英雄を求めて   作:ゴマ醤油

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友達に

 長かった一日が終わりを迎えた。

 優勝はスーパールーキー南雲咲耶、準優勝はこのあたり最強であった御劔令という形で。

 どちらもが同じ学校。彼女らの在籍する高校にとっては名誉であろうその事柄。

 

 けどそれはあくまで通過点。そう考えるものも少なくない。

 そもそもの話、この学校が本腰を入れているのは団体戦。チームで全国制覇することが何よりの望み。

 よって、この一日の締めで全員で食事をするだとか特別盛り上がるだとかそういったのはなくこの場から解散した。

 

「えへへー。凄かったねー南雲さん」

「……そう」

「うん!」

 

 だからこそ、帰り道も静かに歩けるはずだったのだ。

 花柳がにこにこしながらこちらに会話を振ってくる。いや、厳密には私を褒めるばっかりなので聞いていてむず痒くなる。

 

 で、どうしてこいつと今一緒に帰っているだろう。

 別にそれは良いのだが、あんなにも部員がいたのに何故私を選んだのか。

 聞くところによると昨日今日だけでも友達が増えたとかなんとか。ただ試合するだけの場でどうしてそんな輪が広がるのだろうか。

 

「ちょっと寄り道しない?」

 

 おおよそ半分ぐらいまで歩いた時に花柳がそう打診してきた。

 正直帰って寝たいのだがまあ良いか。どこに行くのか知らないが私も聞きたいことがあるし。

 

「……いいよ」

「ほんと!? いやったー!」

 

 私の返事でうさぎみたいにぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ花柳。

 あざとい。これが素でなければあまりにもあざとい。

 ……なんかちょっと前にも似たようなことをしたような気がする。

 

 少し早いペースで歩く花柳に付いて行く。

 多少の坂と階段を進むと到着する小さめの公園。

 自販機が一つある他に、カップル推奨みたいなベンチがあるだけの質素な公園だが、そこから見える星だけは昔から変わらず綺麗に光っている。

 

「綺麗だねー」

 

 その小さいベンチに座り頭上の星を眺める花柳。手で隣を払って座るように手で言ってくる。

 少し悩んだがまあいいかと座り一緒になって空の輝きに目を向ける。

 

 無数にある宙の星々。私はその人には届かない神秘が嫌いではない。

 未だ届かぬ人の夢。限りなく大きな宇宙を見ていれば、ほんの少しで気が紛れる。

 初めて見たのはいつだったか。これも父が教えてくれた思い出の一つ。

 ……そうだ。聞きたいこと。

 

「……ねぇ花柳。どうして私の側で試合を見てたの?」

「えっ?」

「ただ見るだけなら上からで良かったし。近くで見たかったの?」

 

 今日トップクラスに思っていた疑問だった。

 だって、応援するなら部長の方に行くはずだ。私より遥かに好かれている部長に着くのは当然ではないのか。

 

「……なんでって、それは南雲さんを応援したかった……から?」

「……何その曖昧さ」

「しょうがないじゃん! だって私は南雲さんを応援したかったんだもん!」

 

 花柳の大声の後、沈黙が走る。

 なんだそれは。つまり、ただ応援したかっただけ? 

 理解できない。どうして、どうして? 

 

「なんで? 私といて何か得ある? 練習以外で媚び売ったってなんか意味あるの?」

 

 声を露わにして、醜くて愚かな本音をぶちまける。

 なんて身勝手な言葉。どんな理由があろうとも、優しくしてくれた人へ発する言葉ではない。

 

 それを聞いた花柳は驚いた顔をしていた。

 私が大声を出すのが珍しかったのか、それとも腹黒さにびっくりしたのか。

 

「……ないかな。意味なんて」

「……はっ?」

「だって、友達になりたいから声掛けただけだし。笑ってる南雲さんと一緒に居たいだけだもん」

 

 花柳が特に悩むことなく言った言葉はすぐには飲み込めなかった。

 理由がない? 友達になりたいから? 

 なんでそうなる。私は、バドミントンを抜いたら何もないクソ雑魚。クラスの端っこを汚す塵の一つでしかないのに。

 

「いやー。初めて見た時からピンと来ちゃってさ! 南雲さんとなら絶対仲良くなれるって! 友達になれるってさ!」

 

 本当に嘘偽りがないかのように照れ臭そうに話す花柳。

 つまりあれか。こいつは特に考えずに、損得とか気にせずに私といたのか? 

 なんだそれは。なんてまっすぐな意見。なんて単純な理由。

 

 全く、まるで私が馬鹿みたいではないか。

 意味もなく勘繰りまくって勝手に人を邪険にしていた私が阿保じゃないか。

 

 

「──はっ、ははははっ。はははっ──!」

「えっ? どうしての南雲さん!? 私変なこと言った?」

 

 急に笑いを抑えられなくなった私を見て、困ったようにおろおろし出す花柳。

 そうか。友達か。お前は私を友達と呼んでくれるのか。

 

「──ご、ごめん。なんだか可笑しくって」

「えっ、え? 南雲さん?」

 

 ああっ、なんだか胸がすっとした。

 こんなにも悩んでいたのが間違いであったと思えるぐらいにはすっきりした。

 ……なら、私も少しだけ進まなきゃな。

 

「……咲耶」

「えっ?」

「咲耶って呼んで。南雲さんじゃ、長い」

 

 それを聞いて、一瞬固まったがすぐに今日一番の笑顔に変わる花柳。

 

「うん! 咲耶ちゃん! 私も莉子って呼んで!」

 

 今度は私が固まってしまう。

 それは考えてなかった。どうしよう、なんだか恥ずかしい。

 花柳が期待百%の目でこちらを見てくる。

 ええいしょうがない。なるようになれだ。

 

「……り、莉子」

「!!! 咲耶ちゃん!」

 

 頑張って莉子と言うと、星よりも輝いた目でこっちにガバッと抱きついてくる。

 暑苦しい。ベタベタする。けど、どうにも懐かしい。

 

「えへへー。えへへへへー!」

 

 ああっ、存外に悪くない。本当に、悪くない。




花柳さんは友達の多い凄い人です。なんでこんな娘を疑うんでしょうね主人公は。

まだ続きます。けど、更新は遅れます。
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