FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について   作:ハセカズ

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今回の話は過去一番で文字数多いです。
一話に話を詰め込み過ぎたかも。

もうFGOの新章はじまったので、早く終わらせたいのだが‥‥

あと誤字報告してくれるかた、いつもありがとうございます!







前回のあらすじ



ゴルドルフ「だてにカッコよく散ろうとしているわけではないのだよ(ドヤァ」



第24話 始源神界領域 高天原(タカマガハラ)6

全ての始まりは根源に起因する。

全ての要素がそこには存在していて、全ての終わりは根源に定義づけられている。

 

日本異聞帯における天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)も例外ではない。

根源によって、第二の根源と言わざるを得ないだけの情報を定義づけられた存在。

 

根源に近しいほどの情報を持つ、存在したその瞬間から対根源宝具としてあり続ける究極の一。

 

それが原初における天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だ。

対根源宝具であるそれは、実質的に根源に属する全ての上位。究極位にして無上の存在。あらゆる情報を内包し、あらゆる矛盾を兼ね備えている。

対根源宝具であり、根源に属する全てに対して完全なる優位性を持つそれは対型月特攻とも呼べる力を持つが故に何者であろうと刃向かうことは出来ない。

 

だが、対根源といっても根源そのものというわけではない。故に全てを内包しているというわけではないのだ。

地球とそこに住まう人々は、原初の天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が内包していない数少ない情報の一つであった。

 

日本異聞帯における分岐点は紀元前660年とされるが、そこで起きた神同士の争いだけが原因では無い。

根源に近しい情報を持つ根源に定義づけられた存在、あらゆる要素を内包しているが故に明確な名も無き対根源宝具。

それが日本における天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)となるかどうかも、分岐点の分かれ目の一つとなっていた。

 

汎人類史の天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は自然が概念化した存在、あるいは別の何かであるのかもしれない。

だが、こと日本異聞帯においては、対根源宝具の一つ、つまり第二の『 』が天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)として日本に君臨しているのだ。

 

 

偶然だったのか、またはそれも根源に定義されたが故の現象だったのか、真偽は不明である。

第二の『 』が自分が内包していない地球の人間に触れることで、人の感情を学び、人に干渉したいという想いを得ることで、

日本における最高神... 天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)として君臨したのが日本異聞帯発生要因の一つなのだ。

少なくとも汎人類史の天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は対根源宝具ではなく、後の世を人に任せる考えであった。

 

原初が第二の『 』である天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は、後の世も自身が人を保護し続けるという思想に至っている。その最も大きな要因の一つが白き滅び、セファールの襲来だろう。

 

紀元前12000に起きた白き滅びとの戦い。当時、自身の存在規模を日本の最高神として定義づけていたが故にセファールには抗えず、結果として日本神の殆どが死に絶えるという結果になった。

 

無論、人間も多くが死ぬこととなった。

その時から、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は自身の存在規模を日本における最高神から宇宙における最高神へと書き換えた。

そしてセファールによって殺された神々を生き返らせ、不死の加護を与えた。中でも神としての位が自身と同格であった、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)神皇産霊神(かみむすびのかみ)には同じ造化三神として恥じないだけの力を与え、その力はこれまでとは比較にならないほどになった。

 

もう二度と負けることはないようにと。

だが、セファールの襲来とそれに伴う、自身の存在規模の変化。この要因から、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は人間は上位の存在により守られるべきだという考えが強く残っていた。

 

故にこそ紀元前660年に天の戦いと呼ばれる神々同士の争いが起きたのだ。

その戦いにより多くの神が死に絶えた。後の世を人に託す派だった高皇産霊神(たかみむすびのかみ)神皇産霊神(かみむすびのかみ)も死に今では造化三神も天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だけ。

 

結果的にこの世界の人々は何不自由のない暮らしを送っている。

変化のない毎日。人々はか弱くだからこそより上位の存在によって守られるべき存在。

 

だからこそ、人の身でありながら神をも討ち滅ぼすカルデアという組織を、藤丸立香を天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)高天原(タカマガハラ)から見ていた。ヒダルとの戦いの時も、この世界の沖田との戦いの時も、そして今も。

 

「‥‥‥‥‥」

 

静かにその様子を見ていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

空想樹を前にカルデアに立ちふさがった、白色を基調とした神御衣を羽織った紫髪の中性的な男神。その神の権能により空から無数の光帯が降り注ぐ。

 

それは、一条一条が超莫大な力を纏った光帯。

それらがカルデアに牙を向く。

 

「エルキドゥ!」

 

「分かってるよ、マスター!」

 

それらの光帯を打ち落とすべく、エルキドゥが地面から武器を射出し光帯を打ち落とそうとするが、火力が違い過ぎる。空からの光帯はアトランティスのアルテミスの砲撃にも、ゲーティアの人類史全ての熱量を秘めた宝具にも決して引けを取らない。

 

サーヴァントと主神に等しい神。出力のランクがそもそも違う。

エルキドゥの武器弾幕を残らず飲み込み藤丸達に向かってゆく。

 

「──────『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!!」

 

エルキドゥからのバックアップを受けたマシュが何とかソレを防ぐが、それだけで全ての魔力を消費してしまいそうな勢いだった。

 

「ほう。よく我が権能を凌いだ。なるほど、あの御方の言う通り確かにただの人では無さそうだ」

 

「ッ‥‥!」

 

あの神からすれば今の攻撃もあいさつ程度のものでしかなかったのだろう。

元々、今の攻撃でカルデア側を仕留めるつもりは無かったのか、自身の権能を凌がれても余裕そうな態度だ。

 

「とはいえ、そこまでだ。我々に勝つなど万に一つも有り得ぬ。ここから立ち去れ。人の身でありながらヒダルを下した、その幸運に免じ今宵に限り見逃そう」

 

「‥‥‥」

 

「我が名は月読命(ツクヨミ)伊邪那美(イザナミ)神の子にして三貴神の一柱。引かぬのであれば我が権能はお前たちの悉くを焼き尽くすものと知れ」

 

月読命(ツクヨミ)という日本の神のなかでもビッグネームな神様の名前を聞かされたカルデア一行のあるものは驚き、あるものは納得がいっている様子だった。

 

月読命(ツクヨミ)神‥‥‥。日本における三貴神の一柱。神格の位は天照大神(アマテラスオオカミ)にも引けを取らない神様だ。まあ、確かに主神相当の神だとは思っていたけど‥‥』

 

「アマテラスって、確かタマモナインの‥‥」

 

「ケッ、どんな神だろうと関係ない。以前やられた屈辱はここで返させて貰う‥‥!!」

 

あの月読命(ツクヨミ)という神とはカルデア側も面識がある。

カルデア側が捕らえたカドック・ゼムルプスを奪還する時と芥ヒナコの救出時に月読命(ツクヨミ)と戦闘になった。特にモードレッドは一度、月読命(ツクヨミ)にやられている為、その屈辱を返すべく、やる気十分だ。

 

「ドラァァアア!!」

 

魔力放出スキルによりまるで弾丸のように突っ込んでいく、モードレッド。

空から降り注ぐ光帯を躱し、月読命(ツクヨミ)に肉薄する。

 

「フン」

 

「グッ!?」

 

だが、月読命(ツクヨミ)神が自身の持つ刀に軽く受け止められてしまい、そのまま吹き飛ばされる。だが、吹き飛ばされながらも、モードレッドは自身の刀から莫大な魔力を放出していた。

 

「──────『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!」

 

モードレッドの刀から放出された、赤雷の魔力の塊。

ランクA+の対軍宝具があの神に向かって放出されるが、空から降り注ぐ光帯に打ち落とされてしまう。

 

「ハアッ!」

 

モードレッドに続くかのように、カルデア側が月読命(ツクヨミ)に攻撃を仕掛ける。

エルキドゥが地面からあらゆる武器を生成し、モードレッドが魔力放出スキルをビームの様に射出しマシュが月読命(ツクヨミ)に向かって突進する

 

「無駄だ」

 

「うあッ!!?」

 

光帯が地面に直撃した際の衝撃波によってマシュが吹き飛ばされる。

それだけでなくモードレッドの魔力放出スキルによる攻撃もエルキドゥの武器弾幕も全て撃ち落としてしまった。

 

「──────『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』!!」

 

「‥‥‥‥‥」

 

ラーマかが剣に光を纏わせ、自身の宝具を投擲する。だが、それを見た月読命(ツクヨミ)は攻撃をかわすわけでも無く、先ほどの様に打ち落とすわけでも無く‥‥そのまま宝具が直撃した。

 

『お、おお!?直撃したぞ!これで奴も‥‥』

 

ゴルドルフの言葉はそこで途切れた。宝具直撃により生じた煙が晴れ、そこにいたのはラーマの宝具を受ける前と同じく無傷な状態の月読命(ツクヨミ)が居たからだ。

 

『無傷って‥‥。また、ヒダル神や迦具土神(カグツチ)の様に理不尽権能なのかよ‥‥!!』

 

『Mr.ムニエル、残念ながら今のは違う。何かしらの防御行動を取ったわけではない。()()()()()()()()()()()んだ。アルジュナの時と同じように』

 

「魔王ラーヴァナすら屠った退魔の刃ですら届かぬというのか‥‥!」

 

その身に纏う莫大な神性密度のみで、攻撃を無効化して見せた月読命(ツクヨミ)。ラーマの宝具で駄目なのであれば、エルキドゥの宝具に期待するしかないが、それですら上空から降り注ぐあの光帯に対抗できるか怪しいものだ。

 

空から降り注ぐ無数の光帯、その一つがラーマを捉える。

 

「ぐぁっ‥‥!」

 

「ラーマさん!」

 

ラーマが大ダメージを負うが、まだ消滅はしていない。

とはいえ、状況は不味いと言わざるを得ない。分かっていた事ではあるが、神1柱だけでここまで手こずるのだ。これで他の神が月読命(ツクヨミ)に加勢すれば、勝ち目が無くなる。

 

「今のは加減した。だが、まだ引かぬというのであれば‥‥今度こそ夜を統べし月がお前達を貫くであろう」

 

『月‥‥?そうか、月読命(ツクヨミ)神は月が神格化した神!ならばあの空から降り注ぐ光帯は月の光りを射出したものか!』

 

「左様。夜は我が支配領域。故にこそ、夜空を照らす月光も我が権能の一つである。勝ち目が無いという事は理解できたか、汎人類史の人よ」

 

ホームズの考察通りに、月読命(ツクヨミ)が先ほどから攻撃に使っているのは月の光を射出したモノ。月の光は太陽光を反射したものである。つまり天体単位の極大の生命体から放たれる光。それを権能として操作できるというのだから、眼前の神の強大さが伺える。

 

「これが最後の忠告だ。死を恐れるのであれば今すぐ立ち去れ。人の身でありながら私に勝つなどという事は万に一つも有り得ぬ」

 

「‥‥悪いが王とは諦めが悪いもの。宝具が通じなかった程度では諦めることはできぬ。神が如何に強大であろうとも我らはそれを越えねばならぬ!」

 

「ッ‥‥‥」

 

その言葉に僅かに顔が曇ったのを、見て藤丸が首を傾げる。

だが、今は戦闘中。その疑問を無視して、再度自身のサーヴァント達を支援すべく、礼装に魔力を込める。

 

「──────『人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

それに呼応するかのようにエルキドゥが自身の宝具を展開した。

空から降り注ぐ月光が金色の鎖を纏い巨大化したエルキドゥに向かった。

カルデアで最高火力を持つエルキドゥであるが、それでもやはり神、それも主神相当の存在からの権能を突破するには至らない。

 

「エルキドゥの宝具でも‥‥!」

 

藤丸の言葉通りに、光帯によりエルキドゥの宝具は完全に相殺されてしまった。日本の神は不死ということもあり、ブラックバレルで止めを刺す必要があるが、それにはまず、発射準備までの時間を稼ぐ必要もある。

 

しかし、それも今の状況では難しいだろう。

とはいえ、だからといって空想樹完成までに時間が無い以上、ここで引くわけにも行かない。

それにこれ以上、時間を掛けると、別の神が加勢に入る可能性もある。

 

「次は、もっと礼装の援護を強くする!皆、宝具の発動準備に入って。ダ・ヴィンチちゃん、魔力の支援をお願い!マシュは、皆をサポートして!」

 

「で、ですがそれでは、マスターの身体が‥‥!」

 

『マシュの言う通りだよ。ただでさえ病み上がりの身体なのに、それだけの魔力を一度に回せば、君も無事では済まない』

 

「分かってる!でも、それでも!ここを突破しなきゃ俺達は勝てない‥‥やらなきゃいけないんだ!」

 

その藤丸の言葉を聞いていた月読命(ツクヨミ)が、声を掛けてきた。

 

「何故そこまで‥‥。お前たちとて我らとの力の差は理解できている筈だ」

 

「‥‥‥俺達の世界を取り戻すためです」

 

「その為に無駄に命を散らすというのか?人は我らによって守護されるべきか弱きもの。弱き存在が、自立した世界など見るに堪えぬ。正史として進むべきは我らの世界だ!」

 

「‥‥‥確かに、この世界と違って俺達の世界では未だに、本当の意味での平和は訪れていない。大小はあるけど、争いは絶えない。それも人の弱さによって起きている事の一つなのかもしれません」

 

中国異聞帯がそうだったように、強大な支配者により統治されたことにより、誰もが平穏に、健やかに過ごせる世界を藤丸は知っている。醜い部分が無いという意味ではそちらの世界の方が優れているのかもしれない。

 

「でも、それでも俺達は‥‥人は一歩づつ前に進んでいっている!誰かに任せきりにするのではなく、人自身によって!だから、俺達は‥‥前に進み続ける!相手が神様でも!」

 

「ッ‥‥‥!」

 

藤丸からの言葉を受けた月読命(ツクヨミ)だが、傷付いている様に見えた。

その様子を見たラーマが、月読命(ツクヨミ)の内心を察した。

 

「沖田総司から、この世界の内情は聞いている。敵の言葉であるが、この世界の状況を考えるに嘘は言っていまい。汝達は、人が守られるべきか弱き存在であると断じ、今も加護を与え続けている。だが、ソレでは、与えられるだけでは人は成長せぬ。いつか、神々でも解決出来ぬ危機に瀕した時に、抗う事も立ち向かおうとすることすら出来ぬ‥‥」

 

「黙れ‥‥!」

 

「汝も気づいているはずだ。人の可能性を」

 

「貴様ッ────!!」

 

月読命(ツクヨミ)からの攻撃が激しさを増す。

まるで雨の様に無数に降り注ぐ光帯は、カルデアの全てを飲み込もうとしていた。

 

「──────『人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

ソレをエルキドゥが自身の宝具で撃ち落とす。

全てを相殺することは無理だったが、残った光帯だけなら、マシュ達の宝具だけでも対処は可能だ。

 

だが、状況は変わっていない。今のままでは間違いなく勝てないだろう。

 

「人が神を超えるなどあってならぬ!お前たちはここで消えよ!」

 

光帯の勢いが更に増す。しかし、エルキドゥは月読命(ツクヨミ)の今の様子から勝機を見ていた。とはいえ、ソレを実施するには、エルキドゥも()()()()()()()()()()()()()が。

 

「‥‥やるしかないか」

 

「エルキドゥ?」

 

「いや、何でもないよ。マスター。‥‥それよりも1つ頼みがある。令呪2画を僕に使って欲しい。ソレであの神を突破できる」

 

「え‥‥」

 

令呪2画のブーストがあれば、突破できるとエルキドゥは言うが、今ですらあの神は本気を出していない。令呪2画のブーストありきでも突破は難しいだろう。

だが、出来るというエルキドゥの言葉に藤丸は迷いなく頷いた。

 

「分かった。いま使えば良いの?」

 

「いや、発動タイミングは僕の方から指示する─────魔力の供給を頼んだよ」

 

降り注ぐ光帯。それを一瞥したエルキドゥが宝具発動の構えを取る。

 

「──────『人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

地面から射出された黄金の鎖がエルキドゥに絡みつき、一条の槍の形となる。

それらが神を貫かんと射出される。

 

「無駄なことを‥‥!墜ちよッ!」

 

だが、いくら対界規模の力を持つ宝具といっても、空に降り注ぐ月光には届かない。

相殺されて、終わりだろう。しかし、月光とエルキドゥの槍が触れ合いそうになって瞬間にソレはおきた。

 

「何ッ───!!」

 

一条の鎖となっていた、エルキドゥが無数の槍となって分裂し、光帯を躱したのだ。それも今までとは比較にならないだけの魔力を纏って。速度も力もこれまでとは桁外れになった鎖。エルキドゥ自身の()()()()()()()()()その一撃は、これまでで最高の火力をたたき出していた。

 

『マスター令呪を!』

 

「令呪を持って命ず!」

 

エルキドゥからの指示を受けて、発動された2画分の令呪。

エルキドゥ自身の全霊基の消耗、令呪によるバックアップ。それらの要因により、エルキドゥは一時的にバーサーカークラスで据えられた時と何一つとして遜色ない力を‥‥つまり神にも匹敵する力を兼ね備えていた。

 

「ぐっ‥‥!!」

 

余りの超加速に月読命(ツクヨミ)ですら反応出来ない。

人が、そこまで出来るわけないと高を括ったのか、あるいは思いたくなかったのか。

何にせよ、不意を突かれた月読命(ツクヨミ)は結果的に、エルキドゥからの鎖に()()()()()()となった。

 

「え‥‥?」

 

てっきり宝具で貫くのかと思っていた、藤丸が疑問を感じる。

そして、鎖からエルキドゥの声が発せられた。

 

『マスター今だ!ブラックバレルで僕ごと撃って!!』

 

「なっ‥‥」

 

『早く!どのみち僕はもう持たない!』

 

エルキドゥの言葉を受けて、ストームボーダーに乗っていた職員たちが、エルキドゥの霊基状態を確認するがエルキドゥの霊基は確かに消えかけていた。

 

『こ、これって。まさか自分の霊基全てを消費して‥‥!!』

 

「ッ‥‥!」

 

「そんな、エルキドゥさん‥‥!!」

 

ただ貫くだけでは、傷は直ぐに再生する可能性があった。

そしてあの神は傷を負いながらも、光帯を落としてくる可能性がある。

故にこそ、力の全てを抑え込む必要があったのだ。エルキドゥの全霊基を以て放たれたその鎖は神の権能すらも抑え込んでいた。

 

先ほどまで、降り注いでいた光帯が今は止んでいる。

 

「おのれ‥‥!神に敵うと思うな!!」

 

だが、月読命(ツクヨミ)もこのままではない。先ほどから自らの神気を放出して全力で鎖を引き千切ろうとしていた。だが、バビロニアでティアマト神を拘束したキングゥ以上の束縛力を見せているその鎖はびくともしない。

 

しかし、エルキドゥの全霊基を消耗している為、そう長くは持たないだろう。

 

『早く!もう長くは持たない‥‥!』

 

「‥‥ッ!マシュ、ブラックバレルの準備を!」

 

エルキドゥの覚悟を無駄には出来ない。

その意思をマシュも感じ取ったのか、ブラックバレルの発動準備に入る。

 

刻寿測定針(アコンプリッシュ・メジャー)、測定開始!

逆説構造体(ブラックバレル)、形成します!生命距離弾(デッドカウンター)、砲身に焼き付け!────接続完了(セット)生命距離弾(デッドカウンター)、逆説から真説へ。

霊子チャンバーに令呪装填!バレルレプリカ、フルトランス……!」

 

藤丸が令呪をブラックバレルに込める。

そして、神をも打ち落とすそれが放たれた。

 

「いって‥‥霊基外骨骼(オルテナウス)!」

 

「────ッ」

 

そして、ブラックバレルがエルキドゥの鎖ごと、月読命(ツクヨミ)神を貫いた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「何とか突破できたか‥‥‥その代償は決して安いものではなかったが」

 

「ああ、エルキドゥ君が消滅し、令呪もこの戦いだけで3画使った。虎の子用の予備令呪があと3画だから、こちら側が倒せる日本神もあと3柱だけ」

 

ストームボーダーからブラックバレルが月読命(ツクヨミ)神を貫通したのを確認した、ホームズとダ・ヴィンチ。

 

しかし素直にそれを喜ぶことは出来ないような状況だ。元々、準備期間が短かったのもあるが、カルデア側が用意できた令呪は予備を含めて7画。1画をヒダル神に使い、3画を月読命(ツクヨミ)神に使った。これで残りは3画。使いどころは慎重に見極めなければならない。

 

ソレに気になる点もある。

 

「ホームズ‥‥君は()()をどう思う」

 

「‥‥ヒダル神の時は単なる偶然である可能性もあったが、月読命(ツクヨミ)神もそうであったとなると、何かが起きてると考えるのが自然だろうね」

 

2人が見ていたのは、月読命(ツクヨミ)神の存在規模、魔力出力値。その値が明らかに以前相対した時より()()()()()()

 

「この異聞帯には不可思議な点がいくつかある。検討が全くついていないわけではないが‥‥正直、()()()()()()()()()だ」

 

「それは私も同じだけどね‥‥。今は主神クラスの神に勝利できたことを素直に喜ぶとしよう」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ぐうぁああああっ‥‥‥‥!!」

 

 

ブラックバレルに貫かれた月読命(ツクヨミ)神。ヒダル神と違い、下半身と上半身が泣き別れになる事こそ無かったものの、脇腹を中心に大きなトンネルが開通しており、完全に致命傷だった。

 

「何だこれは‥‥!傷が再生できぬ‥‥!目が見えない‥‥。死ぬのか‥‥?馬鹿な、神が人間に破れるなどあってはならぬ‥‥ならぬ筈だ‥‥‥!!」

 

そんな死に体の月読命(ツクヨミ)を見たラーマが、憐憫の眼差しで月読命(ツクヨミ)神に声を掛けた。

 

「‥‥‥それは、人の可能性を奪ってしまったからか?」

 

「ッ‥‥‥!」

 

ラーマの言葉に月読命(ツクヨミ)神がピクリと反応する。

 

「戦いの最中、汝からは後悔の念が感じられた。恐らく汝も人が神無しでも前に進めめられる‥‥その可能性に気が付いていた筈。‥‥この()()()()()()()がそうであるように。だからこそ、人に停滞という選択肢を突き付けたが故に、汝は上に立つものとしての責務を果たそうとしたのではないのか?少なくとも余にはそう見える」

 

「‥‥‥‥」

 

「確かに汝の力は強大であった。魔王ラーヴァナ以上に。だが、人は神を超える。越えねばならぬのだ‥‥」

 

静かに目を閉じラーマの言葉を聞いていた、月読命(ツクヨミ)だが、聞き終えると同時に目が開かれる。

 

「‥‥お前達の力は認めよう。その言葉も。確かに人は弱いだけではない。気づいていた、我らの世界の沖田総司という人間が我らにすら届きうる力を得たその時から‥‥‥‥」

 

月読命(ツクヨミ)神‥‥」

 

「────だが、それでも!私が愛した世界だッ!!」

 

もはや背骨で辛うじて、胴体が繋がっている月読命(ツクヨミ)神だが、それでも構わずに声を荒げる。その圧は、思わず藤丸達も引き下がるほどだった。

 

「ああ、認めよう!!確かに我々はこの世界の人から先に進む力を奪い取った!だが、なればこそ!我々には責任がある!この世界を、民を、何としても守らねばならぬ責任があるのだ!!」

 

「ッ‥‥‥!!」

 

「この世界の為、民の為!────お前たちは決してここから生かして帰さぬッ!!」

 

ここにきて、カルデアをかつての白き滅び以上の脅威だと認めた月読命(ツクヨミ)神。その身体が突如として発光した。

 

月読命(ツクヨミ)神の魔力反応増大!危険です!下がってください、マスター!」

 

『あの死に体で何を‥‥!?』

 

月読命(ツクヨミ)神の光が強まっていく。もはや死に体であるが、藤丸達にはダメージを負う前の月読命(ツクヨミ)神と比較しても決して見劣りしないように見えた。

 

「おぉおおお────月よ!満ちよ!!」

 

「なっ‥‥!!」

 

瞬間、月読命(ツクヨミ)神自身の身体から、何かが飛び出すように展開された。それは、極小化された()だった。世界そのものを作り出す力。

いわゆる大権能によって作り出された月のドームは藤丸達を物理的に圧し潰そうと迫りかかった。

 

「────『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!!」

 

展開される大質量の月のドームに対しマシュが自身の宝具を展開する。

だが、抑えられない。

 

「うあぁあああ‥‥!!」

 

展開されたその月は質量もさることながら展開速度も速く、マシュの盾を物理的に圧し潰そうとしていた。神の大権能によって造られたソレは、敵意・悪意を寄せ付けない性質を持つ力ですら無力化しようとしていた。

 

「マシュ!」

 

『これは‥‥不味い!』

 

ネモの言葉通りに、どんどん増していく大質量のソレがとうとうマシュの宝具を突き破った。そして、神の大権能が藤丸達を圧し潰そうと迫って。

 

「大丈夫です。私に任せてください」

 

「え‥‥‥?」

 

不意に後ろから声が掛かる。

次の瞬間、迫っていた月のドームが()()()()

 

「なっ‥‥!!」

 

何が起きたのかと、全員が後ろを振り向いた。

そこに居たのは、この世の者とは思えない程美しい女性。

 

「お待ちしておりました‥‥‥カルデアの皆さん方」

 

しれは、この世界の神。神世七代が一柱。

────その名は、伊邪那美(イザナミ)神。

多くの神を産み、日本列島を作った母。日本におけるティアマト神に等しい存在だった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「まさか‥‥こんな展開になるとはね。主神自らが我々の味方に付いてくれるとは流石に予想外かな。いや勿論、もの凄く心強いけどね?」

 

伊邪那美(イザナミ)神‥‥確か多くの日本神を産み落とした、女神であったか‥‥」

 

ゴルドルフがチラりと伊邪那美(イザナミ)を見ると、微笑み返してきた。

顔を真っ赤にして、慌てて後ろを向く。

 

ゴルドルフだけでなく、今まで数多の女性サーヴァントと共に冒険をしてきた、藤丸も、同じ女である筈のマシュも同じような反応だった。

その女神を表すなら「美」という言葉を置いて他にはない。

 

とにかく美しかった。何なら本当に輝いて見えるほどに。

ちなみに令呪補充の為に藤丸達は一旦ストームボーダーに帰っていた。

コホンと咳払いをしたダ・ヴィンチが話を戻す。

 

「それで‥‥話を戻すけど、伊邪那美(イザナミ)神。本当にこちら側についても良いのかい?我々の目的は知っている筈だ。」

 

「ええ‥‥」

 

そう言う伊邪那美(イザナミ)神の目には何処か悲しげな憂いを帯びた目をしていた。

その仕草がまたしても男女問わずにもはや権能といっても良いぐらいの、攻撃?を仕掛けていたが、伊邪那美(イザナミ)は気にせず話を続けた。

 

「先ほど話した通り、私は元々この異聞帯の民を神が支配するべきという考えを持った側の神でした。結果的に人は平穏を手に入れ、あらゆる苦しみから解放されました。ですがその結果として‥‥‥人々は自ら考えることを止めてしまった。自分一人では何も出来なくなってしまった」

 

伊邪那美(イザナミ)さん‥‥‥‥」

 

「それでも正しいと思っておりました。人はか弱き存在‥‥故に我々が保護しなければならないと。しかし、貴方達ももう相対しましたが、この世界において()()()()という人が‥‥我々にも迫るだけの強さを身に着けた時に‥‥私の考えは間違っていたのではないのかと思い始めました」

 

「沖田君か‥‥まあ、この世界の彼女の力はこちらも嫌という程、思い知らされたけど‥‥」

 

「ええ、そして‥‥貴方達の存在を知った時に‥‥人の身でありながらヒダルと月読命(ツクヨミ)をも下した貴方達を見て、受け入れることが出来ました。我々が間違っていたことを」

 

そういう、伊邪那美(イザナミ)神の表情は何かを決意したかのようなものだった。

 

「だから私は私の犯した過ちを正したい‥‥あの子は、月読命(ツクヨミ)は貴方達を命がけで排除することでその責任を果たそうとしました‥‥ですが私は、貴方達の手助けをすることで償いをしたいと思います。それが、どれだけ独善的なものであったとしても」

 

「うん‥‥よろしくお願いします。伊邪那美(イザナミ)さん」

 

藤丸が手を伸ばして伊邪那美(イザナミ)と握手をする。

握手という行為をするのは初めてだったのか、伊邪那美(イザナミ)も困惑するが、

笑顔でソレに応じた。

 

しかし、やはりその権能としか言いようのない「美」は、瞬く間に皆の顔を赤く染めていた。

 

「や、やめろ‥‥!余にはシータが‥‥!う、うあああああ‥‥!?」

 

別の意味でダメージを負うものも居たが、一先ずこれ以上ないぐらいの味方を得たと言っても良いだろう。伊邪那美(イザナミ)は正真正銘の主神。日本異聞帯攻略では、間違いなくジョーカーとなりうる鬼札だ。

 

そんな最強の味方を得たが、それだけではない。

日本の神が味方に付いたという事は、これまで()()()されていた様々なことを聞けるのだから。

 

故に、ホームズが伊邪那美(イザナミ)に聞こうとして‥‥‥ふいに起きた大地震によって意識を遮られた。

 

「これは‥‥!!」

 

「どうやら‥‥あの()()自らが迎え入れてくれるようです」

 

そういうなり、外のとある場所を指さす伊邪那美(イザナミ)神。

そこには半径10mほどはありそうな光の柱が立っていた。

 

「こ、これって。それにあの御方って‥‥?」

 

「‥‥天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)。この日本異聞帯の王にして全能なる神。第二の根源に等しき究極の存在です」

 

「やはり、この世界の王は天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)なのか‥‥この世界の沖田総司の話で分かってはいたが‥‥む?ちょ、ちょっと待った。いま第二の根源といったかね?‥‥一つ確認したいのだが、それはこの世界の神々や人から見ればそうとしか思えない様な力を持っているからそう呼ばれているのであって、実際に根源規模な神様ではないんですよね?」

 

ゴルドルフが顔を真っ青にしながら、伊邪那美(イザナミ)神に尋ねる。

以前にもダ・ヴィンチが言っていた事だが、仮に存在規模が根源にも匹敵するような敵であれば、仮にゲーティアの光帯の数千億倍、数千兆倍の熱量があったとしても絶対に敵わない。

故にそんな筈が無いとすがるように聞いたのだった。だが、伊邪那美(イザナミ)神が顔を横に振る。

 

「いいえ、ソレは間違いではありません。元々の‥‥原初における天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は根源によってそうであると定義づけられた対根源宝具。故に存在そのものが根源に近しい御方なのです」

 

「対根源宝具?」

 

「ええ、存在規模そのものが根源クラスであるが故に‥‥根源に属する全てに対しての優位性、完全上位性を表すもの。カルデアの皆さん方は、宝具をサーヴァントが持つ逸話の具現化、物質化した奇跡と呼んでおりますが、性質的には同じ物です」

 

「そもそも、生きた神様が宝具って時点で色々と気になるけど‥‥つまりどういうことなのかな?」

 

「つまり、どんなものだろうが根源に属する以上、その上位性から敵わない。干渉することすらも出来ない。存在規定が根源に近しい為、何でもできる。そういう概念の再現化だと思ってください。その力を振るわれた時点で確実に終わります」

 

ゴルドルフも藤丸も開いた口が塞がらない。

そんなの勝ち目が無いのでは、という考えが頭を過った。

 

「でも、原初はどうあれ、今の天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は確かに日本の神として君臨している。つまり‥‥‥その力も日本の最高主神に等しい力になっているのではないのかな?」

 

ダ・ヴィンチからのその言葉に伊邪那美(イザナミ)神はニッコリとほほ笑んだ。

 

「ええ、日本の神として降臨するにあたって天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)はその存在規模に大きく制限を掛けています。それに今はとある事情から、()()()()()()()()()()()()()。」

 

「つまり‥‥伊邪那美(イザナミ)神を含めたこのメンバーなら十分戦えるということなのかな?」

 

「ええ。ですが、それでもあの神の力は強大です。対根源宝具としての力を封じた状態でさえ、全ての日本神を敵に回しても勝つ事が出来る程の御方。容易い勝負にはならないでしょう。」

 

「‥‥‥うん。容易い勝負にはならないという事は分かっていたことだ。でも相手は天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だけなのかな?他の神は?」

 

「いま外に見えるあの光は一種の時空間転送の力を持っております。光をくぐれば、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の目の前にでることになります。天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は恐らくあなた達との会合を望んでおります。邪魔が入ることは無いでしょう」

 

「うん、その言葉を聞いて安心した。‥‥皆準備はいいかい?」

 

その言葉を聞いたカルデアのメンバーが頷く。

 

「他にも聞きたいことがあるけど、もう時間がない。空想樹は恐らくあと数十分もしない内に完成する」

 

「なっ‥‥まだ、数時間以上の猶予があったのではないのかね!?」

 

「多分、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が何かしたんだと思う。空想樹の魔力反応が先ほどよりも更に増している。一刻も早く、採取する必要がある」

 

「分かりました‥‥それなら行きましょう。日本の王のところへ」

 

藤丸の言葉と共に、サーヴァント達が外の光に進む。

天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の前に出るという事なので、直ぐの戦闘に備えられるように、藤丸とサーヴァント、伊邪那美(イザナミ)は外に出て光に向かっている。そして光を抜けた先に見えたのは、神々が作り出した神殿。

 

そして神殿内の玉座にソレは居た。

 

「うむ、お前たちがカルデアの者たちか」

 

「ッ‥‥‥!!」

 

宇宙を思わせるような色彩の服装の中性的な神。

ただの言葉ですら、重みとなり藤丸達にのしかかっていた。

その他を超越した魔力量はカルデアの観測機器が完全にオーバーフローを起こしていた。

 

「さて‥‥もうわかり切ったことではあるが、それでもあえて問おう。何を望む」

 

「汎人類史を‥‥俺達の世界を取り戻す事だ!その為にあなたを倒す!」

 

今すぐ気絶した方が楽だという空気の中、藤丸が天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)に啖呵を切る。藤丸のサーヴァントもカルデアの職員も皆、同じ目だった。

 

「ふっ‥‥そうか。その為に前に進むか。カルデアの民よ、人の子よ。良いだろう、多くは問うまい。自身の世界を取り戻さんというのであればその力、私に見せて見よ!!」

 

「‥‥‥‥ッ!!」

 

 

天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の背後に炎、雷、風といったあらゆる権能で作られたであろうエネルギーの球体が浮かぶ。

 

「カルデアの皆さん方!私の加護を!」

 

伊邪那美(イザナミ)のその言葉と共に、藤丸達の身体が光り輝く。

その様子を見たホームズが信じられないといった顔をしていた。

 

『Mr.藤丸にマシュ、サーヴァント全員の魔力値が上昇した。信じられない‥‥完全に神霊クラスの魔力値だ‥‥!』

 

「は、はい。身体中から力が漲ってくるのを感じます‥‥!これなら‥‥!!」

 

加護の一振りで神にも等しい力を与えた伊邪那美(イザナミ)神。

だが、それでも気を抜くことは出来ない。眼前にいるのは天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)なのだ。かの神はカルデアの戦闘員全員が神にも等しい力を得てもなお、動揺していない。

 

「ほう、お前がそこまでやる気なのも珍しい。どうやら本気で私と戦うつもりでいるようだな、伊邪那美(イザナミ)

 

「ええ‥‥‥我々は間違えました。故にその間違いを正す。私は彼らと共に貴方を倒します。」

 

「良いだろう‥‥さあ、来るがいい!」

 

天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)のその言葉でこの世界の王とカルデアの戦いが始まった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

カルデア側と天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)との戦いを俺達は後方で見ていた。

やばいな、これ‥‥

 

「‥‥勝てないな」

 

「今のところ、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が押しているように思えますが」

 

「無理だろ‥‥アレはどう考えてもカルデアの勝ちパターンだ」

 

結論から言って、この異聞帯は初めから詰んでいた。

それが分かったのは、セイバーからこの世界の神々がカルデアの存在を知り自分たちのやったことが正しいのか悩んでいる節があるという事を教えて貰ったときだ。

 

元々、日本異聞帯自体キリシュタリアの異聞帯に劣るという事を知った時から嫌な予感はしていた。いやだって、ゲーム展開的にキリシュタリアの異聞帯も突破される。そのキリシュタリアよりも弱い異聞帯で希望を持てるわけがない。

 

Aチームに配属された時もソレはもう絶望しましたが‥‥異星の神に選ばれた俺のスーパー異聞帯パワーでカルデアを返り討ちにしてくれる!と思っていたら、実際は強力だけどキリシュタリアの異聞帯の方が上なんだもの。もはや絶望しかなかったわ。勿論、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が全力を出せば、話は別だ。あの神が真価を出せば全ての世界の異聞帯が束になっても‥‥いや、型月世界の全てを敵に回しても勝つことが出来る。それほどまでに、あの神は凄い。

 

だが、元は強力だが何らかの理由によりその力を発揮できないという点。そして、自分たちのやった事を後悔して、カルデアの方が正しいんじゃね?という考えを見せ始めている点。

何もかもがカルデアの勝ちパターンの要素。これでカルデアに負けることを不安がるなと言われても無理だって‥‥。

 

今回も、どうせ致命的な傷は負ってはいないけど、中国異聞帯の始皇帝みたいに汎人類史の可能性的なアレに負けを認めてしまう‥‥的な展開になるようになるんだろ?もはやそうとしか思えない。

 

え?もしかしたらまだ天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が勝つかもしれないかもって?ここまでのカルデア勝ち要素が揃っているかつ敗北フラグが立っていてそんな楽観視できるかぁぁ!!

 

「おやおやおやおや‥‥沖田殿。この期に及んで我がマスターの原作知識を疑うおつもりか?いけません、いけませんねぇ。この御方こそは新たる創造主の世界より舞い降りた至高なる存在。これから、魂だけでなくその()()()()()()()()()()に至るのですからねぇ?」

 

「‥‥‥マスター、本当にやるおつもりですか?」

 

「‥‥正直やりたくないけど。もうそれしかないだろ」

 

使いたく無かった、リンボ提案の奥の手。当初は、神と戦い疲弊した後を狙うつもりだったが、それも伊邪那美(イザナミ)がカルデア側の味方に付いた時点で、不可能になった。

いくらこちらのセイバーが、沖田総司が強いと言ってもその強さは通常サーヴァントの枠に収まる強さでしかない。

 

神、それも主神相手に勝つのは流石に無理がある。

元々、あの神は後悔を見せていた節が特にあった神だ。何かカルデア側の味方に付きそうなフラグが立っていたが、速攻で回収しやがった‥‥

 

くそおおおおおおくそおおおおお!

そもそも‥‥‥そもそもFGO何て言う意味不明なぐらいに危険な世界に飛ばされなければ‥‥Aチームに配属されなければ‥‥もっと言えば、()()()()が渡されていれば、こんなに悩むことは‥‥!さっさと危険からおさらばしていたのに‥‥!

 

俺を養ってくれる超絶可愛い女の子は一体どこに行ったんだよ‥‥。

 

「では、マスター」

 

リンボが俺に話しかけてきた。

‥‥仮にここでリンボの策に乗らなかった場合、間違いなく負ける。

今の本気出せない天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が勝てるとは思えない。

 

いや、とある理由から出していないだけで、あの神は出そうと思えばいつでも本気出せる状態ではある。世界の危機何だから本気を出してくださいよぉ!

 

沖田が言うには、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が若干押しているようだが、裏を返せば、カルデア側にも十分勝機があるぐらいの戦力差ということだ。そういう状況ならアイツ等は絶対に勝ちを拾って来る。

 

カルデアに負けて連行され、世界が元に戻った場合の俺達クリプターの処遇はどうなるのだろうか。第2部第4章までの知識しかない俺ではあるが、ロクな未来にはならなさそうだ。

 

藤丸達が庇ってくれるかもしれないが、守り切られるという保証がないうえに、その時にはもう本当に後が無くなっている状態。おまけにもしかしたらクリプターのことを詳しく調べられる過程で俺の出自がバレる可能性がある。

 

そうなったらクリプターとか関係なく間違いなく、封印指定されてホルマリン漬けコースだろうな‥‥。ソレが無くても異星の神に選ばれたのが俺である以上‥‥異星の神に命を握られている状態だ。カルデア側に投降した時点で殺される可能性すらもある。

 

‥‥何にせよ、もう後が無い状態だ。リンボの策もリスクが高い。失敗したら死ぬ。だが、このままカルデアに投降して生き延びられる可能性よりはまだ高い‥‥と思う。一応、リンボもセイバーの魔術で実験はしてるわけだし。

 

それにセイバーに見せられた()()()()()()といいい、原作知識に無い不安要素もあるみたいだし、早くやった方が良い‥‥腹を括るしかないか。

 

「‥‥‥こうなったら仕方がない。あの神様には悪いが、切り札を切らせて貰うぞ」

 

大令呪と令呪3画を以て、()()()()()()()()()()()()()()

もうそれしかない。

 









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