イエヤスが生きる!   作:七峰 舞斗

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9話 イエーガーズ出動

 大会での逸材探しは不発に終わり会議室へと戻ってきた一同。

 ちょうどタイミングよくエスデスが指示していたものの報告が上がってきた。

 帝都近郊にあるギョガン湖の近くにある砦。

 そこに巣食う賊に関する報告書であった。

 特殊警察イエーガーズの栄えある初大型ミッションとして、砦を我が物顔で跋扈する賊共の掃討が選ばれたのだ。

 帝都近郊の賊を多く引き入れた砦は一大戦力といっても過言ではないほど膨らんでいた。

 油断が死を招く仕事にエスデスは改めてメンバーに覚悟の是非を問うた。

 

「私は軍人です。ならば命令に従うまで。この仕事だって誰かがやらないといけないことだから」

 

「同じく、ただ命令を粛々と実行するのみ。今までもそしてこれからも」

 

「海軍にいる恩人に報いるために俺はやります!命だってかけます」

 

「私には出世して成し遂げたいことがあるんです。その為には手柄が必要なんですよ。こう見えてやる気は満ちていますよ」

 

「私の目的はスタイリッシュの追究、そのためにも是非エスデス隊長の元で勉強させて頂きたい!」

 

「正義は我らにあり! ならば迷うなど愚の骨頂! 正義の名のもとに悪鬼共に鉄槌を!!!」

 

「俺に期待してくれている人達に報いる為、そして道を違えた奴に俺の道が間違っていないと胸を張るために、全力でやっていきます!!!」

 

 それぞれの覚悟を耳にして満足げに頷いたエスデスに率いられて砦へと向かう。

 

 イエーガーズ出動

 

 

 

 

 

 

 

 道中なにごともなく無事辿り着いたイエヤス達。

 エスデスは砦を一望できる高台に位置して高見の見物へと洒落込む。

 この程度の相手、7人でどうにかしてみろという意思表示であることは言うに及ばず。

 

「砦の内部と配置は頭に入れてありますが、どうしますか?」

 

 砦攻略のために作戦を問うランに対して

 

「覚悟は万全、戦力十分、ならば」

 

 イエヤスと

 

「悪相手に裏など不要、正面突破で粉砕あるのみ! です!!!」

 

 セリューが応じた。

 

 カチッ

 

 イエヤスから金属音のようなものを聞いたセリューが目を向けるが、特に変わった様子はなく、ただ腰の剣に手を当てて臨戦態勢に入っているだけであった。

 気のせいかと首を捻ったセリューは気を取り直して砦へとその鋭い眼を向ける。

 

 

 砦へと堂々と真正面から挑む面々に見張りが気付いて砦内が騒がしくなる。

 門が開かれて続々と賊が顔を出す。

 濁声で騒ぐ賊どもはイエーガーズに紛れた女性たちに気付いて下卑た笑みと浮かべ下劣な言葉を浴びせる。

 イエヤスはチラリと女性陣に視線をやるが、雑音など気にした様子もないことにこの上ない頼もしさを感じた。

  

「一番太刀は譲ってもらいますよセリュー先輩! 完成した技、みてください」

 

 腰を落として納刀状態のままであるカリバーンに手を添えるイエヤス。

 その構えは俗にいう『居合』の構えに似ている。

 賊とはまだ距離がある状況で、構わずイエヤスは剣を抜き放ち振り切った。

 

 命名監修ドクター・スタイリッシュ

 

 疾風迅雷カリバーン 奥の手 【封じられた暴風】(ルーン・オブ・テンペスト) 烈風

 

 鞘の中で出口を探して暴れ狂っていた風を刃に乗せて抜き飛ばす。

 明確な方向性を与えられた風は三日月状の巨大な刃となりて多くの賊を斬り分かつ。

 たった一振りで離れた十数人を斬り殺したイエヤスに賊は恐慌をきたした。

 

 イエヤスの見事な一閃に感心したセリューではあったが、その隙を見逃すほど抜けてはいない。

 

「コロ! 5番!」

 

 名を呼ばれたコロが大きく口を開けて何かを宙へと吐き出す。

 それを見事にキャッチしたセリューは勢いをそのままに敵陣へと突っ込んだ。

 一見すると槍にも見えたが、穂先から駆動音を鳴らしながら高速回転し始めて周りにそれが巨大なドリルであることを主張し始めた。その名も正義閻魔槍。

 触れた者の尽くを千切り裂くその光景に賊は浮足立ち砦内へとの撤退を始める。

 

「させるか! コロ、7番!」

 

 大暴れをして見せたドリルを投げるセリュー。

 すかさずドリルを飲み込んだコロが今度は巨大な対物ライフルを吐き出す。その名は正義泰山砲。

 受け取り腰を落として狙い澄まし撃つ。一連の動きには無駄がなく練度の高さが窺い知れた。

 

 ドォォォーーーーーン

 

 閉められようとしていた正門に砲撃が吸い込まれ轟音と共に吹き飛ばされる。

 セリューの怒涛の新兵器にイエーガーズの面々は目を丸くする。

 その様子を見て満足気にしながらスタイリッシュが己が帝具を見せて作り手であることを主張した。

 

 神ノ御手【パーフェクター】

 手甲の帝具。装備した者の手先の精密動作性を数百倍に引き上げることができる。

 

 開けっ放しとなった正門をクロメがするりと入り込んでいく。その抜け目のなさ、存在を感じさせない足運びは暗殺者のそれである。

 砦の中からは阿鼻叫喚のオーケストラが始まり、クロメが暴れていることを伝えてくる。

 一方、砦に外付けされた見張り台に並んだ射手たちは砦へと近付いてくる人影に弓引いていた。

 一斉に放たれた矢が人影へと迫るが焦る様子はなく、己の手にある帝具をギュッと握り締める。

 背負ったタンクから燃料が供給され、銃口から紅蓮の炎へと変わりて射出される。

 超高温の炎に炙られて矢は対象へと届くことなく灰へと帰す。

 矢の雨が降り終わった事を確認した火炎放射型の帝具使い、ボルスは標的を射手へと変えて再度炎を放つ。

 賊たちを飲み込む炎は燃え広がり矢と同じ結末を齎す。

 水を被って逃れようとする者もいたが

 

 煉獄招致【ルビカンテ】の炎はただの水程度で消せるわけもなく、悶え苦しみながら燃え尽きていった。

 

 砦内の賊を粗方斬り終えたクロメの隙を狙って銃を向ける者がいたがウェイブのフォローにより事無きを得る。もっともクロメはそれに気づいていた為、意味があったかは定かではないが。

 

 ただの軍ではないと気付いた者達が裏口から逃亡を図るが、それを見越して待ち伏せしていたランが

 

 遥か上空からの射撃で打ち抜く。

 

 急所を打ち抜かれて絶命していく者の中、即死を免れた者が自分に刺さった物を見る。

 

「………は、羽根?」

 

 純白の羽根はいまや賊の血で紅に犯されていた。

 そこでようやく上空で飛んでいるランの姿を目にした賊は死の淵で呟く。

 

「……てん……し?……」

 

 翼をはためかせ月光を背負った姿はまさに天使と呼ばれるに相応しいものであった。浮かべられている酷薄な笑みに気付かなければ、だが。

 

 万里飛翔【マスティマ】

 背中に装着することで使用者を飛行可能にし、使用者の意志で羽を飛ばし攻撃することもできる。

 

 それぞれが相応の活躍をして砦は落とされた。

 その結果に満足したエスデスから労いの言葉を受けて特殊警察イエーガーズの初大型ミッションは大成功で終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日間、大きな仕事は来ず、招集が下るまでは各々の判断で賊退治や危険種狩りを行うことになっていた。

 イエヤス・ウェイブ・クロメの三人はエスデスから呼び出しを受け会議室に集まっていた。

 

「クロメはまたお菓子を食ってるのか」

「うるさい、私の勝手でしょ」

 

 来て早々菓子を頬張るクロメをウェイブが健康面を気にして窘める。

 だが、聞く耳を持たない。

 

「もっと海産物を食ったほうがいいぞ」

「やだ、ウェイブみたいに磯臭くなっちゃうし」

「イエヤスみたいなこと言うじゃねーよ!!」

 

 気遣ったにもかかわらず散々な物言いにウェイブは突っ込みを入れた。

 クロメが悪影響を受けたとイエヤスをジト目で睨むがイエヤスはどこ吹く風で視線を逸らし下手な口笛を吹いて見せた。

 

 再び菓子を頬張り始めるクロメを見たイエヤスは、その顔に既視感を感じた。

 なんだろうと首を捻っていると視線に気付いたクロメが持っていた菓子袋を抱き寄せる。

 

「そんなに見てもあげないよ」

 

 食い意地の張った態度に苦笑で返したイエヤスは、既視感の理由に思い至った。

 聞いていい事なのか一瞬躊躇したがとりあえず聞いてみることにする。

 

「気にしてたら悪いんだけどクロメってさ、手配書のアカメに似てないか?」

「あっ、それは俺も感じた」

 

 イエヤスの言葉にウェイブが同意の言葉を続けた。

 クロメは食べる手を止めてなんでもないように答える。

 

「あぁ、優等生の身内だよ。帝国を裏切っちゃったけどね」

 

 思い出すように宙を見つめるクロメ。

 

「早くもう一度会いたいなぁ」

 

 その目には混沌が宿り、口は黝ずんだ笑みを浮かべている。

 

「会って私の手で殺してあげたいの、大好きなお姉ちゃんなんだもん」

 

 狂瀾な笑顔をするクロメにイエヤスとウェイブの二人は息を飲み込んで言葉を失う。

 狂気を含んだ瞳はイエヤスへと向けられる。

 覗き込めば飲み込まれそうな黒き瞳に見つめられてイエヤスは落ち着きを奪われる。

 

「だから、イエヤスと同じだね? 大事な人が敵にいる」

 

 笑みを以て語る姿にイエヤスは確かに似ているはいるが、決定的に何かが違うと本能的に思った。

 だが、それがなんなのか言葉にできなかったイエヤスは口を開けずにいた。

  

「集まっているなお前達」

 

 凍り付いた場を溶かしたのは皮肉にも氷の女王と称される女傑エスデスであった。

出掛ける支度をしながら会議室に入ってきたエスデスは3人が集まっているのを確認する。

 

「フェクマへと狩りに行くぞ。昼は私とクロメ、ウェイブとイエヤスがペアだ。夜は私とイエヤス、クロメとウェイブに交代だ」

 

 帝都近郊にあるフェイクマウンテン、通称フェクマで危険種を狩りつつ潜伏しているかもしれない賊の捜索を言い渡され3人は了承する。

 

「クロメは底が見えないからな。これを機に隊長として見極めさせてもらう」

 

 支度をしながらそう言い放つエスデスにウェイブが自分はもう見極められたのかと問い掛ける。

 

「良い師に巡り合えたな。すでに完成された強さだ、胸を張れ」

 

 エスデスからのお墨付きにウェイブはなんとも言えない顔をして頭を掻く。

 

「俺は? 俺はどうですか?」

 

 手を挙げて評価を求めるイエヤス。

 

「鍛え甲斐があるポテンシャルを秘めていると見ているが、まだまだだな」

 

 ウェイブと比べて豪く差のある評価にイエヤスもなんとも言えない顔になる。

 横にいるウェイブは無表情を装っているが微かにドヤっているのを感じ取り、肘で軽く小突くイエヤスであった。

 

 

 

 

 

 フェイクマウンテンの麓の森を抜けて岩だらけでできた山の道を歩いていくイエヤスとウェイブ。

 森では危険種に会う事はなく、見晴らしのよい山を登って上から標的を探そうという判断であった。

 

「海の危険種とはだいぶ勝手が違いそうだな」

「木や岩に擬態している事も多いからな、視界の違和感を信じろって師匠に言われたなぁ」

 

 柄を片手に油断なく周りに視線を巡らせるイエヤスにウェイブはなにか言いたげな視線を送る。

 

「………なんだ?」

「いや、なんでもねぇよ」

 

 会議室のクロメのことを思い出してイエヤスの事情に思いを馳せるウェイブ。

 身内で殺し合う現状にウェイブは疑問を抱いていた。

 もっと考えるべきだ、とも、話し合うべきだ、とも思う。

 だが所詮は第三者である自分が気軽に口に出していい話題ではないし、イエヤスに至っては一時はかなり参っている様子だった。

 最近は自分なりに切り替えてきたのだろうにそれを蒸し返すような真似をするのも躊躇される。

 故にウェイブは悶々とした思いを胸に秘めながらも結局は何も言えないでいるのだ。

 

「おい!」

 

 思考の海に潜っていたウェイブが突然の掛け声に我に返る。

 顔を上げたウェイブの横を風が駆け抜け、背後へと奔る。

 

 キシャアアァァァァァァアアア

 

 イエヤスの斬撃がウェイブの背後へと迫っていた木型危険種の腕を裂き、奇声を上げさせる。

 

「油断するなって言っただろ!」

「わりぃ、この借りは返す!」

 

 流石に考え事する場ではないか、と頭を切り替えたウェイブは剣を抜いて構える。

 気付けば危険種の奇声に釣られて続々と他の危険種も姿を現し始めていた。

 見渡し好戦的な笑みをしたイエヤスが口を開く。

 

「ちょうどいい、勝負といこうぜウェイブ」

「勝負?」

 

 突然の物言いにウェイブはオウム返しで聞き返す。

 構えた剣から風を靡かせながらイエヤスは頷く。

 

「どっちがより危険種を狩れるかだ! エスデス隊長の評価、俺はまだ納得してないぜ?」

 

 会議室でのエスデスの評価はウェイブの方が上であった。

 負けん気の強いイエヤスとしては、例えエスデスの言葉であっても同世代のウェイブに劣るという評価は納得し難いものがあった。

 あそこまであからさまに差がある宣言をされて黙っていられる程、イエヤスの精神面は成熟してはいない。

 イエヤスの性格をそれなりには知ったウェイブは勝負の意味を理解して頬を吊り上げ笑みを作る。

 

「面白れぇ! いいぜ、その勝負、乗った!」

 

 剣を地面へと突き刺して帝具の名をウェイブは叫ぶ。

 

「グラン! シャリオオオオオォォォォォオオオ!!!」

 

 身体はみるみるうちに鋼を纏っていきメタリックでスマートな鎧姿へと変貌する。

 帝都で流行中の熱血マンガ『オーダーマン』を彷彿とさせる変身っぷりにイエヤスは目を奪われてしまう。

 だが今は戦闘中であることを考えて頭を振り気持ちを切り替える。

 集ってきた危険種に囲まれつつありながら、互いに背を預け闘争心を高め合う二人。

 

「数は自己申告だからな、数え間違うなよ?」

「抜かせ!」

 

 危険種の群れへと飛び込み嵐のように暴れまわるイエヤス。

 迫り来る危険種の攻撃を掻い潜り怒涛の攻めを見せるウェイブ。

 二人の連携の取れたとは言い難い動きの前に、この場の危険種達が狩り尽くされるのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 目の前に迫る岩型危険種の腕。

 まともに食らえば一撃で致命に成りかねない攻撃にイエヤスは冷静に身体を屈めて避ける。

 風圧が頬を撫でる事も構わず、そのまま危険種の懐へと入り一斬り目。 

 見た目通りな頑丈な身体に亀裂が入る。

 一斬り目の勢いのまま、身体を回転させて遠心力を味方に二斬り目。

 亀裂は広がり全身へと及ぶ。

 危険種は懐にいるイエヤスを仕留めるために前へと伸ばしていた腕を振り上げようとする。だが、それを読んだイエヤスは上と動く腕を蹴り上げて勢いをつけて危険種の真上へと跳んだ。

 此方を見上げる危険種に向かって渾身の振り下ろしを脳天から食らわして三斬り目。

 岩型危険種の頑丈な体はついに耐え切れなくなり全身を砕かれ崩れ落ちた。

 

「ふぅ、後はウェイブが相手をしているやつで最後か」

 

 額に浮いた汗を拭いながらイエヤスはウェイブの方へと視線をやった。

 最後の一匹を横取りするわけにもいかず、見学に徹するイエヤス。

 辺り一帯には危険種の死体が死屍累々としている。

 ウェイブの相手はちょうどイエヤスが最後に相手をした岩型危険種でありサイズも同等のものであった。

 危険種による大振りな腕の攻撃をウェイブは大袈裟な程に後方上空へと跳び避ける。

 空振る姿を確認したウェイブは背中についた噴射口を吹かし推進力を得て危険種の元へと急降下した。

 まるで一本の矢のように放たれた鋭い蹴りが岩型危険種へと突き刺さり粉々に砕け散った。

 

 一撃

 

 己が三撃で倒した危険種をウェイブは一撃で屠ってみせた。

 その事実がイエヤスに重く圧し掛かる。

 やはりと言うべきか、討伐数もウェイブの方が勝っていた。

 

 ガッツポーズを取って勝ち誇るウェイブに悔しそうにするイエヤス。

 

「まぁ、仕方ないんじゃないか?」

 

 持っているだけで恩恵があるカリバーンと装着に体力を消耗するグランシャリオでは瞬間的戦闘力に差が生じるのは仕方がないことだとフォローの言葉を口にするウェイブだが、イエヤスの心に乗り掛かる錘を軽くするには至らなかった。

 しかし、自分から持ち掛けた勝負に負けたからと言って落ち込む姿を晒していてはダメだと自分に言い聞かせたイエヤスは表面上は変わらない態度でいることに努めた。

 

「エスデス隊長の言っていた通りってことだな、ならポテンシャルを秘めているっていうのも言う通りだと信じて精進するしかないか!」

 

 そう開き直ることにしたイエヤスのポジティブな考えにウェイブは感心するように頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 夜になりイエヤスはエスデスと共に危険種狩りを行う事となった。

 フェイクマウンテン麓の森で危険種を捜索する二人。

 率先して前を歩くイエヤスはエスデスの歩行を妨害しそうな丈の長い草や伸びた枝等を剣で切り開いていく。

 

「イエヤス、会議室の時と比べて随分と凹んでいるようだがどうした?」

 

 徐にそう切り出してきたエスデスにイエヤスは首を痛めそうなほどの速さで振り向いた。その顔は驚愕で彩られている。

 図星を突かれて固まっているイエヤスの様子にフフンと軽くドヤ顔をしつつエスデスは話す。

 

「拷問の基本は如何に相手の最も嫌がる拷問をチョイスするかだ。ご丁寧にされて嫌な事を語る者などいないからな、感情の機微に疎い者に効率的な拷問はできないというのが私の持論だ。もっとも、敢えて非効率で行うのも味が有って嫌いではないがな」

 

 反応に困る事を言われてイエヤスはどう返せばいいか迷った。

 

「それで? ウェイブとなにかあったのか? 合流の時の様子を見るに喧嘩などではないように思うが」

 

 イエヤスは催促されてウェイブとの勝負の事を話した。

 エスデスは話を聞いて腕組をしながら考えを口にする。

 

「帝具のタイプが違うというウェイブの言う事はもっともだが、イエヤスが気にしているのそういう事ではないのだろうな」

 

 要するにウェイブとの力の差を感じてしまったのだろうと当りを付けたエスデスは焦ることはないとイエヤスを窘める。

 イエーガーズ結成からすでに数週間経っているが、出会った頃と比べて見違える程に成長していっているとエスデスは保証した。

 帝国でもトップクラスの実力者であるエスデスから言葉に一応の納得する様子を見せたイエヤスは道中の露払いを続行する。

 先頭を行くイエヤスの背中を眺めながらエスデスは考える。

 

 エスデス自ら鍛錬してやっても良いのだが、聞けば現在ブドーから直接鍛錬をしてもらっているらしい。死者が出ることもあるエスデスほどではないもののブドーが行う鍛錬もそれに匹敵するほど過酷なものである。

 イエヤスであっても二人から鍛錬を受ければその短い生涯を閉じる結末となる事は想像に難くない。

 ならばブドーの鍛錬を中断してエスデスの鍛錬のみに集中する考えも過るが、それはブドーの良い顔をしないであろう。他の事であったならばブドーの顰蹙など気にはしないエスデスであったが、流石に教え子を奪い取るような真似は気が引けた為自重することにした。

 

 その後、昼に比べて凶暴度の上がった危険種を相手にエスデス無双が始まり、イエヤスは武の頂点の狩りを間近で見られるという貴重な体験をして狩りを終えるのだった。

 

 

 

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