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火炎の砲撃が全てユエの超重力の渦に呑み込まれると、その射線上に襲撃者の正体が見えた。
それは、雄牛だ。全身にマグマを纏わせ、立っている場所もマグマの中。鋭い二本の曲線を描く角を生やしており、口から呼吸の度に炎を吐き出している。耐熱性があるにも程があると、思わずツッコミを入れたくなる魔物だった。
マグマ牛は、自身の固有魔法であろう火炎砲撃をあっさり無効化されたことに腹を立てたのか、足元のマグマをドバッ! ドバッ! と足踏みで飛び散らせながら、突進の構えを取っている。
そんなマグマ牛をマジックカービィは赤いマントを取り出して誘導してその先にいるマルクにコテンパンにされた。
その後、階層を下げる毎に魔物のバリエーションは増えていった。しかしカービィたちの敵ではなかった。
そして、なにより厄介なのは、刻一刻と増していく暑さだ。
カービィ「そろそろアイスだけじゃきついね。コピー能力クリエイト『アイス、アイス、アイス、アイス』!」
カービィはアイスの力を4倍にする。
「はぅあ~~、涼しいですぅ~、生き返りますぅ~」
「……ふみゅ~」
女の子座りで崩れ落ちたユエとシアが、目を細めてふにゃりとする。タレユエとタレシアの誕生だ。
ハジメは、内心そんな二人に萌えながら〝宝物庫〟からタオルを取り出すと全員に配った。
「ユエ、シア、だれるのはいいけど、汗くらいは拭いておけよ。冷えすぎると動きが鈍るからな」
「……ん~」
「了解ですぅ~」
間延びした声で、のろのろとタオルを広げるユエとシアを横目に、ティオがハジメに話かける。
「ご主人様やカービィたちはは、まだ余裕そうじゃの?」
メタナイト「我々は様々な気候に慣れているからな。」
ハジメ「ティオほどじゃない。流石に、この暑さはヤバイ。カービィがいなければもっといい冷房系のアーティファクトを揃えておく必要があった……」
「ふむ、ご主人様でも参る程ということは……おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」
「コンセプト?」
「うむ。ご主人様から色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ? 神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。例えば、ご主人様が話してくれた【オルクス大迷宮】は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。【ライセン大迷宮】は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。この【グリューエン大火山】は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」
「……なるほどな……攻略することに変わりはないから特に考えたことなかったが……試練そのものが解放者達の〝教え〟になっているってことか」
現在、【グリューエン大火山】たぶん、きっと五十層くらい。
具体的には、ハジメ達は宙を流れる大河の如きマグマの上をカービィが凍らせて溶けないうちに急いで渡っている。
「あっ、ハジメさん。またトンネルですよ」
「そろそろ、標高的には麓辺りじゃ。何かあるかもしれんぞ?」
シアが指差した方向を見れば、確かに、ハジメ達が流されているマグマが壁に空いた大穴の中に続いていた。マグマ自体に照らされて下方へと続いていることが分かる。今までも、洞窟に入る度に階層を下げてきたので、普通に階段を使って降りるよりショートカットになっているはずだ。
「ちっ、やっぱり出たか」
ハジメは舌打ちすると同時にドンナーを抜き、躊躇いなく引き金を引いた。周囲に轟く炸裂音。それが三度響くと共に三条の閃光が空を切り裂いて目標を違わず撃破する。ハジメ達に、襲いかかってきたのは翼からマグマを撒き散らすコウモリだった。
ドパァン!
ハジメはフリーズカービィの力を借りて作った『フリーズドンナー』で敵を凍らせて撃ち抜く。
このマグマコウモリは、一体一体の脅威度はそれほど高くない。かなりの速度で飛べることとマグマ混じりの炎弾を飛ばすくらいしか出来ない。ハジメ達にとっては、雑魚同然の敵である。
だが、マグマコウモリの厄介なところは、群れで襲って来るところだ。一匹見つけたら三十匹はいると思え、という黒いGのような魔物で、岩壁の隙間などからわらわらと現れるのである。
そこでカービィはまとめて攻撃をする。
「コピー能力ミックス!アイスボム!」
カービィはまるでイナズマ○レブンエターナル○リザードのようにボムを撃った。
するとガラスのように砕けていった。
ハジメ「エターナルブリザー○かよ!」
一塊となってハジメ達に迫ってきたマグマコウモリは、途中で二手に分かれると、前方と後方から挟撃を仕掛けてきた。いくら一体一体が弱くとも、一つの巨大な生き物を形取れる程の数では、普通は物量で押し切られるだろう。
だが、ここにいるのはチート集団。単純な物量で押し切れるほど甘い相手でないことはウルの町で大地の肥やしとなった魔物達が証明済みだ。
ハジメは、〝宝物庫〟からフリーズメツェライを取り出すと、腰だめに構えて、その怪物のトリガーを引いた。
ドゥルルルルルル!!
マホロア「アイスギガントハンマー!」
マルク「マルク砲、アローアロー」
タランザ「操りの術」
ドロッチェ「アイスレーザー!」
デデデ大王「鬼ごろしデデデハンマー!爆裂デデデハンマー投げ(ブーメラン)!」
バンダナワドルディ「ワド百烈突き!ワド百烈突き!ワドコプター!」
アドレーヌ「クラッコ!アイスドラゴン!」
リボン「クリスタルアタック!」
スージー「リレインバーアタック!」
みんなが好き勝手に暴れているので敵は全滅だ。
そして
明らかに今までと雰囲気の異なる場所に、警戒を最大にするハジメ達。
「……あそこが住処?」
ユエが、チラリとマグマドームのある中央の島に視線をやりながら呟く。
「階層の深さ的にも、そう考えるのが妥当だろうな……だが、そうなると……」
「最後のガーディアンがいるはず……じゃな? ご主人様よ」
「ショートカットして来たっぽいですし、とっくに通り過ぎたと考えてはダメですか?」
ユエ達の援護をもらって、一直線に中央の島へと迫ったハジメは、〝空力〟による最後の跳躍を行い飛び移ろうとした。
だが、その瞬間、
「ゴォアアアアア!!!」
「ッ!?」
そんな腹の底まで響くような重厚な咆哮が響いたかと思うと、宙を飛ぶハジメの直下から大口を開けた巨大な蛇が襲いかかってきた。
全身にマグマを纏わせているせいか、周囲をマグマで満たされたこの場所では熱源感知にも気配感知にも引っかからない。また、マグマの海全体に魔力が満ちているようなので魔力感知にも引っかからなかったことから、完全な不意打ちとなった巨大なマグマ蛇の攻撃。
しかし、ハジメは超人的な反応速度で体を捻ると、辛うじてその顎門による攻撃を回避した。
一瞬前までハジメがいた場所を、マグマ蛇がバクンッ! と口を閉じながら通り過ぎる。ハジメは、空中で猫のように体を反転させながら、銃口を通り過ぎるマグマ蛇の頭に照準し発砲した。必殺の破壊力を秘めた閃光が狙い違わずマグマ蛇の頭を捉え、弾き飛ばす。
「なにっ!?」
しかし、上がった声はマグマ蛇の断末魔ではなく、ハジメの驚愕の声だった。
当然、その原因は、マグマ蛇にある。なんと、マグマ蛇の頭部は確かに弾け飛んだのだが、それはマグマの飛沫が飛び散っただけであり、中身が全くなかったのだ。今までの【グリューエン大火山】の魔物達は、基本的にマグマを身に纏ってはいたが、それはあくまで纏っているのであって肉体がきちんとあった。断じて、マグマだけで構成されていたわけではない。
ハジメは直ぐに立ち直ると、物は試しにと頭部以外の部分を滅多撃ちにした。幾条もの閃光が情け容赦なくマグマ蛇の体を貫いていくが、やはり、どこにも肉体はなかった。どうやら、このマグマ蛇は、完全にマグマだけで構成されているらしい。
カービィ「だったらボクに任せて!コピー能力クリエイト『ミラクルビーム、スノーボール』!」
カービィはマグマ蛇を凍らせて砕く。
しかしどんどん数は増えていく。
「おいおい、魔石が吹き飛んだ瞬間は確認したぞ? 倒すことがクリア条件じゃないのか?」
ハジメが、訝しげに表情を歪める。ハジメは、ティオのブレスがマグマ蛇に到達した瞬間から〝瞬光〟を発動し、跳ね上がった動体視力で確かにマグマ蛇の中に魔石がありブレスによって消滅した瞬間を確認したのである。
ハジメが迷宮攻略の方法に疑問を抱いていると、シアが中央の島の方を指差し声を張り上げた。
「ハジメさん! 見て下さい! 岩壁が光ってますぅ!」
「なに?」
言われた通り中央の島に視線をやると、確かに、岩壁の一部が拳大の光を放っていた。オレンジ色の光は、先程までは気がつかなかったが、岩壁に埋め込まれている何らかの鉱石から放たれているようだ。
ハジメが〝遠見〟で確認すると、保護色になっていてわかりづらいが、どうやら、かなりの数の鉱石が規則正しく中央の島の岩壁に埋め込まれているようだとわかった。中央の島は円柱形なので、鉱石が並ぶ間隔と島の外周から考えると、ざっと百個の鉱石が埋め込まれている事になる。そして、現在、光を放っている鉱石は70個……先程、カービィが消滅させたマグマ蛇と同数だ。
「なるほど……このマグマ蛇を百体倒すってのがクリア条件ってところか」
「……この暑さで、あれを百体相手にする……迷宮のコンセプトにも合ってる」
そんな訳で残りの数を知ったカービィやマルク、マホロアなどなど氷のちからを使える者たちはどんどん倒していく。
ハジメ「これで、終わりだ」
それを視界の端に捉えながら、ハジメは【グリューエン大火山】攻略のための最後の一発を放った。
――その瞬間
ズドォオオオオオオオオ!!!!
頭上より、極光が降り注いだ。
まるで天より放たれた神罰の如きそれは、ハジメがかつて瀕死の重傷を負った光。いや、それより遥かに強力かも知れない。大気すら悲鳴を上げるその一撃は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って放たれ――ハジメを、最後のマグマ蛇もろとも呑み込んだ。
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