ジョルジョの奇妙な冒険   作:ふじしお

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7/4 日数ミスしてたので直しました。


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??日目 少年はハンカチを取った


 とある高校の屋上。そこでは二人の生徒が何やら話をしていた。一人はツートンカラーの、二つのお団子が特徴的な女子生徒。もう一人は、臙脂に近い赤毛の男子生徒。
「すまないな。私は結局彼の企みを防ぐことができなかった」
 薄く笑みを浮かべ、女子生徒は言う。しかしその貌はうら若き少女のものではなく、幾度と死線を越えた、強者の顔であった。
「彼の手のひらの上で転がされ、神を殺し、成す術もなく魂を、記憶を奪われた。……私の失態だ。腸が煮えくり返るな」
 女子生徒はハンカチを差し出した。対する男子生徒は──ハンカチを取った。
 ハンカチを取った男子生徒は、不思議そうに女子生徒を見つめる。
「……私達はこれで良いのだと思い込むか、諦念で心を満たすか、自身の正義を貫き通すか、運命を組み替えるか──それだけしかできなかった。だが、〝創り出す〟ことのできるお前なら、きっとやってくれると信じている。頑張れよ」
 女子生徒が口を閉ざした瞬間、男子生徒は地に伏せた。まるで一瞬で眠りに落ちたかのように。
ソンニドーロ(良い夢を)
 そう呟いたのは誰の為か。それは彼女しか知らない。




Episodio.1【スターダストクルセイダース・イフ】
-1日目 金田ジョルジョ


(──変な夢を見た気がする)

 そもそも夢だったかどうかも曖昧だ。おれの記憶では、目が覚める前は学校にいたはずなんだが。ラジオをつけて気づいたが、いつの間にか次の日になっている。どうやらまた発作が起こったらしい。

 未だ眠気の残る頭を無理くり覚醒させ、リビングへ向かう。おれに気づいた兄ちゃんは「熱は下がったのか」と訊いてきた。どうやらポンコツなおれの体は熱まで出してたようで。

「んー? 今ンとこ、眠い以外は体がだりぃとかはねーけど?」

 デコに手をやり、軽く触れる。多分、平熱。

 そうか、と何となく釈然としない顔を浮かべ、兄ちゃんはおれの頭をわしわしと撫でくり回す。ついでにピリリとした感覚。途端におれの眠気は覚めた。

「おっ、おー! ありがとな、兄ちゃん!」

Prego(どういたしまして)

 そのまま食卓について、朝食を食べる。シリアルとサラダ、そんでヨーグルト。純日本人のいないおれの家ではこれがスタンダードだ。

「……あれ。兄ちゃん、母さんと親父は?」

 おれがそう尋ねると、兄ちゃんはピクリと眉を持ち上げ、そして呆れたような顔をした。

「お前な……父さんは今日は朝から大学。母さんは道場の様子を見に行ってる。昨日は雪が降ったからな」

 それを聞いておれはふーんと鼻で返事をする。兄ちゃん曰く、昨日は夜に雪が降り、その影響で道路が凍るなり混むなりするから親父は早めに出発。母さんは道場の雪かきに行ったそうだ。(多分母さんが雪かきするんじゃあなくて師範代のおっさん達がするんだろうけど。)

 ……そう言えば、こいつは何で今家にいるんだ。現在八時前。兄ちゃんの通う大学はウチからだいたい一時間かかる。そんでもってこの生真面目な兄貴殿はいつも遅くても三十分前には学校に到着するように出発している。この間見してもらった時間割じゃあ、今日は一限が入っていたはずだ。──もしや、未だに封印されることのなかった不良時代の精神テンションが騒いでサボりを……ッ!?

「……言っておくが、俺はサボりじゃあないからな。今日は午後だけなんだ」

「エッ? い、いや別に兄ちゃんのサボりなんて疑ってないぜ? もうツッパリじゃあねーもんなー──っていだい! ヤメテ! ごめんなさいすんませんッしたァ!」

 グワシッと兄ちゃんのアイアンクローがおれの顔面を鷲掴む。男ならば誰もが一度は憧れるであろう186cmの長身に見合った大きな手、そしてどこで鍛えたのか知らんが総重量90kgまでに至った筋肉によるダメージは計り知れない。

 

 食べ終えた食器はシンクに置いて、おれはそそくさと家を出た。時間も結構ギリギリだし、何より兄ちゃんが怖かった。イケメンの怒り顔ってマジ怖い。

 駆け足気味で通学路を進む。何とか先生が校門を閉める前に滑り込み、HRが始まる前に席につけた。そっからは、何の変哲もない普通の授業。適度に話を聞き流しつつ、一日は平穏に過ぎていった。

 

「やあジョジョ」

 放課後、廊下を歩いていると不意に後ろから声がかかる。途端に周りの女子がグリンと顔をこちらに向けた。エクソシストかよ怖ーよ。

「センパイその呼び方ヤメテって言ったじゃないですかー!」

 最近JOJOパイセンが来てないから女子のJOJO欠乏症が凄いンすよ! そう言ってもセンパイはニヤニヤと笑ったまま。悪びれる様子は一切なかった。

「別にいいだろう? ジョルジョより断然呼びやすい」

「だったら金田でいいじゃあないすか!」

 そう言ったってセンパイはちっとも〝ジョジョ〟呼びを辞めようとしない。そもそもこのやり取りだって五回目なのだ。ここまで言ってちっとも改善してくれないのだからきっと改善されることはないんだろう。

「まぁまぁどーどー。お詫びにコンビニアイスを奢ってやるから一緒に帰ろうじゃあないか」

「えマジですか!? やった、おれバリバリ君──って今冬っすよ凍えちまいますよ!」

 そんな漫才じみたやり取りを続けながら、おれとセンパイは帰り道を歩く──と言ってもコンビニまでだが。センパイにホットのミルクティーを買ってもらい、おれたちはそれぞれ帰路についた。別れ際、センパイが呟いていた言葉が耳に残っている。

 ──それじゃあ、頑張れよ──

 何を頑張ると言うのか。高校生らしく勉強? でもおれめちゃくちゃ頭いいって訳じゃあないけど赤点って程でもねーし。なら何だ? ……うーんダメだ全く見当がつかん。センパイは無茶苦茶頭がいいが(なんせ定期テストでいつもトップに名前が張り出される位だ)、たまに何言ってんのかわからん時がある。

(センパイにゃああんたと他人の頭の出来は違うんだぜってわかってほしーわー)

 そう思いながら一歩を踏み出した瞬間、力が抜けて道路に倒れ込みそうになる。塀にもたれかかりつつズルズルと座り込み、瞼がだんだんと重くなっていく。

 視界が閉じるその直前。センパイの姿と横に浮いている桃色の誰かを見た気がした。

 

 

 

「……んあ」

 目を開ける。晴れているとはいえ冬の寒空の下。三十分も眠っていたから体は冷え切っていた。さすがに起こしてくれる人がいてもいいと思うの。まあ財布取られてなかっただけよかったけどよー。立ち上がると同時に、ブルりと大きく震える。これじゃあまた熱出しちまうぜ。早く帰って風呂入んねーと。

 歩きだそうとしたところでカバンからビービーと電子音が鳴る。おれは恐る恐るそれを取り出した。思わず呻き声が漏れる。おれの手の平の上、ポケベルが忙しなく受信を報せている。兄ちゃんか親父か母さんか知らんが、とにかく電話来てる。おれは周囲を見回し、発見した公衆電話に駆け込んだ。銅製硬貨を何枚か投入して自宅の電話番号を入力。ワンコール経つか経たないか位で向こうは受話器を取った。

『……』

「あ、おれ。えーっと……その……」

『……無事、ですか』

 どうやら向こうにいるのは母さんだったようだ。無事だと答えれば、ふぅと息をつく音が聞こえた。

「ごめん。今から帰るからさ。あと二、三分で着くぜ」

『わかったわ。……気をつけなさいね』

 ガシャンと受話器を下ろせば、使わなかった分の十円玉が吐き出された。

(……心配させちまったかなー)

 気持ち早歩き気味に道を歩く。センパイに買ってもらったミルクティーはすっかり冷たくなっていた。

 

 家に着くなり、母さんによって風呂場に叩き込まれる。もうちょっと優しくしてくれたっていいんじゃあないの? そう言う前に風呂場のドアはピシャリと閉められた。お湯はほっかほか。多分おれが帰ったらすぐに入れるように沸かしてくれたんだろう。……いや違うな。単にあの人が入りたかっただけだな。

 たっぷり三十分以上かけてあったまる。風呂から出れば体から湯気が出ていた。いつの間にか用意されていた着替えに身を包み、リビングに向かう。いつの間にか兄ちゃんが帰ってきたようで、キッチンにてお湯を沸かしていた。多分コーヒーでもいれるんだろう。

「お帰りー。母さんは?」

「ただいま。『私も入浴します』って部屋に入ってった。何か飲むか?」

「おっ、じゃあココア!」

 お湯だけで作るモンじゃあなく、牛乳も入れて作るココアがおれのお気に入りだ。兄ちゃんはしっかりそれを把握してくれていたらしく、口に含んだココアからは牛乳のほのかな甘みがした。

 

 しばらくリビングでぼんやりしていれば、母さんが風呂から出てきたし、親父も家に帰ってきた。夕食は温かクリームシチュー。お風呂に入ってぬくぬくのところ、入れたてホヤホヤのココアやホクホクシチューを食べて体の中から暖まれば、途端に眠気がやってくる。確か明日までの宿題とかなかったし、もう寝ちまおーかな。ふわりとあくびをしつつ席を立つ。使った食器をシンクに置き、洗面所で歯を磨いてリビングに顔を出す。「おやすみー」と言って自室に行こうとしたその瞬間、無慈悲な声がかかる。

「ジョルジョ。冬休み……わかっていますね」

 何のことかはもう訊かずともわかる。こちとら小一の頃からここ十年近く、夏休みと冬休みに地獄を味わっているのだから。

「一週間、予定を空けておきなさい。今度はイタリアに行くわよ」

 うげ、と。思わず声が漏れる。道場じゃあなくてわざわざイタリアくんだりまで行くとか、地獄通り越すだろこれ。

 冷や汗をかきながら、おれは逃げるように自室に向かった。

 

 

 ⿴⿻⿸

 

 

(……あー。またこれかよ)

 確かに起きているのに、ピクリとも体が動かない。心なしか息苦しい。仰向けで寝るのは失敗だったか。

 部屋には明かりひとつない。おれは寝るときは明かりをつけない派だから当然だ。強いて言うなら街灯と月の光か。隣の部屋からの物音も聞こえないし、多分真夜中なんだろう。

 不意に、誰かの話し声が耳に入った。高いけどキンキンはしない、女の子の声だ。ちょっとビビったように上ずっている。難儀な病気を発症してから、たまに起こる。リアルそっくりの幻覚。もしくは夢だ。

 今度は誰かが歩く音。その音の軽さから男ではないことはわかる。母さんならまず足音すら立てないから、多分これも幻覚のひとつだろう。少しすると、足音の持ち主らしき人物の姿が視界に入った。おれよりも小さくて、華奢な体。短めの黒髪が動作に合わせて揺れていた。

 そしてその後ろ。白い妙な質感のエイリアンらしきモノがふよふよと浮かんでいた。

 ブッ、と、テープが途切れたような、そんな音がしてそれらの姿は消え去った。途端におれの瞼もとろとろと重くなる。体感的にはたった三秒。それぐらいでおれは再び眠りに落ちた。

 

 





名前:ジョルジョ
性別/体格:男/普通
主人公特性:波紋家族、ナルコレプシー、病弱体質、グロ苦手
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