FGOの世界に転生して、Aチームに所属したら異星の神に選ばれてしまった件について 作:ハセカズ
前回までのあらすじ
主人公「カルデア‥‥掘られるんじゃないか?」
「そこまで。……それは安易に使っていいものじゃない。」
この場に集った誰もが声の主の方向に振り返っていた。そこには、一人の少女が居た。
歳は11~13歳ぐらいだろうか。空色を思わせる髪を持ち、肌は透き通るかのような白色だった。まるで吸い込まれてしまいそうな赤色の瞳をしており、どこか神秘的な雰囲気を纏わせている。人外じみた美しさを備えていたが、そんな見た目とは無縁の圧倒的な力を持ち合わせていることは誰の目から見ても一目瞭然だった。
超莫大な魔力を内包しているはずなのに、まるで大海のように底が見えず、この場にいる誰もが彼女の力を一切感じ取ることが出来ていない。
突然の来訪に驚いているのは、シャドウ・ボーダー内の者たちも同じだった。
「あれは……サーヴァントか?」
「(……こちらの観測機器がエラーを起こしている!魔力量を測る事は出来ないけど――間違いない。アレは、ティアマトやゲーティアよりも強い。神……いや、
ホームズとダヴィンチが突然の来訪者に対して考察を始める。現状カルデア側に対して敵意を向けているというわけではないが……
「な、なんなのだ、あやつは!」
「口ぶりから察するに、オフェリア・ファムルソローネの援助に来たと考えるのが妥当でしょう。他のクリプタ―が彼女を遣わしたのか、異星の神の手の者なのかは分かりませんが……少なくともスルトを打倒するまでは臨時の同盟だと思って大丈夫でしょう。」
場面はスルトがいる場所に戻る。
先ほどまで死闘を繰り広げていたというのに、少女が現れたことで場の空気が固まっていた。その静寂を破ったのは藤丸立香だった。
「君は一体……?」
「……話はあと」
その少女を脅威と捉えたのか、巨人王は攻撃対象を少女に変更した。スルトが自身の魔剣にありったけの魔力を込めていた。これまでで最も強力な力を込められたそれは、絶望的なまでの火力を持っている。
『まずいまずい、これはマジでまずい!今までと比較にならないぐらいの力があの剣に込められているぞ!』
『ななな何だとォ!?聞くだけでヤバそうではないか!なんとかしろ、とにかくなんとかしろ!』
『星よ……終われ……灰燼に帰せ!
振り下ろされた絶対破壊の一撃は神代の神ですら滅ぼし、まさに世界を焼き尽くすに相応しい一撃だった。
「っ!!先輩、オフェリアさん!!私の後ろに下がってください。」
直後、まるで太陽が衝突したかのような爆発が起きた。スカサハ=スカディによる多数の神鉄の盾による防御にマシュの宝具で衝撃の余波を防いでいなければ、周囲の全てが燃え尽きていただろう。
『────────ばかな……!』
爆発の中心地点にいたはずの少女は無傷だった。そればかりか、攻撃した側である筈の
『傷一つついていない。……何か防御行動を取ったわけでもない。ただ普通に効かなかったんだ。』
「今の一撃を……とても信じられません……!」
ホームズは効かなかったと言っているが……それは誤りだ。
正確には「
瞬間、それは展開された。いや
「うわっ!」
「なんとも凄まじい破壊力よな……」
光が展開された場所に巨大なキノコ雲が立ち上る。何も見えない。あの光に包まれた巨人王はどうなったのだろうか?
「す、すごい……」
『やっ、やったのか?』
『いや、まだだ!』
キノコ雲の中から巨大な炎の手が伸びる。今の一撃を受けてなお、巨人王は存命している。全身に相当なダメージを負ってはいるが、その目に宿る激しい怒りは少しも衰えていない。すぐさま受けた傷の再生を始める。
「巨人王、まだ倒れていません!」
「今の攻撃を受けてもまだ……!」
『……予想を上回る耐久能力と再生能力だ。Ms.君が何者かは分からないが、どうする?』
ホームズの言葉を受けた、少女は思ったよりも元気だと思っていた。
彼女のマスターからはスルトはオフェリアが大令呪切らなくてもなんとか勝てるぐらいまで弱らせておいて欲しいと言われている。故に今与えた程度の傷ではまだ足りない。此処に集う戦力だけでスルトをどうにかできるまで弱らせる必要がある。スルトを倒さずに弱らせるのが少女のマスターの望みだ。
そんなことを考える少女を置いて、巨人の王の熱が再度上昇する。
『俺はまだ終わらない。終われない!星に終焉をもたらすまでは。先刻のようなことは起こさぬ。俺の残りの魔力を全て込めた。次は確実に燃やし尽くす!』
「……っ!第2波が来ます!」
折れたはずの魔剣を炎が形作る。先ほどよりも更に上昇した宝具の威力。文字通り全力の一撃はオフェリアを除いた全てを焼き尽くそうとしていた。
『
「‥‥‥光帯再現」
振り下ろされた剣に対して、先ほど同様に再現された極光がぶつかり合った。
だが光は、先ほど放たれたものとは比べ物にならないほどの威力を纏っていた。振るわれた剣を瞬く間に消滅させスルトに食らいつく。
『オオ、オ、オ、オォオオオオオオオオオオオオオオ!』
炸裂した極光によって爆風と炎の津波が起きる。光が収束した後に出てきた巨人王はもはや満身創痍もいいところだった。そのあまりの破壊力にカルデアも、女神も、クリプタ―も唖然としていた。だが、信じられないことに魔力を使い果たしたはずの巨人に再び炎が灯る。
『こんな、こんな最期であってたまるかァァ!俺は……!俺は……星を……!!――――――――オフェリアァアアアア!!!』
「まだ‥‥‥!」
『いや、最後の悪足掻きだろう。再生が追い付いていない。先ほどの光帯をもう一度受ければ消滅する。Ms.もう一度あの光を出すことは出来ますか?』
「‥‥‥」
カルデア側は、止めを刺して欲しいと言ってるが、当の本人はそろそろ頃合いだと考えていた。今の巨人王相手ならカルデア側にも十分勝ち目はあるのだから。
マスターの命令通り一旦引いて、カルデアの捕虜になったのを確認してからオフェリア・ファムルソローネを回収するべきだろう。
後でマスターに褒めてもらおう。
そう思考した後に、少女はこの場から立ち去った。
「き、消えました!?」
「あの子は……一体」
『おっと、今はあの子の正体について考察している場合じゃない。眼前の敵に集中するんだ。虫の息とは言え脅威であることに変わりはないのだからね。幸いにもあれだけの手傷を負った状態なら何とかならないというわけでもない。』
そうダ・ヴィンチに注意を促され、意識を巨人王に向ける一同。スルトとこの北欧異聞帯の残存勢力が激突する。
・・・・・・・・・・・
‥‥‥かくして巨人王は討伐された。満身創痍な状態でありながらもスルトの力は巨大だった。だが皆の必死の抵抗により、ついに巨人の王は沈んだ。そして北欧の異聞帯は救われてシャドウ・ボーダーは旅立って行った。
めでたし、めでたし‥‥‥とはならなかった。
これは生き残りを賭けた戦いなのだ。汎人類史と異聞帯、どちらが残るのに相応しいか。かくして北欧異聞帯で最後の戦いは始まった。
‥‥‥勝ったのはカルデア側、すなわち汎人類史だ。彼らは残されたオフェリアを捕縛して、この異聞帯を去ろうとしていた。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「だ―――――っ!もう、なんスかこの空気~~~!さっきから黙りこくって、暗いったらないですよ!俺だってそりゃあ落ち込んでますけど、これからハンドルを握る以上、しっかりしないといけないので!所長、行き先は北海でいいんスよね!?」
「う‥‥‥うむ。北海だな。そうしてくれたまえ‥‥‥はあ。ゲルダ君もあのロシアと同じように、消えてしまうのだな‥‥‥」
「‥‥‥はい」
「そうですね。それが異聞帯との戦いだと、我々は学習しました。今回の異聞帯では住民が味方だった。しかし次なる異聞帯ではあらゆるものが敵に回る可能性がある。私たちが危惧するのは、その最悪の――」
「ええい、先の事を考えて落ち込んでいるのではないわ!人の心がないヤツめ、私だって理解している!この先、いくら悔やんだところで我々の為すべき事は変わらん!さあ、オフェリア・ファムルソローネ!あの少女の事を含めて洗いざらい全ての情報を――」
所長が言えたのはそこまでだった。突如としてスルトを圧倒したあの少女が現れたからだ。何の前触れもなく、さも当たり前のように。
「な、ななな‥‥‥!?」
「あなたは!?」
「このタイミングで再登場か‥‥‥目的はクリプターの回収かな?」
「そう。彼女を渡してもらう」
貴重な情報源であるクリプターを渡せと言ってくる。空想樹のこと、異星の神のこと、カルデアの知らないものは多すぎる。渡せと言われてはいそうですかとは言えるわけがない。
‥‥‥相手がスルトを圧倒した存在でなければ。
「‥‥‥いいだろう。連れて行きたまえ。」
ホームズの言葉に反対する者は誰もいなかった。眼前の存在と戦うことになれば壊滅は必至なのだから。
「あなたは‥‥‥一体?」
「詳しい話は後でする。今はただ私に付いてきて欲しい」
「‥‥‥分かったわ。」
拒否権はないだろう。自分よりもずっと小さいこの子がその気になれば、自分を強引に連れていくことなんて造作もない。オフェリアは少女に付いていくことにした。
‥‥‥そして、オフェリアが自身の近くに寄った後、少女はカルデアの者達を見つめた。
「ど、どうした!?なぜこちらを見つめる!?もも、目的は果たしたのだろう?私たちにもう用はないのだろう?ないですよね?こ、これ以上無駄な労力を使うのはどうかと思うだろう?オフェリア・ファムルソローネを連れてさっさと立ち去ってみるのはいかがかな!?」
「…………」
「な、なぜ何も言わないんだ?無言はやめてもらえないかな!?」
怯えるカルデアではあるが、少女は自身のマスターの為に行動をしている。少女のマスターはいつも何かに怯えている。故に自分がその恐怖を取り除いてあげたいと考えている。カルデアは間違いなく怯えの原因の一つ。だが、少女のマスターは、カルデアが他の異聞帯に勝利することを望んでいる。自分にとって未知の異聞帯に対する不安要素をカルデアが何とかすると思っているのだから。マスターがそれを望むのなら少女はその意思に寄り添わなければならない。マスターの従者なのだから。
そのような思考を最後に、少女はオフェリアを連れてどこかに消えてしまった。シャドウボーダーに残ったのはカルデアの者たちだけだった。
なお、北欧異聞帯のフェンリル取り込んだスルト>パンゲア内スルト>汎人類史スルトです。
次回更新まで少し間が開くかもしれないです。