イエヤスが生きる!   作:七峰 舞斗

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37話 既視感

 帝都内でボヤ騒ぎがあったとの報告を聞いて予定を前倒しにして帝都へとブドー大将軍が帰還し総司令官不在となったシスイカン。

 だが、反乱軍の出鼻を挫いていた事により反乱軍に動く気配はなかった。

 近衛隊の中でも特にブドー大将軍から信頼を得ている隊員複数人が司令官代理を請け負っており、今現在も会議室で話し合いが行われていた。

 

「それではブドー大将軍の指示通り、此方から打って出るような事はしないように各部隊しっかりと統率を取る事を心がけてくれ」

 

 司会役の隊員の締めの言葉を最後に会議は終了し、集まっていた隊員達は各々の持ち場へと去っていく。

 イエヤスと共に遊撃隊として攻城兵器破壊作戦に同行していたザスリーも会議に参加していた。

 ザスリーが会議室を出て廊下を歩く。

 すると後ろから同じく会議室から出てきた男がザスリーに声を掛けながら後に付いた。

 

「ザスリー、昼飯喰いに行かねーか?」

「ツーノか、それは結構だがその前に寄る所があるが構わないか?」

「おうよ」

 

 ツーノは野性味のある笑みを浮かべて返事をした。

 ザスリーとツーノはブドー大将軍の元で働く近衛隊であり、同時期に任に付いた同期でもあった。共に近衛隊の中では上位の実力を持っており切磋琢磨してきた仲である。

 ザスリーはその品のある言葉遣いからも分かるように名門の武闘派貴族出であり長男である事から家の名を背負って立つ身である。

 ツーノは格の低い貴族の次男坊であり、家を継ぐ事をできない事に不貞腐れてスラム街に入り浸っていた時期がある名残が口調にも表れている。

 最初は良いとこ出のお坊ちゃんと品の無い男だと互いに反目し合っていた二人だが、厳格なブドー大将軍に扱かれたり、練習試合で力を交わしている内にお互いを認め今に至っていた。

 

「ところでどこに寄るつもりなんだ?」

 

 先程の会議の内容について話していたツーノが不意に問い掛ける。

 

「第2訓練場だ」

「第2………というと、遅刻の坊主がいるところか」

 

 ツーノの言葉にザスリーは眉を顰めてキッとツーノを睨みつける。

 

「そういう言い方はよせ、失礼だぞ!」

 

 不愉快な思いを隠さず露にするザスリーにツーノは面白そうにヘラヘラした笑みを浮かべた。

 

「ヘッ、随分と態度を改めたもんだな? ついこの間まで坊主についてブツクサ言ってたのは俺の幻聴だったか?」

「うぐっ、それは……私の判断が先走ってしまっただけだ」

「ふーーん?」

 

 威勢のよさから一転痛いところを突かれて勢いを落としたザスリーを楽し気に観察しながらツーノは続ける。

 

「一回任務で助けられたからって単純な奴だなぁ」

「ム、それだけではないぞ。イエヤス殿の強さは本物だった」

「それは分かってるさ、あのエスデス将軍直属の部隊だぞ? 強さは折り紙付きみたいなもんだ」

 

 だけどお前が怒っていたポイントは違うだろ? とツーノは続ける。

 

「任について初の会議に遅れてやる気が感じられない、そんな援軍を送られても士気が下がるだけだって怒っていただろ? その件に強さは関係ないんじゃないか?」

 

 ツーノの御尤もな意見にザスリーは頷きつつも、ザスリーは反論を口にした。

 

「最初はそう思っていたさ、だが違ったのだ」

 

 ザスリーは語る。

 イエヤスと共に作戦を実行していた時、イエヤスは決して列を乱す事はなく終始任務に対して真摯な姿勢を取っていた。

 また、相手の帝具使いとは浅からぬ因縁を僅かな会話から見出すが、それに囚われる事もなく此方の意図を見逃すことなく把握して己の役目をしっかりと全うした。

 友好的とは言えない態度を見せたザスリーに思う事はあるだろうが、最後まで補佐し続けていた。

 

「私とて短所と呼ぶべきところはある。癪ではあるが貴様に教えられたことだが私は貴族という枠組みに囚われやすいきらいがある」

 

 ザスリーはツーノに視線を向けた。

 

「貴様の栄えある近衛隊でありながら少々粗野が目に余るのも短所だな」

「ヘッ、いい加減慣れとけ」

「慣れん、貴様が改めろ」

 

 事あるごとに繰り返される慣例のやり取りを挟んだザスリーは小さな溜息を吐き出した後、話の路線を元に戻した。

 

「今回はそんな誰にでもある短所が運悪く最初に露呈したに過ぎなかったという事だ」

「なるほどな。ま、言いたい事は分かった」

 

 話が一区切りしたところで丁度二人は第2訓練場に着く。

 第2訓練場は部屋ではなく、中庭のように開けた場所となっており、中央付近ではイエヤスがポツンと立っていた。

 ただ突っ立っているわけではなく、腰を据えて鞘に納めた剣に手を伸ばしており所謂居合の構えを取っていた。標的は兵が訓練でよく使用する案山子に傷んだ鎧を着せたものが複数立っていた。

 イエヤスは集中いているようでやってきたザスリー達へと視線を向ける事はせず、ザスリー達も声を掛けずに見守る。

 

「…………シッ!」

 

 イエヤスが剣を抜く。

 姿が立ち消え、微かな残像が案山子達の間を揺らめき、通り過ぎる。 

 

「うぉ!?」

「…………やはり速いな」

 

 初めて見たツーノは驚きの声を上げ、ザスリーは感嘆の声を漏らす。

 イエヤスが過ぎ去った案山子は次々と斜めにずれ落ち、ドサッと地を鳴らした。

 少し離れた位置から見ても目で追う事を許さなかったイエヤスの速さ、もし案山子の立場であったなら斬られた事実に気付けるかも怪しい、そんな思いをザスリー達に抱かせた。

 

「……ふぅ、ザスリー部隊長でしたか、お疲れ様です」

 

 息と整えたイエヤスが剣を鞘に納めつつ挨拶をする。

 ザスリーも挨拶に答えながら隣に立つツーノを紹介した。

 

「近衛隊のツーノだ、噂に違わない速さ、見せてもらったぜ」

「イエーガーズのイエヤスです。よろしくお願いします!」

 

 ツーノに差し出された手をイエヤスが取り二人は握手を交わした。

 ザスリーが斬られた案山子へと視線を向ける。

 見事な切り口で両断された案山子には一本の線が描かれており、その線に沿って斬られている物もあれば、少しズレている物もあった。

 

「少々特殊な訓練を行っていたようだな」

「はい、先日の作戦で今俺に必要な課題が見つかったので」

 

 倒れ伏した案山子を片付けながらイエヤスは今の自分に必要な力が何かを考えて導き出した答えを口にする。それを聞いたザスリーは納得したように頷き、ツーノは感心した。

 

「それで、何か御用ですか?」

「あぁ、先程の会議内容を伝えておこうと思ってね、イエヤス殿に直接関わる話はなかったが一応ね」

 

 ザスリーの気遣いに礼を言いながら内容を聞いたイエヤスは理解した旨を伝える。

 二人の話が一段落したところでツーノから提案が入った。

 

「今から飯食いに行くんだがイエヤスもどうだ?」

 

 目を見張る速さを見せてなお向上心を持つイエヤスに好感を抱いたツーノからの誘いにイエヤスは一瞬を目を瞬くが、すぐに輝かせて応じる事にした。

 

 その後、食事を共にしながらイエヤスはエスデス将軍の元での日々を、近衛隊の二人はブドー大将軍の元での日々を互いに食事の肴にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イエヤスが要塞内の構造を覚え、最悪だった第一印象も払拭してシスイカンでの生活に馴染み始めた時、それはいきなり始まった。

 

「ん? なんだか騒がしいな」

 

 イエヤスが日課になりつつある訓練場での特訓へと行こうとしていた時、騒々しい雰囲気を感じ取った。

 風の流れを頼りに騒ぎの元へと辿り着いたイエヤスが近くにいた兵士から事情を尋ねる。

 どうやら以前、反乱軍が攻城兵器を製造している事を突き止めた偵察部隊が再び出向いていたのだが、帰還する時間になっても帰ってこないので捜索隊を出す準備をしていたところ偵察部隊の一人が帰還してきたらしい。

 説明してくれた兵士に礼を言いつつイエヤスは兵に囲まれている偵察部隊員の元へと走った。

 偵察部隊員の傍でザスリーが話を聞き出していた。

 

「それではあの森のさらに奥で別の攻城兵器が作られていたという事か」

「はい、ですが少々奥に入り過ぎてしまったようで敵の警戒網に引っ掛かってしまい、追っ手から逃れる最中、マニュアル通りにまとめてやられない為に各方向へと散って一人でも確実に情報を持ち帰られるようにしました。他の者達は……まだ帰還してはいませんか?」

 

 偵察部隊員の覚悟を秘めた問いにザスリーは沈痛な表情をしながら頷いてみせた。

 予想されていた答えに偵察部隊員は気丈にも、そうですか、と言う言葉だけを口にして動揺した様子を見せずに報告の続きを話す。

 

「反乱軍は破壊工作をされるリスクを考えて製作場を二つに分けていたようで攻城兵器はすでに完成しておりました。明日には持ち出されるかと思われますが」

「………ふむ」

 

 報告を聞いてザスリーは考え込む。

 ブドー大将軍不在のシスイカンを任された者の一人としてどういった判断が正しいか模索する。

 偵察部隊が見つかった事を考えれば反乱軍の警戒は高まっている事が予測され前回のような奇襲が成功する確率は低くなっている。さらに、すでに攻城兵器の移動を始めている可能性もあり無駄足となる事も考えられる。

 ここは打って出る事はせずに攻城兵器が完成しているのであれば近々シスイカンに本格的な侵攻をしてくるだろうことをブドー大将軍へと伝令で知らせ守りを固めるのが無難な選択だと言えよう。

 しかし

 

「…………」

 

 チラリ、とザスリーは偵察部隊員に視線を向けた。

 ここで守りを固める選択は他の偵察部隊を見捨てる事を意味する。

 彼等も軍人であり死は覚悟の上での行動である事はザスリーも理解していた。

 だがだからと言って見捨てても良いものか、偵察部隊が全滅ともなれば士気に関わる可能性もないとは言えない。

 ザスリーの中でリスクとリターン、それに仲間に対する情が揺れ動く。

 

「…………!」

 

 ふと視線を動かしたザスリーの視界が黙って成り行きを見守っていたイエヤスを捉えた。

 イエヤスはただ静かに佇んでいるが、その手は腰の鞘に当てられており、ジッと力強い意志を瞳に込めてザスリーへと注いでいた。

 黙して語られるイエヤスの想いを目にしたザスリーは決断を下す。

 声を張り上げて集まっていた兵士達に号令を発する。

 

「隊を編成し出るぞ! 森へと急行し偵察部隊を救援しつつ可能であれば攻城兵器の破壊も狙う。敵も警戒している事が予想できるので深追いをするつもりはない」

 

 次々と命令を下すザスリー。

 他にもブドー大将軍に状況を伝える為の伝令の手配や、反乱軍が動き出す可能性を考えて警戒を厳にする命令を下しながらザスリーはイエヤスへと近付いた。

 

「というわけだがイエヤス殿、助力願えるか?」

 

 ザスリーの要請にイエヤスは当然とばかりに力強く頷き快諾する。

 

「感謝する。すぐに出る事になるが」

「いつでも出れますよ!」

 

 常在戦場の心得を見せたイエヤスに頼もしさを感じたザスリーはすぐに部隊を編成するのでこの場で待機するようにイエヤスに言って場を離れた。

 イエヤスは待機時間を無駄にしない為に偵察部隊員の元へと行った。

 イエヤスの接近に気付いた偵察部隊員は懐から地図を取り出してイエヤスへと差し出した。

 

「これは目的地までの道程を詳しく記した地図です。貴方も出撃されるのでしたら是非とも目を通した後、ザスリー様にお渡しください」

「おっ、ありがとうございます」

 

 方向音痴の身であるが、万が一部隊から逸れてしまった時の為に目を通しておく事に越したことはないと考えたイエヤスは有難く受け取り地図を凝視する。

 

 騒ぎで集まっていた兵士達は事態が動き出した事で各々ができる事や準備に奔走して散っていく。

 残されたのは地図と睨めっこをしているイエヤスと、それを見守る偵察部隊員だけとなり、喧騒は遠くなっていったが地図に集中しているイエヤスは気に留めることはしなかった。

 

「……あの道を右に行けばここか……、いや左か?これは」

「…………」

 

 苦手ながらもなんとか覚えようと四苦八苦しているイエヤスへとゆっくりと近付く偵察部隊員。

 

 

 

 

 

 その気配は  

  

 

 

 

 

 消されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 だが、それ故にイエヤスは気付く。気配と風の流れが一致しないからである。

 イエヤスはその違和感を見逃さない。

 地図から偵察部隊員へと視線を移すと一瞬目が合うが偵察部隊員はおくびれる事なく、そのまま隣まで来る。

 

「何処か分かりにくい場所はありますか?」

「……あぁ、そうだな、ここの分かれ道なんだが」

 

 相も変わらず気配を消したままの偵察部隊員に内心首を傾げるイエヤスだが、相手は帝国でも最高峰と言える偵察兵である事に思い至り、癖で完全に気配を消していてもおかしくはないかと考えを改めた。

 

「……うーん?」

 

 何処か既視感を覚え、何処だったかと思考を巡らすが帝都に来てから濃厚過ぎる日々を送ってきた為、いまいち思い出す事ができずにイエヤスが唸っているとザスリーが部隊と率いて駆けつけてくる。

 

「イエヤス殿、準備が整いました。行きましょう!」

「了解しました」

 

 イエヤスは思考を中断して偵察部隊員に地図の礼を言ってザスリーと共に行こうとするが、その前に偵察部隊員から声を掛けれた。

 

「不覚にも少しばかり負傷してしまいました。ドクター・スタイリッシュは何処におられますか?」

「この時間帯ならば、おそらくは総合医務室にいると思いますよ」

「了解しました。どうか仲間達をよろしくお願いします。ご武運を!」

 

 敬礼に敬礼で返したイエヤスはザスリー達と共にシスイカンを出立した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回は非常事態のため、前回よりも少ない迂回路を通り素早く森へと進撃するザスリー率いる遊撃部隊。ここまでの道中偵察部隊の生き残りが現れることはなかった。

 

「…………」

 

 ザスリーの背を追いながら森を駆けるイエヤスは先程感じた既視感の正体について考え込んでいた。

 いつ敵と接敵し戦闘になるか分からない状況である以上、危険な行為であることは重々承知していたが、イエヤスの勘が重要な事だと思わせてならなかった。

 

 

 

 接近を知らせる風の流れ

 

 

 それに反して感じない気配

 

 

 それを気にしない相手の態度

 

 

 

 

 

 ドクンッ

 

 

「ッ!!!」

 

 鼓動が強く跳ねる。

 思わず足が止まる。

 

「……思い出した」

 

 既視感の正体に辿り着く。 

 それはかつて人身売買で買った人達を娯楽の為だけに殺害していた悪逆貴族を暗殺するために屋敷に潜入していたメイドと同じ行動であった。

 テルシェと名乗った女性だったが、その正体はついぞ分からなかった。本人は帝国暗殺部隊の者だと言っていたが、テルシェという名は存在していなかった。

 

 イエヤスの中で様々な情報が脳裏を過ぎる。

 

 キョロクでの護衛任務が失敗した時、謎の出来事があった。

 ずっと大聖堂にいて、そのままナイトレイドに暗殺されてしまった護衛対象であるボリックが大聖堂の外に現れて増援として用意されていた帝国兵達を止めていたというのだ。

 エスデスはこの不可解な話について一つの仮説を立てていた。

 それはナイトレイドには変装の名人、もしくは帝具使いがいるというものであった。

 

 一見、関係ない二つの話だがイエヤスは点と点が繋がり線となっていく感覚を感じた。

 

 既視感から偵察部隊員とテルシェが同一人物だとして、見た目は全く違うどころか性別すらも違っていた。

 だが、長年キョロクで過ごしていたボリックの部下達がボリック本人だと見間違う程の変装の達人ならば、性別の壁など容易く乗り越えてくるだろう。

 偵察部隊員がナイトレイドである可能性がイエヤスの中で巨大になっていく。

 ならば、その狙いは?

 

 

 

 

 

 ドクター・スタイリッシュは何処におられますか?

 

 

 

 

 

 シスイカンの中にまんまと忍び込んだのだ。他にも狙いはあるだろうが、イエヤスにした質問が、その狙いを如実に表していた。

 

 

「どうかしたのか? イエヤス殿」

 

 足を止めたまま動かないイエヤスを不審に思ったザスリー達が戻ってくる。

 イエヤスの様子にただならぬモノを感じ取ったザスリーは周りを警戒しながら尋ねる。

 

「ザスリー部隊長、シスイカンに戻りましょう!」

「……どういう事だ? 何があった?」

 

 イエヤスは自分の考えをザスリーに話した。

 さっきまで話していた偵察部隊員がナイトレイドの変装である可能性を挙げられたザスリーはにわかには信じ難い気持ちで眉を顰めた。

 

「彼は私もよく知っている者だ。見た目や言動に不自然な点は見られなかったが?」「エスデス隊長は変装に特化した帝具の可能性もあると言ってました」

「帝具……か。確かに帝具には常識では測れない性能を秘めた物も多いと聞く。………しかし」

 

 イエヤスの意見に耳を傾けながらもザスリーは判断を渋った。

 ここで引き返せば、偵察部隊の救援も攻城兵器の破壊もできていない今、なんの為に出撃したのか分からない。だが、イエヤスの言が本当ならば偵察部隊は恐らくは既に反乱軍の手にかかり全滅、さらに向かう先には罠が待っている可能性が高い。

 

「……イエヤス殿も確信があるわけではないのだな?」

「それは……はい、断言はできません」

 

 あくまで既視感から来る推測である事は認めるイエヤスは、これ以上ザスリーを説得する材料を見つける事ができずに歯噛みした。

 頭と口が回るランならば上手く説得できたはずだと、まだまだ戦闘力面以外での己の無力さを痛感したイエヤスは拳を強く握り締めて震わせた。

 そんな様を見たザスリーはイエヤスの勘を信じる事にした。

 

「分かった。イエヤス殿の勘を信じよう、これよりシスイカンに帰還する! 異存はないな?」

 

 ザスリーの言葉を聞いた遊撃部隊の隊員達から反論の声は上がらなかった。

 これはイエヤスの話を信じているというわけではなく、ザスリーの判断を信用しているからというのが大きく、それはイエヤスにも分かったが、それでもイエヤスは有難さから遊撃部隊の皆に頭を下げた。

 

 足並みを揃えてシスイカンへと向かう遊撃部隊。

 ひとまずはシスイカンの無事を確認するべく、最短でシスイカンが見える位置まで駆け抜けた遊撃部隊は目にする。

 

 

 反乱軍本体を相手に鉄壁を誇っていたシスイカンの城門が全開で開いている姿を。

 

 開かれた城門からシスイカンへと続々と侵入していく反乱軍の姿を。

 

 シスイカンからは異常事態を物語る黒煙が上がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 反乱軍による本格的な侵攻が始まっていた。

 

   

 

 

 

 

 

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