決勝も終わり、またいつもの学校生活を送っていたとある日。
私と莉子はとある教室で放課後の時間を浪費していた。
……遅い、眠い、眠い。
一体どれくらい待たされるんだ。このまま夢の世界に飛び込んだって文句は言わせないぐらいには眠気が襲ってくる。
それもこれも英語のせいだ。あの忌まわしい教科が私に勉強を強いてくるのだ。
「……部長、まだですか?」
「知るかよ。てめぇは五分と待てねぇのか」
辛辣な言葉で返してくる部長。
時計を確認してみる。……三分しかない経ってない。あまりの眠さで時間が麻痺してるらしい。眠い。
コーチ来たら莉子のやつに起こしてもらおう。そう思いその心地よさに浸ろうとすると、前方のドアが音を立てて開く。
「すまない。待たせた」
コーチが教壇近くに立つ。なんだか竹刀でも持っていたらスパルタ授業が始まると錯覚させられる迫力に少し眠気が吹き飛んだ。
「では始めよう。だいたい察しているとは思うが、団体戦のオーダーについてだ」
まあ選抜生だけが集められていることからおおよそそうだろうとは思っていた。
私はどこでも良いし、なんなら団体は出なくても良いぐらいだがそうはいかないらしい。
コーチはどちらかというと団体戦の方に熱を上げていると部長が言ってた。理由は知らないが、まあ単純にそっちの方が好きとかだと思う。
「予選は基本固定で行く。例えどれだけ研究されようとも蹴ちらせねば話にならない。いかなる条件でも勝ってこそだ」
結構横暴だと思うその言葉だが、別に誰も狼狽えはしなかった。
コーチの言うことももっともだ。予選で苦戦するのは個人戦の同校対決ぐらいにしてほしい。
「では発表する。D1が新崎と根本。D2が花柳と南雲。S1は──」
淡々と告げていくコーチ。
私はD2のみ。つまり、シングルには出さないということらしい。
「──以上だ。……言っておくが、全員出すのは予選だけだ。試合内容によっては本戦でずっと座っているだけという可能性もある。せいぜい気を引き締めるように」
コーチの脅しに益々緊張が走る。私にとっては今のままでも不服だが。
だって私が二回出れば二勝は稼げるのに一回しか出していないのだ。全国の舞台でもこのままであるなら、流石に優勝できるかは怪しくなる。
「……あの、質問なんすけど南雲をシングルに出さないんですか?」
「出さん」
新崎先輩の質問をあっさりと切る。
余りにも早かったので、一瞬面食らった新崎先輩。
「南雲一人に頼る気か? それとも三年じゃ頼りないとお前は言うのか?」
「い、いえっ……」
「確かに南雲は強い。だが、仮に南雲が二勝したところでお前らが負ければ意味なんてない。実際、去年はそうやって御劔に任せて負けたのを見ていなかったわけでもないだろう」
コーチの言うことはもっともだと思う。
確かに私は勝つだろう。けど、うちはシングルでましなのは部長だけだ。
それ以外で負ける要素があるなら、どれだけ私が勝ったって無意味だろう。
私がシングル三回出れればそれで終わりなのだが、そうは行かないのが団体戦の厄介なところ。正直私はこっちに本腰を入れる理由はないのだが、満更勝つ気がないわけでもないのだ。
何でだろう。この部に入った時は全く興味なんてなかったのに。
莉子と上まで行きたいと僅かでも思い始めたのか。それともただ情が移っただけか。
まあいいや。私と戦える人を探せるチャンスだと考えよう。
「他に質問はないか? ……ないなら解散だ」
誰も意見がないのを確認しすぐに話を切り上げ部屋から出るコーチ。
これ部活前に話せばよかったのではと思うぐらいにあっさり終わった。
……今日は帰って寝ようかな。
「咲耶ちゃん! ぶーかつ行こっ!」
帰ろうとしていた私の手を莉子が掴む。
帰りたい気持ちもあるが軽く打っとこうか。……なんだか莉子に弱くなった気がするのだが気のせいだろうか。
「さっきのコーチ怖かったねー」
体育館に向かう途中、花柳がさっきの話について振り返る。
負けたらもっと言われそうで怖いが、私達がそれを気にする意味はなさそうだが。
「負けなきゃ問題ない。隣が莉子なら邪魔にはならない」
「そう? なら良かった! ちょっと心配だったんだよねー」
あからさまに安心した様子を見せるが、ダブルスに関して莉子が悩むほどの難敵が出るとは思えないが。
まあ莉子らしいと言えばそうではあるのだが。
部室に到着し、服を着替え練習に入る。
走り、軽く打つだけ。たったそれだけのことなのに、以前よりはちょっとだけ体が動く。
あの試合をしてからずっとこんな感じだ。
確かにいつもとは少しだけ違ったとは思うが、自分がこんな影響を受けやすいとは思わなかった。
いや、少しではなかったか。ちゃんと点を取られたのなんて久しぶりにもほどがあるし。
合宿の時のクリステンセンよりは感じるものがあった。
なんだろう。別に強さは私的にはどっちもそう変わらないのに。
いつのまにか練習が終わる。
時間を気にすることも減った気がする。前はラリー中も時計が見ることが多かったのに。
「咲耶ちゃん帰ろー!」
莉子と共に帰り道を進む。
誰かと一緒に帰るのにも、少し慣れてきた。
──悪くない。こんな風に感じるのも、本当に。
遅れました。すいません。
毎日更新は難しいですが、またぼちぼち始めていきます。
……早く全国編に行きたいです。