英雄を求めて   作:ゴマ醤油

28 / 31
全国編
到着


 インターハイ。それは全国最強を決める運命のステージ。

 出場できること自体が誉れであり、勝ち進むのは並の努力と才では不可能な高み。予選においてどれだけの強さを誇っても己が蛙でしかないのだと実感させられる残酷な場なのである。

 

 ──そして今、日本の学生バドミントンは黄金世代とまで囁かれるほどの質を誇っている。

 三強と称される逸材。石川の津幡路、宮城の志波姫唯華、そして栃木の益子泪の三人が長年この世代の頂点に君臨し続けている。

 彼女らを超える者が現れるのか、それともこの牙城は崩れることなく終わるのか。それは誰にも予想もできないのである。

 

 

 

 

 新幹線。それは人間が作り出した文明の利器の一つ。

 離れた場所への移動を楽にしたそれは、確か昔の東京オリンピックぐらいにはあったとか。

 もはや人々にとって欠かせないになっているその鉄の箱。だがそれが今の私にはとっても恐ろしい事実でしかない。

 

 ──ああっ。なぜ人は利便性より速度を求めるのだ。

 もう少し世界は生き急がなくてもいいと私は考える。人には足があるのだ。ゆっくり踏みしめて歩いて行けば──。

 

「咲耶ちゃん大丈夫? はいこれ袋」

「……ありがと」

 

 隣に座っている莉子がエチケット袋を一つ差し出してくれる。

 はい、そんな訳で酔いました。ゲロ吐きそうで辛い。

 

 莉子には本当に申し訳ない。せっかく窓側の景色を楽しみにしていたのに、私の太陽ごときを心配して譲ってくれたのだ。

 本当にありがたい。ここ最近莉子には頭が上がらないことばっかりだ。……あれ、もしかして端から見るとすっごく面倒くさいやつ? 

 

「花柳ぃ。もうすぐ着くからその馬鹿どうにかしとけぇ!」

「は、はいぃ!」

 

 部長が袋をこっちに渡しながら莉子に強く言う。

 ……もうすぐ着くのか。助かった。せっかくアイマスク持ってきたのに寝る余裕すらなかったのが非常に無念で仕方が無いが。

 

 多少ふらつきながらも新幹線から出て、歩き出す。

 最初は辛かったが、キャリーバッグと共に道を先輩達に付いていってたら多少は楽になってきた。今なら持ってきた大きなカップ焼きそばさえ余裕で完食できるだろうという謎の確信がある。

 

 一旦泊まることになっているホテルに荷物を置き、そして会場に向かって再度歩を進める。

 正直私はもうベッドに飛び込みたい気持ちでいっぱいなのであるが、流石に迷子にはならないと思うけど、一回は見ておきたい。

 

 照りつける太陽の下を歩くこと数分。なにやらそれっぽい建築物が近づいてきた。

 大きくて綺麗な外見をしているドームみたいな建物。ここで数日間試合に明け暮れることになるのか。

 

「私は監督会議がある。他校との起こさないように各々自由に過ごせ。御劔、後は任せた」

「はい」

 

 コーチが部長にそう言って建物内に入っていく。

 ……自由か。──さてと、部屋に帰って寝よっと。昨日も練習辛かったし。

 

「さて、さっきコーチが言ったとおりに今日は自由だ。私と一緒に練習会場行くのも良い、昨日の練習の疲れを取るも良しだ。自分の体調を考え適当に動け。以上」

 

 どうやら部長達は練習に行くらしい。なんと体力のあることだ。

 私は新幹線という地獄列車にすっかり力を吸い取られてしまったというのに。その元気はまったく羨ましくもないが良く動けると感心するものだ。

 さて、そろそろ帰ろうか。私には柔らかいベッドが待っているのだから──。

 

「咲耶ちゃんは行かないの? ちょっと体動かそう?」

 

 絶望のお知らせが私の耳に響いた気がする。

 思わずそっちを向くと、とってもいい笑顔をした莉子がこっちを見ながら誘ってくる。

 私の濁っているであろう目と莉子の輝いた瞳で完全に視線が合ってしまう。……。…………。……………………はあっ。

 

 

「……わかった。わかったから」

「本当? やったー!」

 

 もう莉子に抵抗するのは諦めた。なんかこれ断ったら私が悪者みたいな扱いになってしまう気がしてならないからだ。

 もうなんか莉子にはいろいろ敵わない気がする。どうしてだろう、いろいろお世話されすぎたからだろうか。

 

「……あいつ何か花柳の犬みたいな感じになってきたよな」

「部長には噛みつきますけどね」

「……根本は後で私と打てよ」

「ええっ!?」

 

 後ろで何か言ってるが構ってる余裕はない。

 ……はあっ。今日は爆睡できそうなぁ。

 

 

 

 

 

 練習については私の心が疲れた以外は特に何も無く終わった。

 他校の生徒は割といたのだが、生憎あちらも調整に忙しく打ち合う機会が無かったからである。

 ……いや、当たり前か。ここは全国最高を決める場。私は全くどうでもいいことだが、手の内の一つを晒すことを考えるとやりたがる人は少ないのであろう。

 

 友達作りなど後でいくらでもできる。ここは勝ち負けを、誰が強く誰が弱いのかをはっきりさせる死線。もう戦いは始まっているのだろう。

 

 食事も取り終わりすっかり時間は十一時。ベッドに横たわり枕に顔を埋める。

 隣の花柳は既に寝てしまっている。私より早く眠りにつくとは実に健康的でいい事だ。

 

(……いよいよか)

 

 開催地に来て少しだけ、僅かだが心が揺れる自分がいる。

 何でだろう。地元じゃないから浮かれているのかな。だとしたら我ながら随分と子どもらしいことだ。

 

 心の中で己を少し笑いながら目を閉じる。いつの間にか意識は落ち、最後に浮かんでいた思考は明日起きれるかいうことだけだった。




 早く原作キャラを出したい。そんな気持ちで書いています。

 



 全く関係ないけどまちカドまぞくにメソポタミア繋がりで英雄王を投入するという謎アイデアが浮かんだので誰かに書いてほしいです。私には英雄王は無理です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。