FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について 作:ハセカズ
作者が社会人になってしまったので、続きを書いていけるかちょっと怪しい状態です。
あと、本編以降の番外編は全て消しました。
しおりが使いづらいという意見が多かったからです。なので別の場所に移そうと考えています。ただ、時間かかるので暇がある時にやります。
あと、第13話と14話は話の中身が変わっている所があるので今回の話見る前にそっちを見てください。主人公がギリシャ攻めた理由も大幅に変わっています。
後今回の話はFGO第2部第五章のオリュンポスのネタバレがありますのでプレイした人のみがみてね。
アトランティスに浮かぶ船の甲板にて、異様とも言える様な光景がそこには広がっていた。
「あぃぁぅぁぁ‥‥」
アトランティスの兵士が干からびていく。
辺りには不気味なオブジェがいくつも転がっておりその全てがミイラのように干からびていた。全身に植物の根のようなものが張り巡らされており、花が身体中の至る所に咲き誇っていた。持ち主の命を糧にして。
そして花を介して魔力を吸い取った白い髪のおかっぱ頭に白装束の少年は顔を顰めた。彼からしてみればそれは余りにも薄味な上に汚れていたのだ。
「まったく‥‥ヘドロでも啜っている気分だ」
咲き乱れた神々しい大樹の上に座っている少年が顔を顰める。
「量も少なければ質も悪い。おまけに酷く澱んでいて汚いときたもんだ。どうしてこう、他の世界のマナはこうも不味いんだ?まあ、この世界は他の世界に比べると大分ましな方ではあるようだが」
神がこの世界の魔力に感想を述べている間に生まれた隙を賢者は逃さず狙った。
「『
空から降り注ぐ一条の弓。死角から放たれるその弓は本来であれば達人であっても反応出来ない。
しかし、この神に当たる寸前に、花となって無害化した。
「っ‥‥!」
ケイローンが歯噛みする。通用しない。こちらの攻撃が悉く通じない。
アトランティスの兵の攻撃もエキドナもケルベロスもオデュッセウスの攻撃も、あの神には何も通じなかった。これでただ硬いから通じていないというのであればまだ付け入る隙はあった。
しかし、この神に向ける攻撃は全て完璧に「無効化」されているのだ。
あの神に対する攻撃が許されていないとでもいうかのように。
「ほう‥‥こちらのケイローンの攻撃は随分と可愛らしいものだな」
「こちらのケイローン‥‥?」
その言葉にケイローンが怪しげに眼前の神を見つめる。
「おっと少し喋りすぎたか‥‥まあ、いい。どうせ消える世界だ」
「‥‥‥‥何故。こちら側の異聞と日本の異聞が争うのは異聞帯同士が接触してからの筈」
少しでも敵の事を探ろうとするオデュッセウス。
訳が分からない状況だった。汎人類史の残党を駆除するために船に乗り込み準備を整えようとしたこのタイミングで日本の神達からの襲撃だ。
最初はカルデアとこちらが争っている間の漁夫の利狙いかと考えたがそれにしてはタイミングがおかしい。
それを狙うならカルデアとの戦闘が最も激化したところを狙うべきだ。なぜ今、攻めてきたのかがオデュッセウスは全く分からなかった。
「それをお前達が知る必要はない。どうせ、何を言っても消えるんだから覚えていな‥‥」
そこで
何事かとケイローン達も見やるが。
「ふ‥‥‥ははははははは!」
神が突如、大声で笑いだした。
「まさかな。あれだけ差があって一体どうしたらそうなる?いや、あいつにまさか
「何を‥‥?」
もはや神はケイローン達の事も眼中にないようで見向きもしない。
「それにしてもあの加具土命を殺すとは‥‥カルデアだったか?うむ、どうやらあっちの方が面白いものを見れそうだ」
だがどうやら、神の気を引く何かが起きたらしい。
助かったと、アトランティスの兵士の何人かが内心でホッとする。
「あぁ、多少は楽しめたしお前達はもういい」
この言葉を聞くまでは。
これ以上ないぐらい簡潔な死刑宣告。
「ッ‥‥『
瞬間。辺り一面に花が咲き誇った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁはぁ‥‥終わった‥‥?」
藤丸立香が息も絶え絶えな状態でポツリと呟く。
先ほどまで藤丸を覆っていた炎はすでに消えている。
近くには頭部を失い倒れ伏している神。
火傷が酷いがそこまで重症という程でもない。あの神が加減しながら焼いた結果だ。この程度であれば今のカルデアの治療術であれば時間もそれほどかからず戦線復帰できる。
「‥‥みんな!」
周りを見渡すと、アキレウス、マンドリカルド、イアソンは消滅しかけていた。
イアソンは神から受けたダメージが大きく、その他の3騎は自身の全霊基を消費して攻撃したためだ。そして、オリオンは既に消滅していた。
それに何よりもマシュの傷が酷い。先ほどからピクリとも動かない。しかし、あの神が死んだ今なら治療が可能なはず。直ぐに駆け寄ろうとして‥‥
「る‥‥さん‥‥」
「‥‥‥‥え?」
聞こえてはならない声がした。
声のした方を振り返るとそこには頭部を失い倒れていた筈の神が居た。
失われた筈の頭部は元に戻っている。まるで何事もなかったかのように。
「─────許さん。許さん許さん許さん許さん許さん許さん」
頭が吹き飛ぶ前と吹き飛んだあとで比べて見てもこの神が何かしらの消耗を負った様子は一切ない。どころかその神力が先ほどまでよりも増している。
「我が神体に傷を付けただけに飽き足らず!一度とは言え我が命脈を途絶えさせた!!
許さん許さん許さん許さん許さん許さん、決して許さんぞ──劣等種共!!!!」
『馬鹿な‥‥これは再生ではない。時間の逆行に近い。まさか蘇生を‥‥?』
『な‥‥ば、馬鹿な日本の神は不死の存在ではなかった筈だぞ!?』
ゴルドルフの言う通りギリシャ神話で語られているような神達と違い日本の神は決して不死の存在ではない。頭部を失えばいかに神といえども死は避けられない筈なのだ。
『どうなってるんだよ!?異聞帯だから神の性質も変化してるのか!?』
『恐らくその可能性が最も高いでしょうが‥‥これは』
端的に言って詰みだった。もう戦える駒が今の藤丸には無い。
「もはや、見るに値せず。存在するにも値せず。我が全権能を以て諸共焼却してくれようぞ!!」
「─────なっ!?」
直後、上空に直径数キロはありそうな巨大な火の玉が出現した。
それは、カルデアの全ての人間を絶望させるのにあまりうる火力。
さながら太陽そのものだった。
(宝具‥‥いや、そんな言葉では到底説明できないレベルの莫大なエネルギーだ。
いくら神と言ってもあれは‥‥‥一体、日本ではどのような歴史を‥‥?)
ホームズが内心でそう呟くが、まさにその通りだった。いくら神と言ってもアレは異常にすぎる。あの業火のほんの一欠けらでも放出すれば、それでアトランティスの全てが燃え尽きる。そんな次元だった。だというのに
「おおォォォ‥‥‥‥!!!」
まだ、球体が大きくなっている。当然神は隙だらけの状態なのだが、誰も攻撃しようとしなかった。アレはもう防げない。
今からあの神を倒しても手遅れだ。倒した瞬間に制御を失ったあの太陽さながらの業火の全てが放出される。そうなれば‥‥被害はこの
「嗚呼、口惜しや口惜しや口惜しや。既に退去したあの忌まわしき弓の英霊には我が神罰を与えられぬ。だが、貴様らは別だ!その肉体も。魂も。存在も。全て全て全て。欠片も残さず焼却してくれる!!!!」
「なっ‥‥あ」
イアソンはすぐに分かった。
アレを受けたが最後。自分という「存在」が完璧に消滅することになる。過去からも、皆の記憶の中からでさえも消滅することになる。
それはどれだけ強固な盾であっても、いかなる回避手段であったとしても、それらの要素をすべてすり抜けて「存在を焼却する」という結果を強制的に引き起こす神の業火。
「ま、待て!そんなものを放てば‥‥この世界ごと吹き飛ばす気か!?」
「何処まで神を侮辱するか‥‥!!我が権能が同族を焼くとでも?消えるのは劣等種共とこの世界のみだ」
これはただの炎ではない。神の権能で出来た業火だ。
故に効果範囲は神が攻撃対象と認識した者のみだ。即ちカルデアと‥‥この世界に生きる全ての人々。
「っ‥‥この世界の市民ごと焼き払うつもりなのか!」
戦ってるのは自分達であるのに、無関係な民をも巻き込もうとする神の行為は断じて藤丸立香が許容できることではない。しかし
「だから何だ?」
余りにもあっさりとした神の返事に藤丸は言葉を失った。
「何故、神が劣等種を気に掛ける?命乞いならもう少しマシな物乞いをしてみせよ。
そもこの世界の民共は空想樹を採取すればどのみち消える。貴様らも初めからそのつもりだったのであろう?全く以て意味のない憤り。やはり脳も劣悪である」
「ッ‥‥!!」
「消えよ」
そして業火が放たれようとしたその瞬間に‥‥業火を樹木が覆った。
「な、これはっ‥‥!?」
「ふむ‥‥お前が任務を忘れるほど逆上するとは珍しい」
「ッ!
『なぁっ‥‥!?』
登場したのはオカッパ頭の少年。どうやらあの業火を止めたのはこの神らしい。
「何故止める!?このまま行けば‥‥」
「この異聞帯のクリプタ―も一緒に燃えていただろ?
キリ‥キリタンポ‥‥いや、キリンタリアだったか?クリプタ―の回収も任務に入ってるんだ。いくら
「ッ‥‥‥!」
「まあ、それは置いといて‥‥早く下に来るように命令が来た。行くぞ」
藤丸も、アキレウスもそしてカルデアの全員が神と神の会話が全く頭に入らなかった。あの
────何だ
それが全員の心中だった。
先ほどまで戦っていた、神が霞んで見える程の圧倒的な神気。魔力の上限量が全く見えない。
近くにいるだけで、自分の存在が溶けてしまいそうだった。あのティアマトですらあの神の前では虫けらか何かだ。
そして、その神がカルデアの方を向いた。
「それにしても、そんなナリで
「‥‥ッ」
その言葉を最後に
危機が去ったことを認識した藤丸はその場にへたり込んだ。
「はぁ‥‥はぁ‥‥」
『‥‥疲労困憊なところ申し訳ないが、一刻も早くマシュを連れてこちらに戻ってきて欲しい。あの神からの権能が無くなったからといって重症であることに変わりはないのだからね』
ダヴィンチのその言葉で一旦、藤丸達はストームボーダーに戻ることになった。
・・・・・・・・
それから一時間程が経った。
マシュの意識が回復して、万全とまではいえないまでも十分な戦闘を行うことが出来るレベルまで回復していた。
そして、現在はこれからの方針について話し合っていた。
「ほ、本当にオリュンポスにいくのかね?はっきり言って危険なのでは‥‥?それにこのまま日本の神とギリシャの神が争っていてくれるのであれば、我々の出番もないと思うのだが‥‥」
「うーん、確かにこのまま日本の神が勝利するようであれば我々もこれ以上この世界で戦う必要はないと思うよ?でも、もしもここの世界の神達が日本の神に勝利した場合に備えないと。その場合は当初の予定通り空想樹を採取する必要があるからね。
もしも、時間に余裕があるのであれば、撤退も思慮にいれるべきなんだろうけども‥‥一刻の猶予も無いことは君も知っているだろう?」
「むむむ‥‥しかし‥‥正直言ってあの
「そ、そんなに凄かったのですか?確か
「いや、本当にすごかったのだからね!?私など何度も走馬灯を見てしまったのだからな!」
マシュは気絶していたため知らないが、藤丸は所長の言葉に同意していた。
確かにあの神が負けるというところは藤丸にも想像がつかない。
それだけ、あの神のインパクトは大きかったともいえる。
「な、なあ。キャプテン。君の半身はポセイドンの子なんだよな。実際どうなんだ?オリュンポスの神と日本の神‥‥どっちの方が強いんだ?」
「正直‥‥分からない。はっきり言って日本の神の力は僕の予想を遥かに超えていた。
少なくともゼウスであればあの
「う、うーむ。確かに‥‥もしこの世界のゼウス神が神話通りに宇宙を焼くなどという出鱈目な権能を持っていれば‥‥」
「まあ、とにかくだ。どちらが勝つか分からない以上、我々は進まなければならない」
ダヴィンチの言う通り、あと僅かな期間で異星の神が誕生してしまう可能性がある以上はカルデアに「行かない」という選択肢はない。異聞帯を実現させた異星の神が降臨した場合、地球にどのような影響をもたらすのか分からない以上は不確定要素を残せないのだ。
これでもしもカルデアが撤退するか、このままここで傍観し続けて日本の神が破れた場合には、そのまま異星の神が降臨するばかりか、世界をめぐる戦いが「大西洋異聞帯」の勝利で終わってしまう可能性すらある。
隠密機能を最大にしたうえで、日本の神とギリシャの神の戦いが終わるまでカルデアは手を出さずに傍観する。つまり「漁夫の利」を狙う方針で行く事になった。
既にアキレウスやイアソンは退去しており、現ボーダーの戦力はホームズ、マシュ、シャルロット、パリスの4騎。あの神達と戦うにはやはり戦力不足なため、ここは出来るだけ戦力を温存させておいた方が良い。
そして、そのままビッグホールを通って海の下に進むストームボーダーであるが、驚くほどに警備が手薄だった。
ここまで敵らしい敵と遭遇していない。
「むぅ‥‥?何かやけにあっさりと進めているような‥‥」
「日本の神様たちが防衛の全てを突破していったんだろうよ。それよりもそろそろ着くぞ、おっさん。」
そして、アトランティスの海中を抜けてオリュンポスへと到達した瞬間だった。
神気、神気、神気、神気。圧倒的な神気の嵐がストームボーダーを歓迎した。
『うああああああッ!』
『逃げるな!戦え!』
『背後を取るんだ!』
『いぃぃいッ‥‥強す‥あぎゃ』
『おおおおおおお!!』
あるところではオリュンポス兵と青銅の巨人タロスが神と戦っていた。
「か、身体が勝手に‥‥!!?」
「ポルクスッ!?」
『壊れろ』『折れろ』『肉団子になぁれ♡』『なんて素敵な声なのかしら‥‥』『バキバキバキバキ』『面白いなぁ』『うきうき』『今度は私がやるわぁぁ』『うーうー』『素敵な何かが溢れて来る‥‥』
あるところでは双子の神が、日本の神と戦っていた。その神は本来なら一つしかない口が身体中いたるところについていた。
「平伏せよ」
「星よ、光よ、墜ちろ」
あるところではゼウスと思わしき機神が以前カルデアを襲撃したこともある
まさにそれは神話の決戦ともいえる光景だった。
一同が絶句しているさなか‥‥ストームボーダーにアラートが鳴り響く。
ステルス機能を全開して、かつ戦闘地外の場所に出た筈なのに、何事かと一同が驚く。
「緊急事態だ!何かがストームボーダーに巻き付いてる!!」
「のわぁ!?」
「ッ全員衝撃に備えて!」
巻き付いたものにそのままの勢いで引っ張られるストームボーダー。
そして、ストームボーダーがたどり着いたのは、神々が住まう聖域。空中庭園のすぐ近くだった。
「な、何が‥‥ってここは戦闘の中心地ではないか!急いでここを離れなければ!!」
「‥‥どうやらそんなことを言ってる余裕はなさそうだよ。早速お出ましだ」
ストームボーダーのモニターには栗毛の少年が映っていた。
12歳ぐらいの少年で、思わず抱きしめたくなるようなとても愛くるしい見た目をしていた。
‥‥‥‥オリュンポス兵の腕をフライドチキンのようにかじっていなければだが。
「君達がボーダーかぁ。わざわざ来てくれるなんて‥‥もしかしてボクのご飯になりにきてくれたのかな?」
その神と思わしき少年の背中からはウロボロスを思わせるかのような口のついた触手が無数に出ていた。ボーダーを引っ張ったのもあの少年に違いないだろう。
その少年の足元にはかつてデメテルとアフロディ―テだったものの残骸が散らばっていた。
「いやぁ、嬉しいなぁ!ありがとー!────イタダキマス」