FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について   作:ハセカズ

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はい、本編です。本編が進むのはここまでです。
後、今回の話も第5章のネタバレあるのでアトランティスクリアした人のみがみてね!


なお今回の話は前回予告していた通り、FGOの今後のストーリー次第で無かったことになります。ご了承ください。もしかしたら前回の話もストーリー次第で修正入るかも。


なお、今回の話を後ろの方に載せているのは話を途中に挟むと「しおり」が機能しなくなるという報告を受けたからです。なので次話が投稿されるまではこのままにしておこうかなと考えてます。まあ、これはこれで見ずらいと思いますが。
どうすればいいんだろ‥‥‥?


第14話 神々の戦い

 

藤丸立香達は現在アトランティスの攻略に勤しんでいる真っ最中だった。

最初にアルテミスからの砲撃を受け、ピンチになったり途中で様々なサーヴァントを味方に付けたりと色々あったが現在はアルテミスを打ち落とすための弓矢『アイギス・エクリプス』をヘファイストスに作成して貰った直後だった。

 

『すごい‥‥!こんな、対城宝具に匹敵するような代物があっという間に鋳造されるなんて!』

 

「はい、これほどの弓なら‥‥‥きっと‥‥‥!」

 

「おうおう、褒めろ褒めろ。何しろ、俺の鎧だからな。」

 

弓矢は2本しかなかったが、オリオンにはこの弓をアルテミスに当てるという絶対の自信があった。アルテミスを救うためにも‥‥絶対に外すわけにはいかないから。

だからアキレウスに「失敗は許されないぞ?」というプレッシャーをかけられても

 

「ギリシャ最高の狩人だぜ、俺は?」

 

と自信を以て返すことが出来た。これでアルテミスを打ち落とすための武器とその担い手は揃った。つまりこれで準備は整ったのだ。

 

そしていよいよ敵との決戦に向かうため、神殿を出たその時だった。

異聞帯全域に凄まじい振動が走った。

 

「な、何だぁ!?地震か?」

 

「いや、違う───────これは」

 

何かを察知したアキレウスが上空を見上げる。

それに釣られて他の皆も上空を見上げる。

 

すると‥‥突如として空から眩い光が射した。ただの光ではない。とても神々しく‥‥そして莫大な魔力で編まれた光だった。

まるで天からのはしごとでもいえるような光景。そこから複数の影が飛び出した。

ほんの一瞬しか見えなかったが‥‥カルデアはそれが何なのかをすぐに察知した。何故なら以前にもソレらを見たことがあるから。

 

『上空に巨大な魔力を探知!この反応は‥‥!?』

 

「あれは‥‥日本の!?」

 

間違い無かった。遠くからでも分かるほどの圧倒的な神気。縋りついてしまいそうになるほどの圧倒的な神々しさ。以前にも覚えたその感覚はシャドウボーダーの中に侵入した神と対峙した時から忘れたくても忘れられない感覚。

 

『5‥‥10!合計10の神がこの異聞帯に侵入した!おそらく日本の神達だ!』

 

「なっ────10!?」

 

『ま、まさかキリシュタリアの奴めを援護しに来たのか!?い、いくら何でも過剰戦力にも程があるのではないのかね!?』

 

それを聞いた藤丸やマシュが絶望的な表情をする。以前戦った時は1柱相手でもまるで歯が立たなかった。そんな相手が10もいるのだ。

それに加えてこの異聞帯の神達もまた強力な存在。しかもただでさえこれからアルテミスを相手にする為に全戦力を投入しようとしていた所なのだ。

日本の神が来たという報告を受けてイアソンが怒鳴りだした。

 

「お、おい!どういう事だ!何で日本の神なんて言うものがここに来るんだ!?」

 

「それは‥‥‥‥」

 

あまりの事態にカルデア達だけじゃなく敵も固まっている。

しかし、ここでホームズがあることに気が付く

 

『待つんだ─────これは。この異聞帯の神達を攻撃しているのか?』

 

「─────え?」

 

一瞬ホームズの言っていることが分からなかった。

直後、上空から出現した巨大な機械「アルテミス」から凄まじい魔力砲が藤丸達のいる場所から凡そ1キロほど離れた場所に撃ち込まれた。そして‥‥発射した筈のソレが跳ね返りアルテミスを貫いた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

彼らの存在を感知した瞬間にアルテミスは彼らを攻撃対象として認識した。さながら衛星兵器とも呼べるナリをしている彼女の身体からは本当に警告音が出ている。彼女の使用権を現在持っているオデュッセウスからの指令が来る前から彼女は起動していた。

それだけ危険な存在だと。故に即座に消す判断をした。

 

『敵性反応感知。迎撃を開始します。地上からエーテルソナーによる座標入力を確認。該当エリアに砲撃準備』

 

アルテミスがまず捉えたのは汎人類史の日本神話において、とある鏡を鋳造したとされる神だった。流れるようなロングな黒髪が特徴の美しい女性。まずは彼女一人を確実に消す為に発射砲に莫大な魔力を貯める。

 

汝、星を穿つ黄金(シューティングスター・オルテュギュア―)

 

満ちた光が収束し一条の矢となった。それは星を穿ち、空を翔る船を堕とす兵器。

しかし‥‥星を滅ぼすほどの兵器が向かっているにも関わらずソレが向けられている本人は顔色一つ変えなかった。

 

八咫鏡(ヤタノカガミ)

 

上空に出現するは煌びやかな装飾が成され一切の穢れの無い神鏡。

それは星をも貫く対星宝具をいとも簡単に跳ね返した。ソレもただ跳ね返しただけではない。その破壊力を何倍にもしたうえで。

黄金に輝く極光が凄まじい速度で迫りくる。まさに神の裁きともいえる光。

 

ソレはアルテミスのあらゆる防御要素を貫き、堕とすのに十分すぎる破壊力だった。

それを見た瞬間にアルテミスはこの先の光景を悟った。彼女が最後に見たのは自身に迫りくる黄金の光‥‥ではなく遥か彼方からこちらに向かって手を伸ばそうとする一人の男だった。

 

────何故そんなことをする?

 

全く意味のない行為だ。地上からこちらに向かって手を伸ばして届くとでも?一体何がしたいのか。分からない。何も分からないまま‥‥アルテミスはその機能を完全に停止した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「不法侵入者 感知。不法侵入者 感知。攻撃目標 フランシス・ドレイク。迎撃せよ。迎撃せよ。」

 

アルテミスが堕とされる少し前。アトランティスの海中にて、オリュンポスへの道の最後の門番を務めるポセイドンと呼ばれる惑星改造用のプラント船が侵入者を阻むために、迎撃を開始していた。しかし彼の機体にある後頭部のコアをドレイクに奪取されたことにより、錯乱状態に陥った彼の眼には明らかに神体である筈の目の前の存在がフランシス・ドレイクにしか見えていない。

 

その男神はまるで炎そのものだった。この世界にあるどのような火よりも美しく神々しい熱を纏う彼は眼前の存在を高みから見やる。輝かしい光さながらの火を纏うその風貌は正に神そのものだった。

 

「我を人間と見間違えるとは。所詮は下位世界の劣等神。脳まで劣悪であると見える」

 

その神がそう呟く中、ポセイドンから無数の光線が放たれ襲う。しかし、そのどれもが眼前の神が纏う火によって阻まれる。そこからは一方的だった。彼の身体からまるで竜巻のように放出された熱は次から次へとポセイドンのコアを破壊していく。ポセイドンの攻撃は通用しないが眼前の存在の攻撃はポセイドンの守りをいともたやすく破る。追い詰められたポセイドンはかつてフランシス・ドレイクにコアの一つを奪取されたことを思い出したのか、より激しい錯乱状態に陥った。

 

「迎撃せよ。迎────殺せ 殺す 殺して 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。必ず殺す生かして返さぬ死体も残さず焼却処分とする。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す────────────」

 

もはやポセイドンの眼には目の前の敵を倒す事しかない。まるで怒りをエラーの如く吐き続けるその様子を見た神はただただ嫌悪感があるだけであった。彼の身体から凄まじい熱が放たれる。

 

「不快なり。このような劣等種が神であるなど笑止。真たる神の権能を以て散る事を誇りに思え」

 

直後。その男の身体を覆うように炎の球が現れる。そしてソレがレーザー光線のように射出された。まるで全てを燃やし尽くすかのようなそれは瞬く間にポセイドンの全てを焼却し後に残ったのは焼け焦げた残りカスだけとなった。

 

「任務完了。これでオリュンポスへの通行が可能となった。嗚呼‥‥ついでに目障りなアレらも片付けるとしよう」

 

ポセイドンを片付けた時点で彼の役目は終了している。しかし‥‥神はそれだけでは無く、地上にいる劣等種も残らず片付ける(・・・・・・・)ことにした。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

「アルテミス!!」

 

オリオンが破壊されたアルテミスに向かって手を伸ばす。しかし他の皆は困惑するばかりだ。

自分たちの破壊目標であるアルテミスが堕とされたことは本来であれば喜ばしい事ではあるのだが‥‥。日本の神がこちらの世界を攻撃している。それはつまりクリプタ―同士が争っていることに他ならない。

 

『ど、どういう事だよ!?何で日本の神が‥‥‥!?』

 

『わ、分からん。分からんが‥‥恐らく奴ら仲間割れでもしたのだろう!だがこれはチャンスだぞ!同士討ちで互いの戦力を消費してくれるのであれば、異聞帯の攻略は一気に楽になる!どうやらこちら側にも運気が向いてきたようだぞ、ワハハハハ!』

 

『だと良いんだけど‥‥‥‥』

 

ゴルドルフ所長が高笑いするが、ダヴィンチの表情は曇ったままだ。

するとマシュがある事に気が付く。

 

「‥‥‥待ってください。何か音が聞こえませんか?」

 

「確かに‥‥」

 

マシュが言うように何かが近づくような音が聞こえて来る。しかもどんどん大きくなる。何かが近づいているのだろうか?

 

『済まないが緊急事態だ!南西方角の海中から、超スピードで接近してくる敵性反応あり!この魔力量────間違いなく大西洋異聞帯に侵入した神の一柱だ!』

 

ホームズが言い終えるのとほぼ同時だった。それが現れたのは。

まるで燃え盛る業火が人の形をなしているかのような、そんな男だった。ポセイドンを倒し海から出たその神は上空からこちらを見下ろしていた。

 

「────小さい」

 

それが警戒態勢を続けるカルデアを空から見下す神が放った最初の一言だった。

 

「小さい小さい小さい。小さく───醜い。知も力も美も全てにおいて。汎人類史とはかような存在であったか」

 

そして、カルデアの事を‥‥いや汎人類史の事をあからさまに見下しているという態度を隠そうともしなかった。

そんな神に言葉をかける者はいなかった。突如として目前に神という巨大な存在が出現したという余りの事態を咀嚼するのに時間が掛かっているのかもしれない。しかし、神はそんな下々の者達の様子など気にせずに演説を続ける。

 

「愚かなり。この程度で我らに刃向かうなど‥‥無知の極みここにありといった所か。

すでに敗れた4つの異聞帯はよほどの下位世界であったと見える。所詮は同じ劣等種。消えるのも当然の道理である」

 

皆が黙る中で真っ先に口を開いたのは藤丸立香だった。しかし彼の表情はお世辞にも笑っているとはいえず、怒っているのが明確であった。

 

「俺も皆も劣等種なんかじゃない!」

 

カルデアの中でも特に憤っていたのは藤丸立香であった。異聞帯は過った選択、過った繁栄が続いた世界なのかもしれない。しかしそれでも今までの世界で知り合った人たちには確かな思いやあり方があった。パツシィ、ゲルダ、アーシャ‥‥皆の想いやその存在までも否定するかのような眼前の神の言葉は断じて許せるものではなかった。

 

「はい、マスターの言う通りです。貴方がどのような存在であれ‥‥他の世界を見てもいない方にそんなことを言う資格はありません!」

 

「‥‥哀れなり。我らに牙を向けるだけでなく、こうして我が神体を見てもなお我が言葉を否定するとは。無知であるという事は真に恐ろしい」

 

マシュも藤丸同様に非難の声を上げるがそれを聞いた神はどこ吹く風といった所だ。

しかし藤丸とマシュが発言をしたことで、神によって支配されていた場の空気が少し軽くなりイアソンがいつものペースを取り戻す

 

「はっ、随分と大層にこちらの事を語ってくれたな。───ったく。慢心、驕り‥‥神というのはどこ出身でも在り方が変わらないものだな。で、それはそれとしてオレからは聞きたいことが一つある。聞いてくれますよね、神さま?」

 

「‥‥‥‥申してみよ」

 

不敬な態度に若干の不快感を覚える神であったが、視線だけをイアソン向けるとに続きを促した。

 

「あんたは先ほど今までに敗れた異聞帯が下位世界だと罵ったな?」

 

「如何にも」

 

此処で一呼吸を置く。そして次にイアソンの口から出た言葉は思いもよらない物だった。

 

「それはまあ、間違っているとは言わないさ」

 

「イアソンさん!?」

 

「異聞帯ってのはさ、“不要なもの”として中断され、並行世界論にすら切り捨てられたイフの世界、“行き止まりの人類史”だ。だから下位世界というのも間違ってはいないだろうし、それに世界を賭けた戦いで汎人類史に負けたのも事実だ。紛争、内乱、戦争‥‥そんなものがマクロなものであれミクロなものであれ延々と続く醜い汎人類史にな」

 

「‥‥‥‥‥」

 

汎人類史や異聞帯が「下位世界」であるという事を肯定するのは神も予想外だったようで怪しげにイアソンを見てる。しかし‥‥イアソンは次に意地の悪い笑みをにやりと浮かべた。

 

「でもさ‥‥日本の神様?あんたの住む世界も異聞帯‥‥切り捨てられた世界の一つなんだぜ?つまりは‥‥汎人類史なんていう「劣等世界」に敗北した行き止まりの世界だ。だから疑問に思ってさ。劣等世界に敗北した負け犬の世界に住んでいる神様ってのは───

一体どんな気分なのかなって思ってな!」

 

イアソンの言葉のすぐ後に場の空気が固まる。眼前の神から凄まじいという言葉ですら生ぬるい程の神気が放出されているからだ。はっきり言って無茶苦茶怒っているというのが一目瞭然だった。

 

「我が世界を他の劣等世界と同列にするか。切り捨てられた?行き止まり?

笑止。それはあの御方からの寵愛を受けられぬ貴様たちの方だ。汎人類史。」

 

『‥‥‥‥あの御方?』

 

ホームズが「あの御方」という眼前の神よりも上位であろう存在を疑問に思うが今はその事を問いてる暇は無いだろう。

 

『ちょっ、神様を怒らせてどうするんだよ!そりゃ、少しはスカッとしたけどさ‥‥』

 

「ふん、どうせこちらが何を言ってもあの神は俺達を殺すつもりだ。なら、少しでも怒らせて冷静さを欠かせた方がまだ勝率はあるだろ。というわけで、行くぞ、おまえたち!」

 

イアソンの号令で全員が戦闘態勢で入る。しかし、それをあざ笑うかのように神は腕を一振りした。たったそれだけ。それだけの動作に関わらず‥‥まるで太陽が落ちたかのような業火が視界を覆った。

 

「『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!!っうあ“あ”ぁぁ‥‥!!」

 

マシュが宝具を展開して皆を守る。ただ防いでいるだけにも拘らずそれだけで全ての魔力を消費してしまいそうな勢いだ。盾を持つマシュの両手の皮が衝撃に耐え切れず剥がれていく。しかし、それでもマシュは屈しなかった。ようやく炎の勢いが収まった所でマシュが膝を突く。

 

「マシュさん!!」

 

「マシュ、大丈夫!?」

 

「は、はい‥‥何とか大丈夫です!」

 

両手に相当の火傷を負ってはいるが戦闘は可能だ。藤丸が即座にマシュの火傷を礼装を使い治療しようとする。しかし出来ない。それを見たオリオンがマシュを庇うように前にでる。

 

「おおかたあの神の権能か何かだ。恐らくあの神が死なないかぎり限り治療は不可能だと思った方が良い」

 

そして当然、神の攻撃が一度だけで終わるはずもない。今度は彼の手の炎から狐や狛犬といった生物が生まれ襲い掛かる。それを切り裂いたオリオンが弓を番えた。

 

「オオオオオオォッ!!」

 

弓が激しく撓み、真っ二つにへし折れようかというその瞬間に力が解き放たれ、それが流星のように神の元に進む。

だが弓矢は神の身体に当たる直前に燃えつきてしまった。それに続くようにマシュ、マンドリカルドも空に佇む神に向かって飛び掛かるが、その全てが神の纏う火により阻まれ、逆にダメージを負う。

 

そのお返しと言わないばかりに再度、神から熱線が放たれる。それを受けはしなかったものの‥‥熱線が直撃した遠くの島が一瞬で焼却されてしまった。ソコに住まう人々ごと。

 

「っ‥‥!」

 

自分達がやったことではない事とは言え、図らずも村人を巻き込んでしまったことに藤丸が罪悪感を覚える。

 

こちらの攻撃は通らない。敵の攻撃は核爆発クラス。しかも向こうの攻撃手段は「火」という事だけあって、例え攻撃が当たらなくてもその熱量によりこちら側は傷を負う。

そのあまりの理不尽さにイアソンが思わず舌を打つ。

 

「ちっ、何で神というのはどいつもこいつも出鱈目な能力をもっているのかなぁ!?」

 

「言ってる場合か!」

 

アキレウスが弱気になっているイアソンに喝を入れるが、このままだと敗北は間違いない。そう、ソレが神なのだから。数匹の蟻では恐竜という巨大な存在には太刀打ちできない。

 

「その通り、貴様たちはここまでだ。劣等種の分際で我が世界に牙を向けようとした罪。その命を以て贖え」

 

神の上空にいくつもの火玉が出現する。放たれる火玉はさながら太陽のような灼熱を持ち辺りを燃やす。

そしてそれがカルデアの面々を襲った。

 

「──────あ」

 

マシュの身体に火玉が直撃した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

とある場所にて

 

 

そこはとても美しい場所だった。神の世界というに相応しい世界。星間都市山脈オリュンポスでは,神と神が戦うという尋常ならざる光景が広がっていた。ある神同士の権能がぶつかり合い、星のような輝きを見せた後に散った。

 

オリュンポスに侵入した日本の神とオリュンポスに存在する神々が争っている。

そんな様子を見た金髪ロングと細剣にも見える杖、白い装備が特徴の中性的な美青年が眼前の男に問いかけた。

 

「さて、これはどういう事か説明してくれるかな?異聞帯同士の戦いは領土が接触してからという取り決めだった筈だ」

 

自身の異聞帯が侵攻されているという事態にも関わらずキリシュタリアは落ち着いた振舞いだ。しかし、彼の傍に控える双子の神霊はそうではなかった。

 

「キリシュタリア様。この男との問答など無駄な時間かと」

 

「ええ、ええ。私も兄と同様の意見です。このオリュンポスを侵攻してきた時点でアレは今すぐにでも排除するべき存在です」

 

侵略者と会話する暇があるぐらいなら、すぐにでも排除するべきだと遠回しに言う2人。

 

「君達の意見はもっともだ、ディオスクロイ。しかし私は彼に問わなければならない。クリプタ―の統括者としてね。」

 

キリシュタリアからの言葉を受け渋々引き下がる2人。

キリシュタリアが再び問う。

 

「直に異星の神は私の異聞帯に降臨する。それで全ては切り替わる。旧世界は滅びこの星には新たな秩序が布かれる。────今になってこの未来に賛同できなくなったのかな?」

 

キリシュタリアからの問いに対して眼前の男が言った。キリシュタリアの目的が達成されると同時に、世界を巡る争いの勝者が大西洋異聞帯になってしまう。こちらの世界が消えるのは困ると。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

場面は藤丸立香のいる場所に戻る。神が放った火玉をモロに受けたマシュは全身に酷い火傷を負い倒れ込んだ。まるで戦いにならない。あの神はあからさまに手を抜いているのにも関わらず、掠り傷一つ負わせられない。

 

「ぁ‥‥ぅ‥‥」

 

「マシュ!」

 

藤丸が傍に寄って、マシュを抱きかかえる。意識を失ったマシュは身体の一部は炭化しており一刻も早く治療しなければ死ぬことは間違いない。藤丸が急いで礼装を起動するがやはり、傷は治らない。

 

「くそ!治れ‥‥治れよ!!」

 

「無駄な行為なり。我が権能によって焼かれた以上、元には戻らない」

 

神が藤丸立香の行為を無駄だと断じる。

仮にオリオンの言った通り、あの神を殺さなければ傷がいえないというのであれば、もう生存は絶望的だろう。

 

「っ‥‥うおおおお!『不帯剣の誓い(セルマン・デ・デュランダル)』!!」

 

「‥‥‥いつになったら学ぶ?」

 

あの神を倒せばマシュはまだ間に合う。そう判断した、マンドリカルドが自身の宝具を発動する。それはかつて魔剣デュランダルを手に入れるまで剣を身につけぬ、と誓った伝説の具現化宝具。

手にしているものが、どんな武器であっても彼がかつて身につけたデュランダルと同等の切れ味を持つようになる。

しかし‥‥通用しない。神の纏う火の鎧に阻まれるどころか自身の剣まで燃え尽きてしまった。

 

アキレウスの宝具である戦車でさえ同様の結果だった。自身の宝具も通用しないという事実にアキレウスが舌を打つ。

 

「‥‥‥‥っ!」

 

「なんなんだ、あれは!無敵すぎるだろ!なんで神ってやつはこうも理不尽なんだ!」

 

宝具も通用しない。イアソンが理不尽だというのも無理はない。しかし、理不尽と言われた当の本人は不快そうな表情をするだけだった。

 

「この程度が理不尽?笑止。そちらの世界の神の程度が知れる。見るがいい。真たる神の権能を」

 

権能。そう言われメンバー全員が迎撃態勢を取る。一体どれほど強力な攻撃が来るのだろうか。果たしてその攻撃を捌けるのだろうか。

そんな心中のなか‥‥‥突然全員の身体が発火し炎に包まれた。

 

「な、なあぁぁ!?何だこれ!?突然燃えて‥‥!」

 

「うあああぁあああ!?熱い‥‥‥熱い熱い熱い!」

 

魔術的な要素の前触れは無かった。勿論向こうが攻撃したという前触れも。ただ突然燃えたのだ。全員があまりの痛みに下唇を噛む。ソレは決して消すことが出来ない神の業火。

 

そう、これが権能。「このような理屈でこういう事が出来る」ではなく「ただ、そうする権利があるのでそうする」というもの。この神が「燃やす」と思えば、それは「燃える」のだ。

もはや「防ぐ」や「回避する」ではどうにもならない様な次元。初めから戦いになどなりようが無かった。

 

 

「戦いになると思ったか?一矢報いれるとでも?浅はか、浅はかなり汎人類史。楽には死なせん。我が炎は貴様らの肉体が朽ち果てるまで決して消えることは無い。骨の髄までゆっくりと燃やされる苦痛を味わいながら消えるがいい」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「皆!あれは───不味いぞ!」

 

シャドウボーダーの中にいるネモが叫ぶ。マシュも藤丸もあの神の炎に包み込まれてしまった。一刻も早く救出しなければ命が危険だ。

 

「ま、ままま不味いぞ!!みんな死んでしまう!!こちらの攻撃は一切通用しない、攻撃力も凄まじい、一度ダメージを負えば傷は治らない、加えてあの正体不明の攻撃!

一体何なのだ!出鱈目にも程があるのではないのかね!?」

 

「そんなこと言われなくても分かっているよ、おっさん!くそっ‥‥何か打開策はないのかよ!?」

 

ムニエルだけでなく、みんな藤丸達が火だるまになってる様子をみている。パリスが自身の頭の上に羊として乗っているアポロンに助けを求める。

 

「ア、アポロン様。あの炎を何とか出来ないのですか!?」

 

「‥‥無理だ。アレが権能だとするならば、もうあの神を殺すことでしかあの炎は消せないだろう」

 

「そんな‥‥‥」

 

最早打つ手なし。シャドウボーダーの皆が諦めかけた時‥‥ある一人の英霊が炎に包まれながらも立ち上がった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ほう、まだ立てるか?」

 

「当たり前だ。こんなの痛くもねえ!」

 

「痛くないと申すか?では、更なる苦痛を味わえ」

 

直後、オリオンを覆う炎の熱量が増す。血液が沸騰し、血管が破れ肉は焼け焦げる。

しかし、それでもオリオンが倒れることは無かった。

 

「────っ。アルテミスを堕とした‥‥お前たちに負けるわけにはいかないんだよ!」

 

全身が火だるまになりながらもオリオンは立ち上がる。壊れて、限界を迎えてしまったこちらの「アルテミス」。それを落とされてしまった。自分以外の誰かに。

だからこそ‥‥‥本来であればアルテミスの為に使う筈だったこの力とこの弓矢を日本の神に使うのも当然ともいえる。

 

「────立香!力を貸してくれ!」

 

「うん‥‥‥!」

 

オリオンからの言葉を受けた藤丸が立ち上がる。他の英霊達と違い彼は生身の人間だ。その苦痛は想像を絶するだろう。

しかし、それを神が黙って見ているわけが無かった。

 

「なるほど‥‥思った以上に耐える。では熱量を更に上げるとしよう」

 

神が再度権能を振るおうとした。もしまた権能を使われれば、今度こそ藤丸立香は立ち上がれなくなるだろう。

しかし、神に飛び掛かるものがいた。

 

「させるか!────『宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)』!!」

 

「ああ、邪魔はさせない────『絶世の儚剣(レーヴ・デ・デュランダル)』!!」

 

同じく肉を焼かれながらも自身の全てを賭けて神に宝具をしようする2人。アキレウスは自身の槍を投擲し、マンドリカルドは自身が存在さえしらなかった宝具を発動した。2人とも自身の霊基の全てを消費して。

しかし命がけの攻撃をもってしても神には届かない。僅かな傷を与えるのが関の山だ。

 

‥‥‥‥‥だが当然の事ながら僅かとはいえ傷を与えられた神の意識は2人に向く。権能を防ぐことは出来ない。しかしそれはあくまでも使われればの話だ。

ほんの一瞬。ほんの一瞬だが、それは藤丸に令呪を使わせるという隙を与えてしまった。

 

「っ‥‥全ての令呪を持って命ずる!オリオン!あの神を倒してくれ!」

 

「──────行くぞ!これは我が仲間の為の一撃。己が冠位(グランド)をここに返上する!」

 

令呪のブーストが加えられたオリオンから莫大な魔力が放出される。肉は溶け、骨も一部露出している。右眼は既に光を失った。しかし、それでもオリオンの闘志には一点の曇りもない。

 

「笑止。己の命を賭ければどうにかなるとでも?たかだかその程度で神に届くとでも?

愚かなり、愚かなり汎人類史。故にこそ貴様たちは劣等種なのだ」

 

神は笑う。しかし、この神はある一つの事を見誤っていた。いや、下位世界の者にそれだけの力を出せる筈がないと思い込んでいたのかもしれない。

 

この神に間違いがあるとすればただ一つ。それは他世界の者達を侮りすぎたこと。

藤丸立香や英霊達を侮る事はまだ良いのかもしれない。だが、オリオンまでも侮ったのは致命的だった。裁きを与えるためにじっくりと時間をかけて燃やすなどという事はせずに権能を使い一瞬で焼却するべきだったのだ。

 

目の前の存在は冠位(グランド)なのだ。彼の冠位(グランド)としての霊基の全てを乗せた一撃。ヘファイストスが打ち直した、神造兵装。そこに令呪3画による後押し。ソレが()()()()()()()()で済むはずがないことを神は気づかない。

 

「『我が矢の届かぬ獣はあらじ(オリオン・オルコス)』────!!」

 

「────ッ!?」

 

ソレが想像をはるかに上回る破壊力であることを神が気付いた時には、もう遅かった。咄嗟に展開された幾十もの炎の壁。しかし、その程度で神をも堕とす光の矢は止められない。

 

その一撃は神の纏う炎をまるで紙切れのように突き破り頭を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 




なお、今回ギリシャに派遣された神のうち3柱は地上を担当し、残りはオリュンポスに攻めています。


地上組は、カルデアと戦っている神が1柱。
アルテミス落とした神が1柱(アルテミス撃破後は地上で待機)。
オデュッセウス+ケイローン+アトランティス兵+いろいろな魔物と戦っている神が1柱になっています。


次話どうするかな‥‥オリュンポス早よ。なお今回の話が続くとしたらオリュンポスの神vs日本の残りの神とオデュッセウス+ケイローン+アトランティス兵+いろいろな魔物vs神と主人公の描写になると思います。






あと一応、今回登場した神の名前を下記に載せています。










アルテミスを落とした神の真名は石凝姥命(イシコリドメノミコト)です。5話と8話に登場している。品が良く、落ち着いていて大人な感じ。鏡を作る権能を持つ。
なお、今話で登場した八咫鏡は「空間移動」、「スーパーリフレクター機能」、「好きな場所を映す」、「映したものを取り寄せる」‥‥等の機能を持つかなりのチートアイテム。今回派遣された神の中では結構、弱いほう。


ポセイドン、カルデアと戦っていた神の真名は火之迦具土神(ヒノカグツチ)。火を操る権能を持っており、存在を感知している相手を意思一つで燃やすことが出来る。しかも「炭になるまで絶対に消えない炎を出す」、「傷の修復が不可能になる炎をだす」みたいなことも出来る。
彼が纏う火の鎧はカルナの鎧とほぼ同性能+カウンター機能というチート性能。強い。今回派遣された神々の中でも割と強いほう。
しかし、他世界とその住人を見下しており、命令に無いカルデア襲撃に加え相手を舐めプした挙句に頭を吹き飛ばされるという困ったちゃん。


神話ではイザナギに殺されたが、異聞帯では殺されていない。
全部エフィアスさんが居たからじゃないか‥‥!です

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