ありふれた能力世界最強   作:コロンKY

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大爆発

初撃はシュラーゲンによる一撃だった。

 

 紅いスパークが迸り、見るからに凶悪なフォルムの怪物兵器から凄絶な破壊力を宿らせた超速の弾丸が一直線に目標へと迫る。ティオのブレスすら正面から貫いた貫通特化の砲撃に、流石の銀翼でも分解する前に貫かれると判断したのかノイントは回避を選んだ。

 

しかしコピー能力クリエイト『ガン、ガン』で待機していたカービィ。

すかさず発砲する。

 

カービィは撃った。

 銃弾一つが100に分裂して数千の弾丸が襲いかかる!

 

隙を突かれほとんど当たって大ダメージをノイントは負った。

 

そんな彼女の懐に、意識の間隙を突くようにいつの間にか踏み込んできたのはハジメだ。〝空力〟を使った空中での震脚によって、踏み込みの力を余すことなく左腕に集束し、ギミックの〝振動破砕〟と〝炸裂ショットガン〟、そして〝豪腕〟と膨大な魔力を注ぎ込んだ〝衝撃変換〟による絶大な威力の拳撃を放った。

 

 ノイントは、咄嗟に、弐之大剣を盾にした。体と着弾寸前の拳との間に大剣を割り込ませる。その試みはギリギリのところで間に合い、ハジメの鋼鉄の拳をせき止めた。

 

 しかし、その威力までは止められず、ガァアアン! という金属同士が衝突する凄まじい音を轟かせながら、ノイントは猛烈な勢いで吹き飛ばされた。

 

ドパァアアンッ! ドパァアアンッ!

 

 ハジメは追撃の手を緩めない。即座にドンナー・シュラークを抜くと最大威力で連射する。轟く炸裂音は二発分。夜闇を切り裂く紅い閃光も二条。されど、吹き飛びながらも双大剣をクロスさせて防御姿勢をとるノイントを襲ったのは十二回分の衝撃だった。

 

「くぅうううっ!!」

カービィも負けずに連射する。

銃弾一つが100に分裂する。

ドンナー・シュラークそれぞれにつき、一発分しか聞こえない程の早撃ちと、全く同じ軌道を通り着弾地点も同じという超精密射撃。ノイントの呻き声と同時に、彼女の持つ大剣が衝撃に震え、僅かにピキッと嫌な音を立て破壊した。

 

 

 

 

 壮絶な空中戦の合間に訪れた僅かな静寂。空中でノイントとハジメが対峙する。

 

「なぁ、ちょっと聞きたいんだが俺に構っていていいのか?」

「……何のことです?」

 

 教会関係者が地上で起きている魔人族による王都侵攻を知らないわけがない。問答無用に襲われていたので聞く暇もなかったのだが、一時の間が出来た上に、ノイントが会話に乗ってきたので、ハジメは、ちょうどいいと話を続ける。

 

「下で起きていることだ。このままじゃ王国は滅びるぞ? 次は当然、この【神山】だ。俺なんかに構ってないで、魔人族達と戦った方がいいんじゃないのか?」

 

 言い直されたハジメのもっともな質問に、しかし、ノイントはくだらない事を聞かれたとでも言うような素振りで鼻を鳴らす。

 

「そうなったのなら、それがこの時代の結末という事になるのでしょう」

「結末ねぇ。……やっぱり、エヒト様とやらにとって〝人〟は所詮〝人〟でしかなく、暇つぶしの駒でしかないということか。……この時代は、たまたま人間族側についてみただけってわけだ? この分じゃ、魔人族側の神とやらもエヒト本人か、あるいは配下ってところか」

「……だったら何だというのです?」

「いや、〝解放者〟達から聞かされた話の信憑性を、一応、確かめてみようかと思ってな?ほら、俺にとっちゃあ、どっちも唯の不審者だし」

 

 主を不審者呼ばわりされたせいか眉がピクリと反応するノイント。しかし、ハジメは気にした風もなくにこやかに告げる。

 

「なぁ、俺が邪魔なら元の世界に帰してくれてもいいんじゃないか? あと、勇者達も、王国が滅びたら大して機能しなかった残念な駒として終わるわけだし、ついでにさ?」

「却下です、イレギュラー」

「理由を聞いても?」

「主がそれをお望みだからです。イレギュラー、主はあなたの死をお望みです。あらゆる困難を撥ね退け、巨大な力と心強い仲間を手に入れて……そして、目標半ばで潰える。主は、あなたのそういう死をお望みなのです。ですから、なるべく苦しんで、嘆いて、後悔と絶望を味わいながら果てて下さい。あなたが主に対して出来る最大の楽しませ方はそれだけです。ああ、それと勇者達は……中々面白い趣向を凝らしているとのことで、主は大変興味を持たれております。故に、まだまだ主を楽しませる駒として踊って頂きます」

 

 ハジメは、概ね予想通りの回答だったので特に気にした風もなく肩を竦めると、かつて聞いたミレディ・ライセンの言葉に、内心で深く同意した。すなわち、「確かに、クソ野郎共だ」と。

 

 しかし、自分の事はともかく、最後の言葉はハジメとしても気になるところだ。

 

「……面白い趣向?」

「これから死ぬあなたにとって知る必要のないことです」

 

話は終わりだと、ノイントは、無数の魔法と銀羽を放ち戦闘再開を行動で示す。

 

 もっとも、先程までとは威力も桁も別次元だった。銀羽の一枚一枚がレールガンに迫ろうかという威力を持ち、放たれる魔法は全て限りなく最上級に近いレベルである。よく見れば、ノイントの体全体が銀色の魔力で覆われており、感じる威圧感が跳ね上がっていた。まるで、ハジメや光輝が使う〝限界突破〟のような姿だ。

 

 

カービィはすかさずコピー能力クリエイト『ガン、ガン、ミラー、ミラー』にして跳ね返した。

 

ハジメは、〝宝物庫〟から全長二メートル半のアームが付いた大筒を取り出す。パイルバンカーだ。キィイイイイ!! という独特の音を響かせてスパークを迸らせながら紅い雷をチャージする。そして、一気にノイントへと踏み込んだ。

 

「くっ」

 

 苦さを含んだ声を漏らしたノイントは、銀翼を大きく広げ自らを繭のように包み込む。分解能力を秘めた銀色の魔力が燦然と輝き、まるでもう一つの月のようだ。

 

 ハジメは、そんな美しさすら感じる障壁に凄まじい衝撃と共にパイルバンカーを叩きつけた。直後、四本のアームに新たに付加された空間固定機能が、分解能力に抗いながらパイルバンカーを固定する。紅色のスパークは既に臨界状態を示すように激しく荒れ狂っている。

 

「耐えられるものなら耐えてみな」

 

 ハジメの口元が不敵に吊り上り、瞳が殺意にギラつく。〝限界突破〟の紅き魔力は益々輝き、銀月を紅月に染め上げていく。

 

 直後、パイルバンカーの射出口から不可視の衝撃が迸った。それは、射出口に内蔵された空間振動を起こす機能だ。空間魔法〝震天〟の簡易版であるそれは、対象に激烈な振動を与え、その結合を――耐久力を著しく弱らせる。

 

そしてカービィがコピー能力をスーパー能力ウルトラソードに変え、ノイントを滅多斬りにしようとしたときだった。

 

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 【神山】全体を激震させるような爆発音が轟いた。今度は何事かと振り返ったハジメの目に映った光景は……巨大なキノコ雲と轟音を立てながら崩壊していく大聖堂を含む聖教教会そのものだった。

 

「……うそん」

 

 思わず漏れたハジメの呟きが、やけに明瞭に木霊した。

 

 

 思わず、ポカンと口を開けて夜天を焦がす巨大なキノコ雲を見つめるハジメ。昔、テレビの戦争系ドキュメンタリーでこんな光景見たなぁと思いながら呆然としていると、突然、念話が届いた。

 

〝ハジメ……そっちはどうだ?〟

〝お? おぉ、メタナイトか。いや、こっちはちょうど終わったところなんだが……〟

〝流石だな。ちょうど、こちらも終わったところだ。合流できるか?〟

〝いや、それが何かすごいことに……〟

〝……その原因はわかっている。……取り敢えず、合流出来るか?〟

〝はぁ、わかった〟

 

どうやら聖教教会総本山が根こそぎ崩壊した原因を知っているようなので、一体、何があったと頬を引き攣らせながら、ハジメはメタナイトとの合流を急ぐ事にした。上空に上がると、直ぐに、メタナイトがキノコ雲から距離を置いた場所で滞空しているのを発見する。

 

 そして、ハジメの目には、その背に乗って「あわわわ」といった感じで狼狽えまくっている愛子の姿も映った。なぜ、ここに愛子が? という疑問は湧いたものの、愛子の性格ならきっと、逃げずにメタナイトに協力でもしたのだろうと当たりを付けるハジメ。それよりも、明らかに、愛子の「やってしまった」といった様子の方が気になった。

 

「……先生、メタナイト。二人共無事みたいだな」

「な、南雲君! よかった、無事だったんですね。……本当によかった」

 

「流石はハジメの先生殿だな。まさか、マッハトルネイドを聖教教会そのものを崩壊させる程に昇華させるとは。予想外だった。」

 

ハジメが目を瞬かせる。そして、愛子に〝まさか〟という引き攣った表情を向けた。

 

「……先生、一体何やったんだ」

「あわわわわわ、ち、ちなうんです! こんなつもりでは。ちょっと教会の結界が強くて……マッハトルネイドの威力を高められればと……結界を破るだけのつもりが……」

 

 ハジメの登場に、安堵の吐息を漏らす愛子だったが、続くハジメの質問で再びあたふたし始めた。狼狽える愛子に事情を聞くと、どうやらこういう事らしい。

 

 愛子は、メタナイトに乗りながら、イシュタル達がハジメに状態異常の魔法をかけられないように戦うことを決意した。しかし、魔法に関して高い適性は持っていても、碌な魔法陣を持っていない愛子に強力な攻撃魔法を行使することは出来なかった。また、大聖堂そのものが強力な結界を発動させるアーティファクトだったらしく、その結界に守られたイシュタル達には、マッハトルネイドやギャラクシアダークネスさえも届かなかった。

 

このままでは、イシュタル達は安全地帯から悠々と魔法を行使できてしまう。何とか結界を突破できるだけの火力を得ることは出来ないだろうかと、神殿騎士達からの攻撃を凌ぎながら考えて、愛子が思いついたのは……自分の特技を生かす事だった。ちなみに、愛子の特技とは以下にある通り、

 

====================================

畑山愛子 25歳 女 レベル:56

天職:作農師

筋力:190

体力:380

耐性:190

敏捷:310

魔力:820

魔耐:280

技能:土壌管理・土壌回復[+自動回復]・範囲耕作[+範囲拡大][+異物転換]・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作[+急速発酵][+範囲発酵][+遠隔発酵]・範囲温度調整[+最適化][+結界付与]・農場結界・豊穣天雨・言語理解

====================================

 

 この内、使ったのは発酵操作らしい。【神山】と言えど、人が暮らす場所であるから発酵できるものは大量にある。それから、地球で言うところのメタン発酵というものを行ったようだ。勿論、正確には別の異世界物質だが、可燃性ガスであることに変わりはない。

 

そしてメタナイトはギャラクティックナイトのフレイムスパインをマッハトルネイドと合わせて使ったら………

 

「……こうなったと」

 

「ちなうんです! そうじゃないんです! こんなに爆発するなんて思ってなくて! ただ、半端はいけないと思って! ホントなんです! はっ!? 教会の皆さんはっ!? どうなりました!?」

 

 愛子が、涙目でオロオロしながら弁解し、廃墟と化した教会に視線を彷徨わせる。ハジメ達も一緒に瓦礫の山々に視線を向けるが……

 

「……まぁ、まとめて吹き飛んだんだろうなぁ」

 

〝教会の結界を過信している感じじゃったしのぉ。完全な不意打ちでもあったのじゃし、無防備なところにあの爆発では、助からんじゃろ〟

 

「あ、ああ……そんな……いえ、覚悟はしていたのですが……」

 

 自分の幇助が、教会関係者達をまとめて爆殺してしまった原因である事に顔を青ざめさせる愛子。覚悟を決めて戦いに挑んだつもりだが、いざ、その結果を突きつけられると平常心ではいられない。

 

 思わず、その場で嘔吐してしまう。涙を流しながら吐く愛子に、ハジメは頭をカリカリと掻くと、そっと愛子に寄り添った。そして、吐瀉物で汚れているのも気にせず愛子の手を握る。今の愛子には、とにかく暖かさが必要だと思ったのだ。

 

 愛子は、凍えて砕けてしまいそうな心が握られた手から伝わる暖かさに繋ぎ止められるのを感じた。そして、今だけは生徒と教師という事も忘れて、ハジメの胸に飛び込みギュッと抱きついて嗚咽を漏らした。

 

「落ち着いたか? 先生」

「は、はい。も、もう大丈夫です。南雲君……」

 

 ハジメの呼びかけにハッと我に返った愛子は、羞恥やら何やらで顔を真っ赤に染め上げた。心なし、ハジメの名を呼ぶ声に熱が篭っている。上目遣いにチラチラとハジメを窺う瞳も熱っぽくうるうると潤んでいた。どう見ても、ただの羞恥心だけから来るものではなく、特別な感情が窺える表情だ。

 

 愛子は教師であるという認識が先に来て〝女〟として見ていなかったハジメだったが、流石に、そんな表情を見せられては「あれ? なんかこれ違くない? もしかして、そういうこと?」と愛子の感情を察して、頬を引き攣らせた。

 

何だか色々ヤバイ気がすると、咄嗟に目を逸らしたハジメに、メタナイトから警戒心の含まれた声が届く。

 

 

「ハジメ、人がいる。普通ではなさそうだが。」

 

「何だって?」

 

 

 禿頭の男は、ハジメ達が自分を認識したことに察したのか、そのまま無言で踵を返すと、歩いている素振りも重力を感じている様子もなくスーと滑るように動いて瓦礫の山の向こう側へと移動した。そして、姿が見えなくなる直前で振り返り、ハジメ達に視線を向ける。

 

「……ついて来いってことか?」

 

「どうする?」

 

「……そうだな、さっさとユエ達と合流はしたいところだが……元々、ここには神代魔法目当てで来たんだ。もしかしたら、何か関係があるのかもしれない。手がかりを逃すわけにはいかないな」

 

 

「先生、悪いが付いてきてくれ。何が起こるか分からないが……あのハゲが何者か、確かめないわけにもいかないんだ」

「は、はい。わかりました。……南雲君に付いていきます……」

 

 最後の付いて行くという言葉に妙な力と熱が篭っていたような気がするハジメだったが、敢えて気がつかない振りをして、禿頭の男が消えていった場所に歩を進めた。

 

 禿頭の男は、その後も、時折姿を見せてはハジメ達を誘導するように瓦礫の合間を進んでいく。そして、五分ほど歩いた先で、遂に目的地についたようで、真っ直ぐハジメ達を見つめながら静かに佇んでいた。

 

「あんた、何者なんだ? 俺達をどうしたい?」

「……」

 

 禿頭の男は、ハジメの質問には答えず、ただ黙って指を差す。その場所は何の変哲も無い唯の瓦礫の山だったが、男の眼差しは進めと言っているようだ。問答をしても埓があかないと判断したハジメは、メタナイト達と頷き合うとその瓦礫の場所へ踏み込んだ。すると、その瞬間、瓦礫がふわりと浮き上がり、その下の地面が淡く輝きだした。見れば、そこには大迷宮の紋章の一つが描かれていた。

 

「……あんたは……解放者か?」

 

 ハジメが質問したのと、地面が発する淡い輝きがハジメ達を包み込んだのは同時だった。

 

 そして、次の瞬間には、ハジメ達は全く見知らぬ空間に立っていた。それほど大きくはない。光沢のある黒塗りの部屋で、中央に魔法陣が描かれており、その傍には台座があって古びた本が置かれている。どうやら、いきなり大迷宮の深部に到達してしまったらしい。

 

 ハジメ達は、魔法陣の傍に歩み寄った。ハジメは、何が何やらと頭上に大量の〝?〟を浮かべている愛子の手を引いてカービィと頷き合うと精緻にして芸術的な魔法陣へと踏み込んだ。

 

 と、いつも通り記憶を精査されるのかと思ったら、もっと深い部分に何かが入り込んでくる感覚がして、思わず三人とも呻き声を上げる。あまりに不快な感覚に、一瞬、罠かと疑うも、次の瞬間にはあっさり霧散してしまった。そして、攻略者と認められたのか、頭の中に直接、魔法の知識が刻み込まれる。

 

「……魂魄魔法?か、なるほどな。ミレディの奴が、ゴーレムに魂を定着させて生きながらえていた原因はこれか……」

 

「ボクも新しいコピー能力を手に入れたよ。コピー能力スピリットって言う見たいだよ。」

 

 

 

 いきなり頭に知識を刻み込まれるという経験に、頭を抱えて蹲る愛子を尻目に、ハジメは納得顔で頷くと、脇の台座に歩み寄り、安置された本を手にとった。

 

 どうやら、中身は大迷宮【神山】の創設者であるラウス・バーンという人物が書いた手記のようだ。オスカー・オルクスが持っていたものと同じで、解放者達との交流や、この【神山】で果てるまでのことが色々書かれていた。

 

 しかし、ハジメには興味のないことなので、さくっと読み飛ばす。ラウス・バーンの人生などどうでもいいのである。彼が、なぜ映像体としてだけ自分を残し、魂魄魔法でミレディのように生きながらえなかったのかも、懺悔混じりの言葉で理由が説明されていたが、スルーである。

 

 そして、最後の辺りで、迷宮の攻略条件が記載されていたのだが、それによれば、先程の禿頭の男ラウス・バーンの映像体が案内に現れた時点で、ほぼ攻略は認められていたらしい。

 

 というのも、あの映像体は、最低、二つ以上の大迷宮攻略の証を所持している事と、神に対して信仰心を持っていない事、あるいは神の力が作用している何らかの影響に打ち勝った事、という条件を満たす者の前にしか現れないからだ。つまり、【神山】のコンセプトは、神に靡かない確固たる意志を有すること、のようだ。

 

 おそらくだが、本来、正規のルートで攻略に挑んだのなら、その意志を確かめるようなあれこれがあったのではないだろうか。愛子も攻略を認められたのは、長く教会関係者から教えを受けておきながら、そんな信仰心より生徒を想う気持ちを揺るがせなかったから、あるいは教会の打倒に十分手を貸したと判断されたからだろう。

 

 この世界の人々には実に厳しい条件だが、ハジメ達には軽い条件だった。

 

 ようやく、神代魔法を手に入れた衝撃から立ち直った愛子を促して、台座に本と共に置かれていた証の指輪を取ると、ハジメ達は、さっさとその場を後にした。再び、ラウス・バーンの紋章が輝いて元の場所に戻る。

 

「先生、大丈夫か?」

「うぅ、はい。何とか……それにしても、すごい魔法ですね……確かに、こんなすごい魔法があるなら、日本に帰ることの出来る魔法だってあるかもしれませんね」

 

 愛子が、こめかみをグリグリしながら納得したように頷く。その表情は、ここ数日の展開の激しさに疲弊しきったように疲れたものだったが、帰還の可能性を実感できたのか少し緩んでいる。

 

「それじゃ、魔法陣の場所もわかったことだし、早くユエ達と合流しよう」

「あっ、そうです! 王都が襲われているんですよね? みんな、無事でいてくれれば……」

 

そして、合流した先で見たものは……

 

 胸から剣を突き出し、既に息絶えた香織の姿だった。

 

 

 




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