ソードアートオンライン~グランドメモリアル~ 作:Wandarel
「前回、攻略し隊はYun、ミホ、シグレの三人を仲間にし、大幅な戦力強化を行いました。あのぼっちですらも打ち負かすYunの底知れぬ強さとミホの支援、シグレの器用さを生かしきれているのもさすがはリーダーを名乗るだけはある。今回の話は小さな龍が大空へと舞い上がるでしょう。」
男は本を閉じ、去ろうとしたがおっとと言ってこちらへ向き直った。
???
「私としたことが申し遅れました。」
パンドラ
「私はパンドラ。どこにでもいるただの奇術師です。以後、お見知りおきを。」
というわけで突然ながら前書きの前回あらすじは『パンドラ』さんにやってもらうことにしました。
待っていた読者さん、お待たせしました!
待ってなかった読者さん、お待たせしました!
初見の方は、初めまして!
wandarelと申します。
さて、これもまた突然ですが、この作品の略称を勝手ながらつけさせていただき、今回からその略称を使っていこうと思います。
略称・『SAOGM』にさせていただきます。
なお、今回はとある冒険の処刑用BGMを脳内再生することを推奨いたします。
もちろん、今回も感想や評価もよろしくお願いします。
(SAOAC楽しすぎる)
先日、Yun、ミホ、シグレが『アインクラッド攻略し隊』に入ったおかげで大幅な戦力強化ができた。これを機に攻略にも前向きになれると思っていたYun達新入り三人だが…………。
脚竜
「…………。」
Yun
「…………。」
ミホ
「…………。」
シグレ
「…………。」
オクト
「…………。」
ぼっち
「…………。」
脚竜のせーのの声に合わせ、全員が手の内を見せる。
脚竜
「よっしゃ!ロイヤルストレートフラッシュ来たァッ!!」
Yun
「うっそー、ツーペアだ。」
ミホ
「うーん、フルハウス。」
オクト
「くっそー!ストレートだ!」
脚竜
「兄貴とシグレさんは?」
脚竜がシグレとぼっちに確認をとったが、二人はニッコリ笑って同時に言った。
シグレ&ぼっち
「「ブタに決まってんだろ。」」
シグレ
「あーもーやだぁー!だからギャンブル系で仕事の配分決めんの嫌だったのにー!」
オクト
「仕方ないでしょ、しばらくの間は俺達『従業員』が決めたルールで仕事の配分決めるって言い出したのはぼっちさんだから。」
ぼっち
「だとしてもなんで愚弟が圧倒的に有利なやつにしてんだよ!!」
Yun
「いやいや、なんとか勝てるでしょ。」
ぼっち
「………Yun、お前アイツの今までの最低な手札はなんだった?」
ぼっちのその問いかけにYunは目をそらしながら言った。
Yun
「………ストレートフラッシュ。」
シグレ
「うぅ、ずっと仕事ばっかり……不幸だわ………。」
こんな風に攻略そっちのけで遊んでいるのが攻略し隊の現状である。
脚竜
「そんじゃ俺出掛けてくるわー。」
いつも圧勝している脚竜は外に出掛けて行った。
オクト
「そんじゃ俺は寝ます。」
Yun
「あんた仕事の時は全然寝れてないからこの際だしがっつり寝ちゃいなさい。」
Yunがオクトに向かってそう言ったが、オクトは既に夢の世界へと旅立っていた。
Yun
(………いやいくらなんでも早くない!?どんだけ寝てなかったのよコイツ!!)
ぼっち
「ちっ………分担してやるぞシグレ。」
シグレ
「あいあいさー。」
ぼっち、シグレは素材収集へと向かっていった。
ミホ
「………私やることないなぁ。」
Yun
「あ、じゃあちょっと付き合ってくれる?」
ミホ
「…………え?マジで?」
Yun
「あーそっちの意味じゃなくて、ちょっとやりたいことがあるのよ。」
ミホ
「ほほーうそれは一体なんなのでしょーかね?」
Yun、ミホは奥の部屋へと入っていった。
無論、ロビーに残っているのは爆睡しているオクトのみである。
オクト
「Zzz………………」
~アインクラッド第二層主街区ウルバス~
脚竜
「いやっほーい!」
脚竜はいつも通りハイテンションでウルバスを走り回っていた。普段は抑えているが、開放的な感覚を味わっているのである。もちろん人に当たらないように気を付けているが、それでもぶつかる時はある。
ゴッという音と共に脚竜は三人組の一人にぶつかり、後ろにノックバックした。
脚竜
「いってて、すみません。」
などと言っているが内心、『どこに目をつけて歩いてんだボケナス』と思っていた。
???
「おー、ごめんな。相変わらず小さくて俺達も見えなかったんだよ。」
???
「まぁ仕方ねぇよ。こいつなんて眼中にないも同然だし。」
???
「何よりこのゲームでコイツの価値があるかどうかも怪しいぜ。」
聞いた事のある口調、そして、何故か自分のことを知っている。
脚竜はある可能性をふと考え、顔をあげれなくなった。
決してアイツらではないと思いたかった。
脚竜
(いやいやいや、たまたま声が似ているだけかもしれないし………そんなはず………ないよな?)
恐る恐る顔を上げると、悪い意味で見知った顔ぶれが三人そこにいた。
脚竜
「お、お前らなんでここに………。」
???
「バイトで稼いで買ったまでよ。そういうお前こそ家がだいぶ貧乏な癖によく買えたな。」
脚竜
「ッ!!」
一瞬、家族をバカにされ、怒りに任せて殴ろうとしたが、こいつらに勝てた覚えが無く、どうしても怯んでしまった。
ハイウェイスター
「まぁ、ここじゃプレイヤーネームで呼び合おうぜ。ちなみに俺のプレイヤーネームは『ハイウェイスター』だ。」
チョコラータ
「俺は『チョコラータ』だ。まぁせいぜいよろしくな。」
ラバーズ
「『ラバーズ』だ。ま、お前を頼りにする奴がいるかどうかはわからんがよろしくな。」
脚竜
「……おう。」
脚竜は三人の握手に応じる他なかった。どれだけのことをしてもリアルで勝てなかった相手にはどうしても頭が上がらなかった。
ハイウェイスター
「そんじゃ俺達は行くぜ。またな親友。」
いつものようにチャラチャラとした態度で帰っていったハイウェイスター達を見届け、脚竜はおおきくため息をついた。
脚竜
(せっかくアイツらから離れられると思ってたのに………クソッ。)
脚竜はこの世界においても絶望することになった。
~第一層ルイーダの酒場にて~
ぼっちとルイがにらみあっていた。Yun達はそれを横目に飲み物を飲んで乾杯していた。
そして、ルイがバーの机を叩き吠えた。
ルイ
「だから言ってるでしょ、私は酒場のマスターではあるけどアイテムの買い取りなんてしませんって!」
それに対してぼっちにしては珍しく土下座までして頼み込んでいた。
ぼっち
「ルイさんどぉーかお願いします!原価での売却では少しだけ足りんのです!」
ルイ
「ダメなものはダメだから!全くそう言ってぼったくる気だったんでしょ?」
ぼっちはルイのその言葉に大きく動揺した。
ルイ
「やっぱりね。油断も隙もありゃしないわ。抜け目がないのはいいことなんだけどね。」
ぼっちは悔しそうにはしていたが、さすがに諦めた。
ぼっち
「チッ……となると後はあの作戦だけか。」
ルイ
「何をする気なのよ?一応聞かせてちょうだい。」
ぼっちは嫌そうにしながらもルイに最終作戦を伝えた。
すると、ぼっちの予想通り、ルイは爆笑した。
ルイ
「……ふふっ、嘘でしょぼっち?よりによって君からそんな事聞くなんて思わなかったわ………ふふふっ。」
ぼっち
「あー、だから嫌だったんだよ、らしくないから。」
ルイ
「まぁでもそれなら私も手伝うわ。」
ぼっち
「ありがとう、ルイさん。」
ぼっちはルイに感謝を伝え、Yun達に言った。
ぼっち
「野郎共、引き上げだ。帰るぞ。」
攻略し隊一同
「ラジャー。」
しばらくして攻略し隊仮拠点となる宿泊施設についた瞬間にぼっちは攻略し隊の全員に言った。
ぼっち
「非常ーに不愉快だが、今日から本格的な活動始めるぞー。」
一同
「いや遅いわ。」
全員がまさかの同じツッコミ(ぼっち含む)を放つという奇跡のあとにぼっちが説明を始めた。
ぼっち
「まず俺達がやるべきことはビーターたる俺はともかく、お前らがどのようにして中立のポジションを獲得するかにある。第一、お前らはそこまで悪者ではないからこそ出来ることだが。」
そこまで言ってぼっちはため息をついた。
ぼっち
「お前らにはいわゆる便利屋をやってもらおうと思う。」
脚竜
「………何いってんの?」
あの脚竜が棒読みでそんなことを言うのも初めて見たかもしれない。それほど驚くべきことを言ったんだろう。
ぼっち
「要するに信用の確保のためだ。信用が確保されればたとえビーターの俺が行くとしても攻略に行くときも後ろめたい気持ちなく行けるだろ?」
Yun
「なるほど、それで何でも屋というかよろず屋みたいなのをするわけね。」
ぼっち
「そういうことだ。察しがよくて助かる。だがそう簡単にいくとは思っていない。だからお前らに頼むんだ。俺はビーターである以上表立った動きはしづらいからな。」
脚竜
「で、もうそういうのは受け付けてんの?」
ぼっち
「あぁ、癪だがアルゴに頼んでおいた。もちろん代金支払ってな。」
シグレ
「情報屋も使ってやってるんだ。」
ミホ
「ていうかそんなことしてたらコルすぐに無くなるんじゃない?」
ぼっち
「安心しろ、もし上手く軌道に乗ればすぐに追い付けるし、なにより………」
ぼっちは脚竜に視線を向けると、脚竜以外の全員が何かを悟った。
脚竜
「………なんだよ皆して俺を見て。て、照れるじゃねぇか。」
ぼっち
「つーわけで早速仕事だ。まず俺達はこれからルイーダの酒場での手伝いだ。といっても素材集めだから俺達にとっちゃ楽勝問題だろ。」
オクト
「………仕事量をちゃんと均等にしてくださいよ。」
ぼっち
「わかってるっての。」
そんなこともあり、今日は攻略し隊の方針の会議で夜遅くだったため、寝て、当然のごとくぼっちが約束の時間より寝過ごしてきた。
ルイ
「時間にルーズな子は嫌われやすいわよぼっち。」
ぼっち
「はい。すみませんでした。」
正直に言えばぼっちが誰かに謝罪するのはものすごく珍しい事だと思う。
ルイ
「終わったらごほうびに夜は酒場を貸しきりにしてあげるわ。」
この言葉に攻略し隊全員のやる気が大幅に上昇したのは言うまでもない。
ぼっち
「よし脚竜。お前だけで行ってこい。」
脚竜
「はい!?」
ぼっち
「今回のはレア素材が多くてな、俺やシグレが行けば間違いなく獲れんし、他のやつが行っても効率が悪いからな。安心しろ脚竜。お前なら出来る。しかもこれができれば身長も伸びるしな!期待してるぞ!」
脚竜
「おう任せろ!」
ぼっち
(ふっ、チョロいな。)
Yun
(うわぁ、こういう風にして仕事させんのかぁ。)
オクト
(脚竜、オマエ、騙サレテル。)
脚竜は足早に駆け抜けていった。目標を持った龍ほどヤバいやつはいない。
ぼっち
「さて野郎共、俺達も別の仕事があるんだ、振り分け通りに行くぞ。」
Yun
「はいよー。」
脚竜を除く一同はそれぞれに別れて行動を始めた。
~ウルバス周辺のダンジョン~
脚竜
「ふいー、大量大量!」
脚竜はぼっちの予想通り、かなり早い段階でノルマのレア素材をかき集めていっていた。
弓使いである以上仲間は多い方がいいが、この辺りのモンスターは麻痺などの行動阻害系のデバフを受けなければ問題なく倒せる。しかも、その手の行動阻害系のデバフを持つモンスターもいない。
もはや脚竜の独壇場である。
脚竜
「へへ、これで身長伸びたらいいなぁ。」
脚竜が期待に胸を膨らませていると遠くで叫び声が聞こえてきた。脚竜は素材集めを中止してすぐにそちらに向かった。
脚竜
「ハイウェイスター!!?」
見ると今にもモンスターに殺されそうになっているハイウェイスターがいた。
ハイウェイスター
「た、助けてくれ、脚竜!」
脚竜
「あーもう!」
脚竜は少々嫌だったが、目の前で助けてくれと言われて助けないほどの鬼畜ではない。ある程度の距離を保ちながらハイウェイスターに攻撃が入らないように弓で仕留めていった。そして、脚竜は周りのモンスターをすべて倒し終えると、ハイウェイスターに声をかけた。
脚竜
「お前、何やってんだよ。」
ハイウェイスター
「ちょうど素材を切らしててな、素材集めでここに来てたんだかが思った以上に敵が集まってきててな………。」
どうやら敵を倒していたときにヘイトを稼ぎすぎて対処しきれなくなっていたようだった。
脚竜
「……まぁいいや。俺もそろそろ街に戻ろうと思ってたし一緒に帰るか?」
ハイウェイスター
「あぁ、頼む。あ、それと助けてくれたお礼だ。」
脚竜はハイウェイスターからポーションをもらった。
特になんの変哲もない回復ポーションだ。
ハイウェイスター
「ホントに助かったぜ。」
脚竜
「……いつもの取り巻きはどうしたんだよ?」
ハイウェイスター
「今回は俺一人で集めようとしててな……ハハッ、カッコ悪いだろ?」
脚竜
「………いや、かっこいいと思うよ俺は。」
ハイウェイスターは脚竜のその意外な言葉に驚いた。とはいえ、脚竜としてはあまりハイウェイスター達とは長話をしたくなかった。
かつて過去にされていたことを思い出すからである。
脚竜
「………んじゃ、さっさと行こうぜ。」
ハイウェイスター
「おう。」
~第二層主街区ウルバス~
現在、ぼっちとYunとで行動し、防具や調味料などの調達をしていた。
ぼっち
「………Yun、見つかったか?」
Yun
「………全然。」
何故か普段ならあるはずの調味料がどこに行っても売り切れになっており、困っていた。
Yun
(………これってめちゃくちゃ不幸なぼっちがいるからなのかしら?)
Yunがそんなことを思っていたら、緑髪の男がその大事な調味料、『塩』を大量に買っていたのを見た。
なお、昨日もこの辺りで塩を買っていたのをYunは覚えていた。
Yun
(……なるほど、アイツが買い占めてるせいね。)
Yunはすかさず声をかけた。
Yun
「ねぇ、最近塩が無くて困ってるんだけど何か知らない?」
???
「ん?あぁ、そりゃ俺が必要だから買ってるだけさ。」
Yun
「ふーん。んじゃ私たちも塩が必要でさ、どこかで売ってないかしら?」
???
「さぁ、ここらで塩売ってるところなんてわからねぇよ。売り切れてんじゃねぇのか?」
その言葉を聞き、Yunは言葉で攻めた。
Yun
「ダウト。私知ってるのよ?昨日からこの辺りで塩を買い漁ってるのをね。いい加減迷惑だからやめて欲しいんだけど。」
???
「はっ、女が俺に指図すんのか?」
明らかに舐めた態度をとってきてYunはイラッときたが、ここで安い挑発に乗るわけにはいかない。
???
「ならデュエルで俺に勝てばいいじゃないか。」
Yun
「………ふーん、物わかり良くて助かるわ。」
???
「半損決着で文句ないな?アンタも殺しなんてしたくないだろ?」
Yun
「上等よ。で、アンタ名前は?」
チョコラータ
「チョコラータだ。まぁ否応なしに覚えるだろうけどな。」
周りがざわついた。もちろん、きっかけは些細でもデュエルが始まること自体が珍しいからだ。
チョコラータ
「俺が負けたら塩を全部明け渡した上で迷惑行為もしないさ。ただしお前が負けたら俺の女になれ。」
Yun
「……OK、絶対ぶっ倒す。」
カウントが始まり、Yunは短剣を、チョコラータは細剣を構えてにらみ合い、ゼロになると同時に駆けた……はずだった。
Yunは敗北した。いや、せざるを得なかった。なんとチョコラータは近くにいた見た目も幼そうなプレイヤーを盾にしたあげく、己の細剣をそのプレイヤーに突きつけていたのだ。
チョコラータ
「まさかこいつを見殺しにするとか言わないよな?」
Yun
「……くっ。」
チョコラータ
「さて、約束だ。負ければ俺の女になるってなぁ。」
そう言ってYunの手を掴もうとした時だった。どこからともなく拍手が聞こえてきた。その正体は誰にでもわかった。それほどビーターのうわさはすぐに広まったからというのもあるだろう。
ぼっち
「うーん、悪くない。戦術としては中々にセンスがあると思うぞ。人の盾を作りゃ簡単に降参するからなぁ。」
ぼっちは称賛を称えながらYunに近づいていった。
ぼっち
「チョコラータつったか?残念ながらそいつは俺の女なんだよ。だから俺に勝ってからにしてくれないだろうか?」
Yunは何か言いたげだったが、ぼっちはそれを手で制した。なにか作戦があるとでもいわんばかりに。
チョコラータ
「………はっ、誰かと思えばアイツの兄貴じゃねぇかよ。あのポンコツの兄貴なんだ、余裕だろ。」
ぼっち
「…………あ?」
Yunは背筋が凍った。たぶん、目の前のチョコラータも他のプレイヤー達もぼっちについて知らないことがある。そして、Yunは明確に覚えている。
かつて第一層のフロアボス攻略の時、脚竜が兄を侮辱されキレたことを。しかし今、この状況においては間違いなくヤバい。かつてYunが小学生だったころにぼっちのことは悪い意味で知っていたからだ。
Yun
(ヤバい……あの目はマジでヤバい。)
ぼっちも脚竜と同じく家族や兄弟を大切にしている。ここだけの話だが、リアルでぼっちがかつて自分の弟を虐めていた人間に対する仕打ちを見たことがあるが、まさしく今と同じような眼をした悪魔の所業であった。
ぼっち
「……なるほどなぁ。あの愚弟、俺に隠し事してた訳か。あとで説教だな。」
チョコラータ
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと始めようぜ。」
ぼっち
「あぁ、そうしよう。」
ぼっちは一度区切り、こう言った。
ぼっち
「……二度と表に出れねぇ位に壊してやるよ。」
第二層~ウルバス別区画にて~
オクトとミホの二人はダンジョンで素材収集を終え、ウルバスにて合流するというぼっちからの言い付けを守るべく待っていた。
オクト
「………暇だぁ。」
ミホ
「わかるわぁ。」
思ったより早く素材が集まって作業が終わってしまったのである。道中道草を食いに食いまくっても暇だった。
???
「お、お前さん達、攻略し隊かな?」
ミホ
「え、まぁそうですけど。」
突然、声をかけられミホもオクトも驚いた。
???
「……なるほどな。」
男はそういうとウィンドウを操作し始めた。そして、オクトの元にデュエル申請が送られてきた。
???
「見た感じ暇をしてるんだろ?デュエルしようぜ。」
オクト
「あー、まぁいいですけど。」
オクトはデュエル申請を承諾した瞬間に、男は笑い始めた。
ミホ
「………え?もしかして戦闘凶?」
オクトはその顔を見て思い出した。
オクト
「お前ら、あの時脚竜を………。」
ラバーズ
「そうだ、お前に邪魔されなかったらアイツは俺達の友達だったはずなんだよな。」
オクト
「うるせぇ!お前らがやってたことは友達に対してすることじゃねぇだろ!」
ミホは何も知らないが、オクトの表情を見て全てを悟った。
ラバーズ
「まぁでも手遅れかもしれねぇな!」
オクト
「………何がだ!」
チョコラータ
「ちょいと脚竜には鬱陶しくなってな。」
ぼっち
「…………。」
~第二層ダンジョンにて~
脚竜はハイウェイスターと共に脱出していたが、やけにモンスターと出くわすし、ヘイトが高まっていた。
脚竜
「クッソ、ハイウェイスター!ここは引き付けるから先に脱出してろ!」
ハイウェイスター
「あぁ!そのポーション使ってくれ!攻撃力が上がるぞ!」
そう言ってハイウェイスターが走っていったのを見て脚竜はグイッとポーションを飲んだ。
その瞬間だった。
身体の動きが鈍くなり、うつ伏せになる形でダウンした。
脚竜
「がっ……クソッ、なんで………!!」
脚竜はステータスを見ると、状態異常麻痺を受けていた。モンスターの麻痺効果の時間としては長すぎる、考えられるのはたった一つ。
脚竜
「さっきのポーションか!」
武器もタンブルで落としており、武器も習得した格闘スキルのみだが、それすらも出来ない。
モンスターからの攻撃が始まる。一発一発のダメージは低い。だが、麻痺で反撃も回避も出来ない以上、ダメージを受け続けることになる。
脚竜
(やべぇ、もしこのままの状態が続いたら間違いなく死ぬ!)
ラバーズ
「アイツみたいな奴が生きる価値もないからな。」
ミホ
「酷い………どうしてそんなことすんのよ!誰もが必死に生きているのに!」
オクト
「お前が脚竜の価値を決めんな!」
ラバーズ
「まぁどちらにせよ手遅れだ。」
チョコラータ
「つまりだ、お前の弟はどちらにせよ死ぬんだよ。どうあっても終わりだ!ギャハハハハッ!!」
ぼっち
「………。」
Yun
「ぼっちさん?」
ぼっちは肩を震わせていた。それは怒りか悲しみか、そのどちらかはわからない。けど、その答えはすぐに出た。
ぼっち
「…………くく。」
ウルバスにいた人々にも聞こえた。そして少しずつそれは大きくなっていった。
ぼっち
「くくく……ふふふ、ふはははは、はーっはっはっはっはっ!!」
大声で笑い始めた。悲しみでも怒りでもなく笑いを堪えて肩を震わせていただけだった。
チョコラータ
「ハッ、アイツは兄貴にも捨てられてたんだな!」
ぼっち
「なにを勘違いしてやがる?俺が笑ってたのはテメェら程度のカスみたいな作戦に対してだぜ?まぁ、愚弟がその程度の愚策で死ぬわけねぇだろ。」
オクト
「………そうか。ならもうお前に手加減する必要無いよな?」
ラバーズ
「はっ、俺に勝てると思………うぶぇ!?」
オクトはラバーズに対して容赦なく棍を振り下ろしていた。そこから棍で殴り続けた。一撃一撃に殺意を込めて。
ミホはその様子を哀れんでいた。
ミホ
(あーあ、オクトを怒らせるからそうなるのよ。)
ミホ、及びシグレと脚竜はオクトを怒らせるとどれほど危険なのかはよく知っている。オクトは一度キレると基本的に手がつけられなくなり、だいたい止まらないし、止められない。
昔にも脚竜を守るためにぶちギレ、収拾がつかなくなったこともある。
ラバーズ
「おまっ!待てっ!ガフッ………このま……グエッ……死ぬ………!」
オクトはそれを聞いて胸ぐらを掴んだ。
オクト
「だったら脚竜が死んでいいのかよ?テメェらのそんな下らないことで、死んでいいのかよ!!」
ラバーズ
「お前……こりゃゲームなんだぜ?ホントに死ぬわけねぇだろ……。」
その言葉を聞き、オクトはため息をついてもう一発殴った。
オクト
「………何人死んだと思う?」
ラバーズ
「………は?」
オクト
「……黒鉄宮でこのゲームをやってるプレイヤーのリストがある石碑があるのは知ってるな?」
ラバーズ
「そ、それがどうかしたのかよ?」
オクトは肩を震わせ、今にもラバーズを殺しそうな目で睨みながら言い放った。
オクト
「あそこでプレイヤーネームの所に赤線が入ってるのは……ゲームオーバー………いや、死んだんだよ。このゲームはホントに人が死ぬんだぞ?それをわかってて、脚竜を殺す気なら………俺がお前らを殺すッ!!」
ラバーズ
「ま、待て!さすがに殺しはしないだろ?なっ?」
オクト
「悪いが俺は嘘はつきたくないからな。やるときゃやるぞ?」
ラバーズ
「わ、わかった!わかった!コルならいくらでも譲るしなんならアイテムも全部やる!チョコラータとハイウェイスターの事も全部話す!だから助けてくれ!」
その目を見て、命の危険を悟ったラバーズは保身の為に仲間をも売った。
ミホ
(あーあ、墓穴掘ったなアイツ。)
その行動はオクトの怒りをさらにヒートアップさせただけだった。
オクト
「やれやれてめー正真正銘の史上最低な男だぜ……。」
ラバーズ
「バァカめ!隙ありだァァァァァッ!!」
ラバーズはオクトが目を閉じた瞬間を狙って直剣を振った。しかし、その前に
オクト
「オラァッ!!」
オクトの蹴りがラバーズに直撃した。
オクト
「ラバーズ、悪いな。俺達攻略し隊のルールでな、入隊後には『オーバーラッシュ』の習得が必須科目なんだよ。てめーらが脚竜にしてきたツケは………」
「金じゃあ払えないぜ!」
オクト
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオッ!!オラオラオラオラオラァッ!!」
ラバーズ
「ぐばっ……ぐおあぉぉっ………!!」
ラバーズを派手に街の方までぶっ飛ばしたオクトはメニューを開き、ラバーズに対してチャットに何かを送っていた。
ミホ
「何してんの?」
オクト
「え?そりゃあ………今までのツケの領収書だよ。」
オクトはメニューを閉じ、街の方に歩き始めた。ミホはそれについていく形でオクトを追っていった。
ぼっち
「衝撃決着決闘だ。わざわざ半損まで戦うのも面倒だし文句ないだろ?」
チョコラータ
「いいぜ、乗った。」
そこまで言った時にガシャンという音が聞こえた。なんとぼっちは自分の装備していた剣をドロップしていたのだ。
ぼっち
「ハンデだ。こんくらいしとかなきゃビーターたる俺が圧勝しちまうのは目に見えているからな。」
チョコラータ
「……いいぜ。格闘スキルでも持ってんだろ?」
ぼっち
「まぁな。だが戦闘中はスキルも使わねぇよ。」
そして自分の剣をYunのもとへ持っていき、Yunに渡した。
ぼっち
「しばらくの間、俺の剣を預かっててくれ。」
Yun
「えぇ……。」
ぼっち
「安心しろ、あの程度の奴に負けやしないっての。」
ぼっちはそう言って前に出ていった。そしてデュエルのカウントダウンが始まる。
チョコラータ
(………バカが、細剣相手に素手なんてマヌケにもほどがあるぞ。これで至近距離まで近づいて一撃与えて終わりだ!)
ぼっち
「……………。」
カウントがゼロになったその瞬間だった。
ぼっち
「あ、UFO。」
ぼっちは奥を指差して一言言った。
チョコラータ
「そんな子供だましに引っ掛かるかぁ!!」
と突っ込んできたが、ぼっちは後ろを振り返った。
そして、衝撃的な一言を言った。
ぼっち
「勝ったぞ。」
まだなにもしてないはずのぼっちが勝利宣言をしたのだ。
チョコラータ
「寝言をぬかして………。」
しかし、その証拠はすぐに見つかった。
ぼっちの頭上にWINNERの文字が出ていた。デュエルに勝利した確固たる証拠である。
チョコラータ
「な、ば、バカな。スキルも使ってないくせに………。」
すると、ウルバスでその決闘を見ていた野次馬の一人が驚いたような声を出した。
チョコラータはその男が指をさす方向を見ると、小さい十分の一ほどの大きさのぼっちがいた。
チョコラータ
「な、なんだこいつ!?」
ぼっち
「おぉ、そいつは俺の特殊格闘スキルの十二王方牌大車弊のミニぼっち一号だな。」
それを聞いて周りの野次馬がスキルを使っていた不正についてざわつき、無論チョコラータも反論した。
チョコラータ
「おい待て!どうい………」
しかし、ミニぼっち一号がチョコラータの顔面を蹴った為に言葉は最後まで言えなかった。
ぼっち
「どうした?何か不満かな?」
チョコラータ
「デュ……決闘の前に……スキルを使わないって……い、言ったくせに………。」
ぼっち
「あー、聞こえてなかったか?俺は確かにスキルを使わないと言った。だが、戦闘中には使わないと言ったはずだ。俺があのミニぼっち一号を用意したのは戦闘前だ。よって不正ではない。……まぁ一言言うとすれば……自分を知れ。そんな虫のいい話があると思うか?お前程度のクズに。」
チョコラータ
「な、なんて酷いや………」
チョコラータはここで飛びかかった時点で詰みだった。ぼっちの拳は見事にそれを捉えてアッパーをかまし、チョコラータを浮かせた。
ここからは、ぼっちの長い長い、積年の怒りが放たれただけだった。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
オーバーラッシュによる拳の連撃を何度も。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
何度も。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
何度も何度も。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
何度も何度も何度も。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
何度も何度も何度も何度も。
ぼっち
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」
的確に同じ部分を殴りつけ。
ぼっち
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
チョコラータ
「ヤッダーバァアァァァァアアアアア」
チョコラータの断末魔に似た声と共に
ぼっち
「無駄ァッ!!」
最後の拳を放った。
ぼっち
「さてとYun。攻略し隊入隊後の初仕事だ。」
そして、ぼっちはYunにそういった。
Yunは周りの状況を見て察し、偶然近くにあったゴミ箱の蓋を取った。
そしてぼっちは高らかに宣言し始めた。
ぼっち
「いいかプレイヤー共。俺は攻略し隊のリーダー『ぼっち』。知らないやつはいないと思うが胸糞悪いビーターのクズだ。だが、攻略し隊のメンバーに手を出すようなら容赦なく…………。」
ぼっちの言葉の最後が出る前にチョコラータはゴシャッという音と共に『燃えるゴミは月・水・金』と書かれていたゴミ箱にホールインワンした。
ぼっち
「燃えるゴミとしてゴミ箱に叩き込むぜ?」
その様子を見て、批判どころか、拍手が沸き起こった。よほどチョコラータ達の悪評があったのだろう。
ぼっちはちょっと当てが外れて驚いていた所をYunが話しかけた。
Yun
「たまには人助けもいいんじゃない?」
ぼっち
「………ちっ。そういうキャラじゃないんだけどな。」
一方、ハイウェイスターは迎撃しながらもかなりの負傷を負いながら街の手前まで逃げてきた。
ハイウェイスター
(ちっ………予想以上にモンスターが多かったな。おかげで逃げるのにも一苦労だったぜ。)
チョコラータとラバーズとはここで合流する予定だ。
ハイウェイスター
(……さてと、俺の嗅覚スキルを使うか。)
ハイウェイスターは嗅覚スキルをマスターしており、感情を含むあらゆる情報を獲られる。
ハイウェイスターは仲間の匂いを感じ、そちらへ向かった。
ハイウェイスター
「おーいお前ら、作戦はうまくい………」
ここでハイウェイスターは違和感に気づいた。何故か二人とも恐怖で怯えている匂いがしていたからだ。
ハイウェイスター
「おいおいどうしたんだよ?」
チョコラータ
「は、ハイウェイスター……俺達はアイツの仲間に手を出すべきじゃ……な、なかったんだ。」
ハイウェイスター
「はぁ?なにいってんだよお前。」
ラバーズ
「こ、殺される………金なんかもういらねぇよ……。」
ハイウェイスター
「おいおいまさか返り討ちにあったのかよ………。」
ここまでの間で、少し匂いが変わった。その匂いを知っているハイウェイスターはニヤリと笑った。
ハイウェイスター
「おいおいおかしいぜェ~~ッ。誰か怒ってるハズだよ――っ。おもいっきり怒ってる臭いがスゲープンプンしてんだからよーウソ言うなよ~~ッ。誰だ!?怒ってんのはよォ~~!?」
怒りの匂い……この二人のどちらかがキレているのは間違いなかった。
???
「俺だ。」
その声を聞いて、ハイウェイスターは慌てて後ろを振り向いた。
脚竜
「今めちゃくちゃにぶちギレてんのは俺だ。」
そこにはあの状況では確実に死んだはずの脚竜がいた。
ハイウェイスター
「バカな!?あの時お前は麻痺してモンスターに袋叩きに………なっ!!?お前らは!!?」
ハイウェイスターは脚竜の後ろからシグレとキリトの二人が現れ、さらに驚愕した。
キリト
「たまたま素材の収集をしてたらシグレと会ってな。」
シグレ
「私もノルマ終わってたし暇だったからキリトと一緒に素材集めしてたら麻痺しててピンチだった脚竜に出くわした訳よ。」
脚竜
「あぁ、あの時はマジで死ぬかと思ったぜ。さーてと、どんな風に落とし前つけてもらおうかな?」
ハイウェイスター
「ハッ、バカめ。この距離は既に俺の射程範囲だぜっ!」
ハイウェイスターは攻撃をしかけた。
脚竜
「ん。」
しかし、それよりも先に脚竜が速射した矢が鼻に直撃した。
ハイウェイスター
「うわぁぁ!!?」
チョコラータ・ラバーズ
「は、ハイウェイスター!!」
脚竜
「すまねぇな、俺の弓とか銃とかの間接武器には手慣れてんだ。この程度の速射なんてまだ手加減してやってる方だぜ?もっとも、俺が本気出せばもっと早いのを撃ち込んでやるけどな。わかったらさっさとお前らが買い占めた塩を全部無償で返してこいよ。」
ハイウェイスター
「わ、わかったよ……塩もちゃんと返すし、お前にやってきた仕打ちの分も謝るからよ……だからな………」
ハイウェイスターはそこまで言ったが、脚竜が無言で自分の後ろを見ているのに気づき、言葉が詰まった。
ぼっち
「ほらなYun、こいつらここにいた。」
Yun
「うわ、ホントにいたよ。」
オクト
「あれ?皆ここに来てたんだ。」
ミホ
「あ、こいつさっきの。」
ラバーズ、チョコラータも状況が最悪なことに今気がついた。自分たちをぶちのめした二人とその取り巻きがここに集まっているからだ。
ぼっち
「なーるほどな。そういうことか。言ったろチョコラータ。脚竜はリアルラックがイカれてるから下らない作戦なんぞじゃ死なねぇってな。」
ぼっちもちらほらと自分の剣をちらつかせ始め、オクトも指をならし始めた。
ハイウェイスター
「お、おいまさかこんな瀕死のプレイヤーをぶちのめすなんてそんなことしないよな?それは男のやることじゃねぇよな?」
脚竜
「なるほどな、確かに瀕死の奴を三人でよってたかってぶちのめして殺したら相当後味の悪いことだ。男らしくもない事だし、心の痛む事だ。」
ハイウェイスター
「そうだろー?こんなボロボロの俺をぶちのめしたって嫌ーな気持ちがずっと残るぜぇ?」
脚竜
「そう言うと思ってよ、テメェら三人とも安全圏に放り込んでおいたぜ。」
ハイウェイスター
「え?」
ハイウェイスター、チョコラータ、ラバーズの三人は知らぬ間に安全圏である街の範囲内に入っていた。
脚竜
「HP回復しただろ?ここではダメージは一切発生しないぜ。」
ハイウェイスター
「ホントだ………回復してる……。」
ぼっち
「ま、衝撃は受けるけどな。んで、これでお前らが死ぬことはなくなったわけだ………。お前ら、新しく攻略し隊国際条約を作った。攻略し隊国際条約第二条『敵対した奴には容赦なく攻略し隊の恐ろしさを刻み込め。』だ。……愚弟、意味はわかるな?」
それを聞いた脚竜は少し笑ったあとにハイウェイスターに向き直り、言い放った。
脚竜
「一旦お前らを安全圏に入れたらよォ……これで全然、卑怯じゃねぇわけだな?」
ここで、三人はある事実に気づく。確かに、ここでは衝撃だけで死ぬことはない。つまり、脚竜は一切卑怯な手を使っている訳じゃなくなる。
ハイウェイスター
「………ハッ……あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
脚竜
「ドララララララララララララララララララララララララララララララドラァッ!!」
ハイウェイスター、ラバーズ、チョコラータ。この三人は脚竜の成長性を見誤っていた。脚竜はあの時より遥かに成長していたのだ。
ハイウェイスター、ラバーズ、チョコラータ、攻略し隊の怒りを買い、
脚竜
「スゲーッ爽やかな気分だぜ!新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォッ!」
ミホ・シグレ
(どんな気分なんだそれは。)
この後、あの三人は買い占めた塩を全部返すと逃げるかのように転移門へと走っていったらしい。
~第一層ルイーダの酒場~
ぼっち
「初依頼達成を記念してー!」
攻略し隊一同
「乾杯~!」
攻略し隊は約束通り依頼を達成し、ルイーダの酒場を貸し切りで宴会をしていた。
ルイ
「ありがとうぼっち。まさか依頼の本当の目的まで見抜いてるなんてさすがね。」
ぼっち
「目を見たら大体の事はわかりますよ。」
ルイ
「まぁそれはいいんだけどね………なんか多くないかしら?」
ぼっち
「あれ、ルイさん。何も宴会は攻略し隊だけでやるとは言ってませんけど?」
ルイ
「……はぁ、本当に抜け目が無いわね。」
ルイとぼっちは昔さながらの感覚で談笑していた。
脚竜は酒場のベランダで一人牛乳の入ったコップを眺めていた。
~遡ること二時間前~
脚竜が瀕死だったところをシグレとキリトに助けられた後の事だった。
脚竜
「あ、ありがと二人とも。」
シグレ
「………もしかしてあの三人?」
シグレにはすぐに見抜かれた。
脚竜
「……まぁね。でも、大丈夫。もう巻き込んだりは………」
シグレ
「バカな事言うな!」
そこまで言った時にシグレが初めて怒った。
シグレ
「……アンタが大丈夫でも私達が嫌なのよ。アンタが泣いてるのを我慢してるのを見るのが!……あいつらが怖いんでしょ?なら私達で一緒にあいつらを倒そう。昔とは違うのよ、今のアンタには仲間がいるじゃん?……だからもう怖くないはずよ。」
キリト
「脚竜、気持ちはすごくわかる。けど、ここで立ち向かってもいいんじゃないか?俺達だってついてる。俺はベータテストの時の君を見たことがあるが、俺は君が噂のあの三人よりもずっと強いと思っている。まぁ、ソロプレイヤーの俺が言えることじゃないけど、脚竜はもう十分に強いさ。」
脚竜
「………そうだな。」
俺はその言葉に救われた。だからこそ立ち向かえた。
俺はようやく過去の自分と決別出来た。
簡単な事だったんだ。
脚竜
(………ありがとな。シグレさん、キリト。)
脚竜は感謝の言葉を心に入れ、皆の輪の中に突っ込んでいった。
脚竜
「よっしゃあ!俺の円周率カウンターで計測するぜェ!」
ぼっち
「やめんか愚弟。」
Yun
「ホントにこいつは………。」
脚竜はようやく心の底から笑えるようになった。
その後、攻略し隊含む九人ほどはルイーダの酒場にて飲み明かした。
新たな希望を胸に、攻略し隊はさらに歩みを進めた。
脚竜
「いやぁー、すっきり爽快だー。」
ぼっち
「ふん、あの程度にビビってたのはがっかりだがな。」
Yun
「いやー、ゴミ箱はすっきりしたなぁ。」
ミホ
「……あれ?オクトは?」
脚竜
「そういや武具屋に行ってたぞ。」
ぼっち
「ならほっといたら帰ってくるな。」
シグレ
「………大丈夫かなアイツ。」
次回、SAO.GM
第十六話「~再会と戦闘と圧勝~」
オクト
「奇抜なプレイヤーネームだなぁ………。」