イエヤスが生きる!   作:七峰 舞斗

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17話 痛み分け

「…………………」

 

 ロマリー街道から続く街の入り口にてイエヤスはポツンと一人佇んでいる。

 壁に寄り掛かり腕を組んだ状態でロマリー渓谷の方角ただ一点に視線を送り続けていた。

 信じるように、祈るように、願うように、ロマリー渓谷から目を離さないイエヤスに近づく影が一つ。

 

「イエヤス君……気持ちは分かるけど寝てなきゃダメだよ。ドクター・スタイリッシュからも言われているでしょ?」

「ボルスさん……」

 

 心配げな声音でボルスが話しかけてきてイエヤスはようやく視線を外しボルスへと向けた。

 ナイトレイドとの戦いで細かな切り傷や軽い打撲は受けども、直撃は一度ももらっていないイエヤス。速さ自慢の面目躍如と言ったところだが、しかしイエヤスは重体と言っても差し支えないダメージを抱えている。

 【疾風】を使った代償は大きく、全身の筋肉の筋が痛めカリバーンを振るった利き腕に至っては骨にヒビが入ってる惨状であった。

 町で合流を果たしたスタイリッシュの診察を受けたイエヤスは絶対安静を言い渡されたが、渓谷で共に戦った仲間の一人が日を跨いでも帰ってきていないという話を聞いて居ても立っても居られず、こうして町の入り口で仲間が帰ってくるのを待っていた。

 そんなイエヤスを心配して付いてきたボルスにイエヤスは言葉を発しようと口を開きかけるが、ロマリー街道の先から人影が見えだしたのを視界端に捉えて其方へと釘付けとなった。

 人影は複数あり、服装から町で合流したエスデスが放った偵察兵であることを察したイエヤスは待ち切れずに此方へと向かう偵察兵達へと走った。ボルスもその後に続く。

 

「……どうでした!?」

 

 駆け寄ったイエヤスの問いに偵察兵達は顔を見合わせた後、沈痛な表情をしながら左右に分かれていく。

 

「っ!!」

 

 その反応ですでに結果を悟ったイエヤスは息の飲み込みながら、譲られた道を進んでいく。

 偵察兵達の背後には引っ張られてきた荷車があり、上には横たわる人物がいた。

 

 目は閉じられ肌は蒼褪めピクリとも動かない。外傷は見当たらなかったがイエヤスに希望的考えを許さないほど、生気は感じられなかった。

 

「渓谷から南の離れた位置で発見しました。直接的な死因は首裏に付けられた小さな傷だと考えられます。そこから急所を突かれていました。辺りに争った跡はありません」

 

 偵察兵の報告がイエヤスの耳に入るが脳を素通りして抜けていく。代わりにボルスが相手をする。

 

「帝具はどうでしたか?」

「すでに回収されたようで見当たりませんでした」

 

 イエヤスは物言わぬ姿となった仲間の前で跪き、その名を呟く。

 

「……………………ウェイブ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 渓谷を離脱後、セリューの応急処置を終えたイエヤス達はウェイブに撤退の知らせを伝えに行こうとしたがウェイブが飛ばされた方向を知っているのはイエヤスしかおらず頼みのイエヤスは方向音痴で当てにならなかったため断念。

 セリューに案内されて町に辿り着いたイエヤスは緊張が途切れ体力に限界を迎えて気絶するように眠った。

 イエヤスが眠っている間にスタイリッシュやエスデス達も合流した。

 スタイリッシュとセリューから渓谷であったことの報告を聞いたエスデスはウェイブがまだ来ていない事を確認してすぐさま偵察隊を放った。

 目覚めたイエヤスも捜索の手伝いを申し出たがスタイリッシュからはドクターストップがかかりエスデスも許可を出さなかった。

 逸る気持ちを抑えながら町の入り口で待つことにしたイエヤスを迎えたのは友の死という残酷な真実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ウェイブの遺体は後日、帝都の家族の元へと送られる事が決まった。

 次の日、イエーガーズメンバーを宿屋の一室に集めたエスデスは、仲間を失い暗い雰囲気に包まれたメンバーを見渡しながら自分達側で起きた事は話した。

 

 

 

 

 

 ロマリー街道沿いの町を東へと出たエスデス・クロメ・ボルス・ランはしばらく馬を走らせていると突如かなりの大規模な盗賊団に出くわした。

 盗賊団のエスデスが来るのを分かっていたかのような言動に此方側が囮だと察したエスデス達は素早く盗賊団を殲滅にかかった。

 対複数戦に対して有利に働くボルスとクロメの帝具八房が操る死体軍団のおかげで盗賊団の掃討を手早く終わらせたエスデス達は来た道を引き返しておそらくは強襲されているであろうイエヤス達との合流を図る。

 

「っ! 止まれ!!」

 

 エスデスの制止にクロメ達はすぐさま反応を示して従う。

 だが

 

「おせぇ!!」

 

 男の声と共にエスデス達を細く輝くなにかが覆う。

 

「これは……糸? ………ですか」

 

 ランが呟いた通り、それは糸であった。

 だが、唯の糸だと侮る者は一人もいなかった。

 何故ならエスデス達を正方形状に囲った糸からは青白い半透明な壁が作られていたからだ。

 エスデス達を青白い箱に閉じ込めた張本人は大成功に身を隠したままガッツポーズをしていた。

 

「よっしゃ! 【刻糸結界】成功だぜ」

 

 ナイトレイドの一人、ラバックは自分が使う帝具【千変万化クローステール】の奥の手が見事に決まった事を喜んだ。

 

 

 【千変万化クローステール】は超級危険種の体毛から作られた糸型帝具であり、強靭な糸を自在に操ることができる。使い手の発想次第で様々な用途ができる汎用性に優れた帝具である。超級危険種の急所を守る体毛は特に頑丈で鋭く、別名【界断糸】と呼ばれる糸も存在する。

 

 奥の手は界断糸を使って相手を囲み閉じ込める【刻糸結界】である。

 

 世[界] を[断]ずる[糸]

 

 の名は伊達ではない。その結界は物理的なものではなく、世界から隔絶するものであり一度閉じ込められれば破る手段はまず存在しない。

 急拵えでは作れず予め張っておく必要があったり、外側からの攻撃も無効化すること、持続時間が10分もないなど縛りも多く、また結界に使った界断糸は使い切りであり貴重な糸を消耗してしまうデメリットも存在する。

 ただ一度発動すれば破る事は難しく、あくまで足止めだが最強の足止め技。

 それが【刻糸結界】である。

 

 エスデス達を全員閉じ込める最良のタイミングを捉え、思わず声を出してしまったラバックだが、このままこの場を離れてナジェンダ達に合流して退却を促す事を決めてエスデス達に姿を見せることなく去ろうとするが、

 

「………そこか」

 

 最大火力をぶつけてもビクともしない結界を前に、だがエスデスは焦った様子は見せず結界が張られる直前にした声の方向を指差した。

 見えない位置にいるはずなのに見事に指を差されたラバックはドキリとするが、結界内からできることなどないはずだと胸を撫で下ろす。

 

「!!!」

 

 自分へと迫る気配を感じたラバックはその場から跳んで離れる。

 ラバックがいた場所に薙刀の穂先が突き刺さる。

 柄を伸ばして突き刺さる薙刀を放ったのは顔の下半分をマスクで隠した青年であった。

 跳んだラバックは両手を振って糸を束ねて槍を作り上げると青年に向かって投擲しようとするが、別に北の異民族の衣装を着た女が二丁拳銃を自分に向けているのに気付き、槍を目の前で廻して疑似的な盾とする。

 盾が銃弾を弾く。

 ラバックは着地と同時にしゃがむ。頭上を鞭が通り過ぎ樹木へと当たり砕く。

 鞭の持ち先にラバックが視線を向けると、そこには洒脱な恰好をした偉丈夫の姿。

 さらに上空からの気配にラバックは再び後方へと跳ぶ。

 上空の気配はラバックがいた位置に轟音を立てて着地する。全身が毛で覆われたそれはエイプマンと呼ばれるゴリラに酷似した危険種であった。

 

「っ!! 次から次へと!!!」

 

 悪態を突きながらラバックは糸を纏った腕を振ってエイプマンに切れ味を重視した糸を飛ばす。

 だが、突如出てきたサングラスを掛けたスキンヘッドの男の大楯に阻まれる。

 薙刀の青年 ナタラ、二丁拳銃の女 ドーヤ、鞭使いの偉丈夫 ロクゴウ、エイプマン、大楯のサングラス男 ウォールに囲まれるラバック。

 

「なんなんだコイツら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 エスデスは指差した方向が騒がしくなり始めたのを見て察する。

 

「接敵したか」

「うん、隊長の読みが当たったね」

 

 エスデスの言葉に同意したクロメが八房を強く握り込む。

 

 自分達側が囮だと察したエスデスは合流を阻む策をナジェンダが他にも構えているであろうことを予測してクロメの死体人形を自分達からは少し遅れて追従するように指示を出していたのだ。

 八房が操れる死体は名の通り八つ。

 そのうち、カエル型の危険種カイザーフロッグと今回の盗賊団討伐でも活躍した大型超級危険種デスタグールは馬を駆るエスデス達に追従できる足を持っていないため、八房の中に潜ませているが、他の6体は全員出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 迫り来る銃弾を、鞭を、拳を、ラバックは避け続けていた。時折、腕や胴体に攻撃が掠めるが体に巻いた糸が鎧の代わりとなって致命を防いでいた。

 横へ上へと飛び跳ね、糸を使って不規則な動きを心掛け、時折隙を見出しては反撃も試みる。

 が

 

(くそっ、あのハゲとイケメン野郎がマジ厄介!)

 

 直接的な攻撃はウォールの大楯に阻まれる。

 拘束を重視した搦め手は伸びる薙刀により広範囲をカバーできるナタラが即座に糸を切り払い周りのサポートに徹していた。

 ラバックは息もつかせぬ連撃を捌きながら思考を全力で廻す。

 

「よし、まずはお前からだ!!」

 

 ラバックは予め糸を張っておいた場所へと飛び込んだ。

 攻撃がもっとも単調で読み易かったエイプマンが迷うことなく飛び込んでくる。

 糸が手足に絡まり動きが鈍くなったところにナタラがカバーに入るよりも早く束ねた槍状の糸を飛ばす。

 だが、ウォールがエイプマンの前に立ちはだかり大楯を構える。

 

「読み通り!!!」

 

 大楯に当たる瞬間、槍がばらけて糸へと戻りウォールを盾ごと拘束する。

 

「イケメン野郎に切られる前に!」

 

 拘束した糸を響かせて鋭さを持たせるとウォールの身体が両断される。

 さらに両腕を振り回して両断から細切れへと変わる。

 生気の感じない顔付、掠り傷から出血しない事から強襲者達が八房による死体だと推測したラバックは死体なら身体の欠損程度では止まらないと判断しての行動であった。

 サポート役の中でも後方にいるナタラよりも前線で盾をやっているウォールの方が先にやりやすいと判断したラバックの作戦が成功する。

 

「まず一人!」

 

 糸の縄張りで複数を足止めしてなるべく同時に相手をする数を減らすラバックの考えは今のところ上手くいっていた。

 盾役がいなくなったことにより、ラバックの攻撃が死体達に当たりだす。しかし、ラバックも死体達の攻撃を完全に捌けているわけではなく傷を増やしていく。

 さらにラバックには時間制限があった。

 そろそろ【刻糸結界】の解かれる時間が迫っている。

 ロクゴウの鞭を周りに張った糸で動きを制限させて凌ぐ。

 飛び交う銃弾と薙刀を紙一重に躱しながらラバックは再び糸を張った陣地へと飛び込み、そこにエイプマンが突っ込んでくる。

 

(やっぱり! 知能の低い危険種だからってのもあるだろうけど、死体だから学ばない、だから同じ手にも引っ掛かるかもって読みは合ってたぜ!)

 

 エイプマンへと絡まった糸に触れて切れ味を響かせるとエイプマンの首と四肢が切り飛ばされる。

 

「よし! 二人目!!」

 

 ラバックはそう言いながら大きく丸めた糸塊をさながらモーニングスターのように頭の上で振り回す。遠心力を得た糸塊をロクゴウに向かって飛ばすが軌道が分かりやすいそれはあっけなく避けられしまう。

 糸塊はロクゴウの背後の樹へとぶつかり、大質量の打撃に耐えられず樹はロクゴウへと倒れ込む。ロクゴウは身軽なフットワークでそれすらも躱す。

 だが

 

「ビンゴ!」

 

 樹の上部には幾重もの糸が張られており倒れる事で辺り一帯に糸がネット状になって覆いかぶさる仕組みになっていた。

 ネット状の糸に絡み取られて身動きが取れなくなったロクゴウにラバックは渾身の糸塊を叩き付けた。

 

「これで三人!!!」

 

 銃弾を糸の盾で防ぎ、薙刀を糸の結界で逸らせながらラバックは次の標的を考える。

 ラバックは懐に入れてある糸付きナイフを手に取り起こす行動を定めた。

 牽制のナイフをドーヤへと投げようとした時

 

「ッガァ!?」

 

 脇腹に猛烈な熱さを感じてラバックは悶絶する。

 視線を向けるとそこには今まで一度も姿を見せなかった者がラバックの脇腹に鋭い刃物を捻じ込んでいるのが分かった。糸と糸の間を狙った刃がラバックの内臓を傷つけている。

 ラバックは反射的に手にしたナイフをその者に振るうが、八房が放った最後の死体 ヘンターはなんなく跳び引いて避ける。

 

「っ! くそっ!!」

 

 ラバックは悪態を突きながら手早く傷に糸を巻き付けて包帯替わりとする。

 

(なんだアイツ!? 糸の結界にかかることなく今の今まで潜んでやがったのか!?)

 

 深手を負って動きに色彩が欠けたラバックにナタラ、ドーヤ、ヘンターは容赦なく襲い掛かる。

 ドーヤの銃弾が太腿をえぐる。ナタラの薙刀が糸を薙ぎ払いながら腕を掠める。ラバックの張った糸すらも利用してヘンターが変態的な立体起動を披露しながらラバックに肉薄する。

 そしてついて

 

「ガハッ!!!」

 

 ヘンターの動きに注意を取られたラバックの肩にドーヤの銃弾がめり込む。

 被弾の反動で大きく態勢を崩した身体をヘンターが刃で刻む。

 それでも致命だけは避けようと足掻くが、ドーヤとヘンターの隙間を掻い潜って伸びてきた薙刀が

 

「………ッ……ァ…」

 

 胴体を貫いた。

 それと同時にエスデス達の【刻糸結界】が解けた事も感覚で悟ったラバックは死期を察した。

 地面へと倒れ伏したラバックを跨いだヘンターが止めの一刺しをするために振り被る。

 

(ナジェンダさん……足止めは、ここまでみたいです……)

 

 ラバックはナジェンダの左手の人差し指へと繋がる糸を弾いて撤退するように知らせる。

 

 そして

 ヘンターの刃が首へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 ナジェンダの右手の小指へと繋がる糸が弾かれる。

 

 右手の小指の糸には作戦上意味は込められていなかった。

 

 

 

 

(ナジェ……ンダ、さ…ん、………好……き……で………)

 

 

 

 

 

 ラバックが人生最後に行った告白がナジェンダに伝わったかどうかは分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ隊長達はナイトレイドの一人を仕留めたんですね!」

 

 セリューの言葉にエスデスは頷いて見せた。

 エスデス達を閉じ込めた結界といい、クロメの死体人形を半数以上相手取りながら3つも潰して見せた手際といい、使い捨ての盗賊団とは一線を画す手強さを見せたラバックをナイトレイドの一人と断定したエスデスに仲間を殺されて俯き気味であったイエヤス達の雰囲気が少し明るさを取り戻す。

 

「先程大臣から護衛の任務が入った。我らはキョロクへと向かうぞ」

 

 メンバーの気力が戻ってきたのを確認したエスデスは早馬が伝えてきた指令を話す。

 キョロクは帝国東側を中心に帝国全土へと広がりつつある宗教《安寧道》の本拠地であった。護衛対象は安寧道幹部の一人であるボリック。

 ボリックは大臣が秘密裏に仕込んだ大臣側の人物であり安寧道を大臣の都合の良い方向に導く為の手段であった。

 そのボリックの近辺で最近不審な動きがあり、安寧道の反乱を誘いたい反乱軍がボリックを狙っているのではないかと大臣は考えたのだ。

 エスデスはナイトレイドが帝都を離れて東側に来たのも、その一環ではないかと睨んだ。

 

「スタイリッシュ、イエヤスの身体はどうだ?」

 

 エスデスの問い掛けにスタイリッシュはとりあえず応急処置は済ませたから戦闘は難しいが移動だけならば問題ないと答えた。

 

「よし、ならば30分後にここを発つぞ、……それまでに支度と別れをすましておけ」

 

 ベッドに寝かされたウェイブの遺体に一瞬だけ視線をやったエスデスはそう言って部屋を出た。

 メンバーそれぞれがウェイブに別れの言葉を告げて支度の為に自分の部屋へと戻った。

 最後に残ったのはイエヤスとクロメの二人であった。

 

「……………」

 

 クロメは言葉は紡がずにウェイブの頬を撫でるように手を翳す。

 死体の冷たさには慣れているはずのクロメだが、ウェイブから伝わってくる冷たさに体の芯を凍らされたかのうような錯覚を覚えた。

 そんなクロメの様子にイエヤスは居たたまれなくなり拳を握り締める。

 

「すまねぇ、俺がいながらウェイブを死なせちまった!」

「なんでイエヤスが謝るの? イエヤスはなにも悪くないよ」

 

 スタイリッシュから如何にイエヤスが身を削って戦っていたかを聞かされていたクロメはイエヤスの言葉に首を傾げる。

 

「支度しないといけないから、もういくね。イエヤスもドクター・スタイリッシュの治療を受けたけどまだ万全じゃないんだから無理したらダメだよ」

 

 ここにいてもイエヤスが自分を責める手助けをするだけだと判断したクロメは部屋を去る事にした。

 最後にウェイブにサッと目をやり

 

「………バイバイ」

 

 部屋を出た。

 扉の閉まる音が部屋に木霊する中、イエヤスは一人ウェイブの前で佇む。

 

 暑苦しくて単純で人の懐にグイグイ入ってくる無遠慮なやつだった。

 だが

 正義感があって真っ直ぐで落ち込んでいる奴をほっとけない情に厚いやつだった。

 こんなところで死んでいいやつじゃなかった。

 ノリがどこかタツミに似てて親しくなるのに時間はかからなかった。

 帝都来て初めてできた友だった。

 

「………くそっ」

 

 ウェイブとの日々を思い出して滲みだした視界を乱暴に拭い、腰に付けたカリバーンを鞘ごと抜いて片手で前へと掲げた。

 

「ウェイブ! お前の分も俺は生きるぜ、そんでもって仇も討ってやる。だから!!」

 

 イエヤスの目から溢れるものを今度は拭わなかった。

 

「だから……お前に流す涙はこれっきりだ、明日から…俺は進むから……」

 

 部屋の外には絶対に漏れないように押し殺した小さな嗚咽が少しの間、部屋を満たしていた。

 

 

 

 

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