FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について 作:ハセカズ
思ったより早く書けました。
前回までのあらすじ
ゼウス「穴があったら入りたい」
パンゲア異聞帯の日本領土の中でも有数の実力者である
「─────ハアァァッ!!」
カルナは光槍に自身の炎を槍に纏わせて猛攻を仕掛けている。
カルナだけでなく、マシュも敵を抑え込むべく大盾をその手にシールドバッシュを繰り広げている。だが、眼前の神は笑いながらその莫大な神気だけで槍と盾を受け止め、その猛攻を捌いている。
伊吹童子が後方から火・風・雷・水と言った自然現象を操り、カルナとマシュを支援すべく
明らかに遊ばれていた。
ここまで、
それにも拘らず開始数分で3騎ともズタボロだった。
近くに居るだけで大きなダメージが入ってしまうからだ。
それはサーヴァントだけでなく、カルデアからありったけのバックアップを受けている筈の藤丸も同じような状態だった。
『くそ、強すぎんだろ‥‥‥!』
カルデア職員の誰かが、そう愚痴をこぼした。
分かっていた事ではあるが、やはり勝負にならない。
それにあの神が以前、アトランティスで相対した時の
あの膨大な神性を何とか突破して傷を与えたとしても直に再生される。
だが日本の神という事であれば、カルデア側にも打つ手が無いというワケではない。
その切り札を使って、カルデアはヒダル神と
だが、それを打つまでに多少の時間が必要となるのが弱点だった。
「何とか時間を稼げれば‥‥‥」
「ほう、どうしてくれるんだ?僕に触れることすら出来ていないその有様で何をなせる」
「それでも‥‥‥俺達はお前を倒す!」
今にも潰れてしまいそうな圧力を受けながらも、
藤丸が眼前の神に向かって吼える。だが、ソレを見た神はただ嘲笑うだけだった。
「まだ勝負になると思ってるのか?ゴミがいくら集まろうとゴミ。何もなせやしない」
「そんなの、やって見なくちゃ分からない────瞬間強化!」
藤丸がサーヴァント強化用礼装を起動すると同時に、
「災いを見よ────『
礼装の強化を受けた伊吹童子が全力開放した宝具を
本来であれば、八つの谷と峯を切り拓き、八つの大河を新たに生み出す恐るべき宝具。
「ふっ。災いに気を付けるのはお前の方だ、蛇。その場所は
伊吹童子の宝具はサーヴァントとして召喚された今、その輝きに制限はあるものの礼装の補助を受けている以上、まともに受ければ神ですらただでは済まない一撃となる。
だからこそ、藤丸達もその光景に自分達の眼を疑った。
「っ────」
何の前触れもなく攻撃した側である、伊吹童子が
伊吹童子だけでなく、宝具である神剣ですら粉々に砕け散っている。
「‥‥‥‥やはり、こうなるか。余がこうも届かないとは‥‥‥酔狂な世界よな」
その言葉を最後に、伊吹童子が消滅した。
だが、事態はそれだけには収まらない。
「────ぐ、あぁぁああああ!?」
サーヴァントであるマシュはもちろん、
マスターである藤丸の肉体にも深刻なダメージが入る。
血は蒸発し、肉は裂け、ダメージと衝撃で嘔吐してしまう。
『な、何なのだこの魔力濃度は!?ま、まずい!』
そう叫ぶゴルドルフの眼にはカルデアの探知機が捕らえた、これまでとは比較にならない程に上昇した魔力濃度のデータが映っていた。ストームボーダーですら耐え切れずにそこら中から何かが壊れる嫌な音が聞こえて来る。
ただそれだけにも拘らず近くに居た伊吹童子は破裂し、ありったけのバックアップを受けている筈の藤丸にここまでのダメージを与えた。ただその身に纏う神気だけでカルデア側を追い詰めているのだ。おまけにあの神は全く本気を出していない。
スルトやアルジュナを圧倒した例の少女が近くに居た時は、カルデア側を倒す意思が無かった。クリプタ―に乗っ取られ宇宙の最高神としての力を開放した
だが、今回は今までの様に都合よく死なないというわけには行かないだろう。
もしこれ以上、神気を上げられるようなことがあれば、それだけで藤丸もサーヴァントも耐えきれずに死んでしまう可能性が高い。そうでなくても、これ以上戦いが長引けばマスターである藤丸も危険だし、もしシャドウボーダーが完全に壊れたらその瞬間、中にいるサーヴァントも職員も破裂する。そうなれば当然、カルデアからのバックアップも無くなり外にいる全員が死ぬことになる。
それを瞬時に理解したカルナと藤丸が一刻も早く眼前の神を倒すべく行動に移す。
「2画の令呪を持って命ず!───カルナ!」
「心得た、マスター!」
状況を打破すべく、現状のメンバーで最強の火力を誇るカルナが切り札───対神宝具を発動する。それは己が体の一部たる黄金の鎧を脱ぎ捨てるという代償の果てに顕現する、光の槍。数ある宝具の中でもケタ外れの火力を誇り、神獣や盾、城壁といった物理的なものはもちろんの事、結界や神秘、霊的存在等も含め、森羅万象ありとあらゆる「存在」という概念を焼き尽くし、神をも滅ぼす究極の力。
宝具を顕現を顕現させただけに関わらず、その輻射熱だけで周囲の岩塊を瞬時に融解・蒸発させ、辺り一面がマグマに変わる。2画という令呪のブーストがされたソレは太陽を思わせるような輝きを見せていた。
「『
恒星そのものと見紛うレベルの極大なエネルギーを纏う槍。
だが、宝具が放たれようとした瞬間にソレは起きた。
「─────ッ!?」
カルナの手元から神殺しの槍が消失していた。
宝具を失ったカルナが反射的に
「────ほう。この装飾、
それだけ言うと
自身の最強武具のあっけない最後に驚くカルナだが、まだ希望が潰えたわけではない。
日本の神が不死であることから、
故にカルナの宝具発動と同時に藤丸達の方も切り札を切るべく、すなわちブラックバレルを発動する準備をしていた。
本来であれば、
「令呪装填‥‥!────マシュ!」
令呪装填の際にありったけの魔力、体力を注ぎ込んだ藤丸。
ただでさえ傷だらけな体に、更にダメージが入る。
それはアトラス七大兵器の一つである『天寿』の概念武装のレプリカで、対象の寿命を転写した魔力の弾を発射する人工宝具。だが‥‥‥その肝心要のブラックバレルは対象である
嫌な予感を感じるマシュ。
だが、今はカルナの宝具が壊され、藤丸も危険な状態。
あの神がこの場に居続けるだけでも、死人が出る可能性がある。
もはや一刻の猶予の無いこの状況下では他に打つ手がない。体力的にも、カルデアの備蓄魔力的にも最後のチャンスと言っても過言ではない。これを逃せばあの神に全員殺されて終わりだろう。だから、例え
「バレルレプリカ、フルトランス‥‥‥!いって‥‥
対日本の神用に調整されたソレは、終わらぬはずの命を終わらせるもの。
その不死性を読み取った「寿命」という概念にて上書きし無力化するその弾丸は強大な日本神話の主神クラスをも倒している。カルデアにとっても、最強となる手札。
それを────
「‥‥‥嘘」
最後の希望をあっさりと止められた事実に誰もが絶句する。
「天寿」の概念武装を止めた
「ハハハ、何だこれは。こんな玩具で僕を倒すつもりだったとは、笑わせてくれる。いや‥‥‥
そら、
「な────」
黄金の鎧を失ったカルナにそれを耐えきる力など無く、そのまま肉体を消し飛ばしていった。
「そん、な‥‥‥」
その光景をただ見ている事しか出来なかったマシュの声が震える。
これで令呪は全て使い切った。外に出ているサーヴァントもマシュ以外は全滅。
頼みの綱であったブラックバレルも通用しない。
だが、それでもあの神の足元にすら届かないというのが結果だった。
「‥‥‥」
だが、藤丸には思ったほどの驚きはなかった。
アトランティスで相対した時点で
だからこそ、日本異聞帯に突入する前はこうなってしまうかもしれないという思いがあった。手も足も出ずに蹂躙されるかもしれないということを。だから、ある意味では納得のいく光景でもある。
でも、だからと言って諦めるわけには行かない。
勝てないことは対峙した時点で何となく察していた。しかし、まだ決着がついたわけではない。
────最後まで足掻く
そんな決意を持ちながら藤丸は
その藤丸の様子を見たマシュも覚悟を決めたように、藤丸の傍に立ち静かに盾を構えた。
それを見た、
「ほう、ここまで力の差を見せつけられながらまだ戦う気でいるとは。いいだろう‥‥‥まあまあ楽しめた礼だ。全員、ボクの蒐集物にしてやろう。魂を犯されてなお、その顔を続けていられるか見ものだ」
そう言うなり、空に緑色の球体を無数に浮かばせる
その一つ一つが星を枯らせ、新たな星を創造する生命の権能が込められている。
当然マシュにあれを防ぐことは出来ないし、攻撃の前に
絶体絶命の状況下だが、それでも藤丸とマシュの表情に恐れはない。
一方で、職員達の中にはこの先の光景をさとり、諦めたかのような顔をしている者が居た。
そんな重たい空気の中でゴルドルフが何とかこの状況を凌ぐ手段はないかと懸命に脳を回転させていた。
『く、このままでは‥‥‥!何か手は無いのかね!?ホ、ホームズ君!?』
『ありません‥‥‥アレはどうやっても凌ぐことが出来ない。‥‥‥ハッキリ言って、詰みでしょう』
『何か手は‥‥‥!日本異聞帯で
パニックになりながら、神が近くに居る状況下で叫んでいるゴルドルフ。
これで、もう終わり。
若干空気を読めない所長のヒステリックな声を聴きながらも職員のだれもがそう思い、目をつむった。
だが、やってくる筈の終わりが何時までたっても到来しない。
目を開け映像を見ると、
あと一撃で勝利できる状況にも拘らず攻撃をしてこない、
「‥‥‥
どうやら、先ほどのゴルドルフの言葉がそのきっかけとなっているようだった。
「嘘は、ついていない‥‥‥こいつらの記憶を見るに、確かに別世界の
俯きながら暫く何かを呟いていた
空に浮かばせていた権能の込められた球体を消滅させた。
「え‥‥‥?」
何のつもりかと、反射的に身構える藤丸達に
「気が変わった。この場は見逃してやろう。せいぜい足掻けよ。お前たちの運命は変わらないがな」
その言葉を最後に
それと同時に、場を支配していた圧倒的なまでの神気も消えてなくなる。
サーヴァントですら即死しかねない程の強大な魔力濃度は健在だったが、それでも先ほどまでよりは大分楽になった。
「助かったのか‥‥‥?」
ゴルドルフがポツリと呟く。
理由は不明だが、
だが、カルデア側の顔色が良いとは決して言えなかった。
ここがどういう世界なのかも謎だし、異聞帯内の規模も戦力も不明なまま。
令呪も魔力も使い果たし、ストームボーダーも壊れる寸前。
なにより今の戦闘で一つハッキリした。
────この異聞帯には絶対勝てない
どうしようもないその事実を、藤丸達はただ重く受け止めるしかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・
貯蔵魔力の関係上もう一度その2騎を召喚するのは難しいだろうし、残ったサーヴァント達ではマシュ以外、周囲のマナ濃度に耐えられない。そのマシュも礼装のバックアップありきでなければこの環境下で活動は出来ない上にストームボーダーの貯蔵魔力が無い点からやはりこれ以上の活動は難しい。勿論これはマスターである藤丸にも言えることでもある。
つまりストームボーダーの中に入って活動するしかないのだが、そのストームボーダーも先ほどの戦闘で半壊状態だ。当然、修理をしなければ動かせない状態だし、残った機材と魔力では修理も出来ない状態だ。おまけに大気中の魔力にやられて現在進行形で破損し続けている。現在のストームボーダーの状態を見る限り、あと1時間が限界だろう。そしてストームボーダーが壊れると同時に中にいる職員も全員死ぬことになる。
外に出ての活動が出来ず、ストームボーダーを走らせることも出来ない状況下。
もはや、カルデアに残されているのはストームボーダーの中で確実に訪れるであろう死を待つ事だけだった。
「‥‥‥」
皆がそれを分かっているのか、カルデア側の誰もが暗い雰囲気だった。
暫くの間、無言が続くがやがてホームズが口を開いた。
「Mr.藤丸、Ms.マシュ。気持ちは分かるが早くストームボーダーに入るんだ。傷も深いし、Mr.藤丸の外での活動もそろそろ限界な筈だ」
「‥‥‥はい」
そう言って立ち上がる藤丸。
恐らく、カルデア側に残されている選択肢は残りの僅かな時間ストームボーダー内でどう過ごすかということだけ。考えていなかったことではない。
どの異聞帯を攻略する際にもその可能性はいつも頭にあったし、死ぬかもしれないという覚悟していた。日本異聞帯の攻略前は特にその考えが強かった。
世界を巡る戦いは、これまでは自分達が勝利し、そして今回はこの異聞帯が勝利した。
それだけの話だ。この世界相手にカルデア側が尽くせる手は全て尽くした。藤丸自身も全てを出しきった。それでも今回は届かなかった。
自分も他の皆も出来ることはやった。
だから結果を受け止めて残り僅かな時間を皆と過ごす。
そう考えた藤丸がストームボーダーに向かおうとして‥‥‥不意に後ろから声が聞こえた。
「パンゲア異聞帯の数多の世界を無事にわたり、あの
その声に反射的に振り向くとそこには、白いフード付きローブをまとった銀髪の男がいた。
その人物はカルデア側もよく知る人物であった。
「マーリン‥‥‥?」
思わぬ人物との邂逅に困惑する藤丸達。
ストームボーダーからはフォウの叫ぶ声が聞こえていた。
おまけ
日本異聞帯の神の紹介
ヒダル神
パンゲア異聞帯のヒダルと比べると魔力値以外は能力も性格も変わっていない。
日本異聞帯で出会った神がパンゲア異聞帯のヒダルでも恐らくカルデア側が勝利している。カルデア側もそれなりな被害を受ける可能性はあるが。
こちらもパンゲア異聞帯の
この神も出力値以外はパンゲア異聞帯の同一神と変化点があまりないが、日本異聞帯の
パンゲア異聞帯の同一神と比べてかなり弱体化している。
パンゲア異聞帯の
また、パンゲア異聞帯の
元は2柱ともパンゲア異聞帯の同一神よりは弱かったが、
宇宙の最高神としての力を開放した
日本異聞帯では2柱とも死んでいるが、パンゲア異聞帯だと普通に存命している。
パンゲア異聞帯の同一神と比べて一番変化の大きい神。
日本異聞帯の
なお、日本異聞帯における対根源としての力を発揮した原初の