FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について   作:ハセカズ

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第13話 計画変更

とある場所にて。そこは見渡す限りの森林があり、豊かな自然に囲まれた世界だった。

時折、緑色のマナが光玉となって溢れこの世界の生物に加護を与える。

ここは人々が自然やそこに住む動物たちと共に生きる世界。緑が生い茂る巨大な大樹の上には家が立ち、魔術による防壁が外敵の侵入を防いでいる。

 

汎人類史の者が見れば間違いなく「幻想的な場所」だという感想を上げるほどの神秘に満ちたこの世界は汎人類史において、どこの場所にも属さない。汎人類史には存在しない世界。

この異聞帯にはそんな世界が無数に存在する。そして、そこでは無数の戦闘音が鳴り響いていた。

 

戦っているのは2人。片方は派手に着飾った美少女と見紛う、中性的な少年。自身の宝具である上半身は鷲、下半身は馬の幻獣に跨り空を舞う。

もう片方は翠緑の衣装を纏った野性味と気品を併せ持つ少女。その手には弓が握られている。

勝利を収めたのは弓使い。まるで音速のミサイルのような弓を凄まじい速さで射出する彼女の弓は「ヒポグリフ」ごとアストルフォの霊核を貫いた。

 

「ぐっ‥‥あ。うそ‥‥」

 

霊核を貫かれ倒れる。ヒポグリフの空間跳躍でも間に合わない程の速度で射抜かれた彼が眼前の敵を睨め着ける。

 

「何で‥‥何でそっち側についたんだ!君は汎人類史側の英霊だろ!

‥‥‥アタランテ!」

 

アストルフォが戦っていたアタランテは異聞帯世界の英霊かと言われればそうではない。正真正銘の汎人類史のサーヴァント。この世界に対するカウンターとして召喚された。

 

だからこそ‥‥この世界側についたことがアストルフォは憤慨してる。

しかし、そんな様子を見たアタランテが出した返事は実に素っ気ないものだった。

 

「より優れた方の世界を残す‥‥‥私はこの世界こそが人類史を継承すべきだと感じたまでだ」

 

「ッ‥‥‥!」

 

この場所にはアストルフォだけでなく、もっと多くの汎人類史側のサーヴァントが居た。

その中には1級とも呼べるサーヴァントも複数おり、いずれ来るカルデアの者たちを待ち続けていた。しかしその全てがアタランテ1騎に瞬く間に殲滅された。

 

少し前まではこの世界では汎人類史のサーヴァントが召喚されることは無かった。

異聞帯の王が召喚を弾いていたから。しかし、この異聞帯を担当するクリプタ―が万が一「異星の神」と衝突する場合に備えて「異星の神の手が掛かっていない存在」として汎人類史側のサーヴァントを戦力にすることを思いついたのだ。

 

ギリシャでは何十というサーヴァントが召喚されている。それはその世界が強大な分カウンターも強くなるからだ。そしてこちらには何千何万というサーヴァントが召喚されている。

それはこの世界がそれだけ強力というのもあるが、異聞帯の王がより多くのサーヴァントが召喚されるように細工をしているからだ。

 

この世界に召喚された汎人類史側のサーヴァントはまず、異聞帯についての情報とこの世界のマナに耐えられるだけの耐性が与えられる。この世界がどういう世界かを理解した上で、汎人類史と異聞帯のどちらを取るのかを選択しなければならない。

 

その結果、6割のサーヴァントが異聞帯側についた。残りの4割は汎人類史側として今もなお立ち向かっているが、まるで戦いにならない。異聞帯側についたサーヴァントはこの世界から加護を受ける。だから、()()でも「冠位(グランド)クラス」に相当するだけの霊基を得る。この世界の事を知ってなお「勝てる」と思い込むこと自体がおかしい。

 

召喚に応じた英霊の中で汎人類史につくものの中でも流石に今回ばかりは無理だと、諦めて退去したメンバーも多数いる。

 

そして諦めなかったメンバーは今も戦っている。

 

「まだだ‥‥‥僕たちは絶対にあきらめないぞ!残った皆が‥‥それにカルデアの皆がきっとやってくれる筈さ!」

 

「‥‥呆れるな。汝もこの世界の情報は得ているだろうに────諦めよ。今回ばかりは無理だ」

 

アタランテに頭を打ち抜かれたアストルフォが消滅する。

しかし、その表情に苦悶や後悔というものは無かった。彼はやりたいことをやっただけだから。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

とある一室。

そこではクリプタ―同士の会議が繰り広げられていた。

 

はい僕です。パンゲア異聞帯を担当しているクリプタ―です。

カルデアがインド異聞帯を攻略して俺の「民を皆殺しにしないと勝てないよ?」作戦を実行してからそれなりの時間が流れた。

 

あれからも時々、カルデアの様子を見ているけども今もなお戦う気でいる。だってもうすぐギリシャ異聞帯に突入しようとしているわけだし。カルデアの皆さん方メンタル強すぎだろ。まあ、とはいえ俺の策が見破られたわけではない。そうでないと困るわけだが。

 

それにしてもいよいよここまで来たな。ギリシャ異聞帯。いや、正確には大西洋異聞帯。ようやく俺が原作知識皆無な所まで来た。

まあ、原作知識皆無と言ってもキリシュタリアの所の戦力はもう殆ど把握しているけど。正直、向こうの神様が機械だったのは驚いた。こっちの世界のギリシャ神は感情が機械的な神は多くてもロボじゃない。

 

まあ、そもそも向こうの世界の神とこっちの世界の神は生まれがそもそも違うし。

向うは外宇宙から飛来した宇宙船が人に神と崇められて神として成り立った存在。

こっちの世界はエフィアスが星を様々な形で進化させる過程で、自然に生まれた生命体の中から神が生まれた感じ‥‥‥の筈。もしかして違うのだろうか?まあ、後でエフィアスに聞けばいいか。

 

まあ、ロボでも神だから結局強いことに変わりはない。

カルデアの方々どうやってあの戦力差を覆すつもり何だろ。

むこう側には神も神霊もそれなりにいる。まあ、カルデアの味方に付きそうな神が何柱かいるみたいけど。でも、キリシュタリアは油断も慢心もなくカルデアをぶっ潰す気満々みたいだし。しかも、そのキリシュタリア本人は惑星を落とせるから向こうの神以上だし。

 

まあ、それでもどうせカルデアが勝つだろうしキリシュタリアの回収はまた日本の神の誰かに任せるとして。

今は会議に集中するべきか。現在はペペロンチーノが自分の異聞帯で起きた事の報告を終えた処だ。

 

『報告は以上よ。他に何か質問あるかしら?』

 

『アンタらしくもないな、ぺぺ。負けた時は陽気になれ、が口癖だっただろ。それとも、アンタの中じゃあインド異聞帯の消滅は“負け“じゃなかったのか?』

 

『あら、それじゃあ言い直しちゃおうかしら──!私ったら異聞帯の王とケンカしちゃっただけでなく、自分のサーヴァントに捨てられて、おまけにカルデアに助けられた上におめおめ逃げ帰ってきた素敵なクリプタ―なのよー!』

 

『‥‥貴方も随分と災難な目にあったみたいね、ぺぺ』

 

『あら、ありがとうヒナコ。でもこっちの世界の食べ物は信じられないくらいに美味しいわ───!!!!』

 

相変わらず元気だ、ぺぺロンチーノ。

ベリルはカルデアに貸しを作って情を作っておいたペペロンチーノを褒めたたえているけど、全く持ってその通りだと思います。確かに情が移るのは割とカルデアには有効な搦め手でもある。まあ、どうせ乗り越えるんだろうけど藤丸君は。

このままいつもながら特に意味のない進捗報告がこのまま進むのかと思いきや。見過ごすことが出来ないワードが出てきた。

 

『ベリルの担当するイギリス異聞帯‥‥‥空想樹セイファートは、既に伐採されている。私からベリルに、イギリス異聞帯は自滅させるように、内々に依頼した結果だ』

 

‥‥‥‥?何だそれ。いや‥‥聞いてないんですけど?

何でもベリルの所の世界は育ったら危険だから、キリシュタリアがベリルに空想樹を切り取らせたそうだけど。イギリス異聞帯から出てくるものは、クリプタ―側にも異星の神にも脅威になるからと。

あの‥‥第六章どうなるんですか?流石にこれは聞いておかないと駄目な奴だ。

本当にベリルの所の空想樹は採取されたのかを聞いてみる。

 

『おっ、さっきまでだんまりだったのに流石にこの話は気になるか?

言葉通りに、じきイギリス異聞帯は消滅する。それはもう苦労して‥‥ヤツら自身の手で空想樹を採取させたのさ』

 

‥‥マジなの?

 

『あぁ。何だ?珍しく疑るじゃないか』

 

いや、だって。異聞帯消えたら第6章はどうなるんだよ。円卓出てきそうなイギリスは結構楽しみにしていたんだけど。

キリシュタリアの所からは何いるか分かったもんじゃないからエフィアスに監視させないようにしてきた。どうせ、カルデアに討伐されるし。たまーに異聞帯の様子を覗く程度だ。

だから、ベリルの所がそんなことになっているとは気が付かなかった。

これは‥‥原作通りなのだろうか?

 

仮にここまでが原作通りだとしたら、これから起こり得る展開は2つ。

このまま本当にイギリス異聞帯が消えるのかイギリス異聞帯がそこに住む王の力とかで消滅を防ぐかのどれかだ。

 

前者は物語の都合上、考えにくい。いくら何でもカルデアが関わらずにそのまま消滅というのは無いと思う。しかし後者の場合も考えにくい。

空想樹を採取されても異聞帯を保つ‥‥そんなことが出来るのなら、エフィアスもそれが可能なはずなんだよ。

エフィアスが出来ないことを、イギリス異聞帯の民が出来るかもしれないというのは、はっきり言って考えられない。

 

もしくは俺が関わる事で原作とズレが出たのか?

しかし俺はベリルの所の異聞帯には全くと言っていい程、関わっていない。俺の所為で変化が出たとも考えにくい。

 

‥‥‥何にせよだ。もう少し様子を見よう。もし仮に空想樹抜きでも異聞帯を保てる方法があるのならこっちの世界の弱点が無くなる。

というか、こんなことになるなら、多少のリスクを冒してでもベリルの所を監視させておけばよかったかも。

いや、そもそもベリルの所の空想樹が消えたのがブラフである可能性も‥‥?

 

『イギリス異聞帯の消滅を確認次第、私達の計画は最終段階に入る。惑星を覆った天幕は、地球からのマナだけでなく、磁場で弾かれていたあらゆる宇宙線を吸収してきた。これらすべてのエネルギーを集中させ、『異星の神』を降臨させる』

 

早っ。キリシュタリアはもう異星の神を降臨させようとしているのか。

まあ、確かにキリシュタリアの所の空想樹はもう充分に育ったけどさ。しかも、キリシュタリアの所の空想樹は現在、ネットワークのように枝を介して莫大な魔力を空の天幕から吸い上げている。

 

さて、原作と違って異星の神はキリシュタリアでなく、オレをクリプタ―として選んでいる。

じゃあ、キリシュタリアの所では降臨しようとするのか?と言われれば‥‥たぶんする。現状では確かに俺の所の空想樹もギリシャ同様、完成はしてる。しかし、異星の神を降臨させるための準備だけはまだやっていない。

 

正直な所、俺の所で降臨させたくないので、わざと準備を遅らせている。

だから、キリシュタリアが先に準備を終えたわけだけど。

異星の神は完成した空想樹を自身の身体として降臨するのが目的みたいだから、降臨できるなら多分、キリシュタリアのところでも俺の所でもどっちでもいいはず。

 

それに向こうで降臨してくれた方が何かと()()()()()ので、是非とも頑張ってくれ。キリシュタリア。

 

というか、もうそろそろキリシュタリアの領地が他の世界に接触を果たす寸前の筈。

ただ、クリプタ―同士の争いは異星の神は降臨した後でという暗黙の了解になっているが。

いよいよ異聞帯同士の戦いが始まるのか。まあ、そもそもその前にカルデアに潰されるとは思うけど。あと、ベリルはキリシュタリアに回収されたみたいだから、キリシュタリアが負けた後はベリルも回収しないと。これで大令呪を一気に2つゲットだぜ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

それから数日後

 

 

『……チッ。まったく、手間を取らせてくれる。予定にない行動だ。これだから人生というものは。』

 

『ソレはこちらの台詞だ。貴方が、各異聞帯で人々を助けていた正体不明の魔術師──“カルデアの者”か』

 

なかなか面白い展開になってきたな。現在カルデアはアトランティスでキリシュタリアとの戦闘を終えたところ。そしてキリシュタリアがカルデアに止めを刺す直前にロマンっぽい男がカルデアを助けた。

 

‥‥あいつ何者だ?存在自体は元々他の異聞帯で監視していたから知っていた。でも、正体は不明。ロマンは第一部で消滅した筈なのに何故。恐らくあの男も原作通りの存在の筈だけど。

 

あーもう。原作知識が有ればこんなもやもやすることもないのに。

‥‥‥‥異星の神降臨まであと僅か。このままでいいのだろうか?

 

いや、異星の神が降臨するのは別にいい。俺の所ではなくキリシュタリアの所で降臨させるのは予定通りだ。そもそも異星の神に対する対抗手段は色々と出来上がっているから降臨させて大丈夫。むしろキリシュタリアの所で降臨させておかないとこっちとしては都合が悪い。

 

問題なのはキリシュタリアの最終目標が何なのか分からないところ。

何かゲーム内でもキリシュタリアの目的と異星の神の目的は異なるとか語られていたし。

最大の異聞帯の筈なのに何故か第5章だし。これでもしもキリシュタリアの目的が果たされると同時に他の異聞帯が消えて大西洋異聞帯が勝者とかになりでもしたらやばい。

 

いや、ゲームの展開上それはあり得ないと思うが‥‥無いともいいきれない。

第5章でキリシュタリアの目的が達成されて、異聞帯が超巨大化。そしてカルデアは敗走して第8章でキリシュタリアと再び決着を着けるみたいな展開が一番しっくりくる。

 

何にせよだ。今までは大西洋異聞帯にどんな力があるか分からなかったから、やめていたけど‥‥もう流石に大丈夫だろうか。あの世界の戦力もキリシュタリアの力も殆ど明らかになっている。今なら、エフィアスに再現してもらってキリシュタリアとかゼウス神の考えとかを調べて貰っても大丈夫なはず。

 

よし、やってもらおう。ベリルの所もカルデアが何とかすると思って見過ごしていたせいで後悔する羽目になったし、早いうちにやってもらった方がいいか。

 

というわけで頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥キリシュタリアの目的が全人類を神に等しい存在にすること?

全人類の不平等を解消するのが目的?

いや、それは良い。俺も神になれるなら別に得が出来るわけだし。

 

でも、キリシュタリアの目的が果たされると同時にキリシュタリアの所の空想樹が世界を覆ってその瞬間に空想樹によって保たれていた大西洋異聞帯が地球に出力される。当然の事ながら、その場合、世界の生き残りを賭けた戦いはキリシュタリアの勝利。他の異聞帯は汎人類史諸共は居場所がなくなる。

 

いや、冗談じゃないんだけど?一応、キリシュタリアの計画が成就されても俺は死なない。

消えるのはあくまでも異聞帯だけ。でも、そもそも全人類が神になった所で異星の神を何とか出来るという保証がどこにもない。キリシュタリアは神となり優れた知能を得た俺達ならいずれ異星の神を何とかする方法を見つけ出すと考えているそうだけど。

その自信は一体どこから湧いて来るんだよ。脳内お花畑なのかな?

 

負けないと確信をもって戦わなきゃ安心なんて出来ないんだよ!

おいおい、異聞帯同士の戦いは接触を果たしてからじゃなかったのか?

これどう考えても約束反故だろ。

 

え?キリシュタリア本人は他の異聞帯が消えることを理解していない?

まじかよ‥‥‥。

 

エフィアスなら空想樹が開放されたとしても、防げるかもしれないがここが異聞帯であることを考えると念を押すべきだろう。

何にせよ、これは計画変更だ‥‥‥

 


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