リンド………。」
キバオウ
「………ディアベルはん。」
ディアベル
「………キバオウさん。」
キバオウ
「ウソはあかんなぁ。それだけは絶対に見過ごせへんし許せんことやで。」
ディアベル
「……すまない。」
キバオウ
「ここは白黒はっきりつけるために罰を受けてもらおか。」
ディアベル
「………どんな責任も罰も負うつもりだよ。」
ディアベルの覚悟のある眼にキバオウは少し考えてから言った。
キバオウ
「………ほな、またディアベルはんがリーダーになって攻略チームを率いてくれや。」
ディアベルはキバオウのその言葉に目を見開きとても驚いていた。
キバオウ
「それがアンタの罪に対する罰や。アンタがこの攻略の為のチームを作ったんや。それならそれを最後まで責任持って貫くのが男やろ。」
ディアベルが驚きを隠せずにキバオウを見ているとキバオウは続けた。
キバオウ
「ほやけど、ワイはディアベルはんとは行動できん。ベータテスターである以上はな。やけん、ワイはワイなりのやり方でこのアインクラッドを攻略する。あの汚いビーター二人にもディアベルはん、アンタにも負けんようなギルドやチームを作ったるわ。」
ディアベル
「………ありがとう、キバオウ。願わくばその君の作るギルドと共闘したいな。」
キバオウ
「……はん、今から気を剃らそうったって無駄やで。ここからはワイにとってディアベルはんはライバルの一人なんやけんな。」
あの緊迫とした雰囲気は消え、今はベータテスターとニュービーが共闘する意思を見せている。
Yun
「はいはーい、皆が共闘することが決まったから言うけどこれ以上はビーターやニュービーとか関係なく攻略に励むこと。そうすることでゲームクリアまでの道はその分短くなるわ。これ以上は無駄な争いはしないようにね。」
Yunはそういうと攻略チームに背を向け一層に歩みを進めようとしていた。
Yun
「……一件落着ね。」
Yunが去ろうとしたとき、オクトに声をかけられた。
オクト
「Yunさん、ありがとう!Yunさんがいなきゃ今頃大変なことになってたよ!」
Yun
「……違うわ。感謝は私の方がするべきよ。必死の覚悟でボスを倒してくれてありがと。いつか私もアンタ達みたいにボスを殴りにいってやるから覚悟しとけよ。」
オクト
「うん、脚竜にも言っておくよ。」
それじゃと一言言ってYunは歩いた。歩いている最中にYunは物思いにふけった。
Yun
(………ホントにありがとう、攻略チームの皆。お疲れ様。)
オクトもそんなYunの様子を見て、先に進むことにした。
ディアベル
「………オクト君だったね。」
オクト
「へ?」
ディアベル
「あの時はありがとう、君がいなかったら今頃オレは………。」
オクト
「違いますよ、ディアベルさん。あれは俺じゃなくて脚竜がやってくれたんです。脚竜に言われて俺も動けたんですから。」
そして、オクトは誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
オクト
「……もう、足手まといにはなりたくないですから。」
オクトはそうディアベルに告げ、歩きだした。さっきから脚竜から早く来いのメールがうるさいのである。
しかし、またここで足止めを食らった。
目の前にキバオウがいる。
オクト
「………。」
キバオウ
「……オクト、ジブンに聞きたいことがあるんや。」
オクト
「なんでしょうか?」
キバオウ
「さっきジブンが言おうとしてたことはなんやったんや?ワイなりにけじめつけるためにも知れることは知っておきたいんや。」
オクトは少し暗い顔をしたが、話すことにした。
オクト
「脚竜とぼっちさんはリアルで母親というのがいなかったんです。もっと正確に言えば家族もろとも捨てられたんですよ。だから脚竜は家族を大切にしてるんです。ぼっちさんもどこか辛いところがあったんだと思いますよ。オレはあの時必死だったけど、それでもこれを言うべきだと思ってたんです。」
キバオウ
「ほうか……ならあのビーターにも脚竜とかいうガキンチョにも言うといてくれ。今回は助けられたけどワイはワイなりのやり方でこのアインクラッドをクリアするってな。」
オクト
「……案外いい人ですね、キバオウさん。」
キバオウ
「……なわけないやろ。」
キバオウに礼を言ってオクトは今度こそ、三人のもとへ、第二層へと走っていった。
キリトとぼっちは既に第二層の岩肌から伸びているテラスの端に腰を下ろしていた。
キリト
「……なんであんなこと言ったんだ?」
キリトはあの時は聞けなかったことをようやくぼっちに聞き出せた。
ぼっち
「……俺が言わなきゃお前自分一人で抱え込む気だったろ?んなことさせねぇっての。」
ぼっちはそう答えた。そして、小声で言った。
ぼっち
「悪役になるのも悪役にされんのももう慣れたからな。」
キリトは聞こえなかったため、聞き直したが、教えてくれなかった。
ぼっち
「よし、晴れてビーター仲間なんだ。愛称を決めたぞ。」
キリト
「なんだよ藪から棒に。」
ぼっち
「キリトだからキリ坊で行くか!」
キリト
「………そ、それでいいなら。」
そんな話をしてると後ろからバタバタと走ってくる音がしてきた。
脚竜
「おーいたいた!」
ぼっち
「おせぇ、殺すぞ。」
脚竜
「うわぁ理不尽」
キリトはいつものようにじゃれ合いを始めた二人を見て思わずにやついていた。
キリト
「ほんとに仲良しだなお前ら。」
脚竜&ぼっち
「なわけねぇだろ!」
そして、さらに走ってくる音がした。
オクト
「お待たせです!」
ぼっち
「遅い、死ね!」
オクト
「会ってそうそうなんつう事を言ってんだアンタは。」
オクトも合流し、再び攻略し隊(仮)が集まった。
キリトはここからは別行動になるため、また三人でやりくりしていくことになるだろう。
キリトとの別れを告げ、ぼっち達はふらふらと歩きだした。
ぼっち
「さてと、こっから気合入れてくぞくそったれ共。」
脚竜
「アイアイサー!」
オクト
「はぁ、頑張ります。」
攻略し隊(仮)は進み続ける。クリアを目指して……そしてその先にある家族のもとへ。
脚竜
「そろそろ仲間欲しいなぁ。」
オクト
「……マジですか!!?」
ぼっち
「あぁ、安心しろ、お前の仕事はあんまり変わらん。」
???
「あのー、ここで働きたいとおもってるのですが。」
次回 第十三話~仮組ほど不安定な物は無い~