ソードアートオンライン~グランドメモリアル~   作:Wandarel

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最初に申し上げます。
タイトルのギルド結成の文字ですが、ほとんどろくな描写がされておりません!
大変申し訳ございませんでした!
今回もいろいろ忙しく、なかなか編集する機会がなくて、時間が掛かってしまいました。
しかし、それなりには頑張って作ったので今回もよろしくお願い致します。

追記
一部誤字があったため修正しました。


第六話~ギルド結成?~

第一層 始まりの街の酒場にて

 

ぼっち

「よし、せーので出すぞ。せーのっ!!」

 

現在『攻略し隊』のメンバーはギルド結成式のついででいつものようにドロップアイテムの確認を行っているが……。

 

脚竜

「いぇーい!またいちばーん!」

 

オクト

「至って普通だな。」

 

ぼっち

「なんでや……一番戦闘で戦ってんの俺だよ?なんでノーマルばっかなの………。」

 

オクト

「普段の行いが(以下略)」

 

ぼっち

「だとしてもおかしいだろ!!

何回も何回も!何百何千と戦ってきたのになんで全部ノーマルなんだよ!」

 

脚竜

「いや、兄貴も一回はレアが出たんじゃ……。」

 

ぼっち

「それはたった一回だろうが!!」

 

ぼっちさんがキレるのもなんとなーくうなずける。

確かにどれだけ戦っても何回やってもぼっちさんは絶対(?)ノーマル素材しかドロップしないのだ。

一方で俺はレア素材を多少はもらえたりしているし、脚竜に至っては神がかった運で激レア素材をバンバンとってくるというのももう見飽きた光景だ。

 

ぼっち

「あー、腹立つぅー!!

なんで俺ばっか…………。」

 

確かにぼっちさんが活躍していることは多いです。

けど、その前に一言言わせてください。

 

オクト

「……一番働いてるの俺ですよ?」

 

ぼっち

「……理由を述べよ。」

 

オクト

「………チームメンバーのHP管理、ポーションの在庫管理、チームの盾。

ほら、俺のほうが忙しいですから。」

 

脚竜

「………いや、それってゲームじゃわりかし当たり前のことじゃね?」

 

ぼっち

「全くだ。これだから素人は……。」

 

オクト

(うわぁ、今すぐバックレたい。)

 

攻略し隊を結成したはいいもののなかなかやることがない。

故にこんな醜い言い争い(?)も起きている。

もうすぐでここに囚われてから三週間くらいになると思うが、いまだに攻略の目処はついてないし、数は分からないがかなりの犠牲者も出ているはずだ。

本当はこんなことをしている間にも誰かが犠牲になってるのかもしれない。

 

ぼっち

「………オクト、脚竜、今から本格的に俺たちがこれから使っていくメイン武器を決めようと思う。」

 

俺のさっきの考えを読み取ったのかどうかは分からないが、ぼっちさんが突然そんなことを言ってきた。

 

脚竜

「メイン武器?もしかしてサブとかも用意するの?」

 

ぼっち

「その通りだ。この先一つの武器だけにこだわっていてもかなり厳しいと思う。

だからこそ、この段階で方針を決めておきたくてな。」

 

オクト

「あのー、俺はどうすれば?」

 

ぼっち

「お前は素人だから逆に一つの武器に特化した方が強い。

お前のその性格的にも特化したタイプの方がお前としても動きやすいはずだ。」

 

オクト

「………また騙そうとしてますよね?

もう騙されませんよ。」

 

これ以上俺が騙されると必ずこの人は面白がって調子に乗ると思う。

そうならない為にも、俺は心を鬼にしてきっぱりと言った。

 

ぼっち

「安心しろ。今回は普通に考えたから。」

 

オクト

(………なんか本気で心配されてるのかな?)

 

ぼっちさんには意外なところで優しい一面もあるから普通に心配してるのならなんか悪いこと言ったような気がする………。

 

ぼっち

(とか思ってんだろぉなぁ。

あいにくだが俺は己の欲望には忠実でな、お前の役割に沿った最高の武器を提供してやるよ……。)

 

そんな邪な考えをしているぼっちを尻目にオクト、脚竜は武器選びをしていた。

 

~片手直剣~

 

ぼっち

「いいか、片手直剣の基本は武器でのガード、そしてパリィングにある。」

 

オクト

「先生、パリィングってなんですか?」

 

ぼっち

「一回死ぬかお前。」

 

オクト

「なんでや。」

 

脚竜

「パリィングっていうのはな、剣でガードとか出来るだろ?

それをタイミングよくやって相手を怯ませる事かな。

まぁ極端な話でいくと、剣でガードして相手を押し退けるって感じ。」

 

オクト

「なるほどなるほど。」カリカリ

 

ぼっち

「ほう、メモを取るなんて割とマメなんだな。」

 

オクト

「いつも通り一言余計ですけどこれは俺の性分なんで。」

 

ぼっち

「あ、そうそう。ちなみに俺は全部の武器の動きをマスターしてるから俺は曲刀の練習をする。

邪魔すんなよ。」

 

脚竜&オクト

「はーい。」

 

そして俺と脚竜一時間ほどは直剣の練習をしていたが、どうにも脚竜は近距離武器の扱いが苦手らしい。

 

脚竜

「ぬん!ぬん!へぃやぁぁぁぁ!!」

 

今もこんな風に変な掛け声を出しながら剣をめちゃくちゃに振り回している。

 

オクト

「………近距離武器に関してだけど絶望的じゃないかお前。」

 

脚竜

「うるせぇ!んなことは俺が一番よくわかってるっつーの!」

 

しばらくして実戦での武器使用をしているが、相変わらず脚竜が変な奇声をあげながら攻撃している。

けど、やはりベータテスターらしくボアを次々と倒していってた。

さすがに俺も負けられない!

 

オクト

「なんだか……よくわかんないけど……俺も……!

だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は声を上げ、勢いよくボアに突っ込んでいった。

 

オクト

「たぁぁぁぁぁぁ!!」

 

あと少し、ボアはこちらに気づいたがもう遅い。

ここはもう俺の射程圏内だ!

 

オクト

「やぁっ!!」バキンッ

「わぁ!折れたァ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

剣が折れ、俺はボアに転がされ始めた。

 

ぼっち

「………ふん!」

 

「ぐるぉぉ……。」バリンッ

 

ぼっちさんが転がされてる俺を見て助けてくれた。

 

オクト

「いっててて~……。」

 

ぼっち

「邪魔をするな!」

 

脚竜

「なんかお前仮面ライダーみたいだな。」

 

オクト

「ど、どの部分が………?」

 

脚竜

「いや、さっきの『折れたァ!』の部分。

あれ俺が好きな仮面ライダーのセリフだって。

状況も剣折れてるの含めて一緒だしな。」

 

オクト

「えーっと、俺どっちかというとプリキュアの方見てたから仮面ライダー分かんないんだけど……なんて名前?」

 

脚竜

「その名も仮面ライダー龍騎!」

 

オクト&ぼっち

「お前じゃねぇか。」

 

脚竜

「言うと思った!

そしてそのネタで学校でもさんざんいじられてるし!」

 

俺は今、リアルの脚竜が学校で仮面ライダーだとか変身してみろとか言われてる理由がようやくわかった。

 

ぼっち

「よし脚竜、変身してみろ。」

 

脚竜

「無理に決まってんだろ。」

 

オクト

「まぁそれはともかく……折れちゃったな……。」

 

俺は今までの相棒を手に持った。

それは綺麗に半分に折れていて、修復も厳しそうだった。

長い間世話になった武器を眺め、今までの想い出を俺は思い出した。

 

オクト

(よく考えれば、この武器にはそこそこ愛着があったな……。俺はこいつのおかげで今まで生き延びてきた。

何かをやり遂げたような達成感だってある。

俺は、お前の事を忘れない。

ありがとう、ジャイロ………ってジャイロってなんだ?そもそも俺、武器に名前付けてたっけ……?)

 

そんな事を考えてると、ぼっちさんが何かに気づいたように俺に声をかけた。

 

ぼっち

「……お前、まさか修理してなかったのか?」

 

オクト

「え?この手のゲームって武器に耐久値なんてないんじゃ………。」

 

そういうとぼっちさんと脚竜は顔を見合わせたあと、少し微笑んで拳を握り……。

 

ゴンッ!!

 

二人から拳骨をくらった。

 

 

~曲刀~

 

オクト

「はぁッ!ふんッ!てぇやぁッ!」ブオンブオン

 

脚竜

「危ない危ない危ない危ない危ない!!

お前やたらめったらに振り回してんじゃねぇ!」

 

オクト

「でも!こうしてたら!敵も!近づけない!だろ!」

ブオンブオン

 

脚竜

「俺達も近寄れないだろうがバカ!」

 

ぼっち

「………不採用。」

 

~弓~

 

脚竜

「いいか?こうやって引き絞って心頭滅却をイメージ……まぁ、無心になって相手の眉間を狙う……ほいっ!」

バシュッ!!

 

脚竜は遠くにいるボアを一撃で射ぬいた。

 

オクト

「なるほどな。」

 

脚竜の射撃センスに関してはさすがはFPSプレイヤーだと言ったところだ。

今は俺の練習だからといってやっていないが、素人目で見ても、脚竜の偏差射撃技術はかなりハイレベルな段階だと思う。

 

脚竜

「ほれ、オクトもやってみ。」

 

オクト

「あぁ。」

 

俺はしっかりと集中し、無心になる。

 

オクト

(………眉間を狙うように…………。)

バシュッ!!

ドスッ!

 

俺が射った矢は何故か分からないが俺の背後にいるはずのぼっちさんの頭に直撃していた。

 

ぼっち

「………喧嘩売ってんの?買うよ?安く買ってやるよ?」

 

オクト

「す、すみません。わざとじゃないんです。」

 

脚竜

「いやなんで逆向きに飛ぶのかについて疑問を持とうよ。」

 

俺は改めて集中し、弓を構え、引き絞る。

そして、俺が放った矢は、やはりぼっちさんの頭に直撃していた。

 

ぼっち

「……おい?」

 

オクト

「ご、ごめんなさい!」

 

そんなこともあり、至近距離で射つことになった。

弓を引き絞って、そして、射った。

すると当然のようにぼっちさんの頭に直撃した。

 

ぼっち

「…………わかった。

お前には今から俺様の特別訓練プログラムを仕込んでやる。

まずはその俺に対する舐め腐った根性から叩き直してやろう。

存分に感謝するがいい。」

 

オクト

(い、嫌な予感しかしない………。)(^ω^;)

 

ぼっち

「あ、そうそう先に言っておくとだな……。」

 

ぼっちさんはそこで言葉を区切り、次にこう言い放った。

 

ぼっち

「俺の特別訓練は(精神的な)死人が出るからな。覚悟しておけ。」

 

オクト

(ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)

 

脚竜

「弓も不採用っと。」

 

~両手斧~

 

オクト

「よいしょ、よいしょ………よし。」

 

脚竜

「お前斧の扱いは上手いな。」

 

オクト

「農業のくわのように扱えば行けそう。」

 

ぼっち

「振り回してる間に刃が飛びそうだなwww」

 

オクト

「そんなわけないでしょう。」ブオン!バキン!

 

飛んでいった斧の刃が脚竜の横を掠めた。

 

脚竜&ぼっち

「………不採用で。」

 

オクト

「なんでですか!?」

 

~片手細剣~

 

オクト&ぼっち

「……………。」

 

脚竜

「ほいほいほーい。」ヒュンヒュンヒュン

 

脚竜がレイピアを左右に揺らしてメトロノームのような使い方をしている。

俺達はそれを黙ってみていた。

そして、約三十分くらいはこの調子である。

 

オクト

「………あれ、正しい使い方ですか?」

 

ぼっち

「どうあがいても違うな。

そういうお前はちゃんと使えんのか?」

 

オクト

「もちろんです、プロですから。」ヒュンヒュンヒュン

 

ぼっち

「お前らの知能が同レベルなのはよくわかった。

というわけで二人とも片手細剣は不採用だ。」

 

オクト&脚竜

「えー。」

 

ぼっち

「黙ってねぇとレイピアで牙突すんぞ。

やろうと思えば出来るんだからな。」

 

オクト&脚竜

「はーい……って牙突出来んの?!」

 

~短剣~

 

ぼっち

「いいか、短剣の基本戦術はヒット&アウェイだ。」

 

オクト

「先生ー、どうしてヒット&アウェイが基軸なんですか?」

 

ぼっち

「いい質問だ。あとで俺の特別訓練を施してやろう。」

 

オクト

「なんでや………。」

 

ぼっち

「まず、あくまで俺の考えだから必ずしも正しいというわけではないことを覚えておけ。」

 

オクト

「珍しいですね、いつもなら『俺こそが正義だ』みたいなこと言ってるのに。」

 

脚竜

「理論が失敗したときの言い訳だろ。」

 

ぼっち

「よーし、今から座学やめて実戦に移りまーす。

死にたいやつから前に出てこーい。」

 

オクト&脚竜

「大変申し訳ございませんでした。」

m(;。_。)m

 

ぼっち

「よろしい、特別に座学を続けてやろう。

まず短剣というのは基本的な火力は少なめだ。

そして文字通り刃の部分が短いからリーチも狭い。

故に連擊を叩き込むにはかなり近づく必要がある。

だが、そんなことをボス戦でやっていたら確実に死ぬため、ステップ回避を利用したりして一撃叩いて逃げて近づいて叩いて逃げてを繰り返す必要がある。」

 

オクト

「先生ー、他に短剣のメリットとかお願いしまーす。」

 

ぼっち

「よろしい、後で君は処刑だオクト君。」

 

オクト

「だからなんでや。」

 

そんな理不尽な返答をしながらもぼっちさんは淡々と解説を続けた。

 

ぼっち

「脚竜、お前モンハンはやったことあるよな?」

 

どこかで聞いたことあるようなフレーズが聞こえた気がする。

 

脚竜

「当たり前だろ!最新作のVRハンティングアクションゲームだよな!」

 

オクト

「え、あんまり知らない……。」

 

俺がそう口にした瞬間、ぼっちさんと脚竜の顔が固まり、三秒間くらいそのままだった。

 

脚竜

「え?まさか知らないのお前……?」

 

オクト

「いや、友達と遊びでならちまっと……。」

 

ぼっち

「………片手剣を知ってるかお前?」

 

オクト

「いいえ、双剣しか使ってなかったから双剣以外はわからないですね。」

 

脚竜

「えぇ………。」(;´Д`)

 

ぼっち

「…………………嘘だろおい。」

 

ぼっちさんと脚竜は何故か頭を抱えたり、すごく残念そうな顔をしたりしている。

特にそんな顔になったりするようなこと言ったっけ……?

 

ぼっち

「はぁー、お前無いわー。マジで無いわー。」

 

脚竜

「モンハン知らないって単語通じんの小学生までだぞー。」

 

オクト

「んなこと言われたって知らないものは知らないし……。」

 

ぼっち&脚竜

「はぁ……。」(´・ω・`)ガッカリ…

 

なんか無性に腹が立ってきた。

なんでこんなことを言われなきゃいけないんだろう……。

 

ぼっち

「………まぁ、それはともかく続けるぞ。

片手剣は基本的な攻撃力は低い。

だがしかし、それを補う属性攻撃力や状態異常(デバフ)

の属性値が非常に高い。

故に俺はこの手の火力の低い武器は属性攻撃などに特化しているものと見ている。」

 

オクトは言われてみればと思い返すと、短剣のスキルはデバフ効果の高いスキルが多かった気がする。

もしぼっちさんの言うとおりなら短剣はサポーター向けだと思う。

 

ぼっち

「つまりはオクト、お前には短剣は向いていない。」

 

オクト

「いや、始める前からそんなこと言わないでくださいよ。」

 

ぼっち

「じゃ、お前短剣振ってみろ。」

 

俺は言われるままに短剣を振るった。

 

オクト

「はっ!てやぁ!そりゃぁっ!」

 

ぼっち

「…脚竜、オクトは使いこなせると思うか?」

 

脚竜

「無理ぢゃね。」

 

オクト

「え?なんでですか?」

 

俺は使いこなせないと言われて疑問に思った。

普通に使えているはずだからだ。

 

ぼっち

「……お前、振るの遅すぎ。」

 

オクト

「………はい?」

 

俺は言われたことがよくわからなかった。

え?振るのが遅すぎってどういうこと?

 

ぼっち

「………わかってないみたいだな。

脚竜、お前のサブウェポンなんだ、手本見せてやれ。」

 

脚竜

「あいあいさー。」

 

脚竜がそういうと武器を変え始めた。

……というか脚竜のサブウェポンが短剣なのもさっき初めて知った。

そんな事を考えているうちに脚竜は既に構えていた。

 

ぼっち

「見とけよ、これが短剣のあり方だ。」

 

脚竜

「……………………シッ!!」ヒュババババババ

 

………早っ!?

え?早っ!!あんなスピード出せるの!?

そんでなんかすごい手首の切り返しで軌道もきれいだったし………。

 

脚竜

「………うし、こんなもんかなぁー。」

 

ぼっち

「……まだまだ未熟だな愚弟。」

 

脚竜

「あ、やっぱり~?」(ダミ声)

 

ぼっち

「にゃん○ゅうの真似事してんじゃねぇ、それは俺の持ちネタだ。」

 

オクト

「あ、あれでも未熟なのか!?」

 

俺は思わず声に出していた。

あんな動きが出来るのにまだまだなんて到底思えないからだ。

 

脚竜

「おう、もっとすごいやつはさらに速いし、動きもすごいぞ~。」

 

ぼっち

「まぁ、俺達はその点は手を抜かないからな。」

 

確かに今までの事を考えてみると脚竜もぼっちさんも普段はだらけきってるけど一部の事に関しては絶対に手を抜かない事の方が多かった。

 

オクト

「………そうなんですか。」

 

ぼっち

「ちなみにお前の振るスピードはこんな感じだ。」

 

そう言われて見ていると、さっきの見比べたらまるでチーターとナマケモノが競争しているのを見ているような気分になった。

 

ぼっち

「……これでもやりたいと思うか?」

 

オクト

「思いませんけど一つだけ。Agiをほとんど上げさせないでタンクにしたのぼっちさんですよね?」

 

そう言うとぼっちさんはそっぽを向いてこっちを向かなかった。

 

オクト

「………こっち見ろオラァッ!!」ヽ(`Д´#)ノ

 

~両手棍~

 

ぼっち

「さてと、残るは片手棍だな。」

 

オクト

「いや待て待て待て待て待て。やってないのあるだろ。」

 

脚竜

「え?無いよな兄貴?」

 

ぼっち

「あぁ、お前に残されているのは片手棍だけだろ。」

 

オクト

「いや両手棍はどこ行ったんだよ!」

 

脚竜&ぼっち

「そんなのあるわけないじゃん。(すっとぼけ)」

 

オクト

「嘘つけぇぇッ!!お前ら俺をタンクにしたいだけだろ!」

 

俺は猛烈に抗議した。

やっぱりこの人は俺を盾にしようとしてたんだ!

俺は普通に前線に立ちたいのに!

 

オクト

(こいつら本当に人の苦労を知らないで………。)

 

???

「アンタ達なにしてんの?」

 

その声に振り向くと、俺はやっと何かに救われた気がした。

そう、ぶっちゃけてしまえば今すごく信頼できるこの人物、Yunさんだ。

 

オクト

「Yunさぁぁぁん!助けてくれ!

このブラック企業の上司と社畜チワワに武器を勝手に決められるー!!」

 

脚竜

「誰がチワワだこのやろぉぉぉ!!」

 

Yun

「あーもう、二人とも寄るな騒ぐな近寄るな!!

とりあえず落ち着いて話せ!

落ち着けないなら無理矢理落ち着かせっぞ!」

 

Yunさんのその発言で『攻略し隊』のメンツはクールダウンをし、深呼吸をした。

そして大分落ち着いたので事の経緯をぼっちが説明した。

 

Yun

「……それで、攻略の目処はたってないけどいつかのために武器を選んでいたわけね。」

 

オクト

「そうなんだよ!なのにこの二人は俺のメイン武器を完全にタンク仕様の片手棍にしようとしてるんだ!」

 

ぼっち

「はっ、それはお前が選んだ道だろ。」

 

脚竜

「いや、兄貴が騙して選ばせたんだろ。」

 

Yun

「はぁ……いい、オクト。

装備っていうのはね、この世界じゃ命に関わるものなのよ。

一つ一つの選択があるけど、少しでも間違えたら途端に危なくなる世界だからな。

確かにアンタにも選ぶ権利はあるわ。

けど、ぼっちや脚竜の言い分を聞いていた限りだと、アンタがまともに武器を使えていないからじゃない?

私がぼっちと同じ立場ならアンタにはアンタが扱いやすい武器を持たせるわね。」

 

オクト

「う………。」

 

やっぱりYunさんの言葉は一言一言が重いなぁ。

……どこかの悪魔とは違って。

 

Yun

「ま、こっから先は社畜チワワとブラック上司の不正が無いように私もアンタの武器の扱い方を見るわ。

でも、その分厳しく診断するけどね。」

 

オクト

「あ、ありがとうございますぅぅぅぅ!」

(´;ω;`)ブワッ!

 

Yun

(泣くほど嬉しくなるってどんだけひどい扱いしたのよコイツら………。

いや、脚竜は何も知らずに便乗してるだけだな。)

 

しばらくの間、どういう使い方をするのかを大悪魔ぼっちと大天使Yunに懇切丁寧に教えてもらった。

 

Yun

「そんじゃ、両手棍のテスト開始~。」

 

その掛け声とともにテストは始まるが、オクトはYunに言われたことを思い出していた。

 


 

Yun

『いいオクト?まぁ、こんなのとっても悪い言い方にはなるんだけどさ、せっかくこんな世界に来たんだから楽しめよ?

武器だってこれがいいっていうのは出てくるから。

まぁ、この武器楽しいっ!

……ていうのをぼっちにアピール出来ればぼっちも認めてくれるんじゃない?』

 


 

オクト

(……よし、こうなったら意地でもやってやる!)

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

一心不乱に突っ込むボアに、俺も負けじと突っ込む。

そして、

 

オクト

「あァァァァァァァァぁ………」ゴロゴロゴロ

 

俺はボアに転がされ始めた。

しかし、俺は諦めない!

すぐに起き上がって、俺はこういう!

 

オクト

「両手棍楽しい!」

 

途中、ボアに突っ込まれ、また転がされる。

そして、その度に起き上がっては

『両手棍楽しい』の単語を言い続けた。

 

脚竜

「もういいもういい。

なんか、お前のその意地でも片手棍したくないのはわかった。

もうすげーよお前。」

 

ぼっち

「いい態度だ、感動的だな。だが不採用だ。」

 

Yun

「……ほんっとバカ。」

 

こうして、俺の両手棍大好きです作戦は大失敗に終わった。

 

~片手棍~

 

オクト

「………あのぼっちさん、ぶっちゃけこうなるのは想定内ですか?」

 

ぼっち

「想定外なことがあるとしたらお前が両手棍の時に無様な姿を見せたことくらいだな。」

 

オクト

(………やっぱりか。)

 

はなからおかしいと思ったんだ。

どうして初心者である俺に対してプレイヤースキルの高い二人がここまでしてくれるんだろうって。

たぶん、ぼっちさん自体が俺が盾にしたいのもあったけどそれを見越した上で色んな武器を使わせてたんだな。

 

オクト

「………また、騙された。」

 

ぼっち

「果たして本当にそうかな?片手棍がダメなら俺はお前には両手斧を使わせる気だ。

唯一まともに使えてた武器だからな。」

 

オクト

「………わかりました。それじゃ片手棍をつか………。」

 

ぼっち

「待てオクト。」

 

そこまで言った時にぼっちさんが乱入してきた。

そして、ホラよといって俺に渡したのは盾だった。

 

ぼっち

「片手棍のいいところを教えてやる。

片手棍は直剣もしくは短剣と同じく盾を装備出来ることだ。

そして、片手棍がタンク向け及び初心者向けであるのは理由がある。」

 

オクト

「ふむふむ………え?」メモ取り中

 

俺は驚いた。片手棍が初心者向けだと言ったことに。

 

ぼっち

「脚竜、モンハンは知ってるよな?」

 

脚竜

「その質問二回目だぞ兄貴。」

 

Yun

「よくやってたから知ってる。」

 

ぼっち

「おい見たか脚竜、あのオクトとかいう男は女であるYunよりもモンハンの事を知らないんだぜ。」

 

脚竜

「うわ恥ずかしい~。俺ならもう外出れないくらい恥ずかしい~。」

 

オクト

(こ、こいつらまだその事を言うか………。)

 

Yun

「……それで、話を続けてくれる?」

 

ぼっち

「あぁ、続けよう。

第一にモンハンのハンマーの動き方はどんなのだYun?」

 

Yun

「頭狙って殴って、怯んだり隙があれば溜めて重い一撃を頭にぶちこんで、スタンさせる。」

 

ぼっち

「正解だ。

これにより、ノートをとってるオクトにはもうわかったろう?」

 

オクト

「……全部単調な動きだ……。」

 

ぼっち

「そう、今回の片手棍もそれが言えるわけだ。

初心者で曲刀や弓、細剣を使うバカはそういない。

ま、脚竜の場合は例外だがな。」

 

確かによく考えてみれば、弓とかは扱いがそこそこ難しくて、慣れるまではあまり使わない方がいいって説明もあったな……。

 

ぼっち

「要するにだ、単調な動きであればいくらバカだろうと初心者だろうとそこそこの動きが出来るわけだ。

そして、俺はお前をタンクにしたいのには理由がある。」

 

オクト

「え、理由なんてあったんですか!?」

 

ぼっち

「バカヤロー、理由もなく俺がそんな事をすると思ってたのか?

俺はそこまで無計画じゃねぇ。愚弟じゃあるまいし。」

 

脚竜

「あんだとクソ兄貴!!」

 

ここに来て俺は初めてぼっちさんに対して凄いなと思った。

この人は事細かい事まで計算した上で武器を、そして役職を決めていたんだと。

 

ぼっち

「初心者であり、多少の脳筋プレイをするのは目に見えていた。ま、お前が双剣を使ってたって言った時点で確信に変わったがな。」

 

オクト

(だ、大分痛いところ突かれるな)

 

ぼっち

「そしてタンクというのはチームいや、今はギルドの要の一角だ。

それに対する責任感については自己責任だが、お前は『自分が死ぬと他の皆が死ぬ』と考えていただろ?」

 

オクト

「な、なんでそれを………。」

 

ぼっち

目を見たら分かるんだよ。

この際だから言っておくが、俺に下手な嘘は通じないし隠し事も通じねぇからな。まぁそれはどうでもいい。

んで、結果的にだ。

お前は生きることを考えるだろ?お前は愚弟に似ていて変なところで優しいからな。

だから、お前の生存率が大幅に上がる。

そして、俺達の盾でもあることから俺達の生存率も上がる。

そうなれば俺も脚竜も全力をもって暴れられる。

そうすればお前も戦う余裕が出てくるからギルドメンバー全員でボスモンスターをぶん殴れる。

俺はここまでのビジョンを見た上でお前にタンクを勤めて欲しいんだ。

………ま、大方は面倒事を押し付けるのが本当の目的だがな。」

 

俺は本当にこの人がすごいと思った。

前に脚竜から死ぬほど聞かされたが、『自称・天才』って言われているのも今なら分かる。

最後の一言さえなければ……。

 

オクト

「………今度こそ騙されたわけだ。」

 

ぼっち

「あぁ、はなからお前には片手棍以外を持たせる気はない。

俺達が生き残るためにな。」

 

Yun

「………なーんだ、私いらないじゃん。」

 

オクト

「あ、Yunさんも俺達のギルド入ってくr」

Yun

「ごめん、先約いるからパスで。」

 

オクト

「えぇー!!」

 

ぼっち

「………というわけだ、よろしくなギルドの守護者?」

 

オクト

「はぁ………。はいはい、片手棍を使ってやってやりますとも。」

 

俺は苦笑いを浮かべながらいつも通りの返事をした。

改めて俺は思った。

俺も、前線に立ってしっかりと戦ってるんだと……。

 

オクト

「………まぁ、これで俺の仕事も少しは楽に………。」

 

ぼっち

「何言ってんだ?お前の仕事は変わらん。継続するように。」

 

オクト

「どうしてこうなるんじゃァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

拝啓、リアルに置いてきた家族達へ。

ここから先もまだまだ苦労しそうです。

 

 


始まりの街

Yunは一人街の中を歩いていた。

彼女はある人物に頼まれている依頼の報告に向かっているのである。

 

Yun

(はぁ………心配だわ。地味にケンカ強い妹と生まれて間もない弟がいるのに……大丈夫なのかな……。いや、父さんと母さんがいるから大丈夫か。)

 

彼女がそんな事を考えている間に目的の場所に着いた。

その人物は彼女の親友の一人で、Yunをこの世界へと誘った張本人。

 

Yun

「よっす、お待たせー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゴ

「ずいぶんと遅かったナ、Yun。」

情報屋のアルゴである。

 




次回予告

アルゴ
「そういえばYun、今までどこに行ってたんダ?」

Yun
「んー?まぁ、暇潰しー。」

アルゴ
「まぁいいヤ。とにかくお仕事の報告のほう頼めるカ?」

Yun
「おーけー。」

次回、第七話~情報整理~

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