よかったら感想、投票お願いします
なんと感想100件越えました!
さらにお気に入りが100を超えました!
さらにさらに総合評価が100を超えました!
そしてUAが20000を超えました!
ありがとうございます!
これからも感想、評価、応援をぜひお願いします!
現在、領主のランズィと護衛や付き人多数、そしてハジメたちはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。二百メートル四方どころかその三倍はありそうな平地が広がっている。普段は、とある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。
未だ、半信半疑のランズィは、この非常時に謀ったと分かれば即座に死刑にしてやると言わんばかりの眼光でハジメ達を睨んでいた。藁をも掴む思いで水という生命線の確保を任せたが、常識的に考えて不可能な話なので、ランズィの眼差しも仕方のないものだ。
もっとも、その疑いを孕んだ眼差しは、ユエが魔法を行使した瞬間驚愕一色に染まった。
「〝壊劫〟」
前方の農地に頭上に向けて真っ直ぐにつき出された右手の先に、黒く渦巻く球体が出現する。その球体は、農地の上で形を変え、薄く四角く引き伸ばされていき、遂に二百メートル四方の薄い膜となった。そして、一瞬の停滞のあと、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事もなかったかのように大地を押しつぶした。
ハジメがチラリとランズィ達を見ると、お付の人々も含めて全員が、顎が外れないか心配になるほどカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。衝撃が強すぎて声が出ていないようだが、全員が内心で「なにぃーー!?」と叫んでいるのは明白だ。
神代魔法を半分程の出力で放ったユエは、「ふぅ」と息を吐く。魔力枯渇というほどではないが、一気に大量に消費したことに変わりはなく僅かだが倦怠感を感じたのだ。ウルでの戦争時のように魔晶石からストックしてある魔力を取り出してもいいのだが、この後、【グリューエン大火山】に挑むことを考えれば、出来るだけ魔晶石の魔力は温存しておきたい。一応カービィからマキシムトマトを貰っておいた。以前カービィにこっそり夜に頼んでマキシムトマトを貰ったが体力だけでなく魔力まで全回復することがわかった。また、戦争時と違い時間はあるので、ハジメはもう一つの魔力補給方法を実行する。
フラリと背後に体を倒れさせるユエだったが、体を支えようともがく仕草は見せない。自分からしたことであるし、そんな事をしなくても倒れないことはわかりきっているからだ。案の定、ポスンと音を立てて、ユエの体はハジメの腕の中に収まった。
ハジメは、ユエを背後から少しだけギュッと抱きしめると、そのまま抱き上げて、今度は正面から抱きしめた。ユエも、嬉しそうに頬を緩め、ハジメの首に腕を回すと抱きしめ返す。
そして、
「……いただきます」
そのままハジメの首筋に噛み付いた。
カプッ! チュ~、
ハジメの体から血が流れ出していく。ユエは、うっとりと瞳を潤ませながら、何度も何度もハジメの首筋に舌を這わせた。普段から、その見た目に反してどこか色気を漂わせているユエであったが、ハジメから吸血するとそれが顕著になる。体全体からフェロモンでも放出しているのではないかと思うほど、妖艶な雰囲気になるのだ。
ハジメから血をもらい〝血力変換〟により魔力に変換したユエは、そっと、ハジメの首筋から体を離すと、一度舌舐りし、今度はハジメの唇にキスをした。熱を孕んだ瞳で見つめ合うハジメとユエに、ゴホンッ! と咳払いが届く。領主ランズィと前屈みのお供達だ。ハジメとユエは、しまったという苦笑いをすると……向きを変えて再度キスをしだした。
「いやいやいや、やるなら見えないようにやれということではなくてだな……今のは何だとか、血を吸うってどういう事だとか色々あるが、取り敢えず今やるべきことをやって欲しいという意味でだな……というか分かるだろ!?」
領主のツッコミに仕方ないと肩を竦めたハジメとユエは、その仕草にイラっときているランズィ達を尻目に仕事に取り掛かった。
ハジメは、貯水池に降りると、四輪を〝宝物庫〟から取り出し走り出す。四輪についている整地機能で土中の鉱物を〝鉱物分離〟で取り出し、水が吸収されないように貯水池の表面を金属コーティングしているのだ。そして、コーティングを終えて戻ってくると、今度はユエが腕を突き出し、即席の貯水池に水系魔法を行使した。
「〝虚波〟」
水系上級魔法の一つで、大波を作り出して相手にぶつける魔法だ。普通の術師では、大波と言っても、せいぜい十から二十メートル四方の津波が発生する程度だが、ユエが行使すると桁が変わる。横幅百五十メートル高さ百メートルの津波が虚空に発生し、一気に貯水池へと流れ込んだ。この貯水池に貯められる水の総量は約二十万トン。途中、何度かハジメから吸血をし、魔力を補給して半分ほど溜め込んだ。だが、ハジメの血量にも限界はある。
流石にこれ以上、血を吸われては貧血になるという辺りで、現場にシアが飛び込んで来た。手には、香織から預かった魔晶石がある。少量ずつとは言え、数千人規模の患者からドレインした魔力だ。それとマキシムトマトも渡された。魔晶石には相当な量が蓄えられている。香織やカービィが、医療院や施設に趣いてからまだ、二時間も経っていない。その短時間で、それだけの人間に処置を施したという点では、確かに、香織も十分にチートである。
シアが、再び、香織とカービィの手伝いに戻ったと同時に、ユエは〝虚波〟の連発を再開する。ほどなくして、二百メートル四方の貯水池は、汚染されていない新鮮な水でなみなみと満たされた。
「……こんなことが……」
ランズィは、あり得べからざる事態に呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。言葉もないようだ。
「取り敢えず、これで当分は保つだろう。あとは、オアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればいい」
「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが……ありがとう。心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」
ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、ハジメ達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。
ハジメ達は、そのままオアシスへと移動する。
ハジメが、眉をしかめてオアシスの一点を凝視する。様子の変化に気がついたユエがハジメに首を傾げて疑問顔を見せた。
「いや、何か、今、魔眼石に反応があったような……領主。調査チームってのはどの程度調べたんだ?」
「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十メートルが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない」
「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるのか?」
「? いや。オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある……結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」
「……へぇ。じゃあ、あれは何なんだろうな」
アンカジ公国自慢のオアシスを汚され、悔しそうに拳を握り締める姿は、なるほど、ビィズの父親というだけあってそっくりである。そんなランズィを尻目に、ハジメは、口元を歪めて笑った。ハジメの魔眼石には、魔力を発する〝何か〟がオアシスの中央付近の底に確かに見えていたのだ。
あるはずのないものがあると言われランズィ達が動揺する。ハジメは、オアシスのすぐ近くまで来ると〝宝物庫〟から五百ミリリットルのペットボトルのような形の金属塊を取り出し直接魔力を注ぎ込んだ。そして、それを無造作にオアシスへと投げ込んだ。
凄まじい爆発音と共にオアシスの中央で巨大な水柱が噴き上がった。再び顎がカクンと落ちて目を剥くランズィ達。
「ちっ、意外にすばしっこい……いや、防御力が高いのか?」
ハジメはそんなことを言いながら、今度は十個くらい同じものを取り出しポイポイとオアシスに投げ込んでいく。そして、やっぱり数秒ほどすると、オアシスのあちこちで大爆発と巨大な水柱が噴き上がった。
ハジメが投げ込んだのは、いわゆる魚雷である。この先、エリセン経由で向かう事になる七大迷宮の一つ【メルジーネ海底遺跡】は海の底にあるらしいので(ミレディ情報)、海用の兵器と言えば魚雷だろうと試作品をいくつか作っておいたのである。せっかくだし試してみようと実験がてら放り込んでみたのだ。結果として、威力はそれなりだが、追尾性と速度がいまいち足りないとわかった。要改良である。
ちなみに、この魚雷、〝特定感知〟や〝追跡〟を生成魔法により付加された鉱石を組み込んで作成されており、一度、敵をロックオンすると後は自泳して追いかけ、接触により爆発する。つまり、水中の何かは、現在、絶賛未知の兵器に追い掛け回されているということだ。
「おいおいおい! ハジメ殿! 一体何をやったんだ! あぁ! 桟橋が吹き飛んだぞ! 魚達の肉片がぁ! オアシスが赤く染まっていくぅ!」
「ちっ、まだ捕まらねぇか。よし、あと五十個追加で……」
オアシスの景観が徐々に悲惨な感じで変わっていく様にランズィが悲鳴を上げるが、ハジメはお構いなしに不穏なことを呟いて、進み出ようとする。ランズィは部下と共にハジメにしがみついて、必死に阻止しようとした。
ハジメの魔眼に映る〝何か〟を知らないランズィから見れば、いきなりハジメが、正体不明の物体を投げ込んだ挙句、オアシスにある桟橋などの設備や生息する淡水魚などが次々と爆破されていくという状況なのだ。結界の反応から、ハジメが悪意なく破壊活動を行っているという訳のわからない状況で、流石のランズィも困惑が隠せない。とにかく、オアシスを守ろうと必死である。
ハジメは、しがみつくランズィ達を鬱陶しげに振り払って進もうとした。が、その直後、
シュバ!
風を切り裂く勢いで無数の水が触手となってハジメ達に襲いかかった。咄嗟に、ハジメはドンナー・シュラークで迎撃し水の触手を弾き飛ばし、ドロッチェがアイスレーザーで凍らせ、メタナイトが切断する。
何事かと、オアシスの方を見たランズィ達の目に、今日何度目かわからない驚愕の光景が飛び込んできた。ハジメの度重なる爆撃に怒りをあらわにするように水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり、十メートル近い高さの小山になったのである。
「なんだ……これは……」
ランズィの呆然としたつぶやきが、やけに明瞭に響き渡った。
オアシスより現れたそれは、体長十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。スライム……そう表現するのが一番わかりやすいだろう。
だが、サイズがおかしい。通常、スライム型の魔物はせいぜい体長一メートルくらいなのだ。また、周囲の水を操るような力もなかったはずだ。少なくとも触手のように操ることは、自身の肉体以外では出来なかったはずである。
「なんだ……この魔物は一体何なんだ? バチェラム……なのか?」
呆然とランズィがそんな事を呟く。バチェラムとは、この世界のスライム型の魔物のことだ。
「まぁ、何でもいいさ。こいつがオアシスが汚染された原因だろ? 大方、毒素を出す固有魔法でも持っているんだろう」
「……確かに、そう考えるのが妥当か。だが倒せるのか?」
「あぁ、そんなこともあろうかとメンバー補充しておいた。
そこにはカービィを除くマホロア一行がいた。
ハジメとランズィが会話している間も、まるで怒り心頭といった感じで触手攻撃をしてくるオアシスバチュラム。ユエは氷結系の魔法で、ティオは火系の魔法で対処している。ハジメも、会話しながらドンナー・シュラークで迎撃しつつ、核と思しき赤い魔石を狙い撃つが、魔石はまるで意思を持っているかのように縦横無尽に体内を動き回り、中々狙いをつけさせない。そこでマルクがアローアローで数こ攻撃をする。そして狙いが定まってきたらタランザが動きを制限しさらにドロッチェがアイスレーザーで凍らす。
ハジメの眼はまるで鷹のように鋭く細められ、魔石の動きを完全に捉えているようだ。そして……
ドパンッ!!
乾いた破裂音と共に空を切り裂き駆け抜けた一条の閃光は、カクっと慣性を無視して進路を変えた魔石を、まるで磁石が引き合うように、あるいは魔石そのものが自ら当たりにいったかのように寸分違わず撃ち抜いたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
好評だったり、続けて欲しいと、いう声があれば確実に続きます!
感想はログインしていなくてもかけるのでぜひ、よろしければお願いします。
評価はログインしていないと出来ないと思いますが気に入っていただけたら是非お願いします。