FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について   作:ハセカズ

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お久しぶりです。


久しぶりの投稿になります。
今回の話には地獄界曼荼羅のネタバレが若干入っています。


第18話 突入

「‥‥ホ、ホームズ君?私の聞き違いかな?い、いま何と言ったのかね?」

 

「‥‥日本異聞帯を早急に攻める必要があると仰いました。」

 

「な、なにを言ってる!!大西洋と違い日本異聞帯に関してはまだ、だいぶ余裕がある筈だ!!

だから、時間をたっぷりと掛け、準備を整えてから日本に向かうという話だった筈だぞ!?」

 

ゴルドルフがホームズに食って掛かる。

ゴルドルフ以外の集められた者の中には怪訝な表情を浮かべる者もいた。

次の攻略対象が日本になるというのは、残った異聞帯を考えれば、当然だが、

「早急に」という言葉に引っ掛かっている者が多いようだ。

 

オリュンポスの神々が日本の神に落とされ、そしてその日本の神が異星の神に蹴散らされるというとんでもない光景を目の当たりにしたものの、カルデアは無事に帰還を成し遂げていた。

そして、その数時間後。

ホームズから緊急の招集がかかり、「出来るだけ早く日本異聞帯を攻めるべき」という言葉を述べられたのが冒頭での出来事だ。

そのホームズからの言葉に、疑問を浮かべたのはシオンも同じだったようで、口を開いた。

 

「残った異聞帯は、イギリス、南米、日本の3つ。イギリスと南米が自滅しかけている以上は次の攻撃先は必然的に日本異聞帯になると思います。しかし何故、そこまでの焦りを見せているのですか?日本は確かに版図を広げつつありますが、その進行速度からまだだいぶ余裕があると推測されています。そもそも現時点だと勝てる可能性は限りなく0に近いです。

だからこそ、我々側も時間を掛けて対日本異聞帯用の準備をするという事を、大西洋異聞帯攻略前に話し合った筈ですが?」

 

空想樹が活発的な活動を見せた大西洋異聞帯と違い日本は、その内情こそ機器で感知することは出来なかったが、異聞帯を覆う嵐の拡張速度から空想樹も大西洋のように完成には至っておらず、暫くは放置していても大丈夫であるというのがカルデア側の結論だ。

それに、実質的に大西洋異聞帯を壊滅に追い込んだ日本異聞帯は間違いなく、これまででもっとも強力な世界。故にこそ、カルデア側も万全を期してから向かうという話になっていたのだ。

 

「Ms.シオンの言う事も最もだ。だが事情が変わった。現在、日本異聞帯はその版図を広げてはいるものの、その進行速度からまだ余裕があるというのがこちら側の解析だが‥‥‥これが間違いである可能性がある。」

 

「間違いですか?」

 

「簡単な話だよ、Ms.キリエライト。日本異聞帯を覆う嵐の拡張速度からまだ余裕がある。

これが、日本の神々側によって()()()()()()()()()()()であり、実際は我々の想定以上に、版図を広げていて、空想樹も成長している可能性があるという話だ」

 

「‥‥‥それはどういう事ですか?」

 

マシュが疑問に思うが、ホームズの言葉を聞いた、ダ・ヴィンチは、

なるほどといったような表情を浮かべていた。

 

「なるほど‥‥久久能智神(ククノチ)だね?」

 

「ああ、久久能智神(ククノチ)神は日本において木の神であるとされる。そしてそれは、

あの迦具土神(カグツチ)の攻撃を防いだ時に見せた権能からも間違いが無いように思える。」

 

「しかし、久久能智神(ククノチ)が木の神であるから何だというのかね?確かに、アレは凄まじい神であったが‥‥」

 

「‥‥‥久久能智神(ククノチ)は木の神。そして、あの規模の木神がいながら、異聞帯の拡張速度がここまで遅いのは()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「‥‥あ」

 

 

そこまで言われて、やっとホームズの真意が分かった、ゴルドルフとマシュ。

確かにあの規模の木の神が居るのであれば、もうとっくに空想樹が完成していてもおかしくない。というより大西洋異聞帯の空想樹が完成している以上、それよりも遅れているというのはどう考えても不自然だ。

 

「し、しかし。大西洋異聞帯のようにまだ、空想樹には何かしらの動きは見られないのだろう?」

 

「ええ、その通りです。

しかし、それすらも日本側にこちらの認識を誤認させられている可能性があります。

無論、これはあくまでも私の推測でしかありません。確たる証拠があるわけでも無い。

しかし、もし私の予想が当たっていて、日本の空想樹が完成していた場合、気が付けば世界を巡る争いが日本の勝利で終わっていたとなる可能性すらあります。」

 

ホームズのその言葉に最悪の事態を、一同が想像する。

ホームズの予想が当たっていれば、カルデア側は戦うことすら出来ずに負けることとなる。

 

「勿論、空想樹の元々の持ち主である異星の神と日本異聞帯が敵対した以上、まだどうなるかは分かりませんが。しかし‥‥‥私は、もうあまり猶予が残されていないと考えています」

 

「なるほど、だから私達を集めて緊急会議を開いたわけですか‥‥それでは、ホームズさんの話が正しいと仮定したうえで、改めて日本異聞帯側の戦力の確認をしましょう」

 

そう言うなりシオンが、これまでの日本の情報を纏めたデータを他の面々に公開する。

 

「現在、確認できている日本側の神は十柱になります。その中で真名が判明しているのは、久久能智神(ククノチ)迦具土神(カグツチ)の2柱。また、八咫鏡と思われる神器を使っていた神はその魔力規模から石凝姥命(イシコリドメノミコト)と推測されます。

いずれも強大な存在規模、魔力出力値を持っていますが、中でも久久能智神(ククノチ)は頭一つ抜き出ていますね‥‥‥‥」

 

「た、確かに‥‥」

 

シオンが顔を顰めながら久久能智神(ククノチ)について纏められた資料に目を向ける。

これに関してはマシュ、ホームズを含めてあの神を知っているものはみな同意していた。

この神に関しては、魔力値があまりに出鱈目すぎて、どれだけの存在規模なのかを正確にははかれていないが、それでも現在確認できている神々の中ではダントツで強いというの一目瞭然だった。

 

「しかも異星の神はそのとんでもない神様達をあっという間に片付けられるぐらいの強さを持っているんだろ?気が重くなるなぁ‥‥」

 

「いえ、ムニエルさん。それについてなんですが‥‥オリュンポスで観測した『異星の神』の存在規模、霊基出力は三等惑星級星。ビーストⅠ、ゲーティアの二等惑星級に次ぐ魔力放出量でした。

‥‥そして日本の神のうち、迦具土神(カグツチ)久久能智神(ククノチ)、そして、真名は分かりませんがクリプターの回収時に何度か姿を現している、紫髪の神。この三柱の魔力放出量はゲーティアより上です。」

 

「な‥‥そんな筈がないだろう!もしそうなら、日本の神があそこまで一方的にやられる筈がない!!」

 

「それについては、原因をこちらでも調査中ですがまだ分かっていません。空想樹が元々、異星の神のものであるとするならば、その空想樹から生まれた、日本の神々に対して、何らかの事象が働いているというのが、こちらの見解です。しかし、今回は異星の神は関係ありませんので、いったんこの話は置いておきましょう。」

 

ゴルドルフの言う通り、もし異星の神の力が日本の神に劣るのであれば、日本の神があそこまで一方的にやられたことの理由が付かない。それについては、シオンやダ・ヴィンチも捜査中であったが、異星の神は現在、大西洋異聞帯を離れ、南米異聞帯に移動し、停止している状態だ。暫くは南米から動かないと推測されている為、今回は後回しにされた。

 

仮に異星の神が日本の神に対して有利を取れるとしても、カルデア側がそうでなければ何の意味もないのだから。

加えて言うなら、カルデアが警戒するべきなのは、神々だけでない。

 

「更に日本で確認されている戦力としては、こちらも真名は不明ですが‥‥空色の髪をした見た目が13歳ほどの少女。こちらは、日本のクリプターが契約しているサーヴァントなのですよね?」

 

「うん。本人はそういってたね。ただ、あの規模の存在と契約を結ぶのは本来なら無理だと思うから、恐らくは我々の知るサーヴァントシステムでの契約とは違うと思うけどね。そもそも、あの娘がサーヴァントであるかも怪しいわけだし。」

 

「それなんですよね。どういうわけか、あの少女からは一切魔力を‥‥というか()()()()()を感知できないんですよね。正直、データだけ見ると、ただの少女にしか見えません」

 

シオンの言う通り、今日まで、カルデア側は人も機械も含めて例の少女から一切魔力を感じ取ることが出来ていない。

データだけで判断するなら、一般人と大差がないぐらいだ。故に、その少女が本当にサーヴァントであるかどうかの判別も未だについていない。

とはいえ、その少女がスルトや神となったアルジュナを圧倒したのが事実がある以上は

、何らかの能力でその力を感知できないようにしていると現在は推測されている。

 

「とにかく、推定される戦力は、最低でも神が十柱。それにスルトやアルジュナを圧倒したその少女というのが今まで確認できた戦力になります」

 

「それに、神の数は恐らく十柱では、きかないだろうね。自らの領地を放って全戦力をオリュンポスにつぎ込むわけがないし‥‥もっと多数の神がいると想定するべきだね」

 

神がもっといるかもしれないという言葉にゴルドルフが、青ざめる。

この場に集結していた、サーヴァント達も厳しい表情を浮かべている。

 

「‥‥‥‥確かに、日本の戦力は強大だ。現在の我々では勝ち目はほぼ0だろう。

しかし問題なのはそこではない。勝ち目が薄い戦いに挑んできたのは、これまでもそうだったのだから。一番の問題は‥‥()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という策がハッタリでない可能性が高いという点だ」

 

「‥‥‥‥‥ッ!!」

 

ホームズの指摘でカルデア内に沈黙が走る。

異聞帯の民に空想樹の効果を再現した。つまり、民を皆殺しにしなければ、藤丸達は勝てないというのはあの日本のクリプターが仕掛けてきた、策だ。

その再現を仕掛けられたインド異聞帯は現時点でも消滅が確認されていない。

そして、それを自身が担当する日本異聞帯に実施しない理由がクリプター側にはない。

 

「民を皆殺しにしなければ、勝てない‥‥か。チッ、胸糞悪いことをする野郎だぜ」

 

この会議に集まっていたサーヴァントであるモードレッドが日本のクリプターに悪態をつく。勿論、サーヴァントの皆には、日本のクリプターの事は伝わっている為、本人に嫌悪感を覚えている者が多かった。

 

「カルデアに残っていたデータから彼の性格は凡そ把握できているが‥‥どうにも魔術師には珍しく、自分に自信が持てていないようなタイプであるように見える。それに、正々堂々と勝負をするようなタイプでもない。

悪く言えば、単なる臆病者の小物ではあるが‥‥裏を返せば、慢心とは程遠い人物であるということでもある。どれだけ戦力差があっても、決して油断せずに我々を攻めてくるはずだ。」

 

「む、むぅ‥‥」

 

ただでさえ、戦力差が絶望的だというのに、相手側が油断せずにこちらを攻めてくるかもしれないという言葉に、顔を顰めるゴルドルフ。

だが、マシュはホームズの言葉に何かを思い出したかのような、表情を見せた。

 

 

「そういえば‥‥先輩が以前に仰っておりました。

『勝てるヤツは強いから勝つんじゃない。負けないと確信を持ってから、戦うから勝つ』と」

 

「負けないと確信を持ってから戦うから、勝つ‥‥か。言葉通りに捉えるなら、100%勝てる自信が持てるまで、あらゆる策を弄してくるという事になる。それこそ、今回の『民を皆殺しにしなければ、異聞帯を消せない』ということをやってのけたようにね」

 

「‥‥‥‥」

 

その言葉に藤丸は黙ったままだ。

先ほどから、藤丸は一言もしゃべっていない。

藤丸の様子を気にしつつも、ホームズは話を続けた。

 

「正直、敵の戦力が強大であるというだけであれば、まだ勝てる見込みはあったのかもしれない。そもそも戦力差で初めから我々が勝っていたという戦いの方が今までは少なかったからね。だが、今回は‥‥敵の戦力どうこうというよりも、

「異聞帯の民を皆殺しにしなければ、異聞帯を排除できない」という策を仕掛けられたことの方が遥かに問題だ。」

 

「で、ですが。まだそうしなければ勝てないという事が確定したわけではありません。空想樹の効力を異聞帯の民に再現したというのであれば、それをどうにか解除することが出来れば‥‥」

 

 

「無論、それが出来れば問題は無いんだ。だが、もしその手段が見つからなかった場合はどうする?方法がないと分かったその時点でもう手の打ちようが無くなる。少なくとも現時点で、ソレをどうにかする手段も見込みも我々は持ち合わせていない」

 

「そ、それは‥‥‥‥」

 

マシュがホームズの言葉に言い澱む。

そして、ホームズが藤丸の方を見る。

ハッキリ言って、これから問いかける質問は、ホームズとしてもあまりやりたくない問いかけだ。だからこそ、今まで先延ばしにしていたわけだが‥‥‥‥もうそんな余裕は何処にもない。だからこそ、ここでハッキリとさせておく必要がある。

 

「Mr.藤丸。今まで君には様々な負担を掛けてきた。本来なら一般人である筈の君に、世界を救うという責務を押し付け、そして今回の旅で、世界を消すという重圧迄まで背負わせてしまった。だからこれからする問いは決して君にするべきではない事だと思うが‥‥それでも我々は問わねばならない」

 

「‥‥‥‥‥」

 

「もしも最悪の事態になった時。

民に再現されたであろう、空想樹の効果を解除できず、

他に手段が無くなった時に‥‥‥‥君は覚悟をきめる事が出来るかい?」

 

ストレートに言ってしまえば、「最悪の事態になった時に、皆殺しにする覚悟は出来るか?」というホームズからの問いに

藤丸は黙ったままだ。そんな藤丸の様子をダ・ヴィンチもマシュも皆が静かに見ていた。

やがて、藤丸が口を開いた。

 

「─────そんなこと出来るわけないだろ!!」

 

藤丸が机を叩き、叫ぶ。

そして、これまで溜まっていたものをすべて吐き出すかのように、声を荒げる。

 

「空想樹を切除して、間接的にその世界の皆を消すことは出来るけど、直接殺すことは出来ない?そんなの当たり前だろ!!

直接殺すよりも、間接的に消してしまった方が罪悪感がないのは!

むしろそうじゃない奴がいるなら、教えてくれよ!俺の前に連れてきてくれよ!!」

 

「立香‥‥先輩‥‥」

 

急に叫びだした、藤丸に対してマシュは唖然としている。

他の皆は静かに藤丸の言葉を聞いていた。

 

「理屈の上じゃ、殺す方がまだマシってわかっていても!!そう簡単に割り切れるように人間は出来ていないんだよッ!!だから────異聞帯の皆を殺すなんて絶対に無理だッ!」

 

一通り感情を吐き出し終えた、藤丸は俯き、先ほどまでとは打って変わったように、ポツリと呟いた。

 

「‥‥‥‥ハッキリ言って、日本異聞帯は、これまでのどんな旅よりも過酷な戦いになると思う。純粋な戦力差でもこちらが勝てる見込みは殆ど0‥‥いや0なのかもしれない。」

 

それは藤丸本人の率直な意見だった。無論、カルデアの戦力以上の敵と戦うことなど、今までいくらでもあった。だが、勝ち目が限りなく薄い戦いから勝利を掴み続けてきたのがカルデアなのだ。しかし今回は、その敵との戦力比がこれまでとは桁違いだ。

その上、藤丸が()()()()()()()()()をやらなければ勝てない可能性すらある。

 

「さっきも言った通り、俺はその世界に住む人達を皆殺しにするなんてことは出来ない。

むしろ、その逆で助けようとするかもしれない。

多分、他の誰かがソレをやろうとしている所を黙って見てることも出来ないし、させることも出来ない。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

モードレッドやその他のサーヴァント達が黙って藤丸の話を聞いている。

藤丸は項垂れたまま話を続ける。

 

 

「だから‥‥‥もしも『異聞帯の民を皆殺しにしなければ勝てない』というのが、異聞帯と汎人類史が両立できないのと同様に、回避できない事態だった場合、その時点で俺達の負けは確定する。それ以前に、敵の力が強大だから殺される可能性が高い。もしかしたら、この戦いでここに居る皆が死ぬかもしれない。‥‥‥でも、それでも。」

 

その言葉を最後に藤丸は、真剣な表情で皆の方を見る。

 

「────それでも、戦う意思があるなら。汎人類史を取り戻すために、死ぬ覚悟があるなら。力を貸して欲しい。」

 

その言葉に真っ先に反応したのはモードレッドであった。

 

「‥‥あのな、マスター?マスターが今言ったことは、言われなくてもみんな分かってる。敵が強いってことも、マスターに虐殺なんて無理なんだから、それをどうにか出来なかったら、オレ達は負けるってのもな。でもな────それが分かった上で皆ここに集まってるんだぜ?もう答えは初めから決まりきってんだろ」

 

「モードレッド‥‥」

 

モードレッドが笑顔を見せながら答える。

いや、モードレッドだけでなく、皆の答えは初めから同じだった。

 

「ええ、モードレッドさんの言う通りです。例え、勝ち目がなくても‥‥退くことなんて出来ない。私達はこれまで通り、進み続けるだけです!!」

 

「え、ええい!小娘共に先に言われたが、私も覚悟なんぞ、当の昔に出来ているわ!!

どうせ死ぬなら、『ムジーク家のゴルドルフここにあり!』と

カッコよく散って、くれるわ!!クリプターも神々もそのあまりの素晴らしき散りざまにこの私の銅像を建てて死後も英雄として祀らざるを得ないくらいになっ!!」

 

「いや、何で死ぬ前提何だよ、おっさん。しかも向こうからしたら俺達は世界を消そうとする敵なのに、英雄として祀られるって意味不明だっつの‥‥」

 

あくまでも、死ぬ覚悟を持って戦うという、マシュやモードレッドと違い、

そもそもこれから戦って死ぬ前提で話しているゴルドルフに若干呆れながらツッコミを入れる、ムニエル。とはいえ本人もこの戦いで死ぬかもしれないというのは、分かっていることではあるが。

そして、ゴルドルフの死ぬ前提で、戦うという言葉に藤丸が笑いを見せた。

 

「所長の言う通り、俺達は負けるかもしれない。だから、少しでも勝つ可能性を上げるためにも。悔いが一切残らないように‥‥全力を尽くそう、皆!!」

 

藤丸のその言葉に、皆が頷く。もうそこには、これからの戦いを恐れをなしている者達はいなかった。勝率が0%かもしれない?だから何だ。

そんな戦い、カルデアでは日常茶飯事だ。

何時だってカルデアは勝ち目が殆どない戦いに挑んできた。

もうこれ以上は無理だというぐらいに、準備をして、あらゆる可能性を模索して、そうして進んできたのがカルデアの皆だ。

 

だから今回もいつも通りにそうするだけという話だ。

カルデアが日本の攻略に向けて最大限の準備を進める。

日本の神は全員が不死かもしれない。あのスルトや神となったアルジュナを圧倒した少女を超える何かが居るかもしれない。神の数がオリュンポスを攻めた時以上いるかもしれない。

 

あらゆる最悪を想定して、藤丸達は準備を進めた。

そして‥‥いよいよその時が来た。

あの会議から既にいくらか日数が経過している。

時間がないと言うのが、ホームズの予想であるため、

かなり短期間での準備になってしまったが、それでもやれるだけのことはしたつもりだ。

 

 

「いよいよこの日がきた。みんな覚悟はいいかい‥‥というのは今更聞くようなことでは無かったね。」

 

ダヴィンチが集まった皆の顔つきを見ながらいう。

この場に覚悟が出来ていない者など一人もいない。

 

「それじゃあ、行こうか。恐らくは、8つの異聞帯最大の規模を誇るであろう、日本異聞帯にね。」

 

ダヴィンチの言葉と共に、藤丸達がストームボーダーに乗り込む。

この日の為にカルデア側は最大限の準備をしてきた。

これでもしダメであれば、もうどうにもできないというぐらいに。

だから、後は進むだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの時間が経った。

異聞帯の到着まであと少しだ。

 

「い、いよいよか‥‥」

 

ゴルドルフは緊張を隠せないようだが、ソレはみな同じだ。

もうすぐ異聞帯に着くのだから、みんな改めて気を引き締め直した。

残り二つの異聞帯が自滅する可能性が高い以上、もしかしたらこれが最後の異聞帯攻略になるかもしれない。

そんなことを考えているうちに‥‥とうとうソコにたどり着いた。

 

「なっ‥‥‥‥」

 

 

ようやく異聞帯に辿り着き、その視界に入った光景は信じがたいものであった。

藤丸やマシュは、眼前の光景に絶句し、ゴルドルフ所長に至っては、立ったまま気絶していた。

 

「これが‥‥日本異聞帯か。見たまえ、信じがたい光景が広がっているぞ。」

 

「‥‥これは。確かに神の世界と言わざるを得ないような光景だね。まあ、オリュンポスもそうだったし、あれだけ日本の神様達の出鱈目さを見た後だと驚きはしないけどね」

 

 

ホームズとダヴィンチが呟く。

神代としか思えないほどの圧倒的な魔力濃度。

辺り一面に広がる自然。見た事のないような生物。

 

だが、何よりも目を引くのは、日本の地に生えた空想樹。

これを守るかのように、空に浮かぶ、美しき空中都市。

神の御業としか言えない様なその国々は幾多の権能により守られている。

遠方からでもそれが神の国であるということが分かるほどの神気、神々しさが都市からあふれ出ている。

 

カルデアは遂に突入したのだ。

日本異聞帯に。もう後戻りはできない。

神々とカルデアの戦いが今始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異聞深度_A+ LostbeltNo.5.4

 

新たな神の降誕日

 

BC.0660 始源神界領域 高天原(タカマガハラ)

 




最後の異聞帯の名前見て、あれ?と思った方。
作者がミスしたわけではありません。


また、次回以降も色々と「??」な展開が続きます。
まあ、その内理由が明かされると思います。

あと、今回の章の時間軸としては、地獄界曼荼羅より少し前という感じです。
地獄界曼荼羅は原作に比べて、若干時期が後になっています。

なお、地獄界曼荼羅を書くつもりはないです。



今回の章は結末を、既に考え付いているのですが、作者自身の時間が取れないと思うので、更新速度にはそんなに期待しないでね。

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