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魔物たちは本格的にウルの町を攻め始めた。
その場をカービィたちに任せ、ハジメ、ユエ、シア、ティオは進んだ。
カービィたちのおかげでハジメたちはほとんど魔力を使わずに済んでいたのだ。
清水幸利「(何だよ、これは……何なんだよ、これは!!)」
ウルの町を襲う数万規模の魔物の大群の遥か後方で、即席の塹壕を堀り、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年、清水幸利は、目の前の惨状に体を震わせながら言葉を失った様に口をパクパクさせていた。ありえない光景、信じたくない現実に、内心で言葉にもなっていない悪態を繰り返す。
そう、魔物の大群をけし掛けたのは紛れもなく、行方不明になっていたハジメのクラスメイト清水幸利だった。とある男との偶然の末に交わした契約により、ウルの町を愛子達ごと壊滅させようと企んだのだ。しかし、容易に捻り潰せると思っていた町や人は、全く予想しなかった凄絶な迎撃
特にカービィ一行)により未だ無傷であり、それどころか現在進行形で清水にとっての地獄絵図が生み出されていた。
カービィのことは『暴食のピンクボール』や、『ピンクの悪魔』、などと実力は聞いていたが、召喚された時はそんな力を持っているなんて思っていなかったのだ。さらにマホロアたちのことは一切情報無しときた。
予想外にも程があったのだった。
進み続けるハジメたち
現在ティオが炎を吐いて敵を蹴散らしている。
「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」
うつ伏せに倒れながら、顔だけをハジメの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。
「……十分だ。変態にしてはやるじゃねぇの。後は、任せてそのまま寝てろ」
「……ご主人様が優しい……罵ってくれるかと思ったのじゃが……いや、でもアメの後にはムチが……期待しても?」
「そのまま死ね」
だが残りの敵もあと1000あるかないがぐらいである。
特にカービィたちのおかげで。
ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!
「〝雷龍〟」
もう敵はハジメのほうはほとんど全滅した。
ハジメは、ガン=カタでドンナー・シュラークを縦横無尽に操りながら、クロスビットを併用して、隙のない嵐のような攻撃を繰り広げる。既に、リーダー格の魔物を四十体近く屠り、全開の〝威圧〟により逃亡する魔物も出始めている。
と、ハジメの視界の端に遠くの方で逃げ出す魔物に向かって何やら喚いている人影が見えた。地面から頭だけを出している。その頭は黒いローブで覆われていた。
黒いローブの男、清水は、逃げ出す魔物に癇癪を起こす子供のように喚くと、王宮より譲り受けたアーティファクトの杖をかざして何かを唱え始めた。もちろん、そのまま詠唱の完了を待ってやる義理などないので、ハジメは片手間でドンナーを発砲し、その杖を半ばから吹き飛ばす。余波で、地面の穴の中に揉んどり打って倒れこむ清水。
ハジメは、いつまでもロボボアーマーに頼ってはいけないと思い作っておいた魔力駆動二輪を取り出すと一気に加速し瞬く間に清水に追いつく。後ろからキィイイイ! という耳慣れぬ音に振り返った清水が、異世界に存在しないはずのバイクを見てギョッとした表情をしつつ必死に手足を動かして逃げる。
「何だよ! 何なんだよ! ありえないだろ! 本当なら、俺が勇者グペッ!?」
悪態を付きながら必死に走る清水の後頭部を、二輪の勢いそのままに義手で殴りつけるハジメ。清水は、顔面から地面にダイブし、シャチホコのような姿勢で数メートルほど地を滑って停止した。
「さて、先生はどうする気だろうな? こいつの事も……場合によっては俺の事も……」
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現在清水は見るも無残な姿に成り果てて、愛子達の前に跪かされるというものだった。ちなみに、敗残兵の様な姿になっている理由は、ハジメに魔物の血肉や土埃の舞う大地を魔力駆動二輪で引き摺られて来たからである。白目を向いて意識を喪失している清水が、なお、頭をゴンゴンと地面に打ちつけながら眼前に連れて来られたのを見て、愛子達の表情が引き攣っていたのは仕様がないことだろう。
ちなみに、場所は町外れに移しており、この場にいるのは、愛子と生徒達の他、護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人か、それにウィルとハジメ達とカービィ一行だけである。
愛子先生「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません……先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか……どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」
清水「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって……勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに……気付きもしないで、モブ扱いしやがって……ホント、馬鹿ばっかりだ……だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが……」
玉井「てめぇ……自分の立場わかってんのかよ! 危うく、町がめちゃくちゃになるところだったんだぞ!」園部「そうよ! 馬鹿なのはアンタの方でしょ!」
生徒達「愛ちゃん先生がどんだけ心配してたと思ってるのよ!」
「そう、沢山不満があったのですね……でも、清水君。みんなを見返そうというのなら、なおさら、先生にはわかりません。どうして、町を襲おうとしたのですか? もし、あのまま町が襲われて……多くの人々が亡くなっていたら……多くの魔物を従えるだけならともかく、それでは君の〝価値〟を示せません」
愛子のもっともな質問に、清水は少し顔を上げると薄汚れて垂れ下がった前髪の隙間から陰鬱で暗く澱んだ瞳を愛子に向け、薄らと笑みを浮かべた。
「……示せるさ……魔人族になら」
「なっ!?」
「魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな……その魔人族は、俺との話しを望んだ。そして、わかってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと……魔人族側と契約したんだよ」
「契約……ですか? それは、どのような?」
そんな愛子に、一体何がおかしいのかニヤニヤしながら清水が衝撃の言葉を口にする。
「……畑山先生……あんたを殺す事だよ」
「……え?」
「何だよ、その間抜面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか? ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ……〝豊穣の女神〟……あんたを町の住人ごと殺せば、俺は、魔人族側の〝勇者〟として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし……だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ! 何で異世界にあんな兵器があるんだよっ! お前は、お前は一体何なんだよっ!」
「清水君。落ち着いて下さい」
「な、なんだよっ! 離せよっ!」
「清水君……君の気持ちはよく分かりました。〝特別〟でありたい。そう思う君の気持ちは間違ってなどいません。人として自然な望みです。そして、君ならきっと〝特別〟になれます。だって、方法は間違えたけれど、これだけの事が実際にできるのですから……でも、魔人族側には行ってはいけません。君の話してくれたその魔人族の方は、そんな君の思いを利用したのです。そんな人に、先生は、大事な生徒を預けるつもりは一切ありません……清水君。もう一度やり直しましょう? みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?」
が、そんなに簡単に行くほど甘くはなかった。肩を震わせ項垂れる清水の頭を優しい表情で撫でようと身を乗り出した愛子に対して、清水は突然、握られていた手を逆に握り返しグッと引き寄せ、愛子の首に腕を回してキツく締め上げたのだ。思わず呻き声を上げる愛子を後ろから羽交い絞めにし、何処に隠していたのか十センチ程の針を取り出すと、それを愛子の首筋に突きつけた。
「動くなぁ! ぶっ刺すぞぉ!」
裏返ったヒステリックな声でそう叫ぶ清水。その表情は、ピクピクと痙攣しているように引き攣り、眼はハジメに向けていた時と同じ狂気を宿している。先程まで肩を震わせていたのは、どうやら嗤っていただけらしい。
「いいかぁ、この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ! 刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ! わかったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!」
清水の狂気を宿した言葉に、周囲の者達が顔を青ざめさせる。完全に動きを止めた生徒達や護衛隊の騎士達にニヤニヤと笑う清水は、その視線をハジメに向ける。
「おい、お前、厨二野郎ら、お前らだ! 後ろじゃねぇよ!お前らだっつってんだろっ! 馬鹿にしやがって、クソが! これ以上ふざけた態度とる気なら、マジで殺すからなっ! わかったら、銃を寄越せ! それと他の兵器もだ!」
ハジメは、それを聞いて非常に冷めた眼で清水を見返した。
「いや、お前、殺されたくなかったらって……そもそも、先生殺さないと魔人族側行けないんだから、どっちにしろ殺すんだろ? じゃあ、渡し損じゃねぇか」
「うるさい、うるさい、うるさい! いいから黙って全部渡しやがれ! お前らみたいな馬鹿どもは俺の言うこと聞いてればいいんだよぉ! そ、そうだ、へへ、おい、お前のその奴隷も貰ってやるよ。そいつに持ってこさせろ!」
「お前が、うるさい三連発しても、ただひたすらキモイだけだろうに……ていうか、シア、気持ち悪いからって俺の後ろに隠れるなよ。アイツ凄い形相になってるだろうが」
シア「だって、ホントに気持ち悪くて……生理的に受け付けないというか……見て下さい、この鳥肌。有り得ない気持ち悪さですよぉ」
ハジメ「まぁ、勇者願望あるのに、セリフが、最初期に出てきて主人公にあっさり殺られるゲスイ踏み台盗賊と同じだしなぁ」
カービィ「ゆーしゃってなんだっけね。」
メタナイト「勇者というのは誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げた者、または成し遂げようとしている者に対する敬意を表す呼称として用いられる。武勇に優れた戦士や、勝敗にかかわらず勇敢に戦った者に対しても用いられる」
「……し、清水君……どうか、話しを……大丈夫……ですから……」
狂態を晒す清水に愛子は苦しそうにしながらも、なお言葉を投げかけるが、その声を聞いた瞬間、清水はピタリと笑いを止めて更に愛子を締め上げた。
「……うっさいよ。いい人ぶりやがって!この偽善者が…お前は黙って、ここから脱出するための道具になっていればいいんだよ!」
ハジメの抜き撃ちの速度なら清水が認識する前にヒットさせることも出来るのだが、愛子も少し痛い目を見た方がいいだろうという意図だ。
が、ハジメの手が下がり始めたその瞬間、事態は急変する。
「ッ!? ダメです! 避けて!」
そう叫びながら、シアは、一瞬で完了した全力の身体強化で縮地並みの高速移動をし、愛子に飛びかかった。
カービィもとっさのことで吸い込みでなんとかしようとしたが間に合わなかった。
突然の事態に、清水が咄嗟に針を愛子に突き刺そうとする。シアが無理やり愛子を引き剥がし何かから庇うように身を捻ったのと、蒼色の水流が、清水の胸を貫通して、ついさっきまで愛子の頭があった場所をレーザーの如く通過したのはほぼ同時だった。
射線上にいたハジメが、ドンナーで水のレーザー、おそらく水系攻撃魔法〝破断〟を打ち払う。そして、シアの方は、愛子を抱きしめ突進の勢いそのままに肩から地面にダイブし地を滑った。もうもうと砂埃を上げながら、ようやく停止したシアは、「うぐっ」と苦しそうな呻き声を上げて横たわったままだ。
「シア!」
突然の事態に誰もが硬直する中、ユエがシアの名を呼びながら全力で駆け寄る。そして、追撃に備えてシアと彼女が抱きしめる愛子を守るように陣取った。
ハジメは、何も言わずとも望んだ通りの行動をしてくれたユエに内心で感謝と称賛を送りながら、ドンナーを両手で構え〝遠見〟で〝破断〟の射線を辿る。すると、遠くで黒い服を来た耳の尖ったオールバックの男が、大型の鳥のような魔物に乗り込む姿が見えた。
ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!
おそらく、あれが清水の言っていた魔人族なのだろうとハジメは推測した。
「ハ、ハジメさん……うくっ……私は……大丈夫……です……は、早く、先生さんを……毒針が掠っていて……」
「だったらボクに任せて。コピー能力クリエイト『ドクター、ヒールドクター』」
カービィは急いでドクターの力で診察して、ヒールドクターの力で回復させる。
ハジメは、ユエに支えられた愛子を受け取り、その口に試験管を咥えさせ、少しずつ神水を流し込んだ。愛子が、シアを優先しなかったことに咎めるような眼差しをハジメにぶつけるが、ハジメは無視する。今は、愛子の意思より、自分の意志より、シアの意志を優先してやりたかった。なので、問答無用で神水を流し込んでいく。しかし、愛子の体は全体が痙攣を始めており思った通りに体が動かないようで、自分では上手く飲み込めないようだ。しまいには、気管に入ったようで激しくむせて吐き出してしまう。
ハジメは、愛子が自力で神水を飲み込むことは無理だと判断し、残りの神水を自分の口に含むと、何の躊躇いもなく愛子に口付けして直接流し込んだ。
「ッ!?」
愛子が大きく目を見開く。次いでに、ハジメの周囲で男女の悲鳴と怒声が上がった。しかし、ハジメは、その一切を無視して、愛子の口内に舌を侵入させるとその舌を絡めとり、無理やり神水を流し込んでいく。ハジメの表情には、羞恥や罪悪感の類は一切なく、ただすべきことをするという真剣さだけが浮かんでいた。
やがて、愛子の喉がコクコクと動き、神水が体内に流れ込む。すると、体を襲っていた痛みや、生命が流れ出していくような倦怠感と寒気が吹き飛び、まるで体の中心に火を灯したような熱が全身を駆け巡った。愛子は、寒い冬場に冷え切った体で熱々の温泉にでも浸かった時のような快感を覚え、体を震わせる。流石、神水。魔物の血肉を摂取することによる肉体崩壊すら防ぐ奇跡の水だ。効果は抜群である。
「先生」
「……」
「先生?」
「……」
「おい! 先生!」
「ふぇ!?」
ハジメは愛子に容態を聞くため呼びかけるが、ハジメを見つめたままボーとして動かない愛子。業を煮やしたハジメが、軽く頬を叩きながら強めに呼び掛けると何とも可愛らしい声を上げて正気を取り戻した。
「体に異変は? 違和感はないか?」
「へ? あ、えっと、その、あの、だだ、だ、大丈夫ですよ。違和感はありません、むしろ気持ちいいくらいで……って、い、今のは違います! 決して、その、あ、ああれが気持ち良かったということではなく、薬の効果がry」
「そうか。ならいい」
シアはとっくにカービィにより回復していたが
「ハ、ハジメさん……」
「シア、どうし……」
「私も……口移しぃ……ぐっ……がいいですぅ……」
「お、お前って奴は……」
痛みで脂汗を流しながら、欲望をダダ漏れにするシア。転んでもタダでは起きないぜ! と言わんばかりの要求に、流石のハジメも呆れを通り越して感心する。流石に、必要もないのに公衆の面前でわざわざ口移しする気にもなれず、最近シアに甘いユエからの無言の訴えも無視して容器をシアの口に無理やり突っ込んだ。
「むぐっ!? ……コクコク……ぷはっ……うぅ~、ハジメさんのいけず……先生さんが羨ましいですぅ……」
「ハジメ……メッ」
「ふぇ!? シ、シアさん、私は、違いますよ! あれは救命活動です! シアさんが求めるものとは意味が違いますからね! 私、先生ですからっ!」
ハジメ「清水はまだ生きているか?」
「清水君! ああ、こんな……ひどい」
清水の胸にはシアと同じサイズの穴がポッカリと空いていた。出血が激しく、大きな血溜まりが出来ている……おそらく、もって数分だろう。
「し、死にだくない……だ、だずけ……こんなはずじゃ……ウソだ……ありえない……」
「南雲君! カービィさんさっきの薬を! 今ならまだ! お願いします!」
カービィ「わ、わかったけどいいの?」
カービィは清水にマキシマムドリンクを飲ませて、まぁまぁ回復させた。
カービィは今日のおやつにマキシムトマトを食べたので回復アイテムはこれしかなかった。
「助けたいのか、先生? 自分を殺そうとした相手だぞ? いくら何でも〝先生〟の域を超えていると思うけどな」
「確かに、そうかもしれません。いえ、きっとそうなのでしょう。でも、私がそういう先生でありたいのです。何があっても生徒の味方、そう誓って先生になったのです。だから、南雲君……」
「清水。聞こえているな? 俺にはお前を救う手立てがある」
「!」
「だが、その前に聞いておきたい」
「……」
「……お前は……敵か?」
清水は、その質問に一瞬の躊躇いもなく首を振った。そして、卑屈な笑みを浮かべて、命乞いを始めた。
「て、敵じゃない……お、俺、どうかしてた……もう、しない……何でもする……助けてくれたら、あ、あんたの為に軍隊だって……作って……女だって洗脳して……ち、誓うよ……あんたに忠誠を誓う……何でもするから……助けて……」
ハジメは確信した。愛子の言葉は、もう決して清水の心には届かないということを。そして、清水は必ず自分達の敵になると。故に決断した。一瞬、愛子に視線を合わせる。カービィも愛子もハジメを見ていたようで目が合う。そして、その一瞬で、カービィも愛子もハジメが何をするつもりなのか察したようだ。血相を変えてハジメを止めようと飛び出した。
愛子「ダメェ!」
カービィ「ハジメ!?」
が、ハジメの方が圧倒的に早かった。
ドパンッ! ドパンッ!
「ッ!?」
「……どうして?」
それは愛子だった。呆然と、死出の旅に出た清水の亡骸を見つめながら、そんな疑問の声を出す。ハジメは、清水から視線を逸らして愛子を見た。同時に、愛子もまたハジメに視線を向ける。その瞳には、怒りや悲しみ、疑惑に逃避、あらゆる感情が浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。
「敵だからな」
そんな愛子の疑問に対するハジメの答えは実に簡潔だった。
「そんな! 清水君は……」
「改心したって? 悪いけど、それを信じられるほど俺はお人好しではないし、何より自分の眼が曇っているとも思わない」
「だからって殺す事なんて! 王宮で預かってもらって、一緒に日本に帰れば、もしかしたら……可能性はいくらだって!」
「……どんな理由を並べても、先生が納得しないことは分かっている。俺は、先生の大事な生徒を殺したんだ。俺を、どうしたいのかは先生が決めればいい」
「……そんなこと」
「〝寂しい生き方〟。先生の言葉には色々考えさせられたよ。でも、人の命が酷く軽いこの世界で、敵対した者には容赦しないという考えは……変えられそうもない。変えたいとも思わない。俺に、そんな余裕はないんだ」
「南雲君……」
「これからも俺は、同じことをする。必要だと思ったその時は……いくらでも、何度でも引き金を引くよ。それが間違っていると思うなら……先生も自分の思った通りにすればいい……ただ、覚えておいてくれ。例え先生でも、クラスメイトでも……敵対するなら、俺は引き金を引けるんだってことを……」
「南雲君! ……先生は……先生は……」
言葉は続かなくとも、〝先生〟の矜持がハジメの名を呼ぶ。ハジメは、少し立ち止まると肩越しに愛子に告げる。
「……先生の理想は既に幻想だ。ただ、世界が変わっても俺達の先生であろうとしてくれている事は嬉しく思う……出来れば、折れないでくれ」
カービィたちはそれを黙って見ていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「シア。少し気になったんだが……どうしてあの時、迷わず飛び込んだんだ? 先生とは、大して話してないだろ? 身を挺するほど仲良くなっていたとは思えないんだが……」
「それは……だって、ハジメさんが気にかける人ですから」
「……それだけか」
「? ……はい、それだけですけど?」
「……そうか」
「シア。何かして欲しい事はあるか?」
「へ? して欲しい事……ですか?」
「ああ。礼というか、ご褒美と言うか……まぁ、そんな感じだ。もちろん出来る範囲でな?」
「では、私の初めてをもらっ『却下だ』……なぜです? どう考えても、遂にデレ期キター!! の瞬間ですよね? そうですよね? 空気読んで下さいよ!」
「〝出来る範囲で〟と、そう言っただろうが」
「十分出来る範囲でしょう! さり気なく私を遠ざけてユエさんとはしてるくせに! 知っているのですからね! お二人の情事を知るたびに胸に去来する虚しさときたら! うぅ、フューレンに着いたら、また私だけお使いにでも行かせて、その隙に愛し合うんでしょ? ぐすっ、また、私だけ……一人ぼっちで時間を潰すんですね……ツヤツヤしているユエさんを見て見ぬふりしなきゃなんですね……ちくしょうですぅ……」
「いや、おまっ、何も泣かなくても……俺が惚れているのはユエなんだから、お前の事は、まぁ、大事な仲間だとは思うが恋情はなぁ……そんな相手を抱くっつうのは……」
「……ぐすっ……ハジメさんのヘタレ!」
「……おい」
「根性なし! 内面乙女のカマ野郎! 甲斐性なし! ムッツリスケベ!」
「ぷふっ……数万規模の魔物を殲滅した男が……ヘタレ……ぷふっ」
「意外とご主人様は純情なのじゃなぁ、まだ関係をもっておらんかったとは……お尻の初めてを奪われた妾の方が一歩リードじゃな……」
「……俺が、心から欲しいと思うのは、ユエ、お前だけなんだ。シアの事は嫌いじゃないし、仲間としては大事にしたいとは思うが……ユエと同列に扱うつもりはない。俺はな、ユエに対して独占欲を持ってる。どんな理由があろうと、他の男が傍にいるなんて許容出来そうにない。心が狭いと思うかもしれないし、勝手だとも思うかもしれないが……ユエも同じように思ってくれたらと、そう思う。だから、例え相手がシアでも、他の女との関係を勧めるというのは勘弁してくれないか?」
「……ハジメ」
メタナイト「いちゃつくのは(どうでも)いいがそろそろ着くぞ。」
カービィ「そーだね」
「……完全に忘れてますよね……私のこと……私へのご褒美のお話だったはずなのに……」
「……ハジメ、ごめんなさい。でも、シアも大切……報いて欲しいと思う。だから、町で一日付き合うくらいは……ダメ?」
「ユエさぁ~ん」
なお、ハジメにシアの事を頼むユエ。シアは、頭を撫でながら心を砕いてくれるユエに甘えるようにグリグリと顔を押し付ける。ハジメは、その様子を見て苦笑いしながら答えた。
「別に、それくらい頼まれなくても構わないさ。というか、ユエに頼まれたからってんじゃシアも微妙だろ? シアが頼むなら、それくらいは付き合うよ」
「ハジメさん……いえ、なりふり構っていられないので、既成事実が作れれば何だっていいんですけどね!」
「……ホントお前って奴は……」
「まぁ、まだそれは無理そうなので、取り敢えず好感度稼ぎにデートで我慢します。フューレンに着いたら、観光区に連れて行って下さいね?」
「ああ、わかったよ」
マホロアたちは先にローアで帰っている。
新たな仲間、変態の竜人族ティオとマホロア一行が加わり、一行は中立商業都市フューレンへと向かう。
好評だったり、続けて欲しいと、いう声があれば確実に続きます!
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