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海の上を走ること数時間、
「あっ、ハジメさん! 見えてきましたよ! 町ですぅ! やっと人のいる場所ですよぉ!」
「ん? おぉ、ほんとに海のド真ん中にあるんだなぁ」
そして……シアが瞳を輝かせながら指を指し【エリセン】の存在を伝える。視線を向けたハジメの眼にも、確かに海上に浮かぶ大きな町が見え始めたのだった。
そうこうしているうちに、完全武装した海人族と人間の兵士が詰めかけてきた。青年が、事情を説明するため前に進み出て、何やらお偉いさんらしき人と話し始める。ハジメは、早く、アンカジに戻って香織達と合流したかったので、心の中で「さっさと同行者決めろや!」と多少イラつきながら、その様子を見守っていた。
しかし、穏便にいってくれというハジメの思いは、やはりそう簡単に叶いはしないらしい。何やら慌てている青年を押しのけ、兵士達が押し寄せてきた。狭い桟橋の上なので逃げ場などなく、あっという間に包囲されるハジメ達。
「大人しくしろ。事の真偽がはっきりするまで、お前達を拘束させてもらう」
「おいおい、話はちゃんと聞いたのか?」
「もちろんだ。確認には我々の人員を行かせればいい。お前達が行く必要はない」
にべもない態度と言葉。ハジメはイラっとしつつも、ミュウの故郷だと自分に言い聞かせて自制する。
「あのな。俺達だって仲間が待っているんだ。直ぐにでもアンカジに向かいたいところを、わざわざ勘違いで襲って来た奴らを送り届けに来てやったんだぞ?」
「果たして勘違いかどうか……攫われた子がアンカジにいなければ、エリセンの管轄内で正体不明の船に乗ってうろついていた不審者ということになる。道中で逃げ出さないとも限らないだろう?」
「どんなタイミングだよ。逃げ出すなら、こいつらを全滅させた時点で逃げ出しているっつうの」
「その件もだ。お前達が無断で管轄内に入ったことに変わりはない。それを発見した自警団の団員を襲ったのだから、そう簡単に自由にさせるわけには行かないな」
「殺気立って話も聞かず、襲ってきたのはコイツ等だろうが。それとも、おとなしく手足を落とされていれば良かったってか?……いい加減にしとけよ」
ハジメとしては、ミュウの故郷であるし、大迷宮の一つ【メルジーネ海底遺跡】の正確な場所を知らないので、しばらく探索に時間がかかる可能性を考えると拠点となるエリセンで問題を起こしたくはなかった。アンカジにミュウがいるのは確実であるし、そうすれば疑惑も解けると頭ではわかっている。しかし、この世界におけるあらゆる理不尽に対して、ハジメは、条件反射ともいえる敵愾心を持っている。なので、そう簡単に言うことは聞く気にはなれなかった。
まさに、一触即発。
緊張感が高まる中、ハジメが、やはりミュウの故郷で暴れまわるわけにはいかないかと、譲歩しようとしたその時、
「ん? 今なにか……」
シアが、ウサミミをピコピコと動かしながらキョロキョロと空を見渡し始めた。ハジメは、隊長格の男から目を逸らさずに、「どうした?」と尋ねる。だが、それにシアが答える前に、ハジメにも薄らと声と気配が感じられた。
「――ッ」
「あ? なんだ?」
「――パッ!」
「おい、まさか!?」
「――パパぁー!!」
ハジメが慌てて空を見上げると、何と、遥か上空から、小さな人影が落ちてきているところだった!
両手を広げて、自由落下しているというのに満面の笑みを浮かべるその人影は……
「ミュウッ!?」
そう、ミュウだ。ミュウがスカイダイビングしている。パラシュートなしで。よく見れば、その背後から、慌てたように落下してくる黒竜姿のティオの姿が見えた。
ハジメは、落ちてくる人影がミュウだと認識するや否や、〝空力〟と〝縮地〟を発動。その場から一気に跳躍した。その衝撃で桟橋が吹き飛び、兵士達が悲鳴を上げながら海に落ちたが知ったことではない。
そして、ミュウを抱きしめたまま、〝空力〟を使ってピョンピョンと跳ねながら地上へと戻る。内心、冷や汗を滝のように流しながら。
「パパッ!」
そんなハジメの内心など露ほどにも知らず、満面の笑みでハジメの胸元に顔をスリスリと擦りつけるミュウ。おそらく、上空で真下にハジメがいるとティオ辺りにでも教えられたのだろう。
そして、事故かあるいは故意かは分からないが、ハジメ目掛けて落下した。落下中の笑顔を見れば、ハジメが受け止めてくれるということを微塵も疑っていなかったに違いない。
だからといって、フリーフォールを満面の笑みで行うなど尋常な胆力ではない。そんな四歳児、いて堪るか! と内心ツッコミを入れながら、地上に降りたら盛大に叱ってやらねばなるまいと胸元のミュウを撫でながら、眉根を寄せるハジメであった。
「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」
ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒など微塵もなく、妙に静まり返っていた。
それは、攫われたはずの海人族の女の子が天から降ってきた事や、人間であるはずの少年が空を跳びはねキャッチした事、更にその上空から少女を背に乗せた黒竜が降りてきた事も原因ではあるのだが、一番の理由は、その少年が盛大に海人族の少女を叱り付けたことだろう。いや、正確には、叱りつけた少年に対する先程から何度か聞こえる幼女の呼び名が原因かもしれない。
「ぐすっ、パパ、ごめんなしゃい……」
「もうあんな危ない事しないって約束できるか?」
「うん、しゅる」
「よし、ならいい。ほら、来な」
「パパぁー!」
片膝立ちで幼子にしっかり言い聞かせるハジメの姿と、叱られて泣きながらも素直に反省し、許されてハジメの胸元に飛び込むミュウの姿は……普通に親子だった。ミュウが連呼する〝パパ〟の呼び名の通りに。
攫われたはずの海人族の幼子が、単なる〝慕う〟を通り越して人間の少年を父親扱いしている事態に、そしてそれを受け入れてミュウを娘扱いしているハジメに、皆、意味が分からず唖然としている。内心は皆一緒だろう。すなわち、「これ、どうなってんの?」と。
大して気にもせず、ティオはハジメの傍に寄ると、その頭を抱き抱え自らの胸の谷間に押し付けた。
「ぬおっ!? おい、ティオ」
「信じておったよ? 信じておったが……やはり、こうして再会すると……しばし、時間をおくれ、ご主人様よ」
ハジメが僅かに胸の谷間から顔を覗かせティオの顔を見れば、大切なものが腕の中にあることを噛み締めるような表情をして、目の端に涙を溜めていた。今回は、ティオに頼って無茶もさせたので、仕方ないかと好きにさせるハジメ。
そうこうしているうちに、ミュウが「ミュウもギュ~する~」と言いながらハジメの首筋に抱きつき、いつの間にか傍に来ていたユエが側面から、シアが香織とは反対側の肩口に抱き付き始めた。
衆人環視の中、美幼女・美少女・美女を体が見えなくなるくらい全身に纏わりつかせたハジメ。周囲の視線が、困惑から次第に生暖かなものへと変わっていく。既に、殺気立っていた海人族の自警団達も人間族の兵士達も、毒気を抜かれたように武器を下げていた。
「貴様等……一度ならず、二度までも……王国兵士に対する公務妨害で捕縛してやろうか!」
ハジメたちは、ティオから〝宝物庫〟を返してもらうと、中から全員分のステータスプレートとイルワからの依頼書を取り出し、隊長に提示した。
「……なになに……全員〝金〟ランクだとっ!? しかも、フューレン支部長の指名依頼!?」
イルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙も提出した。これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたものだ。それを食い入るように読み進めた隊長は盛大に溜息を吐くと、少し逡巡したようだが、やがて諦めたように肩を落として敬礼をした。
「……依頼の完了を承認する。南雲殿」
「疑いが晴れたようで何よりだ。他にも色々聞きたいことはあるんだろうが、こっちはこっちで忙しい。というわけで何も聞かないでくれ……一先ず、この子と母親を会わせたい。いいよな?」
「もちろんだ。しかし、先程の竜の事や貴方の先程の跳躍、それにあの船らしきもの……王国兵士としては看過できない」
先程の高圧的な態度とは一転し、ハジメに対して一定の敬意を払った態度となった隊長は、それでも聞くべきことは見逃せないとハジメに強い眼差しで訴える。
「それなら、時間が出来たら話すってことでいいだろ? どっちにしろしばらくエリセンに滞在する予定だしな。もっとも、本国に報告しても無駄だと思うぞ。もう、ほとんど知ってるだろうし……」
「むっ、そうか。とにかく、話す機会があるならいい。その子を母親の元へ……その子は母親の状態を?」
「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには最高の薬もあるし、治癒師もいるからな」
「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた、尋ねるとしよう」
隊長の男、最後にサルゼと名乗った彼は、そう言うと野次馬を散らして騒ぎの収拾に入った。中々、職務に忠実な人物である。
ミュウを知る者達が、声を掛けたそうにしていたが、そうすれば何時までたっても母親のところへたどり着けそうになかったので、ハジメは視線で制止した。
「パパ、パパ。お家に帰るの。ママが待ってるの! ママに会いたいの」
「そうだな……早く、会いに行こう」
ハジメの手を懸命に引っ張り、早く早く! と急かすミュウ。彼女にとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。無理もない。道中も、ハジメ達が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。
ミュウの案内に従って彼女の家に向かう道中、顔を寄せて来た香織が不安そうな小声で尋ねる。
「ハジメくん。さっきの兵士さんとの話って……」
「いや、命に関わるようなものじゃないらしい。ただ、怪我が酷いのと、後は、精神的なものだそうだ……精神の方はミュウがいれば問題ない。怪我の方は詳しく見てやってくれ」
「うん。任せて」
そんな会話をしていると、通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。
「レミア、落ち着くんだ! その足じゃ無理だ!」
「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」
「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと!」
そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア! と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。
「ママーー!!」
「ッ!? ミュウ!? ミュウ!」
ミュウは、ステテテテー! と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。
もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。
レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。
娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。
「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」
「ミュウ……」
まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。
「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!?」
どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。
これが、サルゼが言っていたことであり、エリセンに来る道中でハジメが青年から聞いていたことだ。ミュウを攫ったこともだが、母親であるレミアに歩けなくなる程の重傷を負わせたことも、海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。
レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで怪しげな男達を発見した。取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。
レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。
しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。
一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。
そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態なのである。
レミアは、これ以上、娘に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて、ミュウと同じように「大丈夫」と伝えようとした。しかし、それより早く、ミュウは、この世でもっとも頼りにしている〝パパ〟に助けを求めた。
「パパぁ! ママを助けて! ママの足が痛いの!」
「えっ!? ミ、ミュウ? いま、なんて……」
「パパ! はやくぅ!」
「あら? あらら? やっぱり、パパって言ったの? ミュウ、パパって?」
混乱し頭上に大量の〝?〟を浮かべるレミア。周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。あちこちから「レミアが……再婚? そんな……バカナ」「レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね! おめでたいわ!」「ウソだろ? 誰か、嘘だと言ってくれ……俺のレミアさんが……」「パパ…だと!? 俺のことか!?」「きっとクッ○ングパパみたいな芸名とかそんな感じのやつだよ、うん、そうに違いない」「おい、緊急集会だ! レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ! こりゃあ、荒れるぞ!」など、色々危ない発言が飛び交っている。
どうやら、レミアとミュウは、かなり人気のある母娘のようだ。レミアは、まだ、二十代半ばと若く、今は、かなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。復調すれば、おっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。
刻一刻と大きくなる喧騒に、「行きたくねぇなぁ」と表情を引き攣らせるハジメ。ミュウがハジメをパパと呼ぶようになった経緯を説明すれば、あくまでパパ〝代わり(内心は別としても)〟であって、決してレミアとの再婚を狙っているわけではないと分かってもらえるだろうと簡単に考えていたのだが、どうやら、誤解が物凄い勢いで加速しているようだ。
だが、ある意味僥倖かもしれないとハジメは考えた。ミュウは母親の元に残して、ハジメ達は旅を続けなければならない。【メルジーネ海底遺跡】を攻略すれば、ミュウとはお別れなのだ。故郷から遠く離れた地で、母親から無理やり引き離されたミュウの寄る辺がハジメ達だったわけだが、母親の元に戻れば、最初は悲しむかもしれないが時間がハジメ達への思いを薄れさせるだろうと考えていた。周囲の人々の、レミア達母娘への関心の強さは、きっと、その助けとなるはずだ。
「パパぁ! はやくぅ! ママをたすけて!」
ミュウの視線が、がっちりハジメを捉えているので、その視線をたどりレミアも周囲の人々もハジメの存在に気がついたようだ。ハジメは観念して、レミア達母娘へと歩み寄った。
「パパ、ママが……」
「大丈夫だ、ミュウ……ちゃんと治る。だから、泣きそうな顔するな」
「はいなの……」
「カービィ、あれをくれ。」
「わかった。コピー能力アーティスト!」
カービィはマキシムトマトを描いてハジメに渡す。
「これを食ってくれ。これはこれの仲間の故郷に伝わる秘薬なんだ。」
「ママ、早く食べるなの!」
「わ、わかったわ。」
そう言ってレミアはマキシムトマトを食べた。次の瞬間傷が全て消えたのだった。
「そんなバカな!?」
と海人族がいっていた。
「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」
「ふふ、いいんですよ。ミュウちゃんのお母さんなんですから」
「えっと、そういえば、皆さんは、ミュウとはどのような……それに、その……どうして、ミュウは、貴方のことを〝パパ〟と……」
メタナイトはハジメ達は、事の経緯を説明することにした。フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてパパと呼ぶようになった経緯など。全てを聞いたレミアは、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。
「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来ることでしたら、どんなことでも……」
「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね? ミュウ? ハジメさん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」
「? パパ、どこかに行くの?」
レミアの言葉に、レミアの膝枕でうとうとしていたミュウは目をぱちくりさせて目を覚まし、次いでキョトンとした。どうやら、ミュウの中でハジメが自分の家に滞在することは物理法則より当たり前のことらしい。なぜ、レミアがそんな事を聞くのかわからないと言った表情だ。
「母親の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんだが……」
「あらあら、うふふ。パパが、娘から距離を取るなんていけませんよ?」
「いや、それは説明しただろ? 俺達は……」
「いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそ、お別れの日まで〝パパ〟でいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは……ね?」
「……まぁ、それもそうか……」
「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっと〝パパ〟でもいいのですよ? 先程、〝一生かけて〟と言ってしまいましたし……」
そんな事を言って、少し赤く染まった頬に片手を当てながら「うふふ♡」と笑みをこぼすレミア。おっとりした微笑みは、普通なら和むものなのだろうが……ハジメの周囲にはブリザードが発生している。
「そういう冗談はよしてくれ……空気が冷たいだろうが……」
「あらあら、おモテになるのですね。ですが、私も夫を亡くしてそろそろ五年ですし……ミュウもパパ欲しいわよね?」
「ふぇ? パパはパパだよ?」
「うふふ、だそうですよ、パパ?」
ブリザードが激しさを増す。冷たい空気に気が付いているのかいないのか分からないが、おっとりした雰囲気で、冗談とも本気とも付かない事をいうレミア。「いい度胸だ、ゴラァ!」という視線を送るユエ達にも「あらあら、うふふ」と微笑むだけで、柳に風と受け流している。意外に大物なのかもしれない。
結局、レミア宅に世話になることになった。部屋割りで「夫婦なら一緒にしますか?」とのたまうレミアとユエ達が無言の応酬を繰り広げたり、「パパとママと一緒に寝る~」というミュウの言葉に場がカオスと化したりしたが、一応の落ち着きを見せた。
明日からは、大迷宮攻略に向けて、しばらくの間、損壊、喪失した装備品の修繕・作成や、新たな神代魔法に対する試行錯誤を行わなければならない。しかし、残り少ないミュウとの時間も、蔑ろにはできないと考えながら、ベッドに入ったハジメの意識は微睡んでいったのだった。
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好評だったり、続けて欲しいと、いう声があれば確実に続きます!
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