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グリューエン大砂漠
赤銅色の世界。
【グリューエン大砂漠】は、まさにそう表現する以外にない場所だった。砂の色が赤銅色なのはもちろんだが、砂自体が微細なのだろう。常に一定方向から吹く風により易々と舞い上げられた砂が大気の色をも赤銅色に染め上げ、三百六十度、見渡す限り一色となっているのだ。
また、大小様々な砂丘が無数に存在しており、その表面は風に煽られて常に波立っている。刻一刻と表面の模様や砂丘の形を変えていく様は、砂丘全体が〝生きている〟と表現したくなる程だ。照りつける太陽と、その太陽からの熱を余さず溜め込む砂の大地が強烈な熱気を放っており、四十度は軽く超えているだろう。舞う砂と合わせて、旅の道としては最悪の環境だ。
もっとも、それは〝普通の〟旅人の場合である。
「……外、すごいですね……普通の馬車とかじゃなくて本当に良かったです」
「全くじゃ。この環境でどうこうなるわけではないが……流石に、積極的に進みたい場所ではないのぉ」
いまカービィはロボボアーマーを運転しているのだが、スージーに強化してもらった。
モードはアイスホイールモードだ。
「前に来たときとぜんぜん違うの! とっても涼しいし、目も痛くないの! カービィはすごいの!」
「なぁ、しらさ……香織。ハジメパパって言うのは止めてくれよ。何か、物凄くむず痒いんだ」
「? でも、ミュウちゃんには普通に呼ばれてるよね?」
「いや、ミュウはもういいんだ。ただ、同級生からパパと呼ばれるのは流石に抵抗が……」
ちなみに、ハジメが香織を名前呼びしているのは、香織に懇願された結果だ。曰く、皆名前なのに、私だけ苗字とかズルイ! と。
「そう? なら呼ばないけど……でも、私もいつか子供が出来たら……その時は……」
ハジメをチラチラと見ながら頬を真っ赤に染めてそんな事を言う香織。車内に、ミュウを除いて妙な雰囲気が漂う。ハジメが聞こえないふりをする中、香織に答えたのはユエだった。
「……残念。先約は私。約束済み」
「!? ……ハジメくん、どういうこと?」
「……別におかしな話でもないだろう。まだまだ遠い将来の話だし」
「……ふふ、ご両親への紹介も約束済み」
「!?」
「……明るい家族計画は万全」
「!?」
「……ハジメと故郷デートも」
「!?」
ユエの猛攻が止まらない! 香織の胸に、次々と言葉の杭が打たれていく。だが、香織とて、ここのままやられっぱなしの女ではない。絶望的な状況でもハジメの生存を信じぬき、明らかに特別な絆をもつユエに向かって正面から挑んだ胆力を持っているのだ。ユエの言葉が途切れた一瞬の隙をついて反撃に転じる!
「わ、私は、ユエの知らないハジメくんを沢山知ってるよ! 例えば、ハジメくんの将来の夢とか趣味とか、その中でも特に好きなジャンルとか! ユエは、ハジメくんが好きなアニメとか漫画とか知ってる?」
「むっ……それは……でも、今は、関係ない。ここには、そういうのはない。日本に行ってから教えてもらえば……」
「甘いよ。今のハジメくんを見て。どう見てもアニメキャラでしょ?」
「グフッ!?」
香織とユエの戦いのはずが、何故かハジメにダメージが入る。
「白髪に眼帯、しかも魔眼……確か、ハジメくんが好きなキャラにもいたはず……武器だって、あのクロスビット? はファ○ネルがモデルだろうし……あっ、でもハジメくんはダブ○オーも好きだったから、GNビッ○かな? どっちしろ、今のハジメくんも十分にオタクなんだよ」
「ガハッ!? か、香織……」
「む、むぅ……ハジメの武器がそこから来ていたなんて」
「好きな人の好きなものを知らないで勝ち誇れる?」
「……香織……いい度胸……なら私も教えて上げる。ハジメの好きなこと……ベッドの上での」
「!? ……な、な、なっ、ベッドの上って、うぅ~、やっぱりもう……」
「ふふふ……私との差を痛感するがいい」
道中、ことあるごとに火花を散らすユエと香織に、他のメンバーは既にスルー気味だ。
もちろんカービィが運転手なのでカービィは当然の如くスルーする。
「……う~、ユエお姉ちゃんも香織お姉ちゃんもケンカばっかり! なかよしじゃないお姉ちゃん達なんてきらい!」
そう言って、ミュウは香織の膝から移動すると、後部座席に座るシアの膝に座り込んでプイッと顔を背けてしまった。途端に、オロオロしだすユエと香織。流石に、四歳の幼女から面と向かって嫌いと言われるのは堪えるらしい。
「もうっ、お二人共、ミュウちゃんの前でみっともないですよ。というか、教育に悪いです。ハジメさんの事で熱が入るのは私も分かりますけど、もう少し自重して下さい」
「! ……不覚。シアに注意されるなんて……」
「ご、ごめんなさい。ミュウちゃん、シア」
シアから注意されるというまさかの事態に、肩を落とす二人。
「ん? なんじゃ、あれは? ご主人様よ。三時方向で何やら騒ぎじゃ」
「まるで、食うべきか食わざるべきか迷っているようじゃのう?」
「まぁ、そう見えるな。そんな事あんのか?」
「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが……」
「っ!? つかまって!モードチェンジ!ジェットモード!」
ロボボアーマーはなんと空を飛び回避した。
カービィたちが飛んでいると
「ハジメくん! あれ!」
「……白い人?」
「お願い、ハジメくん。あの場所に……私は〝治癒師〟だから」
「! ……これって……」
フードを取りあらわになった男の顔は、まだ若い二十歳半ばくらいの青年だった。だが、香織が驚いたのは、そこではなく、その青年の状態だった。苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかのように血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。明らかに尋常な様子ではない。ただの日射病や風邪というわけではなさそうだ。
ハジメは、まるでウイルス感染者のような青年の傍にいる事に危機感を覚えたが、治癒の専門家が診察しているので大人しく様子を見ることにした。香織は〝浸透看破〟を行使する。これは、魔力を相手に浸透させることで対象の状態を診察し、その結果を自らのステータスプレートに表示する技能である。
香織は、片手を青年の胸に置き、もう片手に自分のステータスプレートを持って診察用の魔法を行使した。その結果……
「……魔力暴走? 摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」
「香織? 何がわかったんだ?」
「う、うん。これなんだけど……」
そう言って香織が見せたステータスプレートにはこう表示されていた
====================================
状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可
症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血
原因:体内の水分に異常あり
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「おそらくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているみたい……しかも、外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない……このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も……。天恵よ ここに回帰を求める 〝万天〟」
香織はそう結論を下し、回復魔法を唱えた。使ったのは〝万天〟。中級回復魔法の一つで、効果は状態異常の解除だ。鈴達にかけられた石化を解いた術である。
しかし……
「……ほとんど効果がない……どうして? 浄化しきれないなんて……それほど溶け込んでいるということ?」
カービィ「だったらこれ!コピー能力アーティスト!」
カービィはマキシムトマトを描いて青年にあげた。
徐々に、青年の呼吸が安定してきた。体の赤みも薄まり、出血も収まってきたようだ。香織は、〝廻聖〟の行使をやめると初級回復魔法〝天恵〟を発動し、青年の傷ついた血管を癒していった。
「取り敢えず……今すぐ、どうこうなることはないと思うけど、根本的な解決は何も出来てない。魔力を抜きすぎると、今度は衰弱死してしまうかもしれないから、圧迫を減らす程度にしか抜き取っていないの。このままだと、また魔力暴走の影響で内から圧迫されるか、肉体的疲労でもそのまま衰弱死する……可能性が高いと思う。勉強した中では、こんな症状に覚えはないの……ユエとティオは何か知らないかな?」
「香織、念のため俺達も診察しておいてくれ。未知の病だというなら空気感染の可能性もあるだろ。まぁ、魔力暴走ならミュウの心配は無用だが」
「うん、そうだね」
ハジメの言葉に頷いて、香織が全員を調べたが特に異常は見当たらなかった。その為、おそらく呼吸するだけで周囲の者にも感染するということはないようだと、ハジメ達は胸を撫で下ろした。
そうこうしていると、青年が呻き声を上げ、そのまぶたがふるふると震えだした。お目覚めのようだ。ゆっくりと目を開けて周囲を見わたす青年は、心配そうに自分を間近で見つめる香織を見て「女神? そうか、ここはあの世か……」などとほざきだした。
そして、今度は違う理由で体を熱くし始めたので、いい加減、暑さと砂のウザさにうんざりしていたハジメは、イラッとした表情を隠しもせずに、香織に手を伸ばそうとしている青年の腹を踏みつけた。
「おふっ!?」
「ハ、ハジメくん!?」
体をくの字に曲げて呻き声を上げる青年と驚いたように声を上げる香織を尻目に、ハジメは、青年に何があったのか事情を聞く。
青年の着ているガラベーヤ風の衣服や外套は、【グリューエン大砂漠】最大のオアシスである【アンカジ公国】の特徴的な服装だったとハジメは記憶している。〝無能〟と呼ばれていたとき、現実逃避気味に調べたのだ。青年が、アンカジで何かに感染でもしたのだというなら、これから向かうはずだった場所が危険地帯に変わってしまう。是非とも、その辺のことを聞いておきたかった。
ハジメの踏み付けで正気を取り戻した青年は、自分を取り囲むハジメ達と背後の見たこともない黒い物体に目を白黒させて混乱していたが、香織から大雑把な事情を聞くと、ハジメ達が命の恩人であると理解し、頭を下げて礼を言うと共に事情を話し始めた。
その話を聞きながら、ハジメは、どこに行ってもトラブルが付き纏うことに、よもや神のいたずらじゃあないだろうな? と若干疑わしそうに赤銅色の空を仰ぎ見るのだった。
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